現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください
刑法 教唆犯と具体的事実の錯誤 最三小判昭和25年7月11日
概要
教唆犯の故意があるというためには、必ずしも犯人が認識した事実と、現実に発生した事実とが、具体的に一致することを要するものではなく、両者が犯罪の類型として規定している範囲において一致することをもって足りる。
判例
事案:住居侵入窃盜を教唆した場合において、被教唆者がこれと異る他の被害者に対して住居侵入強盜をしたという事案において、教唆者の罪責が問題となった。
判旨:「原判決によれば、被告人甲は乙に対して判示A方に侵入して金品を盗取することを使嗾し、以て窃盗を教唆したものであって、判示B商会に侵入して窃盗をすることを教唆したものでないことは正に所論の通りであり、しかも、右乙は、判示丙等三名と共謀して判示B商会に侵入して強盗をしたものである。しかし、犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人甲は住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負うべきは当然であって、被告人甲の教唆行為において指示した犯罪の被害者と、本犯たる乙のなした犯罪の被害者とが異る一事を以て、直ちに被告人甲に判示乙の犯罪について何等の責任なきものと速断することを得ないものと言わなければならない。」
判旨:「原判決によれば、被告人甲は乙に対して判示A方に侵入して金品を盗取することを使嗾し、以て窃盗を教唆したものであって、判示B商会に侵入して窃盗をすることを教唆したものでないことは正に所論の通りであり、しかも、右乙は、判示丙等三名と共謀して判示B商会に侵入して強盗をしたものである。しかし、犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人甲は住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負うべきは当然であって、被告人甲の教唆行為において指示した犯罪の被害者と、本犯たる乙のなした犯罪の被害者とが異る一事を以て、直ちに被告人甲に判示乙の犯罪について何等の責任なきものと速断することを得ないものと言わなければならない。」
過去問・解説
(R5 司法 第1問 エ)
甲は、乙に対し、A方に侵入して金品を窃取するように唆したところ、乙は、犯行を決意し、A方に侵入しようとしたが、施錠を解錠できず、犯行を断念した。帰路において、乙は、B方に侵入し、Bから金品を強取した。甲の教唆行為と乙のB方における住居侵入及び強盗との間に因果関係が認められない場合であっても、甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯が成立する。
甲は、乙に対し、A方に侵入して金品を窃取するように唆したところ、乙は、犯行を決意し、A方に侵入しようとしたが、施錠を解錠できず、犯行を断念した。帰路において、乙は、B方に侵入し、Bから金品を強取した。甲の教唆行為と乙のB方における住居侵入及び強盗との間に因果関係が認められない場合であっても、甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭25.7.11)は、「犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人Aは住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負う…。」として、教唆行為と実行した犯罪との因果関係が必要となることを示している。
甲の教唆行為と、乙のB方における住居侵入及び強盗との間には、因果関係が認められないから、教唆行為と実行した犯罪との因果関係は認められない。
したがって、甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯は成立しない。
判例(最判昭25.7.11)は、「犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人Aは住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負う…。」として、教唆行為と実行した犯罪との因果関係が必要となることを示している。
甲の教唆行為と、乙のB方における住居侵入及び強盗との間には、因果関係が認められないから、教唆行為と実行した犯罪との因果関係は認められない。
したがって、甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯は成立しない。
(R5 司法 第20問 イ)
【事 例】
甲は、高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。)を不正に入手するため、甲が警察官を装いAに電話をかけ、これからA方を訪れる警察官の確認を受けながらカードを封筒に入れ、同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、警察官に成り済ました乙(25歳、男性)がA方を訪れ、隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、カードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。)を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾した。某日午前9時頃、本件計画に基づき、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙は、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた。しかし、乙の態度を不審に思ったAが、乙に身分証の提示を求めたので、乙は、逮捕を免れるとともに本件計画どおりにカードを手に入れるため、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去った。同日午前9時20分頃、乙は、甲に電話で、本件計画どおりカードを入手したと伝えた。同日午前9時30分頃、甲は、丙に電話をかけ、本件計画の内容を初めて説明し、乙からカードを受け取って甲に届けるよう依頼し、丙はこれを承諾した。丙は、同日午前11時頃、乙と合流し、カードを受け取って乙と別れ、自動車でA方から約50キロメートル離れた甲方に向かったが、同日午後0時30分頃、甲方付近で降車した際、制服警察官BからA方での事件とは関係なく職務質問を受けた。その際、丙は、Bを殴り、Bに全治2週間を要する打撲傷を負わせ、その隙に上記自動車で逃走し、同日午後1時頃、甲と合流して甲にカードを届けた。その後、丙の交際相手丁は、丙が上記一連の犯行を行い、警察から捜査されていることを認識しつつ、丙を丁の自宅にかくまった。
【記 述】
甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかった場合、乙がAからカードを奪取した行為について、甲に窃盗未遂罪の共同正犯が成立するにとどまる。
【事 例】
甲は、高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。)を不正に入手するため、甲が警察官を装いAに電話をかけ、これからA方を訪れる警察官の確認を受けながらカードを封筒に入れ、同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、警察官に成り済ました乙(25歳、男性)がA方を訪れ、隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、カードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。)を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾した。某日午前9時頃、本件計画に基づき、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙は、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた。しかし、乙の態度を不審に思ったAが、乙に身分証の提示を求めたので、乙は、逮捕を免れるとともに本件計画どおりにカードを手に入れるため、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去った。同日午前9時20分頃、乙は、甲に電話で、本件計画どおりカードを入手したと伝えた。同日午前9時30分頃、甲は、丙に電話をかけ、本件計画の内容を初めて説明し、乙からカードを受け取って甲に届けるよう依頼し、丙はこれを承諾した。丙は、同日午前11時頃、乙と合流し、カードを受け取って乙と別れ、自動車でA方から約50キロメートル離れた甲方に向かったが、同日午後0時30分頃、甲方付近で降車した際、制服警察官BからA方での事件とは関係なく職務質問を受けた。その際、丙は、Bを殴り、Bに全治2週間を要する打撲傷を負わせ、その隙に上記自動車で逃走し、同日午後1時頃、甲と合流して甲にカードを届けた。その後、丙の交際相手丁は、丙が上記一連の犯行を行い、警察から捜査されていることを認識しつつ、丙を丁の自宅にかくまった。
【記 述】
甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかった場合、乙がAからカードを奪取した行為について、甲に窃盗未遂罪の共同正犯が成立するにとどまる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭25.7.11)は、「犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人Aは住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負う…。」としている。
構成要件が重なり合う限度で軽い共同正犯が成立することから、窃盗の共謀に基いて実行行為者が強盗に及んだ場合、これに加わらなかった共犯者は共謀の限度で窃盗罪の共同正犯が成立するにとどまる。
甲は、本件計画を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾したことにより窃盗の共謀が成立し、乙はAからカードを奪って持ち去ったとあるから、甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかったとしても、窃盗既遂罪の共同正犯が成立することになる。
したがって、窃盗未遂罪の共同正犯は成立しない。
判例(最判昭25.7.11)は、「犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人Aは住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負う…。」としている。
構成要件が重なり合う限度で軽い共同正犯が成立することから、窃盗の共謀に基いて実行行為者が強盗に及んだ場合、これに加わらなかった共犯者は共謀の限度で窃盗罪の共同正犯が成立するにとどまる。
甲は、本件計画を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾したことにより窃盗の共謀が成立し、乙はAからカードを奪って持ち去ったとあるから、甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかったとしても、窃盗既遂罪の共同正犯が成立することになる。
したがって、窃盗未遂罪の共同正犯は成立しない。