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刑法 公用文書毀棄罪における「公務所の用に供する文書」 最一小判昭和52年7月14日
概要
公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、258条にいう「公務所の用に供する文書」に当たる。
判例
事案: 公務執行妨害罪の現行犯人が逮捕され、被疑者がいきなり作成中の弁解録取書をひったくり、両手で丸めしわくちゃにして床上に投げ棄て、足で踏みつけ更に拾い上げて引きちぎったという事案において、職務権限に基づいて作成中の文書が、「公務所の用に供する文書」に当たるかが問題となった。
判旨:「刑法258条にいう『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとすることは、つとに当裁判所の判例(昭和37年(あ)第1191号同38年12月24日第三小法廷判決・刑集17巻12号2485頁)とするところであるが、当該公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたるものと解すべきである。
…本件弁解録取書は、その作成者が明示されていないとはいえ、公務員である司法警察員が公務所の作用としてその職務権限に基づき、原判決認定どおりの文言を記載し、すでに文書としての意味、内容をそなえるに至ったものであることが明らかであるから、刑法258条にいう『公務所ノ用ニ供スル文書』に該当し、これらを前示の方法で毀棄した被告人の本件行為は、同条の罪に該当するものというべきである。」
判旨:「刑法258条にいう『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとすることは、つとに当裁判所の判例(昭和37年(あ)第1191号同38年12月24日第三小法廷判決・刑集17巻12号2485頁)とするところであるが、当該公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたるものと解すべきである。
…本件弁解録取書は、その作成者が明示されていないとはいえ、公務員である司法警察員が公務所の作用としてその職務権限に基づき、原判決認定どおりの文言を記載し、すでに文書としての意味、内容をそなえるに至ったものであることが明らかであるから、刑法258条にいう『公務所ノ用ニ供スル文書』に該当し、これらを前示の方法で毀棄した被告人の本件行為は、同条の罪に該当するものというべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第1問 イ)
執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、司法警察員Xから、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げられ、弁解の機会を与えられた。その際、甲は単純な事件なので起訴されることはないと思い、事実関係を争わなかった。そこで、Xは「傷害事件を起こしたことは間違いありません。弁解はありません。」などと供述録取書に録取して読み聞かせたところ、甲は間違いない旨を申し立てて署名・指印した。そのとき、Xは上司から呼出しを受けたため、供述録取書にXの署名・押印及び契印をしないまま、取調室前の廊下にいた同僚の司法警察員Yに甲の監視を依頼して、取調室から出て行った。
甲がYに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Yは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はYの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Yに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号し、前記の供述録取書を破り捨てた上、制止するために立ちふさがったYの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。
甲に公用文書毀棄等罪が成立する。
執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、司法警察員Xから、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げられ、弁解の機会を与えられた。その際、甲は単純な事件なので起訴されることはないと思い、事実関係を争わなかった。そこで、Xは「傷害事件を起こしたことは間違いありません。弁解はありません。」などと供述録取書に録取して読み聞かせたところ、甲は間違いない旨を申し立てて署名・指印した。そのとき、Xは上司から呼出しを受けたため、供述録取書にXの署名・押印及び契印をしないまま、取調室前の廊下にいた同僚の司法警察員Yに甲の監視を依頼して、取調室から出て行った。
甲がYに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Yは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はYの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Yに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号し、前記の供述録取書を破り捨てた上、制止するために立ちふさがったYの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。
甲に公用文書毀棄等罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭52.7.14)は、本肢と同種の事案において、「『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとする…公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたる…。」としている。
甲が破り捨てた供述録取書は、すでに文書としての意味、内容をそなえるに至ったものであることが明らかであるから、「公務所の用に供する文書」に当たる。
したがって、甲に公用文書毀棄等罪が成立する。
判例(最判昭52.7.14)は、本肢と同種の事案において、「『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとする…公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたる…。」としている。
甲が破り捨てた供述録取書は、すでに文書としての意味、内容をそなえるに至ったものであることが明らかであるから、「公務所の用に供する文書」に当たる。
したがって、甲に公用文書毀棄等罪が成立する。
(R1 予備 第2問 2)
偽造された文書や未完成の文書は、公用文書等毀棄罪の客体とはなり得ない。
偽造された文書や未完成の文書は、公用文書等毀棄罪の客体とはなり得ない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭52.7.14)は、「『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとする…公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたる…。」としている。
したがって、偽造された文書や未完成の文書も、公用文書等毀棄罪の客体となり得る。
判例(最判昭52.7.14)は、「『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとする…公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至った以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたる…。」としている。
したがって、偽造された文書や未完成の文書も、公用文書等毀棄罪の客体となり得る。