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刑法 恐喝罪と傷害罪 最二小判昭和23年7月29日
概要
恐喝の手段として用いられた暴行により、被害者が負傷した場合、恐喝罪と傷害罪の観念的競合になる。
判例
事案:恐喝により財物の交付を受けるとともに、手段たる暴行により障害の結果が生じた事案において、恐喝罪と傷害罪の罪数関係が問題となった。
判旨:「本件公訴事実中の第2は被告人が第1事実において示すようにVを短刀を以て畏怖させた上同人から金員を交付させた際、右短刀で同人の左側鼠蹊部を突刺して全治3週間を要する切刺傷を加えたと云うのである。そこで、右第1と第2との各事実が凡て証明されるならば、被告人は恐喝罪と傷害罪とにつき刑法第54条第1項前段の規定を適用して処断されなければならない。けだし、傷害行為は恐喝行為とは別個に、これの事前若しくは事後においてなされたのではなく、傷害行為がただちに恐喝行為の手段としてなされたと言うからである。しかるに、原判決は、被告人の恐喝行為は脅迫を手段としたのであって暴行を手段としたのではないと認定すると共に、被告人に暴行又は傷害の故意を認むべき証拠なしとして傷害事実の成立を否定し、この点について無罪の言渡をした。しかし、この措置は明かに誤っていると言わなくてはならない。暴行又は傷害の故意のないと言うことから、ただちに傷害事実を全面的に否定することはできない。」
判旨:「本件公訴事実中の第2は被告人が第1事実において示すようにVを短刀を以て畏怖させた上同人から金員を交付させた際、右短刀で同人の左側鼠蹊部を突刺して全治3週間を要する切刺傷を加えたと云うのである。そこで、右第1と第2との各事実が凡て証明されるならば、被告人は恐喝罪と傷害罪とにつき刑法第54条第1項前段の規定を適用して処断されなければならない。けだし、傷害行為は恐喝行為とは別個に、これの事前若しくは事後においてなされたのではなく、傷害行為がただちに恐喝行為の手段としてなされたと言うからである。しかるに、原判決は、被告人の恐喝行為は脅迫を手段としたのであって暴行を手段としたのではないと認定すると共に、被告人に暴行又は傷害の故意を認むべき証拠なしとして傷害事実の成立を否定し、この点について無罪の言渡をした。しかし、この措置は明かに誤っていると言わなくてはならない。暴行又は傷害の故意のないと言うことから、ただちに傷害事実を全面的に否定することはできない。」
過去問・解説
(H21 司法 第20問 イ)
Ⅱ.甲は、乙から金品を喝取しようと企て、乙に対し、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行を加えて加療約2週間を要する傷害を負わせ、畏怖した同人から現金1万円を喝取した。
【事例】Ⅱでは、甲を懲役20年に処することができる。
Ⅱ.甲は、乙から金品を喝取しようと企て、乙に対し、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行を加えて加療約2週間を要する傷害を負わせ、畏怖した同人から現金1万円を喝取した。
【事例】Ⅱでは、甲を懲役20年に処することができる。
(正答)✕
(解説)
54条1項は、「1個の行為が2個以上の罪名に触れ…るときは、その最も重い刑により処断する。」と規定し、204条は、「人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50円以下の罰金に処する。」と規定し、249条1項は、「人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。」と規定している。
これについて、判例(最判昭23.7.29)は、「傷害行為は恐喝行為とは別個に、これの事前若しくは事後においてなされたのではなく、傷害行為がただちに恐喝行為の手段としてなされたと言うからである。」として、恐喝の手段としての暴行により傷害を負わせた場合、観念的競合になるとしている。
甲は、乙に対し、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行を加えて加療約2週間を要する傷害を負わせ、畏怖した同人から現金1万円を喝取した各行為にそれぞれ恐喝罪と傷害罪が成立し、観念的競合となり、最も重い罪である傷害罪で処断することになる。
したがって、刑の長期の上限は、15年であるから、甲を懲役20年に処することはできない。
54条1項は、「1個の行為が2個以上の罪名に触れ…るときは、その最も重い刑により処断する。」と規定し、204条は、「人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50円以下の罰金に処する。」と規定し、249条1項は、「人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。」と規定している。
これについて、判例(最判昭23.7.29)は、「傷害行為は恐喝行為とは別個に、これの事前若しくは事後においてなされたのではなく、傷害行為がただちに恐喝行為の手段としてなされたと言うからである。」として、恐喝の手段としての暴行により傷害を負わせた場合、観念的競合になるとしている。
甲は、乙に対し、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行を加えて加療約2週間を要する傷害を負わせ、畏怖した同人から現金1万円を喝取した各行為にそれぞれ恐喝罪と傷害罪が成立し、観念的競合となり、最も重い罪である傷害罪で処断することになる。
したがって、刑の長期の上限は、15年であるから、甲を懲役20年に処することはできない。
(R1 司法 第7問 3)
甲は、乙を恐喝して乙から財物の交付を受け、その恐喝の手段として用いられた暴行により乙に傷害を負わせた。甲には、恐喝罪と傷害罪が成立し、これらは併合罪となる。
甲は、乙を恐喝して乙から財物の交付を受け、その恐喝の手段として用いられた暴行により乙に傷害を負わせた。甲には、恐喝罪と傷害罪が成立し、これらは併合罪となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭23.7.29)は、「傷害行為は恐喝行為とは別個に、これの事前若しくは事後においてなされたのではなく、傷害行為がただちに恐喝行為の手段としてなされたと言うからである。」として、恐喝の手段としての暴行により傷害を負わせた場合、観念的競合になるとしている。
甲は、乙を恐喝して乙から財物の交付を受け、その恐喝の手段として用いられた暴行により、乙に傷害を負わせている。
したがって、甲には恐喝罪と傷害罪が成立し、これらは観念的競合となる。
判例(最判昭23.7.29)は、「傷害行為は恐喝行為とは別個に、これの事前若しくは事後においてなされたのではなく、傷害行為がただちに恐喝行為の手段としてなされたと言うからである。」として、恐喝の手段としての暴行により傷害を負わせた場合、観念的競合になるとしている。
甲は、乙を恐喝して乙から財物の交付を受け、その恐喝の手段として用いられた暴行により、乙に傷害を負わせている。
したがって、甲には恐喝罪と傷害罪が成立し、これらは観念的競合となる。