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刑法 犯人・犯人の親族に対する犯人隠避教唆罪の成否 大判昭和8年10月18日

概要
①犯人の親族が人を教唆して犯人隠避罪を犯させたときは犯人隠避教唆罪が成立する。
②犯人が他人を教唆して自己を隠避させ犯人隠避罪を犯させたときは同教唆罪が成立する。
判例
事案:過失致死狩猟法違反で犯人隠避行為がなされた事案において、①犯人の親族に対する犯人隠避教唆罪の成否、②犯人に対する犯人隠避教唆罪の成否が問題となった。

判旨:①「刑法第105條ハ犯人ノ親族カ隱避ノ罪ヲ犯シタル場合ヲ罰セサル旨規定シ犯人自身カ犯シタル場合ヲ規定セスト雖勿論解釋ニ依リ犯人自身カ隱避教唆ノ罪ヲ犯シタル時ト雖之ヲ罰セサル趣旨ナリト斷セサル可カラス」
 ②「他人ヲ教唆シテ自己ヲ隱避セシメ刑法第103條ノ犯罪ヲ實行セシムルニ至リテハ防禦ノ濫用ニ屬シ法律ノ放任行爲トシテ干渉セサル防禦ノ範圍ヲ逸脱シタルモノト謂ハサルヲ得サルニヨリ被教唆者ニ對シ犯人隱避罪成立スル以上教唆者タル犯人ハ犯人隱避教唆ノ罪責ヲ負ハサルヘカラサルコト言ヲ俟タス」
過去問・解説
(H18 司法 第1問 オ)
判例の立場に従って次の【事例】の甲の罪責について検討し、【罪名】のうち、その罪名に係る犯罪が成立するか。
【事例】
 執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、甲は、司法警察員Xから取り調べを受けていた際に、Xに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Xは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はXの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Xに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号し、制止するために立ちふさがったXの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。その後、甲はK警察署から逃げ出し、隣町に住む友人乙の居宅に逃げ込んだ。
 甲は乙に対し、Aが傷害を負ったことを隠し、単に暴行事件を起こして任意の取調べを受けている際に警察署から逃げ出してきたなどとうそを交えて話した上、かくまってくれるように頼んだところ、乙は甲の話を信じ、自宅の物置小屋に甲をかくまったが、その数時間後、警察官に発見された。
【罪名】
 犯人蔵匿教唆(刑法第103条・第61条第1項)

(正答)

(解説)
判例(大判昭8.10.18)は、「他人ヲ教唆シテ自己ヲ隱避セシメ刑法第103條ノ犯罪ヲ實行セシムルニ至リテハ防禦ノ濫用ニ屬シ法律ノ放任行爲トシテ干渉セサル防禦ノ範圍ヲ逸脱シタルモノト謂ハサルヲ得サルニヨリ被教唆者ニ對シ犯人隱避罪成立スル以上教唆者タル犯人ハ犯人隱避教唆ノ罪責ヲ負ハサルヘカラサル」として、他人を教唆して自己を蔵匿・隠避させることは防御権の範囲を逸脱することから、犯人隠避罪の教唆犯が成立することを示している。
甲は、乙に対して自分を匿うよう頼み、乙は自宅の物置小屋に甲をかくまっているから、甲に犯人蔵匿罪の教唆犯が成立する。

(H22 司法 第17問 5)
甲は、殺人事件の被疑者として警察に追われていたため、知人乙にその事情を打ち明けて同人所有の別荘に住まわせてくれるように依頼し、これを承諾した乙から同別荘の鍵を受け取って同別荘に身を隠した。犯人自身に逃げ隠れしないことを期待できないので、甲に犯人蔵匿教唆罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭8.10.18)は、「他人ヲ教唆シテ自己ヲ隱避セシメ刑法第103條ノ犯罪ヲ實行セシムルニ至リテハ防禦ノ濫用ニ屬シ法律ノ放任行爲トシテ干渉セサル防禦ノ範圍ヲ逸脱シタルモノト謂ハサルヲ得サルニヨリ被教唆者ニ對シ犯人隱避罪成立スル以上教唆者タル犯人ハ犯人隱避教唆ノ罪責ヲ負ハサルヘカラサル」として、他人を教唆して自己を蔵匿・隠避させることは防御権の範囲を逸脱することから、犯人隠避罪の教唆犯が成立することを示している。
甲は、乙に対して自分を匿うよう頼み、承諾した乙から乙所有の別荘の鍵を受け取って同別荘に身を隠しているから、甲に犯人蔵匿罪の教唆犯が成立する。

(H27 司法 第14問 2)
甲は、親族Aが犯した傷害被疑事件につき、他人を教唆してAの犯行に関わる証拠を隠滅させた。甲には、親族による犯罪に関する特例(刑法第105条)が適用され、証拠隠滅罪の教唆犯は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭8.10.18)は、「親族タル犯人ヲ庇護スル目的ニ出テタリトスルモ他人ヲ教唆シテ犯人隱避ノ罪ヲ犯サシムルカ如キハ所謂庇護ノ濫用ニシテ法律ノ認ムル庇護ノ範圍ヲ逸脱シタルモノト謂ハサルヲ得サル」として、親族が他人を教唆して犯人を蔵匿・隠避させることは庇護の濫用であるため犯人蔵匿・隠避罪が成立することを示している。
証拠隠滅罪に関しても、親族が同様の行為に出れば同様の判断となると考えられる。
甲は、親族Aが犯した傷害被疑事件につき、他人を教唆してAの犯行に関わる証拠を隠滅させているが、105条の適用はなく、証拠隠滅罪の教唆犯が成立する。
総合メモ
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