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刑法 現在の危難 東京高判平成24年12月1日

概要
覚せい剤密売人からけん銃を頭部に突き付けられて覚せい剤の使用を強要されたため、断れば殺されると思い、仕方なく覚せい剤を使用した被告人の覚せい剤使用行為は緊急避難に該当する。
判例
事案:覚せい剤の密売人から拳銃を突きつけながらやむを得ず覚せい剤を摂取という事案において、緊急避難の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、覚せい剤を使用してその影響下にある捜査対象者から、けん銃を右こめかみに突き付けられ、目の前にある覚せい剤を注射するよう迫られたというのである。本件けん銃が真正けん銃であったか否かや、実弾が装填されていたか否か等は不明であるが、逆に、本件けん銃が人を殺傷する機能を備えた状態にあったことを否定する事情もなく、被告人の供述する状況下では、被告人の生命及び身体に対する危険が切迫していたこと、すなわち、現在の危難が存在したことは明らかというべきである。
 次に、被告人が自己の身体に覚せい剤を注射した行為が、現在の危難を避けるためにやむを得ずにした行為といえるかについて検討すると、『やむを得ずにした行為』とは、危難を避けるためには当該避難行為をするよりほかに方法がなく、そのような行為に出たことが条理上肯定し得る場合をいうと解されるところ、本件においては、覚せい剤の影響下にあった捜査対象者が、けん銃を被告人の頭部に突き付けて、目の前で覚せい剤を使用することを要求したというのであるから、被告人の生命及び身体に対する危険の切迫度は大きく、深夜、相手の所属する暴力団事務所の室内に2人しかいないという状況にあったことも考慮すると、被告人が生命や身体に危害を加えられることなくその場を離れるためには、覚せい剤を使用する以外に他に取り得る現実的な方法はなかったと考えざるを得ない。また、本件において危難にさらされていた法益の重大性、危難の切迫度の大きさ、避難行為は覚せい剤を自己の身体に注射するというものであることのほか、本件において被告人が捜査対象者に接触した経緯、動機、捜査対象者による本件強要行為が被告人に予測可能であったとはいえないこと等に照らすと、本件において被告人が覚せい剤を使用した行為が、条理上肯定できないものとはいえない。
 そして、本件において、被告人の覚せい剤使用行為により生じた害が、避けようとした被告人の生命及び身体に対する害の程度を超えないことも明らかであるから、被告人の本件覚せい剤使用行為は、結局、刑法37条1項本文の緊急避難に該当し、罪とならない場合に当たる。」
過去問・解説
(R3 共通 第19問 ウ)
頭に拳銃を突き付けられて、覚醒剤の自己使用を強要され、これを拒むことができず、自己に覚醒剤を注射して使用した場合、犯罪行為の強要の手段は「現在の危難」に当たらないので、緊急避難は成立しない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判平24.12.18)は、本肢と同種の事案において、「けん銃を被告人の頭部に突き付けて、目の前で覚せい剤を使用することを要求したというのであるから、被告人の生命及び身体に対する危険の切迫度は大きく、深夜、相手の所属する暴力団事務所の室内に2人しかいないという状況にあったことも考慮すると、被告人が生命や身体に危害を加えられることなくその場を離れるためには、覚せい剤を使用する以外に他に取り得る現実的な方法はなかったと考えざるを得ない。」としている。
そうすると、頭に拳銃を突き付けるという犯罪行為も現在の危難に当たり、覚せい剤を使用する以外に他に取り得る現実的な方法はなかったといえ、補充性も認められる。
したがって、緊急避難が成立する。
総合メモ
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