現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください
刑法 強盗罪の成否(暴行後の奪取の意思) 東京高判昭和48年3月26日 - 解答モード
概要
当初は財物奪取の意思がなく暴行を加えた後に至って奪取の意思を生じ財物を取得した場合においては、被害者の抵抗できない状態にあるのに乗じただけでは足りず、犯人がその意思を生じた後に被害者の抗拒を不能ならしめる暴行ないし脅迫に値する行為が存在して初めて強盗罪の成立があるものと解すべきである。
判例
事案:当初は財物奪取の意思がなく、他の目的で暴行又は脅迫を加えた後に初めて奪取の意思を生じて財物を取得したという事案において、強盗罪の成否が問題となった。
判旨:「強盗罪は相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行または脅迫を手段として財物を奪取することによって成立する犯罪であるから、その暴行または脅迫は財物奪取の目的をもってなされるものでなければならない。それゆえ、当初は財物奪取の意思がなく他の目的で暴行または脅迫を加えた後に至って初めて奪取の意思を生じて財物を取得した場合においては、犯人がその意思を生じた後に改めて被害者の抗拒を不能ならしめる暴行ないし脅迫に値する行為が存在してはじめて強盗罪の成立があるものと解すべきである(もっとも、この場合は、被害者はそれ以前に被告人から加えられた暴行または脅迫の影響によりすでにある程度抵抗困難な状態に陥っているのが通例であろうから、その後の暴行・脅迫は通常の強盗罪の場合に比し程度の弱いもので足りることが多いであろうし、また、前に被告人が暴行・脅迫を加えている関係上、被害者としてはさらに暴行・脅迫(特にその前者)を加えられるかもしれないと考え易い状況にあるわけであるから、被告人のささいな言動もまた被害者の反抗を抑圧するに足りる脅迫となりうることに注意する必要がある。しかし、いずれにしても、さらに暴行または脅迫の行なわれることを要することに変りはない。)。そして右の暴行または脅迫の行なわれたことは、もとより強盗罪の罪となるべき事実として具体的かつ明確に判示されなければならない。しかるに、原判決をみると、被告人が奪取の意思発生前に加えた暴行により畏怖している被害者の懐中に手を差し入れて、抵抗不能の状態にある同人から金品を取り上げた事実は判示されているが、右の判示では、財物奪取の意思を生じた後にその手段として暴行はもとよりなんらかの脅迫が行なわれたことも判示されているとはいいがたい。あるいは、その中に『同人が抵抗できない状態にあるのに乗じ』とあるところからみると、そこに一種の暗黙の脅迫が行なわれたことを認定した趣旨であるかとも想像されなくはないけれども、そう解するには表現があまりに抽象的で罪となるべき事実の要素としての脅迫の判示があったとするには不十分だといわざるをえないのである。また、被告人が被害者の懐中に手を差し入れる際『お前本当に金がないのか』と申し向けたことが判示されているが、これはその文言自体からも明らかなように、暗黙にもせよ被害者に害を加うべき脅迫の意思表示とみることはできない。これを要するに、原判決はその(罪となるべき事実)第2において強盗罪の成立に必要な暴行または脅迫の行為につきその判示が十分であるとはいいがたいのであるから、その理由が不備であるというのほかなく、控訴趣意に対して判断をするまでもなく、この点において破棄を免れない。」
判旨:「強盗罪は相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行または脅迫を手段として財物を奪取することによって成立する犯罪であるから、その暴行または脅迫は財物奪取の目的をもってなされるものでなければならない。それゆえ、当初は財物奪取の意思がなく他の目的で暴行または脅迫を加えた後に至って初めて奪取の意思を生じて財物を取得した場合においては、犯人がその意思を生じた後に改めて被害者の抗拒を不能ならしめる暴行ないし脅迫に値する行為が存在してはじめて強盗罪の成立があるものと解すべきである(もっとも、この場合は、被害者はそれ以前に被告人から加えられた暴行または脅迫の影響によりすでにある程度抵抗困難な状態に陥っているのが通例であろうから、その後の暴行・脅迫は通常の強盗罪の場合に比し程度の弱いもので足りることが多いであろうし、また、前に被告人が暴行・脅迫を加えている関係上、被害者としてはさらに暴行・脅迫(特にその前者)を加えられるかもしれないと考え易い状況にあるわけであるから、被告人のささいな言動もまた被害者の反抗を抑圧するに足りる脅迫となりうることに注意する必要がある。しかし、いずれにしても、さらに暴行または脅迫の行なわれることを要することに変りはない。)。そして右の暴行または脅迫の行なわれたことは、もとより強盗罪の罪となるべき事実として具体的かつ明確に判示されなければならない。しかるに、原判決をみると、被告人が奪取の意思発生前に加えた暴行により畏怖している被害者の懐中に手を差し入れて、抵抗不能の状態にある同人から金品を取り上げた事実は判示されているが、右の判示では、財物奪取の意思を生じた後にその手段として暴行はもとよりなんらかの脅迫が行なわれたことも判示されているとはいいがたい。あるいは、その中に『同人が抵抗できない状態にあるのに乗じ』とあるところからみると、そこに一種の暗黙の脅迫が行なわれたことを認定した趣旨であるかとも想像されなくはないけれども、そう解するには表現があまりに抽象的で罪となるべき事実の要素としての脅迫の判示があったとするには不十分だといわざるをえないのである。また、被告人が被害者の懐中に手を差し入れる際『お前本当に金がないのか』と申し向けたことが判示されているが、これはその文言自体からも明らかなように、暗黙にもせよ被害者に害を加うべき脅迫の意思表示とみることはできない。これを要するに、原判決はその(罪となるべき事実)第2において強盗罪の成立に必要な暴行または脅迫の行為につきその判示が十分であるとはいいがたいのであるから、その理由が不備であるというのほかなく、控訴趣意に対して判断をするまでもなく、この点において破棄を免れない。」
過去問・解説
(R1 司法 第2問 エ)
甲及び乙は、宝石商の丙から宝石を奪うことを計画した。その計画は、甲が、宝石取引のあっせんにかこつけてホテルの一室に丙を呼び出し、別室の顧客に見せる必要があるとうそを言って丙から宝石を受領し、甲の退室後に、乙が同室に入って丙を殺害するという内容であった。
甲は、計画に従って、ホテルの一室で丙から宝石を受領して退室し、それと入れ替わりに同室に立ち入った乙が丙の腹部を包丁で刺し、丙に重傷を負わせたが、殺害には至らなかった。
乙が丙の腹部を包丁で刺した行為が、丙から宝石の占有を奪取する手段とならないと考えた場合、甲及び乙に、いわゆる一項強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。
(R2 共通 第20問 ウ)
甲は、Vの暴行を避けようとして、その胸付近を1回平成手で突いたところ、その勢いでVが後方に転倒し、後頭部を路面に打ち付け、失神した。甲は、その頃には、Vが本件バッグの所有者であると分かっていたが、Vの態度に怒りを覚えたことなどから、本件バッグを自己のものにしようと考え、失神しているVからこれを取り上げて自宅に持ち帰った。
甲が本件バッグをVから取り上げた行為は、甲の暴行に起因するVの失神状態に乗じて本件バッグの占有を取得したといえるため、強盗罪が成立する。