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刑法 診断書の公文書性と教唆 最二小判昭和23年10月23日
概要
156条の公文書無形偽造の罪を教唆することを共謀した者の1人が結局公文書有形偽造教唆の手段を選びこれによって目的を達した場合には、共謀者の他方は事實上公文書有形偽造教唆に直接関与しなかったとしても、その結果に対する故意の責任を負わなければならない。
判例
事案:保釈の請求に使用するため刑務所医師をして虚偽内容の診断書を作成したという事案において、156条の公文書無形偽造の罪を教唆することを共謀した者の1人が結局公文書有形偽造教唆の手段を選び目的を達した場合にいかなる罪責を負うかが問題となった。
判旨:「被告人は第1審相被告人乙と共謀して、医務課長Aを買収してBのため同人が勾留に堪えられない旨の虚偽の内容の診断書を作成さしてこれを入手しようと決め、乙がその任に当ることになったところ、乙は医務課長Aの買収が困難なのを知って、寧しろ医務課長A名義の診断書を偽造しようと決意し、第1審相被告人丙を教唆して本件診断書を作成偽造せしめたというのである。被告人の故意は、前記認定の如く、乙と共謀して医務課長Aをして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る。しかるに現実には前記のような公文書偽造の結果となったのであるから、事実の錯誤の問題である。かかる場合に乙の丙に対する本件公文書偽造教唆について、被告人が故意の責任を負うべきであるか否やは一の問題であるが、本件故意の内容は刑法第156条の罪の教唆であり、結果は同法第155条の罪の教唆である。そしてこの両者は犯罪の構成要件を異にするも、その罪質を同じくするものであり、且法定刑も同じである。而して右両者の動機目的は全く同一である。いづれもBの保釈の為めに必要な虚偽の診断書を取得する為めである。即ち被告人等は最初その目的を達する手段として刑法第156条の公文書無形偽造の罪を教唆することを共謀したが、結局共謀者の1人たるAが公文書有形偽造教唆の手段を選び、これによって遂に目的を達したものである。それであるから、乙の丙に対する本件公文書偽造の教唆行為は、被告人と乙との公文書無形偽造教唆の共謀と全然無関係に行われたものと云うことはできないのであって、矢張り右共謀に基づいてたまたまその具体的手段を変更したに過ぎないから、両者の間には相当因果関係があるものと認められる。然らば被告人は事実上本件公文書偽造教唆に直接に関与しなかったとしてもなお、その結果に対する責任を負わなければならないのである。即ち被告人は法律上本件公文書偽造教唆につき故意を阻却しないのである。而して原判決は、以上説明の如き趣旨によって、被告人が本件診断書の偽造を教唆したものと判断したのであって何等違法の点はない。」
判旨:「被告人は第1審相被告人乙と共謀して、医務課長Aを買収してBのため同人が勾留に堪えられない旨の虚偽の内容の診断書を作成さしてこれを入手しようと決め、乙がその任に当ることになったところ、乙は医務課長Aの買収が困難なのを知って、寧しろ医務課長A名義の診断書を偽造しようと決意し、第1審相被告人丙を教唆して本件診断書を作成偽造せしめたというのである。被告人の故意は、前記認定の如く、乙と共謀して医務課長Aをして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る。しかるに現実には前記のような公文書偽造の結果となったのであるから、事実の錯誤の問題である。かかる場合に乙の丙に対する本件公文書偽造教唆について、被告人が故意の責任を負うべきであるか否やは一の問題であるが、本件故意の内容は刑法第156条の罪の教唆であり、結果は同法第155条の罪の教唆である。そしてこの両者は犯罪の構成要件を異にするも、その罪質を同じくするものであり、且法定刑も同じである。而して右両者の動機目的は全く同一である。いづれもBの保釈の為めに必要な虚偽の診断書を取得する為めである。即ち被告人等は最初その目的を達する手段として刑法第156条の公文書無形偽造の罪を教唆することを共謀したが、結局共謀者の1人たるAが公文書有形偽造教唆の手段を選び、これによって遂に目的を達したものである。それであるから、乙の丙に対する本件公文書偽造の教唆行為は、被告人と乙との公文書無形偽造教唆の共謀と全然無関係に行われたものと云うことはできないのであって、矢張り右共謀に基づいてたまたまその具体的手段を変更したに過ぎないから、両者の間には相当因果関係があるものと認められる。然らば被告人は事実上本件公文書偽造教唆に直接に関与しなかったとしてもなお、その結果に対する責任を負わなければならないのである。即ち被告人は法律上本件公文書偽造教唆につき故意を阻却しないのである。而して原判決は、以上説明の如き趣旨によって、被告人が本件診断書の偽造を教唆したものと判断したのであって何等違法の点はない。」
過去問・解説
(H22 司法 第15問 4)
市立病院に勤務する公務員である医師甲が、同病院の医師として同病院の患者が裁判所に提出するための診断書を作成するに当たり、同診断書に虚偽の病名を記載した。医師である甲には、虚偽診断書等作成罪が成立するので、虚偽公文書作成罪は成立しない。ただし、甲は、「行使の目的」又は「人の財産上の事務処理を誤らせる目的」を有するものとする。
市立病院に勤務する公務員である医師甲が、同病院の医師として同病院の患者が裁判所に提出するための診断書を作成するに当たり、同診断書に虚偽の病名を記載した。医師である甲には、虚偽診断書等作成罪が成立するので、虚偽公文書作成罪は成立しない。ただし、甲は、「行使の目的」又は「人の財産上の事務処理を誤らせる目的」を有するものとする。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭23.10.23)は、本肢と同種の事案において、「被告人の故意は、前記認定の如く、乙と共謀して医務課長Aをして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る。」として、公務員である医師が虚偽診断書を作成した場合、虚偽公文書作成罪として処罰されることを前提とした判断をしている。
甲は、市立病院に勤務する公務員である医師であるから、診断書に虚偽の病名を記載した行為に虚偽公文書作成罪が成立する。
判例(最判昭23.10.23)は、本肢と同種の事案において、「被告人の故意は、前記認定の如く、乙と共謀して医務課長Aをして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る。」として、公務員である医師が虚偽診断書を作成した場合、虚偽公文書作成罪として処罰されることを前提とした判断をしている。
甲は、市立病院に勤務する公務員である医師であるから、診断書に虚偽の病名を記載した行為に虚偽公文書作成罪が成立する。
(R2 共通 第5問 ウ)
甲及び乙が共謀して、公務員Aに虚偽の内容の公文書の作成を教唆することにしたが、乙はAを買収することに失敗したため、甲に無断で、Bに公文書を偽造することを教唆し、Bが公文書を偽造した場合、甲に虚偽公文書作成罪の教唆犯が成立する。
甲及び乙が共謀して、公務員Aに虚偽の内容の公文書の作成を教唆することにしたが、乙はAを買収することに失敗したため、甲に無断で、Bに公文書を偽造することを教唆し、Bが公文書を偽造した場合、甲に虚偽公文書作成罪の教唆犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭23.10.23)は、本肢と同種の事案において、「被告人の故意は、前記認定の如く、乙と共謀して医務課長Aをして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る。」とした上で、「乙の丙に対する本件公文書偽造の教唆行為は、被告人と乙との公文書無形偽造教唆の共謀と全然無関係に行われたものと云うことはできないのであって、矢張り右共謀に基づいてたまたまその具体的手段を変更したに過ぎないから、両者の間には相当因果関係があるものと認められる。」として、公文書偽造罪の教唆犯が成立することを示している。
乙は、甲との共謀とは異なり、Bに公文書を偽造させているものの、具体的な手段を変更したに過ぎないといえるから、甲には公文書偽造罪の教唆犯が成立する。
判例(最判昭23.10.23)は、本肢と同種の事案において、「被告人の故意は、前記認定の如く、乙と共謀して医務課長Aをして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る。」とした上で、「乙の丙に対する本件公文書偽造の教唆行為は、被告人と乙との公文書無形偽造教唆の共謀と全然無関係に行われたものと云うことはできないのであって、矢張り右共謀に基づいてたまたまその具体的手段を変更したに過ぎないから、両者の間には相当因果関係があるものと認められる。」として、公文書偽造罪の教唆犯が成立することを示している。
乙は、甲との共謀とは異なり、Bに公文書を偽造させているものの、具体的な手段を変更したに過ぎないといえるから、甲には公文書偽造罪の教唆犯が成立する。
(R3 共通 第6問 2)
公務員である医師が、自己の勤務する市立病院の患者が裁判所に提出するための診断書に虚偽の病名を記載した場合、虚偽公文書作成罪が成立する。
公務員である医師が、自己の勤務する市立病院の患者が裁判所に提出するための診断書に虚偽の病名を記載した場合、虚偽公文書作成罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭23.10.23)は、本肢と同種の事案において、「被告人の故意は、前記認定の如く、乙と共謀して医務課長Aをして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る。」として、公務員である医師が虚偽診断書を作成した場合、虚偽公文書作成罪として処罰されることを前提とした判断をしている。
判例(最判昭23.10.23)は、本肢と同種の事案において、「被告人の故意は、前記認定の如く、乙と共謀して医務課長Aをして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る。」として、公務員である医師が虚偽診断書を作成した場合、虚偽公文書作成罪として処罰されることを前提とした判断をしている。