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刑法 他人所有建物と横領罪の成否 最二小決平成21年3月26日

概要
甲会社から乙及び丙に順次譲渡されたものの、所有権移転登記が未了のため甲会社が登記簿上の所有名義人であった建物を、甲会社の実質的代表者として丙のために預かり保管していた被告人が、甲会社が名義人であることを奇貨とし、乙及び丙から原状回復のための解決金を得ようと企て、上記建物に係る不実の抵当権設定仮登記を了した場合、横領罪が成立する。
判例
事案:他人所有の建物を同人のために預かり保管していた者が、金銭的利益を得ようとして、同建物の電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了したという事案において、横領罪の成否が問題となった。

判旨:「本件仮登記の登記原因とされたAとE会との間の金銭消費貸借契約及び抵当権設定契約は虚偽であり、本件仮登記は不実であるから、電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が成立することは明らかである。そして、被告人は、本件和解により所有権がB会に移転した本件建物を同会のために預かり保管していたところ、共犯者らと共謀の上、金銭的利益を得ようとして本件仮登記を了したものである。仮登記を了した場合、それに基づいて本登記を経由することによって仮登記の後に登記された権利の変動に対し、当該仮登記に係る権利を優先して主張することができるようになり、これを前提として、不動産取引の実務において、仮登記があった場合にはその権利が確保されているものとして扱われるのが通常である。以上の点にかんがみると、不実とはいえ、本件仮登記を了したことは、不法領得の意思を実現する行為として十分であり、横領罪の成立を認めた原判断は正当である。また、このような場合に、同罪と上記電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が併せて成立することは、何ら不合理ではないというべきである(なお、本件仮登記による不実記録電磁的公正証書原本供用罪と横領罪とは観念的競合の関係に立つと解するのが相当である。)。」
過去問・解説
(H28 司法 第2問 エ)
甲は、自己が所有する不動産を乙に売却したが、乙への所有権移転登記が完了する前に、丙との間で金銭消費貸借契約を締結した事実及びその担保として同不動産に係る抵当権設定契約を締結した事実がないにもかかわらず、同不動産について、丙を権利者とする不実の抵当権設定仮登記を完了した。甲に横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平21.3.26)は、本肢と同種の事案において、「不実とはいえ、本件仮登記を了したことは、不法領得の意思を実現する行為として十分であり、横領罪の成立を認めた原判断は正当である。」としている。
甲は、乙に売却後所有権移転登記が完了する前に、丙を権利者とする不実の抵当権設定仮登記を完了しているから、その時点で不法領得の意思を実現したといえ、甲に横領罪が成立する。

(H30 共通 第20問 ア)
甲は、別居している実弟Aとの間で、自己が所有するX市内の土地(以下「本件土地」という。)を代金3000万円で売却する売買契約を締結し、Aから代金全額の支払を受けたものの、本件土地の所有権移転登記は未了のままであった。
 そこで、甲は、自己が経営する会社の資金繰りのため、自らが保管していた本件土地の登記済証を利用し、事情を知らないBに対して、本件土地に抵当権を設定するので、それを担保に1000万円を融資してほしい旨申し入れたところ、Bは、これを了承した。数日後、甲は、Bから1000万円の融資を受けた上、Aに無断で本件土地の抵当権設定登記を完了した。
 甲がAに無断で本件土地に抵当権を設定し、その旨の登記を完了したことについては、甲に横領罪が成立するが、Aは甲の実弟であるので、告訴がなければ公訴を提起することができない。

(正答)

(解説)
判例(最決平21.3.26)は、本肢と同種の事案において、「不実とはいえ、本件仮登記を了したことは、不法領得の意思を実現する行為として十分であり、横領罪の成立を認めた原判断は正当である。」としている。
甲は、実弟Aに売却後所有権移転登記が完了する前に、Bを権利者とする不実の抵当権設定登記を完了しているから、不法領得の意思を実現したといえ、甲に横領罪が成立する。
そして、255条が準用する244条2項は、「244条1項に規定する親族(配偶者、直系血族又は同居の親族)以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と規定している。
したがって、Aは甲の実弟であるため、告訴がなければ公訴を提起することができない。

(R2 共通 第2問 5)
甲は、自己が所有し、その旨登記されている土地を乙に売却し、その代金を受領したにもかかわらず、乙への移転登記が完了する前に、同土地に自己を債務者とし丙を抵当権者とする抵当権を設定し、その登記が完了した。この場合、同抵当権が実行されることなく、後日、その登記が抹消されたとしても、甲には、横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平21.3.26)は、本肢と同種の事案において、「不実とはいえ、本件仮登記を了したことは、不法領得の意思を実現する行為として十分であり、横領罪の成立を認めた原判断は正当である。」としている。
甲は、乙に売却後所有権移転登記が完了する前に、丙を権利者とする不実の抵当権設定登記を完了しているから、不法領得の意思を実現したといえ、甲に横領罪が成立する。
なお、不法領得の意思を実現する行為が行われた時点で横領罪は既遂となるから、同抵当権が実行されることなく、後日、その登記が抹消されたとしても、横領罪の成否に影響を与えない。
総合メモ
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