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刑法 殺人罪と同意殺人罪の錯誤 大判明治43年4月28日

概要
被害者が真意なくして冗談で自己の殺害を嘱託し加害者が殺そうとして手を下したるも死ななかった場合には38条2項により、その行為に対して202条、203条の刑を適用すべきである。
判例
事案:被害者が真意なく冗談で被告人に自己の殺害を嘱託したところ、被告人が殺そうとして手を下した場合において、被害者が死ななかった事案において、いかなる罪が成立するかが問題となった。

判旨:「被害者カ真意ナクシテ戯レニ自己ノ殺害ヲ嘱託シ加害者之ヲ殺サントシテ手ヲ下シタルモ遂ケサル場合ニ於テハ刑法第38条第2項ニ依リ其所為ニ対シテ同第202条第203条ノ刑ヲ適用スヘキモノトス」
過去問・解説
(H22 司法 第6問 5)
甲は、Aが甲に射殺されることに同意したため、Aに対し、殺意をもってけん銃を発射したが、銃弾は、Aに当たらずにAの頭部をかすめ、Aの背後にいて甲がその存在を認識しておらず、甲に射殺されることに同意していなかったBに命中して同人を死亡させた。甲には、Aに対する同意殺人未遂罪とBに対する殺人既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「被害者カ真意ナクシテ戯レニ自己ノ殺害ヲ嘱託シ加害者之ヲ殺サントシテ手ヲ下シタルモ遂ケサル場合ニ於テハ刑法第38条第2項ニ依リ其所為ニ対シテ同第202条第203条ノ刑ヲ適用スヘキモノトス」として、被害者が殺害を同意・嘱託していないのにそれを受けたと考えて被害者を殺害した場合、自殺関与等罪が成立することを示している。
そして、別の判例(最判昭53.7.28)は、「犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りるものと解すべき…。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
また、同意殺人罪と殺人罪では、より軽い同意殺人罪の限度で重なり合いが認められる。
したがって、Aに対しては同意殺人罪の故意が認められ、実行行為に及んだものの結果発生に至らなかったため、同意殺人未遂罪が成立する。
また、Bに対しては、客観的には殺人の実行行為であるが、同意殺人罪の限度でしか故意が認められず、同罪が成立するにとどまる。
よって、甲には、Aに対する同意殺人未遂罪とBに対する同意殺人既遂罪が成立する。
総合メモ
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