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刑法 「職務を執行するにあたり」の意義 最一小決平成元年3月10日
概要
県議会委員長が委員会の休憩を宣言して退出しようとした場合であっても、なお審議に関して生じた紛議に対処するなどの職務に従事していたと認められる本件においては、その際委員長に対して加えられた暴行は公務執行妨害罪を構成する。
判例
事案:休憩宣言後の県議会委員長に暴行したという事案において、公務執行妨害罪の成否が問題となった。
判旨:「公務執行妨害罪の成否に関する所論にかんがみ検討すると、原判決の認定によれば、熊本県議会公害対策特別委員会委員長Aは、同委員会の議事を整理し、秩序を保持する職責を有するものであるが、昭和50年9月25日同委員会室で開催された委員会において、水俣病認定申請患者協議会代表者から陳情を受け、その事項に関して同委員会の回答文を取りまとめ、これを朗読したうえ、昼食のための休憩を宣するとともに、右陳情に関する審議の打切りを告げて席を離れ同委員会室西側出入口に向かおうとしたところ、同協議会構成員らが右打切りに抗議し、そのうちの1名が、同委員長を引きとめるべく、その右腕などをつかんで引っ張る暴行を加え、同委員長がこれを振り切って右の出入口から廊下に出ると、右構成員らの一部や室外で待機していた同協議会構成員らも加わつて合計約2、30名が、同委員長の退去を阻止すべく、同委員長を取り囲み、同委員会室前廊下などにおいて、同委員長に対し、押す、引くなどしたばかりか、体当たりし、足蹴りにするなどの暴行を加えたというのである。右の事実関係のもとにおいては、A委員長は、休憩宣言により職務の執行を終えたものではなく、休憩宣言後も、前記職責に基づき、委員会の秩序を保持し、右紛議に対処するための職務を現に執行していたものと認めるのが相当であるから、同委員長に対して加えられた前記暴行が公務執行妨害罪を構成することは明らかであり、これと同旨の原判断は正当である…。」
判旨:「公務執行妨害罪の成否に関する所論にかんがみ検討すると、原判決の認定によれば、熊本県議会公害対策特別委員会委員長Aは、同委員会の議事を整理し、秩序を保持する職責を有するものであるが、昭和50年9月25日同委員会室で開催された委員会において、水俣病認定申請患者協議会代表者から陳情を受け、その事項に関して同委員会の回答文を取りまとめ、これを朗読したうえ、昼食のための休憩を宣するとともに、右陳情に関する審議の打切りを告げて席を離れ同委員会室西側出入口に向かおうとしたところ、同協議会構成員らが右打切りに抗議し、そのうちの1名が、同委員長を引きとめるべく、その右腕などをつかんで引っ張る暴行を加え、同委員長がこれを振り切って右の出入口から廊下に出ると、右構成員らの一部や室外で待機していた同協議会構成員らも加わつて合計約2、30名が、同委員長の退去を阻止すべく、同委員長を取り囲み、同委員会室前廊下などにおいて、同委員長に対し、押す、引くなどしたばかりか、体当たりし、足蹴りにするなどの暴行を加えたというのである。右の事実関係のもとにおいては、A委員長は、休憩宣言により職務の執行を終えたものではなく、休憩宣言後も、前記職責に基づき、委員会の秩序を保持し、右紛議に対処するための職務を現に執行していたものと認めるのが相当であるから、同委員長に対して加えられた前記暴行が公務執行妨害罪を構成することは明らかであり、これと同旨の原判断は正当である…。」
過去問・解説
(H25 共通 第16問 ア)
甲は、県議会の議事が紛糾し、議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際、乙の顔面をげんこつで殴った。甲に公務執行妨害罪が成立する。
甲は、県議会の議事が紛糾し、議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際、乙の顔面をげんこつで殴った。甲に公務執行妨害罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決元.3.10)は、本肢と同種の事案において、「委員会において、…昼食のための休憩を宣するとともに、…出入口に向かおうとしたところ、…暴行を加えたという…事実関係のもとにおいては、A委員長は、休憩宣言により職務の執行を終えたものではなく、休憩宣言後も、前記職責に基づき、委員会の秩序を保持し、右紛議に対処するための職務を現に執行していたものと認めるのが相当であるから、同委員長に対して加えられた前記暴行が公務執行妨害罪を構成する…。」としている。
議長乙が休憩を宣言していたとしても、乙は秩序維持のための職務を現に執行していたものといえる。
したがって、議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際、乙の顔面をげんこつで殴った甲には、公務執行妨害罪が成立する。
判例(最決元.3.10)は、本肢と同種の事案において、「委員会において、…昼食のための休憩を宣するとともに、…出入口に向かおうとしたところ、…暴行を加えたという…事実関係のもとにおいては、A委員長は、休憩宣言により職務の執行を終えたものではなく、休憩宣言後も、前記職責に基づき、委員会の秩序を保持し、右紛議に対処するための職務を現に執行していたものと認めるのが相当であるから、同委員長に対して加えられた前記暴行が公務執行妨害罪を構成する…。」としている。
議長乙が休憩を宣言していたとしても、乙は秩序維持のための職務を現に執行していたものといえる。
したがって、議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際、乙の顔面をげんこつで殴った甲には、公務執行妨害罪が成立する。