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刑法 詐欺罪の成否(旅券の不正申請) 最一小判昭和27年12月25日

概要
157条2項に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時に、その性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するものと解する。しかも、同条項の刑罰が1年以下の懲役又は300円以下の罰金に過ぎない点も参酌すると免状、鑑札、旅券の下付を受ける行為のごときものは、246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、157条2項だけを適用すべきものと解する。
判例
事案:村役場において被告人が日本において兵役に服したことがない旨並びに選挙に投票したことがない旨虚偽の内容を記載した証明の発行を申請し、それにより発行された証明書を用いて、米国領事館にて旅券を不正に入手しようとしたという事案において、詐欺罪の成否が問題となった。

判旨:「原判決は『被告人は同係員を欺罔して旅券の下付を受けようとしたけれども、その後占領軍官憲の調査により右証明書2通の記載内容が虚偽であることを発見されたため竟に旅券騙取の目的を遂げなかったものである』と認定し、刑法246条1項、250条に該当する詐欺未遂である旨判示している。そして、刑法157条2項には、公務員に対し虚偽の申立を為し免状、鑑札又は旅券に不実の記載を為さしめたる者とあるに過ぎないけれども、免状、鑑札、旅券のような資格証明書は、当該名義人においてこれが下付を受けて所持しなければ効用のないものであるから、同条に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時に、その性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するものと解するを正当とする。しかも、同条項の刑罰が1年以下の懲役又は300円以下の罰金に過ぎない点をも参酌すると免状、鑑札、旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、右刑法157条2項だけを適用すべきものと解するを相当とする。されば、原判決が右下付を受けようとした行為を目して詐欺未遂としたことは擬律錯誤の違法があるものといわなければならない。そして、判示の米国領事館員のごときは、刑法7条、従って同法157条2項にいわゆる公務員とはいえないから、右判示行為は、刑法157条2項の未遂罪にも該当しないものといわなければならない。」
過去問・解説
(H18 司法 第17問 3)
係員に偽りの申立てをして旅券の交付を受けた場合、旅券は財産的価値を欠き財物に当たらないので、詐欺罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭27.12.25)は、旅券を不正申請した事案において、「157条2項…に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時に、その性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するものと解するを正当とする。しかも、同条項の刑罰が1年以下の懲役又は300円以下の罰金に過ぎない点をも参酌すると免状、鑑札、旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、右刑法157条2項だけを適用すべきものと解するを相当とする。」として、詐欺罪の成立を否定している。
したがって、係員に偽りの申立てをして旅券の交付を受けた場合、旅券等不実記載罪には、不実記載された旅券を受け取ることまで含まれているから、詐欺罪は成立しない。
総合メモ
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