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刑法 窃盗罪の成否(自動支払機) 東京高判昭和55年3月3日

概要
他人のキャッシュカードを窃取することと、窃取したキャッシュカードを用いて銀行の現金自動預払機から預金を引き出す行為は別個の法益を侵害しそれぞれの行為に窃盗罪が成立し、両者は併合罪の関係になる。
判例
事案:他人のキャッシュカードを窃取した後、窃取したキャッシュカードを用いて銀行の現金自動預払機から預金を引き出した事案において、預金引き出し行為に新たに窃盗罪が成立するかが問題となった。

判旨:「被告人は、…各預金払戻用キャッシュカード(以下、『カード』という)を窃取した後、その被害者らが友人でカードの暗証番号を知っていたことから、ひそかに、…管理者の意に反して、原判示のとおりB銀行α支店設置の自動支払機カード入口に右窃取したカードをそれぞれ差し込み、同支払機の各暗証番号を押して現金を出させ、これを自己の支配下においたものであることが認められるから、被告人の欺罔により被害者の誤信による現金の交付があったものではなく、被告人が、カードを利用して、同支払機の管理者の意思に反し、同人不知の間に、その支配を排除して、同支払機の現金を自己の支配下に移したものであって、このように窃盗犯人が賍物たるカードを用いて第三者たる右管理者の管理する現金を窃取した場合には、賍物についての事実上の処分行為をしたにとどまる場合と異なり、…管理者に対する関係において、新たな法益侵害を伴うものであるから、カードの窃盗罪のほかに、カード利用による現金の窃盗罪が別個に成立するものというべきであり、右管理者の所属する銀行がカードの預金者に対し所論の免責を受けることがあるにしても、右認定を妨げるものではない。」
過去問・解説
(H27 共通 第20問 ウ)
借金の返済に苦しんでいた甲とその内縁の妻乙は、A市が発行した乙を被保険者とする国民健康保険被保険者証の氏名を乙から実在しない丙に改変し、丙になりすまして消費者金融会社から借入れをして現金を手に入れることを相談した。甲と相談したとおり、乙は、上記国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄に乙とあるのを丙と書き換えた。そして、乙は、消費者金融会社の無人借入手続コーナーにおいて、借入申込書に丙の氏名を記載し、丙と刻した印鑑を押捺するなどして丙名義の借入申込書1通を完成させた上、同申込書及び氏名を丙に改変した上記国民健康保険被保険者証の内容を、同コーナーに設置された機械を使用し、同機械に接続されている同社本店の端末機に送信し、同社の貸付手続担当者に対し、丙であるかのように装って100万円の借入れを申し込んだ。同担当者は、当該申込みをした者が真実丙であり、かつ、貸付金は約定のとおりに返済されるものと誤信し、同社の貸付システムに従って丙名義の借入カードを上記コーナーに設置された機械から発券した。乙は、その場で同カードを入手し、同カードを現金自動入出機に挿入して同機から現金100万円を引き出した。甲と乙には現金100万円について詐欺罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭55.3.3)は、窃盗犯人が賍物たるカードを用いて第三者たる右管理者の管理する現金を窃取した事案において、「賍物についての事実上の処分行為をしたにとどまる場合と異なり、第三者たる右管理者に対する関係において、新たな法益侵害を伴うものであるから、カードの窃盗罪のほかに、カード利用による現金の窃盗罪が別個に成立する…。」として、現金自動入出機のような機械を相手にする場合は欺罔行為といえず詐欺罪は成立しないことを示している。
したがって、乙が入手した丙名義のカードを用いて現金自動入出機から現金100万円を引き出している行為に、窃盗罪が成立する。
総合メモ
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