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刑法 文書のわいせつ性 最二小判昭和55年11月28日

概要
①文書のわいせつ性の判断にあたっては、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味に訴えるものと認められるか否かなどの諸点を検討することが必要であり、これらの事情を総合し、その時代の社会通念に照らして、それが「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」といえるか否かを決すべきである。
②男女の性的交渉の情景を扇情的筆致で露骨、詳細かつ具体的に描写した部分が量的質的に文書の中枢を占めており、その構成や展開、さらには文芸的、思想的価値などを考慮に容れても、主として読者の好色的興味に訴えるものと認められる本件「四畳半襖の下張」は、わいせつ物頒布罪の「わいせつな文書」に当たる。
判例
事案:月刊誌編集長らがわいせつな文書を販売したという事案において、①文書のわいせつ性の判断方法、②わいせつ物頒布罪の「わいせつな文書」に当たるかなどが問題となった。

判旨:「文書のわいせつ性の判断にあたっては、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうったえるものと認められるか否かなどの諸点を検討することが必要であり、これらの事情を総合し、その時代の健全な社会通念に照らして、それが『徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの』(前掲最高裁昭和32年3月13日大法廷判決参照)といえるか否かを決すべきである。本件についてこれをみると、本件『四畳半襖の下張』は、男女の性的交渉の情景を扇情的な筆致で露骨、詳細かつ具体的に描写した部分が量的質的に文書の中枢を占めており、その構成や展開、さらには文芸的、思想的価値などを考慮に容れても、主として読者の好色的興味にうったえるものと認められるから、以上の諸点を総合検討したうえ、本件文書が刑法175条にいう『わいせつの文書』にあたると認めた原判断は、正当である。」
過去問・解説
(R4 共通 第2問 4)
甲は、わいせつな内容を含む書籍を販売したが、その目的は作品の文芸的・思想的価値を社会に主張することであった。この場合、甲にわいせつ文書頒布罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭55.11.28)は、「文書のわいせつ性の判断にあたっては、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうったえるものと認められるか否かなどの諸点を検討することが必要であり、これらの事情を総合し、その時代の健全な社会通念に照らして、それが『徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの』…といえるか否かを決すべきである。」としている。
したがって、作品の文芸的・思想的価値を社会に主張する目的であっても、甲にわいせつ文書頒布罪が成立することがあり得る。
総合メモ
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