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刑法 写真コピーの文書性 東京地判昭和55年7月24日 - 解答モード
概要
写真コピーの文書性を判断するに当っては、(1)写としての正確性を論ずるに際しては、まず、真正に作成されたコピーの場合を念頭に置き、偽造変造にかかるコピーについては二次的なものとして考察すること、(2)写としての正確性がどのような観点から要求されているかを明確に認識しておくこと、(3)私文書による取引等の当事者である一般通常人の認識を基礎とすべきことを留意すべきである。
判例
事案:架空の契約書の写真コピーを利用した私文書偽造の事案において、写真コピーが私文書偽造罪における文書に当たるかが問題となった。
判旨:「本件写真コピーの文書性
本件写真コピーの文書性を判断するに当っては、次の3点に留意する必要がある。すなわち、(1)写としての正確性を論ずるに際しては、まず、真正に作成されたコピーの場合を念頭に置き、偽造変造にかかるコピーについては二次的なものとして考察すること、(2)写としての正確性がどのような観点から要求されているかを明確に認識しておくこと、(3)私文書による取引等の当事者である一般通常人の認識を基礎とすべきこと、これである。
右(1)は、真正な写真コピーに対する公共的信用の保護を問題とする以上当然なことであり、当初から偽造、変造にかかる写真コピーを前提としていたのでは、その正確性を判断することは論外である。
そこで、真正な写真コピーを前提として考えれば、それは、「写ではあるが、複写した者の意識が介在する余地のない、機械的に正確な複写版であって、紙質等の点を除けば、その内容のみならず筆跡、形状にいたるまで、原本と全く同じく正確に再現されている」(前示第二小法廷判決)ものと言えよう。第一項に指摘したように、写真コピーの正確性には、機械そのものの能力による限界があることは事実である。ここで、右(2)に指摘した正確性の要求される観点の認識が重要性を帯びて来る。たとえば、通貨偽造罪や有価証券偽造罪においては、写真コピー程度の再現力では、たかだか模造の問題を生じ得るに止まるであろうし、また、印影の真否を鑑定するような場合には、数次の再複写を経たような写真コピーは不適当である。しかし、ここでは、私文書偽造罪における文書性を論じているのであり、さきに指摘したとおり、そこで問題となるのは、作成名義人の表示する意思又は観念の伝達手段として、写作成者の認証行為をまつまでもなく、写それ自体として原本との同一性が保証されているとみられる程度の再現力を有するか否かということであり、色彩の再現力の有無や顕微鏡的誤差の存在は、これを捨象して妨げないものと言うべきである。むしろ、写それ自体が作成される経過が純粋に機械的であって人為的な誤写の可能性が排除されているという性質が認められる限り、筆跡、形状に至るまで原本と合同又は相似であるということまでは必ずしも必要ではないとすら言えるのである(原本が作成名義人自身の手書きによるものである場合には、その筆跡、形状が再現されていることは、そこに表示されている意思又は観念が紛れもなく原本作成名義人自身のものであることを推認し易いが、つねにそれが必要である訳ではない。)写真コピーの性質として、筆跡、形状に至るまで原本と全く同様に正確に再現されるということは、最小限の必要を充たしてなお余りある正確性が担保されていることを意味しているのである。」
判旨:「本件写真コピーの文書性
本件写真コピーの文書性を判断するに当っては、次の3点に留意する必要がある。すなわち、(1)写としての正確性を論ずるに際しては、まず、真正に作成されたコピーの場合を念頭に置き、偽造変造にかかるコピーについては二次的なものとして考察すること、(2)写としての正確性がどのような観点から要求されているかを明確に認識しておくこと、(3)私文書による取引等の当事者である一般通常人の認識を基礎とすべきこと、これである。
右(1)は、真正な写真コピーに対する公共的信用の保護を問題とする以上当然なことであり、当初から偽造、変造にかかる写真コピーを前提としていたのでは、その正確性を判断することは論外である。
そこで、真正な写真コピーを前提として考えれば、それは、「写ではあるが、複写した者の意識が介在する余地のない、機械的に正確な複写版であって、紙質等の点を除けば、その内容のみならず筆跡、形状にいたるまで、原本と全く同じく正確に再現されている」(前示第二小法廷判決)ものと言えよう。第一項に指摘したように、写真コピーの正確性には、機械そのものの能力による限界があることは事実である。ここで、右(2)に指摘した正確性の要求される観点の認識が重要性を帯びて来る。たとえば、通貨偽造罪や有価証券偽造罪においては、写真コピー程度の再現力では、たかだか模造の問題を生じ得るに止まるであろうし、また、印影の真否を鑑定するような場合には、数次の再複写を経たような写真コピーは不適当である。しかし、ここでは、私文書偽造罪における文書性を論じているのであり、さきに指摘したとおり、そこで問題となるのは、作成名義人の表示する意思又は観念の伝達手段として、写作成者の認証行為をまつまでもなく、写それ自体として原本との同一性が保証されているとみられる程度の再現力を有するか否かということであり、色彩の再現力の有無や顕微鏡的誤差の存在は、これを捨象して妨げないものと言うべきである。むしろ、写それ自体が作成される経過が純粋に機械的であって人為的な誤写の可能性が排除されているという性質が認められる限り、筆跡、形状に至るまで原本と合同又は相似であるということまでは必ずしも必要ではないとすら言えるのである(原本が作成名義人自身の手書きによるものである場合には、その筆跡、形状が再現されていることは、そこに表示されている意思又は観念が紛れもなく原本作成名義人自身のものであることを推認し易いが、つねにそれが必要である訳ではない。)写真コピーの性質として、筆跡、形状に至るまで原本と全く同様に正確に再現されるということは、最小限の必要を充たしてなお余りある正確性が担保されていることを意味しているのである。」
過去問・解説
(R1 予備 第6問 ア)
公文書に限らず、私文書であっても、その写しは、文書偽造罪の客体となり得る。