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刑法 業務上横領罪の不法領得の意思 最二小決平成13年11月5日 - 解答モード

概要
株式会社の取締役は、同会社の株式の買い占めに対抗するための工作資金として自ら業務上保管していた会社の現金を第三者に交付した。この場合、会社の不利益を回避する意図を有していたとしても、当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので、自己の弱みを隠す意図をも有していたなど、専ら会社のためにしたとは認められないときは、業務上横領罪が成立する。
判例
事案:株式の買占めによる経営権の取得を阻止するための工作を依頼し、その工作資金及び報酬等にAの資金を流用しようと企て、支出権限がないのに、業務上保管中のAの現金合計8億9500万円をFらに交付した事案において、横領罪における不法領得の意思を認めることができるかが問題となった。

判旨:「当時、Aとしては、乗っ取り問題が長期化すると、同社のイメージや信用が低下し、官公庁からの受注が減少したり、社員が流出するなどの損害が懸念されており、被告人らがこうした不利益を回避する意図をも有していたことは、第一審判決が認定し、原判決も否定しないところである。しかし、原判決も認定するように、本件交付は、それ自体高額なものであった上、もしそれによって株式買取りが実現すれば、Fらに支払うべき経費及び報酬の総額は25億5000万円、これを含む買取価格の総額は595億円という高額に上り(当時のAの経常利益は、1事業年度で20億円から30億円程度であった。)、Aにとって重大な経済的負担を伴うものであった。しかも、それは違法行為を目的とするものとされるおそれもあったのであるから、会社のためにこのような金員の交付をする者としては、通常、交付先の素性や背景等を慎重に調査し、各交付に際しても、提案された工作の具体的内容と資金の必要性、成功の見込み等について可能な限り確認し、事後においても、資金の使途やその効果等につき納得し得る報告を求めるはずのものである。しかるに、記録によっても、被告人がそのような調査等をした形跡はほとんどうかがうことができず、また、それをすることができなかったことについての合理的な理由も見いだすことができない。…上記の事情をも考慮すれば、本件交付における被告人の意図は専らAのためにするところにはなかったと判断して、本件交付につき被告人の不法領得の意思を認めた原判決の結論は、正当として是認することができる。
 …当該行為ないしその目的とするところが違法であるなどの理由から委託者たる会社として行い得ないものであることは、行為者の不法領得の意思を推認させる1つの事情とはなり得る。しかし、行為の客観的性質の問題と行為者の主観の問題は、本来、別異のものであって、たとえ商法その他の法令に違反する行為であっても、行為者の主観において、それを専ら会社のためにするとの意識の下に行うことは、あり得ないことではない。したがって、その行為が商法その他の法令に違反するという一事から、直ちに行為者の不法領得の意思を認めることはできないというべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H25 共通 第18問 4)
法人の金員を管理する者が、同法人の金員を支出した場合、同支出が商法その他関係法令に照らして違法であっても、横領罪の「不法領得の意思」が認められないことがある。

(正答)

(解説)
判例(最決平13.11.5)は、業務上横領の事案において、「行為の客観的性質の問題と行為者の主観の問題は、本来、別異のものであって、たとえ商法その他の法令に違反する行為であっても、行為者の主観において、それを専ら会社のためにするとの意識の下に行うことは、あり得ないことではない。したがって、その行為が商法その他の法令に違反するという一事から、直ちに行為者の不法領得の意思を認めることはできない…。」としている。


全体の正答率 : 100%

(R2 共通 第2問 3)
株式会社の取締役経理部長甲は、同会社の株式の買い占めに対抗するための工作資金として自ら業務上保管していた会社の現金を第三者に交付した。この場合、甲が、会社の不利益を回避する意図を有していたとしても、当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので、甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど、専ら会社のためにしたとは認められないときは、甲には、業務上横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平13.11.5)は、本肢と同種の事案において、「本件交付における被告人の意図は専らAのためにするところにはなかったと判断して、本件交付につき被告人の不法領得の意思を認めた原判決の結論は、正当として是認することができる。」として、被告人の意図は専ら会社のためにするところにはなかったことを前提として、業務上横領罪の成立を認めている。
したがって、甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど、専ら会社のためにしたとは認められないときは、甲には、業務上横領罪が成立する。

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