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刑法 詐欺罪と恐喝罪 最二小判昭和24年2月8日

概要
盗品を運搬中の者に対し「警察の者だが取調の必要があるから差し出せ」等と虚偽の事実を申し向け、右盗品を交付させた場合でも、被告人に恐喝の意思があって、右の虚言も相手方を畏怖させる一材料となり、その畏怖の結果として、相手方が右盗品を交付するに至った場合には、詐欺罪ではなく、恐喝罪が成立する。
判例
事案:盗品を運搬中の者に対し「警察の者だが取調の必要があるから差し出せ」等と虚偽の事実を申し向け、右盗品を交付させたという事案において、畏怖の結果として、相手方が右盗品を交付するに至った場合、詐欺罪と恐喝罪のいずれが成立するかが問題となった。

判旨:「被告人は警察官を装うてVに対し『警察の者だがこの綿糸は何処から持ってきたか』と尋ね同人が『火薬廠から持ち出した』と答えると、その氏名年齢職業を問ひ之を紙に書留める風をした上『取調べの必要があるから差出せ』と言ひ,若しこれに応じなければ直ちに警察署へ連行するかも知れないような態度を示して同人を畏怖させ、因って同人をして即時その場で右綿糸二十梱を交付させたと云うのであって、右の如く被告人がVに対しその申入れに応じなければ直ちに警察署へ連行するかも知れないような態度を示し、Vがこれにより畏怖の念を生じ、為めに綿糸を交付するに至ったものである以上、恐喝罪をもって問擬すべきである。被告人の施用した手段の中に虚偽の部分即ち警察官と称した部分があっても、その部分も相手方に畏怖の念を生ぜしめる一材料となり、その畏怖の結果として相手方が財物を交付するに至った場合は、詐欺罪ではなく恐喝罪となるのである。
 …被害者Vの持っていた綿糸は盗品であるから、Vがそれについて正当な権利を有しないことは明かである。しかし正当の権利を有しない者の所持であっても、その所持は所持として法律上の保護を受けるのであって、例へば窃取した物だからそれを強取しても処罰に値しないとはいえないのである。恐喝罪についても同様であって、贓物を所持する者に対し恐喝の手段を用いてその贓物を交付させた場合には矢張り恐喝罪となるのである。」
過去問・解説
(H24 共通 第6問 イ)
甲は、警察官でないのに警察官を装い、窃盗犯人である乙に対し、「警察の者だが、取り調べる必要があるから差し出せ。」などと虚偽の事実を申し向けて盗品の提出を求め、これに応じなければ直ちに警察署に連行するかもしれないような態度を示したところ、乙は、逮捕されるかもしれないと畏怖した結果、甲に盗品を交付した。この場合、甲には、恐喝既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.2.8)は、本肢と同種の事案において、「被告人の施用した手段の中に虚偽の部分即ち警察官と称した部分があっても、その部分も相手方に畏怖の念を生ぜしめる一材料となり、その畏怖の結果として相手方が財物を交付するに至った場合は、詐欺罪ではなく恐喝罪となるのである。」としている。
また、盗品の交付を受けたことについて、同判例は、「正当の権利を有しない者の所持であっても、その所持は所持として法律上の保護を受けるのであって、…恐喝罪についても…贓物を所持する者に対し恐喝の手段を用いてその贓物を交付させた場合には矢張り恐喝罪となるのである。」としている。
乙は、逮捕されるかもしれないと畏怖した結果として甲に盗品を交付しているから、虚偽の事実の部分があることや、乙に返還請求権がないという事情があったとしても、甲に恐喝既遂罪が成立する。

(H24 共通 第15問 3)
甲と乙は、V経営の食料品店で買った弁当を食べたら食中毒になった旨の嘘を言って因縁を付けてVを脅迫するとともに、同人に軽度の暴行を加え、これらの暴行・脅迫により同人を畏怖させて、損害賠償金の名目で50万円を支払わせ、これを分配することを計画した。乙は、計画に従い、同店に行き、Vに対し、「この店の弁当を食べたら食中毒になった。店の営業を続けたければ50万円払え。払わないと、この店の弁当で食中毒になったと書いたビラをばらまくぞ。」と語気鋭く申し向けた上、Vの額を手の平成で軽くたたいた。Vは、これをよけようとした際、バランスを崩して転倒し、全治約1週間を要する後頭部打撲の怪我を負った。
 Vは、乙が食中毒になったことは嘘であると気付いたが、乙の要求に応じないと、更に暴力を振るわれたり、店を中傷するビラをまかれるかもしれないと畏怖し、手持ちの現金30万円を乙に渡し、残りの20万円は翌日支払うことで乙を納得させた。
 Vに30万円を交付させたことについて、甲及び乙には、恐喝既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.2.8)は、本肢と同種の事案において、「被告人の施用した手段の中に虚偽の部分即ち警察官と称した部分があっても、その部分も相手方に畏怖の念を生ぜしめる一材料となり、その畏怖の結果として相手方が財物を交付するに至った場合は、詐欺罪ではなく恐喝罪となるのである。」としている。
Vは、乙の要求に応じないと、更に暴力を振るわれたり、店を中傷するビラをまかれるかもしれないと畏怖した結果として現金を交付したのであるから、甲及び乙に恐喝既遂罪が成立する。

(R1 司法 第16問 イ)
他人を恐喝するに際して、脅迫文言の中に虚偽の部分があり、それも同人に畏怖の念を生じさせる一材料となって、その畏怖の結果として、同人に財物を交付させた。この場合、詐欺罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.2.8)は、「被告人の施用した手段の中に虚偽の部分即ち警察官と称した部分があっても、その部分も相手方に畏怖の念を生ぜしめる一材料となり、その畏怖の結果として相手方が財物を交付するに至った場合は、詐欺罪ではなく恐喝罪となるのである。」としている。
したがって、脅迫文言の中に虚偽の部分があったとしても、畏怖した結果として財物を交付させた場合には、詐欺罪ではなく恐喝罪が成立する。
総合メモ
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