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刑法 殺人罪の実行の着手時期 宇都宮地判昭和40年12月9日

概要
飲食物を路上に置き、人を毒殺した場合、飲食物を路上に置いた時点では殺人の実行の着手が認められず、被害者が当該飲食物を手に取った時点で実行の着手が認められる。農道に単に毒入りジュースが配置されたというだけでは殺人罪の実行の着手は認められない。
判例
事案:道端に毒入りの飲食物を置いた事案において、その時点で殺人の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「行為が結果発生のおそれある客観的状態に至った場合、換言すれば保護客体を直接危険ならしめるような法益侵害に対する現実的危険性を発生せしめた場合をもって実行の着手があったと解するもので、この考えは殺人罪における実行の着手に関する左記諸判例から必然的に帰納されたものである。…農道に単に食品が配置されたというだけではそれが直ちに他人の食用に供されたといえないことは明らかである。すなわち農村においては野ねずみ、害虫等の駆除のため毒物混入の食品を農道に配置することもあるであろうし、道に棄てた物を必ずしも人が食用に供するとは限らないからである。もっとも本件のようにビニール袋入りのジュースではこれを他人が発見した場合右のような目的に使用された毒物混入食品とは思わないであろうから比較的に拾得飲用される危険は、成人はともかく幼児などについては相当大きいといわなければならない。ただ左様な危険の存するからといってただちに本件被告人の行為をもって犯罪実行の着手と認めることができないのは前示のとおりであるばかりでなく前記引用の諸判例に示された法律上の見解からすればなおさら本件被告人の行為をもって他人の食用に供されたと見ることはできないからである。 
 以上の次第で本件においては毒入りジュースの配置をもって尊属殺および普通殺人の各予備行為と解し…ただ本件被害者らによって右ジュースが拾得飲用される直前に普通殺人について実行の着手があり…殺害によって普通殺人罪が既遂に達し…。」
過去問・解説
(H26 司法 第9問 5)
甲は、登校中の子供に毒入りジュースを飲ませてこれを殺害する目的で、前日の夜に、夜間は人通りのない通学路に致死量を超える毒を混入させたペットボトル入りのジュースを置いた。甲には殺人罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
裁判例(宇都宮地判昭40.12.9)は、本肢と同種の事案において、「行為が結果発生のおそれある客観的状態に至った場合、換言すれば保護客体を直接危険ならしめるような法益侵害に対する現実的危険性を発生せしめた場合をもって実行の着手があったと解する…。」とした上で、毒入りジュースを配置した時点では実行の着手が認められないと判断している。
したがって、甲に殺人罪の実行の着手は認められない。
総合メモ
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