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刑法 不法原因給付と2項強盗 最三小判昭和35年8月30日

概要
相手方の反抗を抑圧すべき暴行、脅迫の手段を用いて財産上不法利得するをもって足り、必ずしも相手方の意思による処分行為を強制することを要するものではない。不法原因に基づく給付であるため被害者に返還請求権がないとしても、事実上その返還請求を受けることのない結果を生じさせ返還を免れた以上は、236条2項、240条後段の罪が成立する。
判例
事案:麻薬購入資金を預かり保管中に当該金員を不法に領得する目的をもって、寄託者を殺害し同人から事実上右金員の返還請求を受けることのない結果を生じさせ返還を免れたという事案において、不法原因給付であっても2項強盗殺人罪が成立するかが問題となった。

判旨:「刑法236条2項の罪は同条1項の罪と同じく処罰すべきものと規定され,1項の罪とは不法利得と財物強取とを異にする外、その構成要素に何らの差異がなく、1項の罪におけると同じく相手方の反抗を抑圧すべき暴行、脅迫の手段を用いて財産上不法利得するをもって足り、必ずしも相手方の意思による処分行為を強制することを要するものではない。従って、犯人が債務の支払を免れる目的をもって債権者に対しその反抗を抑圧すべき暴行、脅迫を加え、債権者をして支払の請求をしない旨を表示せしめて支払を免れた場合であると、右の手段により債権者をして事実上支払の請求をすることができない状態に陥らしめて支払を免れた場合であるとを問わず、ひとしく右236条2項の不法利得罪を構成するものと解すべきであるとされるに至ったのであり、原審の確定した事実関係によれば被告人山田は判示第一の犯行の2日位前に被害者藤槻学、藤村章の両名から現金約30万円の保管を託されてこれを受取り、以来その管理一切の責任を負い、その後各地において諸経費を同人らの了解のもとに右金員中より支出し、犯行直前には残金約27万5000円を所持していたところ、同被告人は自己の保管にかかる右金員を領得するため相被告人波木と共同し判示日時判示あかつき丸の船尾から毛布に巻きつけた右藤槻、藤村の両名を次々に暗夜の海中に投入れて溺死させ、もって委託者たる右両名を殺害し、同人らから事実上右金員の返還請求を受けることのない結果を生ぜしめて返還を免れたというのであるから、原審が右被告人らの所為は財産上不法の利益を得たものであるとなし、刑法240条後段、236条2項に該当することが明白であると判示したのはまことに正当であり、論旨は理由がない。…たとえ原判示金員が麻薬購入資金として被害者藤槻及び藤村両名から被告人山田に保管を託され、右金員の授受は不法原因に基ずく給付であるがため右藤槻らがその返還を請求することができないとしても、前示の如くいやしくも被告人らが該金員を領得するため右藤槻らを殺害し、同人らから事実上その返還請求を受けることのない結果を生ぜしめて返還を免れた以上は、刑法240条後段、236条2項の不法利得罪を構成するものと解すべきである。」
過去問・解説
(R5 予備 第4問 1)
甲は、違法な麻薬の購入資金としてAから預かった金銭の返還を免れるために、殺意をもって、Aを殺害し、その返還を免れた。この場合、甲に強盗殺人罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.8.30)は、本肢と同種の事案において、「刑法236条2項の罪は同条1項の罪と同じく処罰すべきものと規定され,1項の罪とは不法利得と財物強取とを異にする外、その構成要素に何らの差異がなく、1項の罪におけると同じく相手方の反抗を抑圧すべき暴行、脅迫の手段を用いて財産上不法利得するをもって足り、必ずしも相手方の意思による処分行為を強制することを要するものではない。」とした上で、「たとえ…金員の授受は不法原因に基ずく給付であるがためVらがその返還を請求することができないとしても、前示の如くいやしくも被告人らが該金員を領得するためVらを殺害し、同人らから事実上その返還請求を受けることのない結果を生ぜしめて返還を免れた以上は、刑法240条後段、236条2項の不法利得罪を構成する…。」としている。
したがって、甲は、違法な麻薬の購入資金の返還をAの殺害によって免れているといえるから、甲には、2項強盗による強盗殺人罪が成立する。
総合メモ
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