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刑法 脅迫罪の保護法益 大阪高判昭和61年12月16日
概要
222条1項の脅迫罪は、自然人に対しその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることを告知する場合に限って、その成立が認められ、法人に対しその法益に危害を加えることを告知しても、それによって法人に対するものとしての同罪が成立するものではなく、ただ、それら法人の法益に対する加害の告知が、ひいてその代表者、代理人等として現にその告知を受けた自然人自身の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する加害の告知に当たると評価され得る場合にのみ、その自然人に対する同罪の成立が肯定される。
判例
事案:残土処理の下請工事を予定していた会社から別の会社に変えさせようとして、下請けを予定していた会社の担当員を脅迫したという事案において、その脅迫内容には会社の営業等に対する加害も含まれていたことから、法人を客体とする脅迫罪の成否が問題となった。
判旨:「刑法222条の脅迫罪は、刑法体系上、生命、身体に対する殺人の罪、傷害の罪に引き続き、人身の自由に対する罪として、逮捕・監禁の罪及び略取・誘拐の罪と並んでそれら両者の間に置かれ、人の意思活動の平成穏ないし意思決定の自由をその保護法益とするものであることにかんがみ、さらに同条各項の文言自体をも参照すると、同条1項の脅迫罪は、自然人に対しその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることを告知する場合に限って、その成立が認められ、法人に対しその法益に危害を加えることを告知しても、それによって法人に対するものとしての同罪が成立するものではなく、ただ、それら法人の法益に対する加害の告知が、ひいてその代表者、代理人等として現にその告知を受けた自然人自身の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する加害の告知に当たると評価され得る場合にのみ、その自然人に対する同罪の成立が肯定されるものと解される。」
判旨:「刑法222条の脅迫罪は、刑法体系上、生命、身体に対する殺人の罪、傷害の罪に引き続き、人身の自由に対する罪として、逮捕・監禁の罪及び略取・誘拐の罪と並んでそれら両者の間に置かれ、人の意思活動の平成穏ないし意思決定の自由をその保護法益とするものであることにかんがみ、さらに同条各項の文言自体をも参照すると、同条1項の脅迫罪は、自然人に対しその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることを告知する場合に限って、その成立が認められ、法人に対しその法益に危害を加えることを告知しても、それによって法人に対するものとしての同罪が成立するものではなく、ただ、それら法人の法益に対する加害の告知が、ひいてその代表者、代理人等として現にその告知を受けた自然人自身の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する加害の告知に当たると評価され得る場合にのみ、その自然人に対する同罪の成立が肯定されるものと解される。」
過去問・解説
(H24 共通 第4問 イ)
甲は、乙株式会社総務課長丙に対して、乙社の商品不買運動を行って乙社の営業活動を妨害する旨告知し、丙は、乙社の営業活動が妨害されるかもしれない旨畏怖した。甲に、乙社に対する脅迫罪が成立する。
甲は、乙株式会社総務課長丙に対して、乙社の商品不買運動を行って乙社の営業活動を妨害する旨告知し、丙は、乙社の営業活動が妨害されるかもしれない旨畏怖した。甲に、乙社に対する脅迫罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
裁判例(大阪高判昭61.12.16)は、「222条…1項の脅迫罪は、自然人に対しその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることを告知する場合に限って、その成立が認められ、法人に対しその法益に危害を加えることを告知しても、それによって法人に対するものとしての同罪が成立するものではなく、ただ、それら法人の法益に対する加害の告知が、ひいてその代表者、代理人等として現にその告知を受けた自然人自身の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する加害の告知に当たると評価され得る場合にのみ、その自然人に対する同罪の成立が肯定される…。」として、法人が脅迫罪の客体とならないことを示している。
甲が丙に対してした告知は、法人たる乙社の営業活動を妨害することを内容とするものであるから、乙社を客体とするものである。
したがって、甲に、乙社に対する脅迫罪は成立しない。
裁判例(大阪高判昭61.12.16)は、「222条…1項の脅迫罪は、自然人に対しその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることを告知する場合に限って、その成立が認められ、法人に対しその法益に危害を加えることを告知しても、それによって法人に対するものとしての同罪が成立するものではなく、ただ、それら法人の法益に対する加害の告知が、ひいてその代表者、代理人等として現にその告知を受けた自然人自身の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する加害の告知に当たると評価され得る場合にのみ、その自然人に対する同罪の成立が肯定される…。」として、法人が脅迫罪の客体とならないことを示している。
甲が丙に対してした告知は、法人たる乙社の営業活動を妨害することを内容とするものであるから、乙社を客体とするものである。
したがって、甲に、乙社に対する脅迫罪は成立しない。