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刑法 傷害致死の因果関係 最一小判昭和46年6月17日
概要
致死の原因たる暴行は、必ずしもそれが死亡の唯一の原因又は直接の原因であることを要するものではなく、たまたま被害者の身体に高度の病変があったため、これと相まって死亡の結果を生じた場合であっても、右暴行による致死の罪の成立を妨げない。
判例
事案:被告人が被害者の顔面を夏布団でおおい、鼻口部を圧迫するなどして被害者の反抗を抑圧した上、現金等を強取し、その暴行により被害者を死亡させたという事案において、暴行と致死の結果との間の因果関係が問題になった。
判旨:「原判決の認定した事実によれば、被害者Aの死因は、被告人の同判決判示の暴行によって誘発された急性心臓死であるというのであり、…致死の原因たる暴行は、必らずしもそれが死亡の唯一の原因または直接の原因であることを要するものではなく、たまたま被害者の身体に高度の病変があったため、これとあいまって死亡の結果を生じた場合であっても、右暴行による致死の罪の成立を妨げないと解すべきことは所論引用の当裁判所判例(昭和22年(れ)第22号同年11月14日第三小法廷判決、刑集1巻6頁。昭和24年(れ)第2831号同25年3月31日第二小法廷判決、刑集4巻3号469頁。昭和31年(あ)第2778号同32年3月14日第一小法廷決定、刑集11巻3号1075頁。昭和35年(あ)第2042号同36年11月21日第三小法廷決定、刑集15巻10号1731頁。)の示すところであるから、たとい、原判示のように、被告人の本件暴行が、被害者の重篤な心臓疾患という特殊の事情さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められ、しかも、被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らず、また、致死の結果を予見することもできなかったものとしても、その暴行がその特殊事情とあいまって致死の結果を生ぜしめたものと認められる以上、その暴行と致死の結果との間に因果関係を認める余地があるといわなければならない。」
判旨:「原判決の認定した事実によれば、被害者Aの死因は、被告人の同判決判示の暴行によって誘発された急性心臓死であるというのであり、…致死の原因たる暴行は、必らずしもそれが死亡の唯一の原因または直接の原因であることを要するものではなく、たまたま被害者の身体に高度の病変があったため、これとあいまって死亡の結果を生じた場合であっても、右暴行による致死の罪の成立を妨げないと解すべきことは所論引用の当裁判所判例(昭和22年(れ)第22号同年11月14日第三小法廷判決、刑集1巻6頁。昭和24年(れ)第2831号同25年3月31日第二小法廷判決、刑集4巻3号469頁。昭和31年(あ)第2778号同32年3月14日第一小法廷決定、刑集11巻3号1075頁。昭和35年(あ)第2042号同36年11月21日第三小法廷決定、刑集15巻10号1731頁。)の示すところであるから、たとい、原判示のように、被告人の本件暴行が、被害者の重篤な心臓疾患という特殊の事情さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められ、しかも、被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らず、また、致死の結果を予見することもできなかったものとしても、その暴行がその特殊事情とあいまって致死の結果を生ぜしめたものと認められる以上、その暴行と致死の結果との間に因果関係を認める余地があるといわなければならない。」
過去問・解説
(H19 司法 第12問 2)
甲がVを殴打したところ、Vには重篤な心臓疾患があったため、その疾患と相まってVが死亡した場合、V自身が同疾患の存在を認識していない限り、甲の殴打とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。
甲がVを殴打したところ、Vには重篤な心臓疾患があったため、その疾患と相まってVが死亡した場合、V自身が同疾患の存在を認識していない限り、甲の殴打とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭25.3.31)は、「被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができるのである。」として、被害者自身が特殊事情について認識しているか否かに関係なく因果関係を肯定している。
したがって、Vは重篤な心臓疾患を患っていたことを認識はしていないが、甲の殴打行為とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することができる。
判例(最判昭25.3.31)は、「被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができるのである。」として、被害者自身が特殊事情について認識しているか否かに関係なく因果関係を肯定している。
したがって、Vは重篤な心臓疾患を患っていたことを認識はしていないが、甲の殴打行為とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することができる。
(H28 共通 第5問 2)
甲が、心臓発作を起こしやすい持病を持ったVを突き飛ばして尻餅をつくように路上に転倒させたところ、Vはその転倒のショックで心臓発作を起こして死亡した。Vにその持病があることを甲が知り得なかった場合でも、甲がVを突き飛ばして路上に転倒させた行為とVの死亡との間には、因果関係がある。
甲が、心臓発作を起こしやすい持病を持ったVを突き飛ばして尻餅をつくように路上に転倒させたところ、Vはその転倒のショックで心臓発作を起こして死亡した。Vにその持病があることを甲が知り得なかった場合でも、甲がVを突き飛ばして路上に転倒させた行為とVの死亡との間には、因果関係がある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭25.3.31)は、「被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったらば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができる…。」として、行為者の認識や予見可能性を問題としていない。
したがって、Vにその持病があることを甲が知り得ず、Vは心臓発作を起こしやすい持病があるという特殊事情があったとしても、甲の突き飛ばした行為と相まって死亡結果をもたらしたといえ、甲の突き飛ばした行為とVの死亡との間には因果関係が認められる。
判例(最判昭25.3.31)は、「被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったらば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができる…。」として、行為者の認識や予見可能性を問題としていない。
したがって、Vにその持病があることを甲が知り得ず、Vは心臓発作を起こしやすい持病があるという特殊事情があったとしても、甲の突き飛ばした行為と相まって死亡結果をもたらしたといえ、甲の突き飛ばした行為とVの死亡との間には因果関係が認められる。