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刑法 傷害致死の因果関係 最二小判平成15年7月16日

概要
公園内及びマンション居室内で暴行を受けた被害者が、すきをみて逃走し、被告人らによる追跡を逃れるためにマンション付近の高速道路に進入し、疾走してきた自動車に追突され、後続の自動車に礫過されて死亡した事案において、被害者が逃走しようとして高速道路に進入したことは、それ自体極めて危険な行為であるが、その行為が、被告人らの暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえず、被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価でき、被告人らの暴行と被害者の死亡の間の因果関係が認められる。
判例
事案:被害者が被告人からの暴行から逃れるために高速道路に出て、車にはねられ死亡したという事案において、被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係が問題となった。

判旨:「被告人4名は、害者に対し、公園において、深夜約2時間10分にわたり、間断なく極めて激しい暴行を繰り返し、引き続き、マンション居室において、約45分間、断続的に同様の暴行を加えた。
 被害者は、すきをみて、上記マンション居室から靴下履きのまま逃走したが、被告人らに対し極度の恐怖感を抱き、逃走を開始してから約10分後、被告人らによる追跡から逃れるため、上記マンションから約763mないし約810m離れた高速道路に進入し、疾走してきた自動車に衝突され、後続の自動車に轢かれて、死亡した。
 …被害者が逃走しようとして高速道路に進入したことは、それ自体極めて危険な行為であるというほかないが、被害者は、被告人らから長時間激しくかつ執ような暴行を受け、被告人らに対し極度の恐怖感を抱き、必死に逃走を図る過程で、とっさにそのような行動を選択したものと認められ、その行動が、被告人らの暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえない。そうすると、被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」
過去問・解説
(H19 司法 第12問 4)
甲及び乙が木刀と野球のバットでVを執拗に殴打し、辛うじて逃走したVを更に殴打すべく追跡したところ、Vは、追跡を逃れようとビルの屋上に逃げ、更に約1メートル離れた隣のビルの屋上に飛び移ろうとして地上に落下して死亡した場合には、Vは自ら危険な行動を行っている以上、甲及び乙による殴打、追跡とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、本肢と同種の事案において、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
Vは、追跡を逃れようとビルの屋上に逃げ、更に約1メートル離れた隣のビルの屋上に飛び移ろうとして地上に落下して死亡している。
したがって、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。

(H23 司法 第2問 ウ)
甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、高速道路のパーキングエリアに駐車中の自動車内で、V女と口論になり、感情が高ぶってV女の顔面を平成手で1回殴打した。V女は、腹を立てて1人で帰宅しようと考え、車外に出て、高速道路の本線を横断し、反対車線側に設置された高速バスの停留所に行こうとしたところ、本線上を走行してきた乙運転の自動車にはねられ、全身打撲により死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
V女は、腹を立てて1人で帰宅しようと考え、車外に出て、高速道路の本線を横断している。
高速道路の本線を横断し、反対車線側に設置された高速バスの停留所に行こうとしたことは、著しく不自然、不相当であったといえ、暴行に起因するものと評価できないから、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認めらない。

(H27 司法 第3問 ア)
甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、自宅に遊びに来た友人Vの態度に腹を立て、その頭部を平成手で1回殴打したところ、Vが家から出て行ったので、謝りながらVを追い掛けた。Vは、甲が謝りながら追い掛けてきたことに気付いたが、甲と話をしたくなかったので、甲に追い付かれないように、あえて遮断機が下りていた踏切に入ったところ、列車にひかれ、内臓破裂により死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
Vは、甲が謝りながら追い掛けてきたことに気付いたが、甲と話をしたくなかったので、甲に追い付かれないように、あえて遮断機が下りていた踏切に入っている。
あえて遮断機が下りていた踏切に入ったことは、著しく不自然、不相当であったといえ、暴行に起因するものと評価できないから、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認めらない。

(H27 司法 第3問 イ)
甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、マンション4階の甲方居間で、Vの頭部や腹部を木刀で多数回殴打した。Vは、このままでは殺されると思い、甲の隙を見て逃走することを決意し、窓からすぐ隣のマンションのベランダに飛び移ろうとしたが、これに失敗して転落し、脳挫滅により死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
Vが飛び移ろうとしたことは、甲の暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえず、暴行に起因するものと評価することができるから、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。

(R3 予備 第11問 ア)
甲は、他の共犯者5名と共に、約3時間にわたり、マンションの一室において、Vの頭部、腹部等を木刀で多数回殴打していたところ、これにより極度の恐怖感を抱いたVが、同室から逃走し、甲らによる追跡から逃れるために、同マンション付近にある高速道路に進入し、疾走してきた自動車に衝突され、死亡した。この場合、甲らの上記殴打行為とVの死亡との間に、因果関係はない。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.7.16)は、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。」としている。
付近にある高速道路に進入したことは、暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえず、暴行に起因するものと評価することができるから、甲らの殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。
総合メモ
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