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刑法 公文書の写真コピーと公文書偽造罪 最二小判昭和51年4月30日

概要
公文書の写真コピーが実生活上原本に代わるべき証明文書として一般に通用し、原本と同程度の社会的機能と信用性を有するものとされている場合が多いことから、公文書偽造罪の客体となる文書は、これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく、たとえ原本の写であっても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、これに含まれるものと解する。
判例
事案:供託官名義の真正な供託金受領書から切り取った記名印及び公印押捺部分を、虚偽の供託事実を記載した供託書用紙に合わせてこれを写真コピーし、供託金受領書を偽造し、行使したという事案において、公文書の写真コピーの作成が公文書偽造罪に当たるかが問題となった。

判旨:「公文書偽造罪は、公文書に対する公共的信用を保護法益とし、公文書が証明手段としてもつ社会的機能を保護し、社会生活の安定を図ろうとするものであるから、公文書偽造罪の客体となる文書は、これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく、たとえ原本の写であっても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、これに含まれるものと解する…写真コピーは、そこに複写されている原本が右コピーどおりの内容、形状において存在していることにつき極めて強力な証明力をもちうるのであり、それゆえに、公文書の写真コピーが実生活上原本に代わるべき証明文書として一般に通用し、原本と同程度の社会的機能と信用性を有するものとされている場合が多いのである。右のような公文書の写真コピーの性質とその社会的機能に照らすときは、右コピーは、文書本来の性質上写真コピーが原本と同様の機能と信用性を有しえない場合を除き、公文書偽造罪の客体たりうるものであって、この場合においては、原本と同一の意識内容を保有する原本作成名義人作成名義の公文書と解すべきであり、また、右作成名義人の印章、署名の有無についても、写真コピーの上に印章、署名が複写されている以上、これを写真コピーの保有する意識内容の場合と別異に解する理由はないから、原本作成名義人の印章、署名のある文書として公文書偽造罪の客体たりうるものと認める…。
 …本件写真コピーは、いずれも、認証文言の記載はなく、また、その作成者も明示されていないものであるが、公務員である供託官がその職務上作成すべき同供託官の職名及び記名押印のある供託金受領証を電子複写機で原形どおり正確に複写した形式、外観を有する写真コピーであるところ、そのうちの2通は、宅地建物取引業法25条に基づく宅地建物取引業者の営業保証金供託済届の添付資料として提出し異議なく受理されたものであり、また、その余の3通は、いずれも詐欺の犯行発覚を防ぐためその被害者に交付したものであるが、被交付者において、いずれもこれを原本と信じ或いは同一内容の原本の存在を信用して、これをそのまま受領したことが明らかであるから、本件写真コピーは、原本と同様の社会的機能と信用性を有する文書と解するのが相当である。してみると、本件写真コピーは、前記供託官作成名義の同供託官の印章、署名のある有印公文書に該当し、これらを前示の方法で作成行使した被告人の本件行為は、刑法155条1項、158条1項に該当するものというべきである。」
過去問・解説
(R2 共通 第6問 5)
甲は、消費者金融業者に提出する目的で、公文書である乙の国民健康保険被保険者証の氏名欄に自己の氏名が印刷された紙を貼り付けた上で、複写機を使用してこれをコピーし、一般人をして甲の国民健康保険被保険者証の真正なコピーであると誤信させるに足りる程度の形式・外観を備えたものを作成した。この場合、甲に有印公文書偽造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭51.4.30)は、「被交付者において、いずれもこれを原本と信じ或いは同一内容の原本の存在を信用して、これをそのまま受領したことが明らかであるから、本件写真コピーは、原本と同様の社会的機能と信用性を有する文書と解するのが相当である。」としている。
甲は、乙の国民健康保険被保険者証の氏名欄に自己の氏名が印刷された紙を貼り付けた上で、複写機を使用してこれをコピーし、一般人をして甲の国民健康保険被保険者証の真正なコピーであると誤信させるに足りる程度の形式・外観を備えたものを作成しているから、同被保険者証は原本と同様の社会的機能と信用性を有する文書といえる。
したがって、甲に有印公文書偽造罪が成立する。
総合メモ
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