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刑法 「職務を執行する」の意義 最一小判昭和53年6月29日 - 解答モード
概要
判例
判旨:「95条1項にいう『職務ヲ執行スルニ当リ』とは、具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲及びまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離しえない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為をいうものと解すべきである(最高裁昭和42年(あ)第2037号同45年12月22日第三小法廷判決・刑集24巻13号1812頁)が、同項にいう職務には、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるものである(大審院明治42年(れ)第1495号同年11月19日判決・刑録15輯26巻1641頁、同44年(れ)第527号同年4月17日判決・刑録17輯9巻601頁参照)から、職務の性質によっては、その内容、職務執行の過程を個別的に分断して部分的にそれぞれの開始、終了を論ずることが不自然かつ不可能であつて、ある程度継続した一連の職務として把握することが相当と考えられるものがあり、そのように解しても当該職務行為の具体性・個別性を失うものではないのである。」
過去問・解説
(H18 司法 第1問 ウ)
判例の立場に従って次の【事例】の甲の罪責について検討し、後記の【罪名】のうち、その罪名に係る犯罪が成立するか。
【事例】
執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、司法警察員Xから、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げられ、弁解の機会を与えられた。その際、甲は単純な事件なので起訴されることはないと思い、事実関係を争わなかった。そこで、Xは「傷害事件を起こしたことは間違いありません。弁解はありません。」などと供述録取書に録取して読み聞かせたところ、甲は間違いない旨を申し立てて署名・指印した。そのとき、Xは上司から呼出しを受けたため、供述録取書にXの署名・押印及び契印をしないまま、取調室前の廊下にいた同僚の司法警察員Yに甲の監視を依頼して、取調室から出て行った。
甲がYに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Yは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はYの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Yに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号し、前記の供述録取書を破り捨てた上、制止するために立ちふさがったYの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。その後、甲はK警察署から逃げ出し、隣町に住む友人乙の居宅に逃げ込んだ。
甲は乙に対し、Aが傷害を負ったことを隠し、単に暴行事件を起こして任意の取調べを受けている際に警察署から逃げ出してきたなどとうそを交えて話した上、かくまってくれるように頼んだところ、乙は甲の話を信じ、自宅の物置小屋に甲をかくまったが、その数時間後、警察官に発見された。
【罪名】
公務執行妨害(刑法第95条第1項)
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭53.6.29)は、「95条1項にいう『職務ヲ執行スルニ当リ』とは、具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲及びまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離しえない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為をいうものと解すべきである…が、同項にいう職務には、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるものである…。」としている。
Yの甲を監視する職務は、広く警察官という公務員が取り扱う職務であるから、「職務を執行する」に当たる。
したがって、Yの顔面をこぶしで殴打して転倒させた甲には、公務執行妨害罪が成立する。