①36条にいう「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。
②36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといって、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない。
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刑法 刑法36条にいう「急迫」の意義 最三小判昭和46年11月16日
概要
判例
事案:被害者と被告人が言い争いとなり被害者に手拳で殴打されたことから、自己の身体を防衛するためその必要な程度を超え、殴りかかってきた被害者の左胸部を突き刺し、死亡させた事案において、急迫性の意義と正当防衛における防衛の意思の必要性が問題となった。
判旨:①「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」
②「刑法36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといって、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない。…かねてから被告人がVに対し憎悪の念をもち攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為に出たなどの特別な事情が認められないかぎり、被告人の反撃行為は防衛の意思をもってなされたものと認めるのが相当である。」
判旨:①「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」
②「刑法36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといって、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない。…かねてから被告人がVに対し憎悪の念をもち攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為に出たなどの特別な事情が認められないかぎり、被告人の反撃行為は防衛の意思をもってなされたものと認めるのが相当である。」
過去問・解説
(H23 予備 第1問 1)
甲は、乙が甲所有の自動車を盗むのを目撃し、これを追跡したものの見失い、その翌日、窃取された場所から約2キロメートル離れた路上で、乙がその自動車から降りて立ち去ったのを認めた。甲は、乙がすぐに戻って来る様子であったので、直ちにその自動車を運転し、自宅に戻った。この場合、甲には正当防衛が成立する。
甲は、乙が甲所有の自動車を盗むのを目撃し、これを追跡したものの見失い、その翌日、窃取された場所から約2キロメートル離れた路上で、乙がその自動車から降りて立ち去ったのを認めた。甲は、乙がすぐに戻って来る様子であったので、直ちにその自動車を運転し、自宅に戻った。この場合、甲には正当防衛が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」としている。
窃盗は状態犯であり、盗んだ時点で犯罪が成立し、同時に終了するところ、甲は、翌日、窃取された場所から約2キロメートル離れた路上で発見したにすぎず、自転車を取り返した段階では既に窃取行為は終了しているから、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っているとはいえず、急迫性の要件を満たさない。
したがって、甲には正当防衛が成立しない。
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」としている。
窃盗は状態犯であり、盗んだ時点で犯罪が成立し、同時に終了するところ、甲は、翌日、窃取された場所から約2キロメートル離れた路上で発見したにすぎず、自転車を取り返した段階では既に窃取行為は終了しているから、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っているとはいえず、急迫性の要件を満たさない。
したがって、甲には正当防衛が成立しない。
(H23 予備 第1問 3)
甲は、乙ら数名の男によって監禁されたが、監禁されて2週間後、たまたま見張りが乙1人になったので、監禁場所から脱出するため、乙の顔面を1回殴打して乙がひるんだ隙にそこから逃げた。この場合、甲には正当防衛が成立する。
甲は、乙ら数名の男によって監禁されたが、監禁されて2週間後、たまたま見張りが乙1人になったので、監禁場所から脱出するため、乙の顔面を1回殴打して乙がひるんだ隙にそこから逃げた。この場合、甲には正当防衛が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」としている。
監禁罪は、継続犯であるから、監禁行為が継続している間は、急迫不正の侵害が継続しているといえるところ、たまたま見張りが乙1人になった時点においても、法益の侵害が現に存在しているといえる。
また、甲は乙の顔面を1回殴打したに過ぎないから防衛行為の相当性も認められ、「やむを得ずにした行為」に当たる。
したがって、甲には正当防衛が成立する。
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」としている。
監禁罪は、継続犯であるから、監禁行為が継続している間は、急迫不正の侵害が継続しているといえるところ、たまたま見張りが乙1人になった時点においても、法益の侵害が現に存在しているといえる。
また、甲は乙の顔面を1回殴打したに過ぎないから防衛行為の相当性も認められ、「やむを得ずにした行為」に当たる。
したがって、甲には正当防衛が成立する。
(H25 共通 第13問 2)
憎悪や怒りの念を抱いて侵害者に対する反撃行為に及んだ場合には、防衛の意思を欠く結果、防衛のための行為と認められることはない。
憎悪や怒りの念を抱いて侵害者に対する反撃行為に及んだ場合には、防衛の意思を欠く結果、防衛のための行為と認められることはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといって、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない。」としている。
したがって、憎悪や怒りの念を抱いて侵害者に対する反撃行為に及んだ場合でも、防衛の意思が認められることがある。
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといって、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない。」としている。
したがって、憎悪や怒りの念を抱いて侵害者に対する反撃行為に及んだ場合でも、防衛の意思が認められることがある。
(R3 司法 第17問 1)
刑法第36条第1項における「急迫」というには、法益の侵害が現に存在していることを要する。
刑法第36条第1項における「急迫」というには、法益の侵害が現に存在していることを要する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」としている。
したがって、刑法第36条第1項における「急迫」という要件は、現に存在しなくても、間近に迫っていても認められる。
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」としている。
したがって、刑法第36条第1項における「急迫」という要件は、現に存在しなくても、間近に迫っていても認められる。
(R5 司法 第18問 5)
急迫不正の侵害に対して憤激又は逆上して反撃を加えた場合でも、正当防衛は成立し得る。
急迫不正の侵害に対して憤激又は逆上して反撃を加えた場合でも、正当防衛は成立し得る。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといって、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない。」としている。
したがって、急迫不正の侵害に対して憤激又は逆上して反撃を加えた場合でも、正当防衛は成立し得る。
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといって、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない。」としている。
したがって、急迫不正の侵害に対して憤激又は逆上して反撃を加えた場合でも、正当防衛は成立し得る。