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刑法 架空人名義の文書と私文書偽造罪 最二小判昭和28年11月13日

概要
架空人名義の簡易保険申込書を作成した場合でも、それが当局のみならず一般人をして真正に作成された文書と誤信させる危険があるときは、私文書偽造罪が成立する。
判例
事案:架空人である保険申込書を偽造した事案において、私文書偽造罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人が右の如く架空人名義を用いて保険申込書を作成した場合と実在人名義を冒用して保険申込書を偽造した場合とを比較して考えてみると当局のみならず一般人をして真正に作成された文書と誤信せしめる危険のある点において何等区別はないのであるから、本件のような場合には架空人名義を用いたとしても被告人の行為は私文書偽造罪を構成するものと解すべきである。」
過去問・解説
(H27 共通 第20問 イ)
【事例】
 借金の返済に苦しんでいた甲とその内縁の妻乙は、A市が発行した乙を被保険者とする国民健康保険被保険者証の氏名を乙から実在しない丙に改変し、丙になりすまして消費者金融会社から借入れをして現金を手に入れることを相談した。甲と相談したとおり、乙は、上記国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄に乙とあるのを丙と書き換えた。そして、乙は、消費者金融会社の無人借入手続コーナーにおいて、借入申込書に丙の氏名を記載し、丙と刻した印鑑を押捺するなどして丙名義の借入申込書1通を完成させた上、同申込書及び氏名を丙に改変した上記国民健康保険被保険者証の内容を、同コーナーに設置された機械を使用し、同機械に接続されている同社本店の端末機に送信し、同社の貸付手続担当者に対し、丙であるかのように装って100万円の借入れを申し込んだ。同担当者は、当該申込みをした者が真実丙であり、かつ、貸付金は約定のとおりに返済されるものと誤信し、同社の貸付システムに従って丙名義の借入カードを上記コーナーに設置された機械から発券した。乙は、その場で同カードを入手し、同カードを現金自動入出機に挿入して同機から現金100万円を引き出した。その後、乙は、上記行為に及んだことを後悔し、自宅で、甲に一緒に自首をしようと持ち掛けた。甲は、これを聞いて激高し、乙を窒息死させようと考え、その首を絞めたところ、乙は首を絞められたことによるショックで心不全になり死亡した。甲は、乙の死亡から約30分後、死亡して横たわっている乙の指に時価20万円相当の乙の指輪がはめてあることに気が付き、同指輪を奪って逃走した。

【記述】
乙が丙名義の借入申込書を作成した行為については、丙が実在しなくても、一般人をして真正に作成された文書であると誤信させる危険があるから、甲と乙には有印私文書偽造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭28.11.13)は、「一般人をして真正に作成された文書と誤信せしめる危険のある点において何等区別はないのであるから…架空人名義を用いたとしても被告人の行為は私文書偽造罪を構成する…。」としている。
丙は、実在しない架空の名義人であるが、一般人をして真正に作成された文書であると誤信させる危険があるといえ、甲と乙には有印私文書偽造罪が成立する。

(R2 共通 第6問 2)
甲は、架空請求により金銭をだまし取るために使おうと考え、実在しない「法務局民事訴訟管理センター」名義で、契約不履行による民事訴訟が提起されているので連絡をされたい旨記載されたはがきを印刷し、一般人をして実在する公務所が権限内で作成した公文書であると誤信させるに足りる程度の形式・外観を備えた文書を作成した。この場合、甲に有印公文書偽造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭28.11.13)は、「一般人をして真正に作成された文書と誤信せしめる危険のある点において何等区別はないのであるから…架空人名義を用いたとしても被告人の行為は私文書偽造罪を構成する…。」としている。
法務局民事訴訟管理センターは実在しない架空の名義人であるが、一般人をして真正に作成された文書であると誤信させる危険があるといえ、甲には有印公文書偽造罪が成立する。

(R4 共通 第13問 オ)
甲は、Aから金銭を借り入れるに際し、数日前にBが死亡したことを知りながら、Aに差し入れる予定の金銭消費貸借契約書の借受人欄に、Bの氏名を冒用して署名押印し、一般人をしてBが生存中に作成したと誤信させるおそれが十分に認められる文書を作成した。この場合、甲には、有印私文書偽造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭28.11.13)は、「一般人をして真正に作成された文書と誤信せしめる危険のある点において何等区別はないのであるから…架空人名義を用いたとしても被告人の行為は私文書偽造罪を構成する…。」としている。
Bは既に死亡している実在しない架空の名義人であるが、一般人をして真正に作成された文書であると誤信させる危険があるといえ、甲には有印私文書偽造罪が成立する。
総合メモ
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