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刑法 強制性交等罪の実行の着手 最三小判昭和45年7月28日
概要
被告人が、外1名と共謀のうえ、夜間1人で道路を通行中の婦女を強姦しようと企て、共犯者とともに、必死に抵抗する同女を被告人運転のダンプカーの運転席に引きずり込み、発進して同所から約5800メートル離れた場所に至り、運転席内でこもごも同女を強姦した事実関係のもとにおいては、被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした時点において旧強姦罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。
判例
事案:自動車により婦女を他所へ連行したうえ強姦した事案において、婦女を自動車内に引きずり込もうとした時点で旧強姦罪の実行の着手があるかが問題となった。
判旨:「被告人は、昭和43年1月26日午後7時30分頃、ダンプカーに友人のAを同乗させ、ともに女性を物色して情交を結ぼうとの意図のもとに防府市内を俳徊走行中、同市ab丁目付近にさしかかった際、1人で通行中のB(当時23歳)を認め、「車に乗せてやろう。」等と声をかけながら約100メートル尾行したものの、相手にされないことにいら立ったAが下車して、同女に近づいて行くのを認めると、付近の同市cb丁目赤間交差点西側の空地に車をとめて待ち受け、Aが同女を背後から抱きすくめてダンプカーの助手席前まで連行して来るや、Aが同女を強いて姦淫する意思を有することを察知し、ここにAと強姦の意思を相通じたうえ、必死に抵抗する同女をAとともに運転席に引きずり込み、発進して同所より約5000メートル西方にあるe大橋の北方約800メートルの護岸工事現場に至り、同所において、運転席内で同女の反抗を抑圧してA、被告人の順に姦淫したが、前記ダンプカ―運転席に同女を引きずり込む際の暴行により、同女に全治まで約10日間を要した左膝蓋部打撲症等の傷害を負わせたというのであって、かかる事実関係のもとにおいては、被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であり、また、Bに負わせた右打撲症等は、傷害に該当すること明らかであって(当裁判所昭和38年6月25日第三小法廷決定、裁判集刑事147号507頁参照)、以上と同趣旨の見解のもとに被告人の所為を強姦致傷罪にあたるとした原判断は、相当である。」
判旨:「被告人は、昭和43年1月26日午後7時30分頃、ダンプカーに友人のAを同乗させ、ともに女性を物色して情交を結ぼうとの意図のもとに防府市内を俳徊走行中、同市ab丁目付近にさしかかった際、1人で通行中のB(当時23歳)を認め、「車に乗せてやろう。」等と声をかけながら約100メートル尾行したものの、相手にされないことにいら立ったAが下車して、同女に近づいて行くのを認めると、付近の同市cb丁目赤間交差点西側の空地に車をとめて待ち受け、Aが同女を背後から抱きすくめてダンプカーの助手席前まで連行して来るや、Aが同女を強いて姦淫する意思を有することを察知し、ここにAと強姦の意思を相通じたうえ、必死に抵抗する同女をAとともに運転席に引きずり込み、発進して同所より約5000メートル西方にあるe大橋の北方約800メートルの護岸工事現場に至り、同所において、運転席内で同女の反抗を抑圧してA、被告人の順に姦淫したが、前記ダンプカ―運転席に同女を引きずり込む際の暴行により、同女に全治まで約10日間を要した左膝蓋部打撲症等の傷害を負わせたというのであって、かかる事実関係のもとにおいては、被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であり、また、Bに負わせた右打撲症等は、傷害に該当すること明らかであって(当裁判所昭和38年6月25日第三小法廷決定、裁判集刑事147号507頁参照)、以上と同趣旨の見解のもとに被告人の所為を強姦致傷罪にあたるとした原判断は、相当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第8問 ウ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、不同意性交罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、通行中の女性乙に自動車内で暴行を加えて姦淫する目的で、激しく抵抗する乙を自動車内に引きずり込み、数キロメートル離れた河原まで自動車を走行させたが、乙がすきを見て逃走したため、姦淫できなかった。
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、不同意性交罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、通行中の女性乙に自動車内で暴行を加えて姦淫する目的で、激しく抵抗する乙を自動車内に引きずり込み、数キロメートル離れた河原まで自動車を走行させたが、乙がすきを見て逃走したため、姦淫できなかった。
(正答)2
(解説)
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
したがって、甲が姦淫する目的で無理やり自動車内に引きずり込もうとした時点で不同意性交の実行の着手が認められ、性交に至っていない以上未遂にとどまる。
よって、甲には、不同意性交未遂罪が成立する。
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
したがって、甲が姦淫する目的で無理やり自動車内に引きずり込もうとした時点で不同意性交の実行の着手が認められ、性交に至っていない以上未遂にとどまる。
よって、甲には、不同意性交未遂罪が成立する。
(H24 司法 第3問 1)
【事例】
甲は、自動車内でVにクロロホルムを吸引させて失神させた上、約2キロメートル離れた港までVを運び、自動車ごと海中に転落させて溺死させようという計画の下、Vにクロロホルムを吸引させた。甲は、Vが動かなくなったので、計画どおりVが失神したものと考え、港に運んで自動車ごと海中に転落させた。Vの遺体の司法解剖の結果、甲の計画とは異なり、Vは溺死ではなく、海中への転落前にクロロホルムの吸引により死亡していたことが判明した。
【判旨】
甲の殺害計画は、クロロホルムを吸引させてVを失神させた上(以下「第1行為」という。)、その失神状態を利用してVを港まで運び、自動車ごと海中に転落させ(以下「第2行為」という。)、溺死させるというものであって、第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。
【記述】
1.ダンプカーに女性を引きずり込んで数キロメートル離れた人気のない場所まで連れて行き姦淫しようという計画の下、抵抗する女性をダンプカーに引きずり込んだ上、計画どおり姦淫したが、引きずり込もうとした段階で加えた暴行により同女が負傷したという事例において不同意性交等致傷罪の成立を認める見解は、実行の着手時期に関してこの判旨の考え方と矛盾する。
【事例】
甲は、自動車内でVにクロロホルムを吸引させて失神させた上、約2キロメートル離れた港までVを運び、自動車ごと海中に転落させて溺死させようという計画の下、Vにクロロホルムを吸引させた。甲は、Vが動かなくなったので、計画どおりVが失神したものと考え、港に運んで自動車ごと海中に転落させた。Vの遺体の司法解剖の結果、甲の計画とは異なり、Vは溺死ではなく、海中への転落前にクロロホルムの吸引により死亡していたことが判明した。
【判旨】
甲の殺害計画は、クロロホルムを吸引させてVを失神させた上(以下「第1行為」という。)、その失神状態を利用してVを港まで運び、自動車ごと海中に転落させ(以下「第2行為」という。)、溺死させるというものであって、第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。
【記述】
1.ダンプカーに女性を引きずり込んで数キロメートル離れた人気のない場所まで連れて行き姦淫しようという計画の下、抵抗する女性をダンプカーに引きずり込んだ上、計画どおり姦淫したが、引きずり込もうとした段階で加えた暴行により同女が負傷したという事例において不同意性交等致傷罪の成立を認める見解は、実行の着手時期に関してこの判旨の考え方と矛盾する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
【判旨】は「既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解する…。」とあるように、結果発生に至る客観的な危険性が認められる時点で実行の着手を認めている。
甲がダンプカーに引きずり込んだ時点でダンプカー内に監禁可能となり数キロメートル離れた人気のない場所まで連れて行く計画に障害となるような特段の事情が存しないから、この時点で不同意性交等罪の実行の着手が認められ、その際に被害者が負傷すれば不同意性交等致傷罪が成立することになる。
したがって、実行の着手時期に関して、上記判例の考え方は、この判旨の考え方と矛盾しない。
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
【判旨】は「既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解する…。」とあるように、結果発生に至る客観的な危険性が認められる時点で実行の着手を認めている。
甲がダンプカーに引きずり込んだ時点でダンプカー内に監禁可能となり数キロメートル離れた人気のない場所まで連れて行く計画に障害となるような特段の事情が存しないから、この時点で不同意性交等罪の実行の着手が認められ、その際に被害者が負傷すれば不同意性交等致傷罪が成立することになる。
したがって、実行の着手時期に関して、上記判例の考え方は、この判旨の考え方と矛盾しない。
(H26 司法 第9問 3)
甲は、夜間、1人で歩いていたV女を見付け、約5キロメートル先のひとけのない工事現場にV女を連れ込んで強姦することを決意し、V女を殴って失神させた上、近くに停めていたダンプカーの助手席にV女を乗せて発進させた。甲には不同意性交等罪の実行の着手が認められる。
甲は、夜間、1人で歩いていたV女を見付け、約5キロメートル先のひとけのない工事現場にV女を連れ込んで強姦することを決意し、V女を殴って失神させた上、近くに停めていたダンプカーの助手席にV女を乗せて発進させた。甲には不同意性交等罪の実行の着手が認められる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
したがって、甲が姦淫する目的で無理やりダンプカー内に引きずり込んだ時点で、不同意性交等罪の実行の着手が認められる。
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
したがって、甲が姦淫する目的で無理やりダンプカー内に引きずり込んだ時点で、不同意性交等罪の実行の着手が認められる。
(H29 共通 第17問 エ)
甲は、知り合いの女性乙を自己が運転する自動車に乗せて同車内において強いて姦淫しようと考え、乙に対し、「自宅まで送ってあげる。」とうそを言ったところ、乙は、これを信じて同車に乗り込んだが、甲の態度を不審に思い即座に同車から降りた。不同意性交等罪の既遂罪が成立する。
甲は、知り合いの女性乙を自己が運転する自動車に乗せて同車内において強いて姦淫しようと考え、乙に対し、「自宅まで送ってあげる。」とうそを言ったところ、乙は、これを信じて同車に乗り込んだが、甲の態度を不審に思い即座に同車から降りた。不同意性交等罪の既遂罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
乙は、甲にうそを信じて同車に乗り込んだが、甲の態度を不審に思い即座に同車から降りているから、不同意性交等に至る客観的な危険性は認められない。
したがって、不同意性交等罪の既遂罪は成立しない。
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
乙は、甲にうそを信じて同車に乗り込んだが、甲の態度を不審に思い即座に同車から降りているから、不同意性交等に至る客観的な危険性は認められない。
したがって、不同意性交等罪の既遂罪は成立しない。
(R2 司法 第11問 ア)
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。
甲及び乙は、深夜、路上を1人で歩いていたV女を見付け、約6キロメートル先のひとけのない工事現場にV女を連れ込んで強制的にV女と性交しようと決意し、2人でV女の背後からその身体を抱きかかえながら、付近に停めていた自動車にV女を押し込んで乗せ、同車を発進させたが、性交には至らなかった。甲及び乙には、不同意性交等未遂罪の共同正犯が成立する。
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。
甲及び乙は、深夜、路上を1人で歩いていたV女を見付け、約6キロメートル先のひとけのない工事現場にV女を連れ込んで強制的にV女と性交しようと決意し、2人でV女の背後からその身体を抱きかかえながら、付近に停めていた自動車にV女を押し込んで乗せ、同車を発進させたが、性交には至らなかった。甲及び乙には、不同意性交等未遂罪の共同正犯が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
したがって、甲が付近に停めていた自動車にV女を押し込んで乗せた時点で、約6キロメートル先のひとけのない工事現場に連れ込むにあたって障害となる事情はなく、結果発生に至る客観的な危険性が明らかに認められるといえるから、姦淫する目的で無理やり自動車内に引きずり込んだ時点で、不同意性交等罪の実行の着手が認められる。
したがって、甲及び乙には、不同意性交等未遂罪の共同正犯が成立する。
判例(最判昭45.7.28)は、「被告人が同女をダンプカーの運転席に引きずり込もうとした段階においてすでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において強姦行為の着手があったと解するのが相当であ…る。」としている。
したがって、甲が付近に停めていた自動車にV女を押し込んで乗せた時点で、約6キロメートル先のひとけのない工事現場に連れ込むにあたって障害となる事情はなく、結果発生に至る客観的な危険性が明らかに認められるといえるから、姦淫する目的で無理やり自動車内に引きずり込んだ時点で、不同意性交等罪の実行の着手が認められる。
したがって、甲及び乙には、不同意性交等未遂罪の共同正犯が成立する。