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刑法 刑事未成年を利用した間接正犯 最一小判平成13年10月25日
概要
被告人が生活費欲しさから強盗を計画し、12歳10か月の長男に指示命令して強盗を実行させた場合においても、当時長男には是非弁別の能力があり、被告人の指示命令は長男の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、長男は自らの意思によりその実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を完遂し、長男が奪ってきた金品をすべて被告人が領得したなど判示の事実関係の下では、被告人につき強盗の共同正犯が成立する。
判例
事案:甲が生活費欲しさから強盗を計画し、12歳10か月の長男乙に指示命令して強盗を実行させた事案において、強盗の教唆犯、強盗の間接正犯又は強盗の共同正犯のいずれが成立するかが問題となった。
判旨:「本件当時乙には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。そして、被告人甲は、生活費欲しさから本件強盗を計画し、乙に対し犯行方法を教示するとともに犯行道具を与えるなどして本件強盗の実行を指示命令した上、乙が奪ってきた金品をすべて自ら領得したことなどからすると、被告人については本件強盗の教唆犯ではなく共同正犯が成立するものと認められる。したがって、これと同旨の第1審判決を維持した原判決の判断は、正当である。」
判旨:「本件当時乙には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。そして、被告人甲は、生活費欲しさから本件強盗を計画し、乙に対し犯行方法を教示するとともに犯行道具を与えるなどして本件強盗の実行を指示命令した上、乙が奪ってきた金品をすべて自ら領得したことなどからすると、被告人については本件強盗の教唆犯ではなく共同正犯が成立するものと認められる。したがって、これと同旨の第1審判決を維持した原判決の判断は、正当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第4問 3)
甲は、12歳の乙に対し、丙から現金を強取してくるように指示したところ、乙は、是非善悪の判断能力を有していたものの、甲の指示どおりに強盗を実行した。この場合、甲の指示は、乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙が自らの意思により前記強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を遂げたとしても、乙が刑事未成年である以上は、甲には強盗罪の間接正犯が成立する。
甲は、12歳の乙に対し、丙から現金を強取してくるように指示したところ、乙は、是非善悪の判断能力を有していたものの、甲の指示どおりに強盗を実行した。この場合、甲の指示は、乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙が自らの意思により前記強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を遂げたとしても、乙が刑事未成年である以上は、甲には強盗罪の間接正犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平13.10.25)は、本肢と同種の事案において、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
甲の指示は、乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙が自らの意思により前記強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を遂げており、甲が乙を道具として支配し利用したとはいえない。
したがって、乙が刑事未成年であっても、甲に強盗罪の共同正犯が成立する。
判例(最判平13.10.25)は、本肢と同種の事案において、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
甲の指示は、乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙が自らの意思により前記強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を遂げており、甲が乙を道具として支配し利用したとはいえない。
したがって、乙が刑事未成年であっても、甲に強盗罪の共同正犯が成立する。
(H22 司法 第12問 3)
成人が刑事未成年者に指示して犯罪を行わせた場合、成人と刑事未成年者との間で共同正犯が成立することはなく、成人に間接正犯が成立するにすぎない。
成人が刑事未成年者に指示して犯罪を行わせた場合、成人と刑事未成年者との間で共同正犯が成立することはなく、成人に間接正犯が成立するにすぎない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平13.10.25)は、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
したがって、成人が刑事未成年者に指示して犯罪を行わせた場合、成人に間接正犯が成立する場合だけでなく、成人と刑事未成年者との間で共同正犯が成立することもあり得る。
判例(最判平13.10.25)は、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
したがって、成人が刑事未成年者に指示して犯罪を行わせた場合、成人に間接正犯が成立する場合だけでなく、成人と刑事未成年者との間で共同正犯が成立することもあり得る。
(H28 司法 第17問 1)
甲は、是非弁別能力を有する12歳の長男乙に対し、強盗の犯行方法を教示し、その際に使う凶器を提供して強盗を実行するよう指示したが、その指示は乙の意思を抑圧するものではなく、乙は、自らの意思により強盗の犯行を決意し、甲から提供された凶器を使って、状況によって臨機応変に対処して強盗を実行した。甲に強盗罪の間接正犯が成立するか。
甲は、是非弁別能力を有する12歳の長男乙に対し、強盗の犯行方法を教示し、その際に使う凶器を提供して強盗を実行するよう指示したが、その指示は乙の意思を抑圧するものではなく、乙は、自らの意思により強盗の犯行を決意し、甲から提供された凶器を使って、状況によって臨機応変に対処して強盗を実行した。甲に強盗罪の間接正犯が成立するか。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平13.10.25)は、本肢と同種の事案において、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
甲の指示は乙の意思を抑圧するものではなく、乙は、自らの意思により強盗の犯行を決意し、甲から提供された凶器を使って、状況によって臨機応変に対処して強盗を実行しており、甲が乙を道具として支配し利用したとはいえない。
したがって、甲には、強盗罪の間接正犯ではなく、共同正犯が成立する。
判例(最判平13.10.25)は、本肢と同種の事案において、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
甲の指示は乙の意思を抑圧するものではなく、乙は、自らの意思により強盗の犯行を決意し、甲から提供された凶器を使って、状況によって臨機応変に対処して強盗を実行しており、甲が乙を道具として支配し利用したとはいえない。
したがって、甲には、強盗罪の間接正犯ではなく、共同正犯が成立する。
(H30 司法 第17問 1)
次の【事例】における甲の罪責について、判例の立場に従って検討した場合、正しいものは、後記1から5までのうちどれか。
【事例】
甲は、バーの経営者Aから現金を強取しようと考え、12歳の長男乙に、「Aのバーに行ってお金をとってきて。覆面を付けて、『金だ。』とか言ってモデルガンを見せなさい。」と言い聞かせた。乙は、当初警察に捕まることを恐れて嫌がっていたが、結局小遣い欲しさから承諾し、甲から覆面とモデルガンを受け取った。
乙は、Aのバーまで行き、甲から指示された方法に従って、覆面を付けモデルガンを拳銃のように見せ掛け、Aを脅迫してその反抗を抑圧した。さらに、乙は、自己の判断により、外から人が来ないようにするためバーの出入口ドアの鍵を掛け、Aを店内のトイレに閉じ込めた。その後、乙は、レジ内の現金を強取し、外に出ようとしたところ、トイレから脱出して乙に向かってきたAから腕をつかまれたため、これを激しく振り払った。その結果、Aは転倒して負傷した。
乙は、逃走して自宅に戻り、強取した現金を全て甲に渡した。甲はその現金の中から乙に小遣いを与え、その余を生活費等に費消した。
1.強盗致傷罪の教唆犯が成立する。
2.強盗罪の間接正犯が成立する。
3.強盗致傷罪の間接正犯が成立する。
4.強盗罪の共同正犯が成立する。
5.強盗致傷罪の共同正犯が成立する。
次の【事例】における甲の罪責について、判例の立場に従って検討した場合、正しいものは、後記1から5までのうちどれか。
【事例】
甲は、バーの経営者Aから現金を強取しようと考え、12歳の長男乙に、「Aのバーに行ってお金をとってきて。覆面を付けて、『金だ。』とか言ってモデルガンを見せなさい。」と言い聞かせた。乙は、当初警察に捕まることを恐れて嫌がっていたが、結局小遣い欲しさから承諾し、甲から覆面とモデルガンを受け取った。
乙は、Aのバーまで行き、甲から指示された方法に従って、覆面を付けモデルガンを拳銃のように見せ掛け、Aを脅迫してその反抗を抑圧した。さらに、乙は、自己の判断により、外から人が来ないようにするためバーの出入口ドアの鍵を掛け、Aを店内のトイレに閉じ込めた。その後、乙は、レジ内の現金を強取し、外に出ようとしたところ、トイレから脱出して乙に向かってきたAから腕をつかまれたため、これを激しく振り払った。その結果、Aは転倒して負傷した。
乙は、逃走して自宅に戻り、強取した現金を全て甲に渡した。甲はその現金の中から乙に小遣いを与え、その余を生活費等に費消した。
1.強盗致傷罪の教唆犯が成立する。
2.強盗罪の間接正犯が成立する。
3.強盗致傷罪の間接正犯が成立する。
4.強盗罪の共同正犯が成立する。
5.強盗致傷罪の共同正犯が成立する。
(正答)5
(解説)
判例(最判平13.10.25)は、本肢と同種の事案において、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
甲は12歳の長男乙に対して強盗罪の実行を指示しているところ、乙は、犯行現場で自己の判断により、外から人が来ないようにするためバーの出入口ドアの鍵を掛け、Aを店内のトイレに閉じ込めていて、自らの意思により臨機応変に対処して完遂したといえる。
乙は、レジ内の現金を強取し、外に出ようとしたところ、トイレから脱出して乙に向かってきたAから腕をつかまれたため、これを激しく振り払った。このように乙は逃走の際に強取行為に続いて暴行に及び、Aは転倒して負傷したという結果は生じたとして、乙に強盗致傷罪が成立する。
また、判例(最判昭24.7.2)は、「既に強盗について共謀のある以上他の共犯者がその強盗の機会において、被害者に傷害を与へたときは、たとえ、被告人が…、現実にその傷害の原因たる暴行について、認識がなかったとしても被告人もまた、強盗傷人罪の責任を負はなければならない…。」としている。
甲乙間には基本犯である強盗の共謀が成立し、乙が強盗した結果Aは負傷している。
したがって、甲には、強盗致傷罪の共同正犯が成立する。
判例(最判平13.10.25)は、本肢と同種の事案において、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
甲は12歳の長男乙に対して強盗罪の実行を指示しているところ、乙は、犯行現場で自己の判断により、外から人が来ないようにするためバーの出入口ドアの鍵を掛け、Aを店内のトイレに閉じ込めていて、自らの意思により臨機応変に対処して完遂したといえる。
乙は、レジ内の現金を強取し、外に出ようとしたところ、トイレから脱出して乙に向かってきたAから腕をつかまれたため、これを激しく振り払った。このように乙は逃走の際に強取行為に続いて暴行に及び、Aは転倒して負傷したという結果は生じたとして、乙に強盗致傷罪が成立する。
また、判例(最判昭24.7.2)は、「既に強盗について共謀のある以上他の共犯者がその強盗の機会において、被害者に傷害を与へたときは、たとえ、被告人が…、現実にその傷害の原因たる暴行について、認識がなかったとしても被告人もまた、強盗傷人罪の責任を負はなければならない…。」としている。
甲乙間には基本犯である強盗の共謀が成立し、乙が強盗した結果Aは負傷している。
したがって、甲には、強盗致傷罪の共同正犯が成立する。