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口頭弁論
控訴審における時機に後れた攻撃防御方法 大判昭和8年2月7日
概要
控訴審としては、第1審における訴訟手続の経過をも通観して、その時機に後れているか否かを決すべきであり、第1審の口頭弁論において提出することのできた攻撃防御方法を、控訴審の第1回口頭弁論において提出した場合、時機に後れたものとなりうる。
判例
事案:控訴審の第1回口頭弁論期日において新たな攻撃又は防御の方法が提出された事案において、控訴審の第1回口頭弁論期日において初めて提出された攻撃又は防御の方法につき、「時機に後れた」(157条1項)ものとして却下することができるかが問題となった。
判旨:「案スルニ民事訴訟法第百三十九條(現:157条1項)ニ所謂『時機ニ後レテ』ノ意ハ法文自體必スシモ明瞭ナリト云フヘカラサルモ同條カ總則規定ナルニ何等ノ制限ヲ加ヘサリシ點同條カ訴訟ノ完結遲滯ヲ防止スル目的ヲ以テ設ケラレタル點及控訴審カ第1審ノ續審タル點等ニ鑑レハ或訴訟事件ニシテ控訴審ニ繋屬シタル場合當事者ヨリ第1審ニ提出セサリシ攻撃防禦ノ方法ヲ提出シタルトキハ控訴審トシテハ第1審ニ於ケル訴訟手續ノ經過ヲモ通觀シテ以テ其ノ時機ニ後レタルヤ否ヤヲ決スヘキ法意ナリト解スルヲ相當トス」
判旨:「案スルニ民事訴訟法第百三十九條(現:157条1項)ニ所謂『時機ニ後レテ』ノ意ハ法文自體必スシモ明瞭ナリト云フヘカラサルモ同條カ總則規定ナルニ何等ノ制限ヲ加ヘサリシ點同條カ訴訟ノ完結遲滯ヲ防止スル目的ヲ以テ設ケラレタル點及控訴審カ第1審ノ續審タル點等ニ鑑レハ或訴訟事件ニシテ控訴審ニ繋屬シタル場合當事者ヨリ第1審ニ提出セサリシ攻撃防禦ノ方法ヲ提出シタルトキハ控訴審トシテハ第1審ニ於ケル訴訟手續ノ經過ヲモ通觀シテ以テ其ノ時機ニ後レタルヤ否ヤヲ決スヘキ法意ナリト解スルヲ相當トス」
過去問・解説
(H25 共通 第73問 3)
裁判所は、控訴審の第1回口頭弁論期日において初めて提出された攻撃又は防御の方法を、時機に後れたものとして却下することはできない。
裁判所は、控訴審の第1回口頭弁論期日において初めて提出された攻撃又は防御の方法を、時機に後れたものとして却下することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(大判昭8.2.7)は第1審における訴訟手続の経過をも通観して、その時機に後れているか否かを決すべきであり、第1審の口頭弁論において提出することのできた攻撃防御方法を、控訴審の第1回口頭弁論において提出した場合、時機に後れたものとなりうることを示している。
したがって、控訴審の第1回口頭弁論期日において初めて提出された攻撃又は防御の方法であっても、時機に後れたものとして却下することはできる。
判例(大判昭8.2.7)は第1審における訴訟手続の経過をも通観して、その時機に後れているか否かを決すべきであり、第1審の口頭弁論において提出することのできた攻撃防御方法を、控訴審の第1回口頭弁論において提出した場合、時機に後れたものとなりうることを示している。
したがって、控訴審の第1回口頭弁論期日において初めて提出された攻撃又は防御の方法であっても、時機に後れたものとして却下することはできる。
総合メモ
控訴審において初めて提出した攻撃防禦の方法 最三小判昭和30年4月5日
概要
控訴審において初めて提出した攻撃防御の方法が、157条1項の時機に後れたかどうかは、第1審以来の訴訟手続の経過を含めて判断する。
判例
事案:控訴審において建物買取請求権の行使が主張された事案において、かかる主張が時機に後れたといえるかについて、第1審の訴訟手続も含めて判断するのかが問題となった。
判旨:「所論引用の大審院判例(昭和8年2月7日判決)が、控訴審における民訴139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであり、そして時機に後れた攻撃防禦の方法であっても、当事者に故意又は重大な過失が存すること及びこれがため訴訟の完結を延滞せしめる結果を招来するものでなければ、右の攻撃防禦の方法を同条により却下し得ない趣旨を判示していることは所論のとおりであって、この解釈は現在もなお維持せらるべきものと認められる。 記録によって調べてみると、所論の買取請求権行使は、原審第2回の口頭弁論において(第1回は控訴代理人の申請により延期)はじめて陳述されたものであるところ、上告人が第1審第1回口頭弁論において陳述した答弁書によれば、本件賃借権の譲渡について被上告人の承諾を得ないことを認め、右不承諾を以て権利らん用であると抗弁していることがうかがわれるから、すでに第1審において少くとも前記買取請求権行使に関する主張を提出することができたものと認めるのを相当とし、所論のように、上告人が第1審において当初の主張にのみ防禦を集中したというだけの理由をもって、上告人が第2審において始めてなした買取請求権行使に関する主張が、故意又は重大なる過失により時機に後れてなされた防禦方法でないと断定することはできない。」
判旨:「所論引用の大審院判例(昭和8年2月7日判決)が、控訴審における民訴139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであり、そして時機に後れた攻撃防禦の方法であっても、当事者に故意又は重大な過失が存すること及びこれがため訴訟の完結を延滞せしめる結果を招来するものでなければ、右の攻撃防禦の方法を同条により却下し得ない趣旨を判示していることは所論のとおりであって、この解釈は現在もなお維持せらるべきものと認められる。 記録によって調べてみると、所論の買取請求権行使は、原審第2回の口頭弁論において(第1回は控訴代理人の申請により延期)はじめて陳述されたものであるところ、上告人が第1審第1回口頭弁論において陳述した答弁書によれば、本件賃借権の譲渡について被上告人の承諾を得ないことを認め、右不承諾を以て権利らん用であると抗弁していることがうかがわれるから、すでに第1審において少くとも前記買取請求権行使に関する主張を提出することができたものと認めるのを相当とし、所論のように、上告人が第1審において当初の主張にのみ防禦を集中したというだけの理由をもって、上告人が第2審において始めてなした買取請求権行使に関する主張が、故意又は重大なる過失により時機に後れてなされた防禦方法でないと断定することはできない。」
過去問・解説
(H18 司法 第63問 3)
攻撃防御方法の提出が時機に後れたかどうかは、第1審及び控訴審を通じて判断されるため、控訴審の第1回期日に提出されても、時機に後れたものとして却下されることがある。
攻撃防御方法の提出が時機に後れたかどうかは、第1審及び控訴審を通じて判断されるため、控訴審の第1回期日に提出されても、時機に後れたものとして却下されることがある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭30.4.5)は、「控訴審における民訴第139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであ…る。」としている。
したがって、攻撃防御方法の提出が時機に後れたかどうかは、第1審及び控訴審を通じて判断されるため、控訴審の第1回期日に提出されても、時機に後れたものとして却下されることがある。
判例(最判昭30.4.5)は、「控訴審における民訴第139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであ…る。」としている。
したがって、攻撃防御方法の提出が時機に後れたかどうかは、第1審及び控訴審を通じて判断されるため、控訴審の第1回期日に提出されても、時機に後れたものとして却下されることがある。
(H20 司法 第63問 イ)
実体法上の形成権を訴訟上行使する旨の主張は、時機に後れた攻撃防御方法の却下の対象とならない。
実体法上の形成権を訴訟上行使する旨の主張は、時機に後れた攻撃防御方法の却下の対象とならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭30.4.5)は、「上告人が第2審において始めてなした買取請求権行使に関する主張が、故意又は重大なる過失により時機に後れてなされた防禦方法でないと断定することはできない。」として、当該訴訟で行使された建物買取請求権が時期に後れた攻撃防御方法にあたり、却下されるべきであると示している。
また、建物買取請求権は、形成権の一種である。
したがって、実体法上の形成権を訴訟上行使する旨の主張は、時機に後れた攻撃防御方法の却下の対象となる。
判例(最判昭30.4.5)は、「上告人が第2審において始めてなした買取請求権行使に関する主張が、故意又は重大なる過失により時機に後れてなされた防禦方法でないと断定することはできない。」として、当該訴訟で行使された建物買取請求権が時期に後れた攻撃防御方法にあたり、却下されるべきであると示している。
また、建物買取請求権は、形成権の一種である。
したがって、実体法上の形成権を訴訟上行使する旨の主張は、時機に後れた攻撃防御方法の却下の対象となる。
(H20 司法 第63問 エ)
控訴審において初めて提出した攻撃防御方法が時機に後れたものかどうかは、第1審以来の訴訟手続の経過を勘案して判断すべきである。
控訴審において初めて提出した攻撃防御方法が時機に後れたものかどうかは、第1審以来の訴訟手続の経過を勘案して判断すべきである。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭30.4.5)は、「控訴審における民訴139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであ…る。」としている。
判例(最判昭30.4.5)は、「控訴審における民訴139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであ…る。」としている。
(R1 予備 第44問 オ)
当事者が控訴審において新たに提出した攻撃防御方法について、控訴裁判所は、控訴審の審理経過だけでなく、第一審における審理経過についても考慮し、時機に後れたものであるか否かを判断する。
当事者が控訴審において新たに提出した攻撃防御方法について、控訴裁判所は、控訴審の審理経過だけでなく、第一審における審理経過についても考慮し、時機に後れたものであるか否かを判断する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭30.4.5)は、「控訴審における民訴139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであ…る。」としている。
判例(最判昭30.4.5)は、「控訴審における民訴139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであ…る。」としている。
総合メモ
唯一の証拠方法の却下 最大判昭和30年4月27日
総合メモ
当事者の主張した自己に不利益な事実で相手方の援用しないものが訴訟資料となるか 最一小判昭和41年9月8日
概要
所有権に基づき土地の明渡を求めた当事者が相手方に対しその土地の使用を許した事実を主張し、裁判所がこれを確定した場合には、相手方が右事実を自己の利益に援用しなかったときでも、裁判所は、その当事者の請求の当否を判断するについてその事実をしんしゃくすべきである。
判例
事案:所有権に基づき土地の明渡を求めた当事者が相手方に対しその土地の使用を許した事実を主張し、裁判所がこれを確定したが、相手方が右事実を自己の利益に援用しなかった事案において、当事者の主張した自己に不利益な事実で相手方の援用しないものが訴訟資料となるか問題となった。
判旨:「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきであると解するのが相当である。」
判旨:「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきであると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第70問 2)
Xは、「甲建物は、かつてAが所有していたが、同人が死亡し、同人の子で唯一の相続人であるXが相続した。しかるに、Yは何らの権原もなく、同建物を占有している。」と主張し、同建物の所有権に基づいて、Yに対して、同建物の明渡しを求める訴えを提起した。Yは、「元所有者のAは、生前Yに甲建物を賃貸し、同建物を引き渡した。」と主張した。Xは、このYの主張を否認し、「AはYに、甲建物を、期間の定めなくYの居住のため無償で利用させる旨約束して、これを引き渡したが、Yの居住の目的に従った使用収益をするのに足りる期間は経過した。」と主張した。Yは、このXの主張を全部否認した。裁判所は、証拠調べの結果、AY間において使用貸借契約が成立したが、Xの主張する期間の経過は認められないと判断した場合、Yの使用借権の存在を理由として、Xの請求を棄却することができる。
Xは、「甲建物は、かつてAが所有していたが、同人が死亡し、同人の子で唯一の相続人であるXが相続した。しかるに、Yは何らの権原もなく、同建物を占有している。」と主張し、同建物の所有権に基づいて、Yに対して、同建物の明渡しを求める訴えを提起した。Yは、「元所有者のAは、生前Yに甲建物を賃貸し、同建物を引き渡した。」と主張した。Xは、このYの主張を否認し、「AはYに、甲建物を、期間の定めなくYの居住のため無償で利用させる旨約束して、これを引き渡したが、Yの居住の目的に従った使用収益をするのに足りる期間は経過した。」と主張した。Yは、このXの主張を全部否認した。裁判所は、証拠調べの結果、AY間において使用貸借契約が成立したが、Xの主張する期間の経過は認められないと判断した場合、Yの使用借権の存在を理由として、Xの請求を棄却することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告Xが主張している、「AはYに、甲建物を、期間の定めなくYの居住のため無償で利用させる旨約束して、これを引き渡した。」という事実は、被告Yが主張すべき事実である。もっとも、かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。
したがって、裁判所は、証拠調べの結果、AY間において使用貸借契約が成立したが、Xの主張する期間の経過は認められないと判断した場合、Yの使用借権の存在を理由として、Xの請求を棄却することができる。
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告Xが主張している、「AはYに、甲建物を、期間の定めなくYの居住のため無償で利用させる旨約束して、これを引き渡した。」という事実は、被告Yが主張すべき事実である。もっとも、かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。
したがって、裁判所は、証拠調べの結果、AY間において使用貸借契約が成立したが、Xの主張する期間の経過は認められないと判断した場合、Yの使用借権の存在を理由として、Xの請求を棄却することができる。
(H23 共通 第66問 オ)
所有権に基づく建物明渡請求訴訟の原告が、被告との間で当該建物について使用貸借契約を締結したがその契約は終了した旨の陳述をしたのに対し、被告は、当該建物はもともと自己の所有する建物であったと主張し、口頭弁論の終結に至るまで、原告が陳述した使用貸借契約締結の事実を援用しなかった。この場合、裁判所は、証拠調べの結果、当該使用貸借契約締結の事実が認められるとの心証を得ても、この事実を判決の基礎とすることができない。
所有権に基づく建物明渡請求訴訟の原告が、被告との間で当該建物について使用貸借契約を締結したがその契約は終了した旨の陳述をしたのに対し、被告は、当該建物はもともと自己の所有する建物であったと主張し、口頭弁論の終結に至るまで、原告が陳述した使用貸借契約締結の事実を援用しなかった。この場合、裁判所は、証拠調べの結果、当該使用貸借契約締結の事実が認められるとの心証を得ても、この事実を判決の基礎とすることができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告が陳述した使用貸借契約締結の事実は、被告が主張すべき事実である。かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告が陳述した使用貸借契約締結の事実は、被告が主張すべき事実である。かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。
(R2 予備 第39問 2)
所有権に基づく建物明渡請求訴訟において、「原告は、被告に対してその建物を無償で使用させていた。」との事実を原告が陳述した場合には、被告がその援用をしないときであっても、裁判所は、原告と被告との間でその建物の使用貸借契約が成立したことを判決の基礎とすることができる。
所有権に基づく建物明渡請求訴訟において、「原告は、被告に対してその建物を無償で使用させていた。」との事実を原告が陳述した場合には、被告がその援用をしないときであっても、裁判所は、原告と被告との間でその建物の使用貸借契約が成立したことを判決の基礎とすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告が陳述していた、「原告は、被告に対してその建物を無償で使用させていた。」という事実は、被告が主張立証すべき事項である。もっとも、かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告が陳述していた、「原告は、被告に対してその建物を無償で使用させていた。」という事実は、被告が主張立証すべき事項である。もっとも、かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。
総合メモ
相手方の援用しない自己に不利益な事実の陳述(主張共通の原則) 最一小判平成9年7月17日
概要
主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができる(主張共通の原則)。
判例
事案:請求の一部についての予備的請求原因となるべき事実を被告が主張し、原告がこれを自己の利益に援用しなかった事案において、裁判所はこの事実をしんしゃくすべきであるかが問題となった。
判旨:「原審の確定したところによれば、定次は昭和29年4月5日に死亡し、定次には妻田辺正美及び上告人を含む6人の子があったというのである。したがって、原審の認定するとおり、本件土地を賃借し、本件建物を建築したのが定次であるとすれば、本件土地の賃借権及び本件建物の所有権は定次の遺産であり、これを右7人が相続したことになる。そして、上告人の法定相続分は9分の1であるから、これと異なる遺産分割がされたなどの事実がない限り、上告人は、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことが明らかである。
上告人が、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことを前提として、予備的に右持分の確認等を請求するのであれば、定次が本件土地を賃借し、本件建物を建築したとの事実がその請求原因の一部となり、この事実については上告人が主張立証責任を負担する。本件においては、上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和38年(オ)第1227号同41年9月8日第一小法廷判決・民集20巻7号1314頁参照)。」
判旨:「原審の確定したところによれば、定次は昭和29年4月5日に死亡し、定次には妻田辺正美及び上告人を含む6人の子があったというのである。したがって、原審の認定するとおり、本件土地を賃借し、本件建物を建築したのが定次であるとすれば、本件土地の賃借権及び本件建物の所有権は定次の遺産であり、これを右7人が相続したことになる。そして、上告人の法定相続分は9分の1であるから、これと異なる遺産分割がされたなどの事実がない限り、上告人は、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことが明らかである。
上告人が、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことを前提として、予備的に右持分の確認等を請求するのであれば、定次が本件土地を賃借し、本件建物を建築したとの事実がその請求原因の一部となり、この事実については上告人が主張立証責任を負担する。本件においては、上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和38年(オ)第1227号同41年9月8日第一小法廷判決・民集20巻7号1314頁参照)。」
過去問・解説
(R5 予備 第39問 3)
Xは、Yに対し、300万円を貸し付けたと主張して、消費貸借契約に基づく貸金返還請求として300万円の支払を求める訴えを甲裁判所に提起した(以下、この消費貸借契約を「本件消費貸借契約」といい、この訴えを「本件訴え」という。)。
Xは、Yが貸付けの事実を認めた上で、消滅時効の抗弁を主張したため、時効の更新の再抗弁として、Yから300万円のうち100万円の弁済を受けた事実を主張したところ、Yはこの弁済の事実を否認した。Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。
Xは、Yに対し、300万円を貸し付けたと主張して、消費貸借契約に基づく貸金返還請求として300万円の支払を求める訴えを甲裁判所に提起した(以下、この消費貸借契約を「本件消費貸借契約」といい、この訴えを「本件訴え」という。)。
Xは、Yが貸付けの事実を認めた上で、消滅時効の抗弁を主張したため、時効の更新の再抗弁として、Yから300万円のうち100万円の弁済を受けた事実を主張したところ、Yはこの弁済の事実を否認した。Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平9.7.17)は、「上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべき…である。」として、主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができるという考えを採用している(これを「主張共通の原則」という。)
本肢において、Yが弁済したという事実は、消滅時効の抗弁が認められなかった場合に、一部弁済の抗弁となり、予備的な主張となる。かかる予備的主張をする場合、一部弁済の事実はYが主張立証責任を負う。
したがって、原告Xが弁済の事実を主張し、被告Yがこれを否認したとしても、弁済の抗弁を認定することができるから、Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。
判例(最判平9.7.17)は、「上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべき…である。」として、主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができるという考えを採用している(これを「主張共通の原則」という。)
本肢において、Yが弁済したという事実は、消滅時効の抗弁が認められなかった場合に、一部弁済の抗弁となり、予備的な主張となる。かかる予備的主張をする場合、一部弁済の事実はYが主張立証責任を負う。
したがって、原告Xが弁済の事実を主張し、被告Yがこれを否認したとしても、弁済の抗弁を認定することができるから、Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。
総合メモ
当事者から主張されない消極的間接事実を認定すること 最三小判昭和46年6月29日
概要
請求原因事実または抗弁事実の存否に争いがある場合に、裁判所が右主張事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張責任のない事実を認定し、もって右請求原因事実または抗弁事実の立証なしとして排斥することは、認定された事実が当事者によって主張されていない場合でも、弁論主義に違反しない。
判例
事案:被告が主張した抗弁について、かかる抗弁事実と両立せず、かつ、原告に主張責任のない事実を認定してかかる抗弁を排斥した事案において、当事者の一定の主張を排斥するために当事者から主張されない他の事実を認定することと弁論主義の関係が問題となった。
判旨:「被告が原告の主張する請求原因事実を否認し、または原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が右請求原因または抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって右請求原因たる主張または抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。けだし、右の場合に主張者たる当事者が不利益を受けるのはもっぱら自己の主張にかかる請求原因事実または抗弁事実の立証ができなかったためであって、別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである。」
判旨:「被告が原告の主張する請求原因事実を否認し、または原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が右請求原因または抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって右請求原因たる主張または抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。けだし、右の場合に主張者たる当事者が不利益を受けるのはもっぱら自己の主張にかかる請求原因事実または抗弁事実の立証ができなかったためであって、別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである。」
過去問・解説
(R2 予備 第39問 4)
保証債務履行請求訴訟において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合には、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所は、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることができる。
保証債務履行請求訴訟において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合には、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所は、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.6.29)は、本肢と同種の事案において、「原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が…抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって…抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。」としている。なぜならば、ここでいう「抗弁として主張された事実…と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実」とは、抗弁事実を否認するための消極的間接事実にすぎず、弁論主義の適用がないからである。
本肢において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合に、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所が、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることは、弁論主義に違反するものではなく、許される。弁済の抗弁の主要事実は、「訴求債権に対する弁済」であり、「訴求債権に対する弁済はない」との事実は、弁済の抗弁の主要事実との関係で否認の理由たる消極的間接事実にすぎないからである。
判例(最判昭46.6.29)は、本肢と同種の事案において、「原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が…抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって…抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。」としている。なぜならば、ここでいう「抗弁として主張された事実…と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実」とは、抗弁事実を否認するための消極的間接事実にすぎず、弁論主義の適用がないからである。
本肢において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合に、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所が、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることは、弁論主義に違反するものではなく、許される。弁済の抗弁の主要事実は、「訴求債権に対する弁済」であり、「訴求債権に対する弁済はない」との事実は、弁済の抗弁の主要事実との関係で否認の理由たる消極的間接事実にすぎないからである。
総合メモ
留置権の抗弁 最一小判昭和27年11月27日
概要
置留権のような権利抗弁にあつては、抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張せられたとしても、権利者においてその権利を行使する意思を表明しないかぎり、裁判所においてこれを斟酌することはできない。
判例
事案:留置権の基礎たる事実関係の主張があるにすぎない事案において、留置権を行使する意思の表明がない場合にも留置権の抗弁を斟酌することができるかが問題となった。
判旨:「記録によると、原審で上告人は被上告人に対し所論のように借地法10条による建物買収請求の意思表示をしたことは認め得るけれど、その代金の支払あるまで当該建物を留置する旨の抗弁を主張したことを認むべき証跡は存在しない。さればたとい右建物の買収請求により上告人と被上告人との間に当該建物につき売買契約をしたのと同様の法律上の効果を生じ、建物の所有権は被上告人に移転し、上告人は被上告人に対しこれが引渡義務を、また被上告人は上告人に対しこれが代金支払義務をそれぞれ負担することとなり、従って当然に上告人において被上告人がその代金の支払をなすまで右建物の上に留置権を取得するに至ったとしても、前説示のように上告人において該権利を行使した形跡のない以上、原審がこれを斟酌しなかったのはむしろ当然であり原判決には所論第一点のような違法があるとはいえない、けだし、権利は権利者の意思によって行使されその権利行使によって権利者はその権利の内容たる利益を享受するのである。それ故留置権のような権利抗弁にあっては、弁済免除等の事実抗弁が苟くもその抗弁を構成する事実関係の主張せられた以上、それが抗弁により利益を受ける者により主張せられたると、その相手方により主張せられたるとを問わず、常に裁判所においてこれを斟酌しなければならないのと異なり、たとい抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張せられたとしても権利者において権利を行使する意思を表明しない限り裁判所においてこれを斟酌することはできないのである…。そしてまた当事者の一方が或る権利を取得したことを窺わしめるような事実が訴訟上あらわれたに拘わらず、その当事者がこれを行使しない場合にあっても、裁判所はその者に対しその権利行使の意思の有無をたしかめ、或はその権利行使を促すべき責務あるものではない。」
判旨:「記録によると、原審で上告人は被上告人に対し所論のように借地法10条による建物買収請求の意思表示をしたことは認め得るけれど、その代金の支払あるまで当該建物を留置する旨の抗弁を主張したことを認むべき証跡は存在しない。さればたとい右建物の買収請求により上告人と被上告人との間に当該建物につき売買契約をしたのと同様の法律上の効果を生じ、建物の所有権は被上告人に移転し、上告人は被上告人に対しこれが引渡義務を、また被上告人は上告人に対しこれが代金支払義務をそれぞれ負担することとなり、従って当然に上告人において被上告人がその代金の支払をなすまで右建物の上に留置権を取得するに至ったとしても、前説示のように上告人において該権利を行使した形跡のない以上、原審がこれを斟酌しなかったのはむしろ当然であり原判決には所論第一点のような違法があるとはいえない、けだし、権利は権利者の意思によって行使されその権利行使によって権利者はその権利の内容たる利益を享受するのである。それ故留置権のような権利抗弁にあっては、弁済免除等の事実抗弁が苟くもその抗弁を構成する事実関係の主張せられた以上、それが抗弁により利益を受ける者により主張せられたると、その相手方により主張せられたるとを問わず、常に裁判所においてこれを斟酌しなければならないのと異なり、たとい抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張せられたとしても権利者において権利を行使する意思を表明しない限り裁判所においてこれを斟酌することはできないのである…。そしてまた当事者の一方が或る権利を取得したことを窺わしめるような事実が訴訟上あらわれたに拘わらず、その当事者がこれを行使しない場合にあっても、裁判所はその者に対しその権利行使の意思の有無をたしかめ、或はその権利行使を促すべき責務あるものではない。」
過去問・解説
(R2 予備 第39問 1)
所有権に基づく動産引渡請求訴訟において、被告が留置権の発生の原因となる事実を主張した場合には、被告が留置権を行使する意思を表明していないときであっても、裁判所は、被告が留置権を有することを判決の基礎とすることができる。
所有権に基づく動産引渡請求訴訟において、被告が留置権の発生の原因となる事実を主張した場合には、被告が留置権を行使する意思を表明していないときであっても、裁判所は、被告が留置権を有することを判決の基礎とすることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭27.11.27)は、「留置権のような権利抗弁にあっては、…たとい抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張せられたとしても権利者においてその権利を行使する意思を表明しない限り裁判所においてこれを斟酌することはできない…。」としている。
したがって、被告が留置権を行使する意思を表明していないとき、裁判所は、被告が留置権を有することを判決の基礎とすることができない。
判例(最判昭27.11.27)は、「留置権のような権利抗弁にあっては、…たとい抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張せられたとしても権利者においてその権利を行使する意思を表明しない限り裁判所においてこれを斟酌することはできない…。」としている。
したがって、被告が留置権を行使する意思を表明していないとき、裁判所は、被告が留置権を有することを判決の基礎とすることができない。
総合メモ
不法行為を理由とする損害賠償請求における過失相殺と当事者による主張の要否 最三小判昭和41年6月21日
概要
不法行為を理由とする損害賠償請求訴訟において、被害者に過失があると認めるときには、裁判所は、当事者からの主張を要しないで、過失相殺をすることができる。
判例
事案:不法行為を理由とする損害賠償請求にいて、被害者に過失があると認められる事案において、過失相殺と当事者による主張の要否が問題となった。
判旨:「不法行為による損害賠償の額を定めるにあたり、被害者に過失のあるときは、裁判所がこれをしんしゃくすることができることは民法722条の規定するところである。この規定によると、被害者の過失は賠償額の範囲に影響を及ぼすべき事実であるから、裁判所は訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合には、賠償額を判定するについて職権をもってこれをしんしゃくすることができると解すべきであって、賠償義務者から過失相殺の主張のあることを要しないものである(大審院判昭和2年(オ)802号・同3年8月1日民集7巻648頁参照)。
したがって、これと異なり、過失相殺にもいわゆる弁論主義の適用のあることを主張する論旨は、失当として排斥を免れない。」
判旨:「不法行為による損害賠償の額を定めるにあたり、被害者に過失のあるときは、裁判所がこれをしんしゃくすることができることは民法722条の規定するところである。この規定によると、被害者の過失は賠償額の範囲に影響を及ぼすべき事実であるから、裁判所は訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合には、賠償額を判定するについて職権をもってこれをしんしゃくすることができると解すべきであって、賠償義務者から過失相殺の主張のあることを要しないものである(大審院判昭和2年(オ)802号・同3年8月1日民集7巻648頁参照)。
したがって、これと異なり、過失相殺にもいわゆる弁論主義の適用のあることを主張する論旨は、失当として排斥を免れない。」
過去問・解説
(R2 予備 第39問 5)
不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、被告が原告に損害の発生に関する過失があることの根拠となる事実を主張した場合には、被告が過失相殺を主張していないときであっても、裁判所は、過失相殺の結果を判決の基礎とすることができる。
不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、被告が原告に損害の発生に関する過失があることの根拠となる事実を主張した場合には、被告が過失相殺を主張していないときであっても、裁判所は、過失相殺の結果を判決の基礎とすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.6.21)は、本肢と同種の事案において、「裁判所は訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合には、賠償額を判定するについて職権をもってこれをしんしゃくすることができると解すべきであって、賠償義務者から過失相殺の主張のあることを要しない…。」としている。
判例(最判昭41.6.21)は、本肢と同種の事案において、「裁判所は訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合には、賠償額を判定するについて職権をもってこれをしんしゃくすることができると解すべきであって、賠償義務者から過失相殺の主張のあることを要しない…。」としている。
総合メモ
釈明の内容が別個の請求原因にわたる場合と裁判所の釈明権能 最一小判昭和45年6月11日
概要
請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成とがそれ自体正当ではあるが、証拠資料により認定される事実関係との間に食い違いがあってその申立てを認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過や訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば原告の申立てを認容することができ、当事者間における紛争の根本的解決が期待できるにかかわらず、原告においてその主張をせず、かつ、主張しないことが明らかに原告の誤解または不注意に基づくものと認められるようなときは、事実審裁判所は、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明し、場合によっては発問の形式によって具体的な法律構成を示唆して真意を確かめることも許される。
判例
事案:請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成とがそれ自体正当ではあるが、証拠資料により認定される事実関係との間に食い違いがあってその申立てを認容することができない事案において、その内容が別個の請求原因にわたるような釈明をすることも裁判所の釈明権能に含まれるかが問題となった。
判旨:「釈明の制度は、弁論主義の形式的な適用による不合理を修正し、訴訟関係を明らかにし、できるだけ事案の真相をきわめることによって、当事者間における紛争の真の解決をはかることを目的として設けられたものであるから、原告の申立に対応する請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成が、それ自体正当ではあるが、証拠資料によって認定される事実関係との間に喰い違いがあって、その請求を認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過やすでに明らかになった訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば、原告の請求を認容することができ、当事者間における紛争の根本的な解決が期待できるにかかわらず、原告においてそのような主張をせず、かつ、そのような主張をしないことが明らかに原告の誤解または不注意と認められるようなときは、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、事実審裁判所としては、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明することが許されるものと解すべきであり、場合によっては、発問の形式によって具体的な法律構成を示唆してその真意を確めることが適当である場合も存するのである。」
判旨:「釈明の制度は、弁論主義の形式的な適用による不合理を修正し、訴訟関係を明らかにし、できるだけ事案の真相をきわめることによって、当事者間における紛争の真の解決をはかることを目的として設けられたものであるから、原告の申立に対応する請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成が、それ自体正当ではあるが、証拠資料によって認定される事実関係との間に喰い違いがあって、その請求を認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過やすでに明らかになった訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば、原告の請求を認容することができ、当事者間における紛争の根本的な解決が期待できるにかかわらず、原告においてそのような主張をせず、かつ、そのような主張をしないことが明らかに原告の誤解または不注意と認められるようなときは、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、事実審裁判所としては、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明することが許されるものと解すべきであり、場合によっては、発問の形式によって具体的な法律構成を示唆してその真意を確めることが適当である場合も存するのである。」
過去問・解説
(H28 予備 第39問 2)
具体的な法律構成を示唆して訴えの変更を促す釈明権の行使は、許されない。
具体的な法律構成を示唆して訴えの変更を促す釈明権の行使は、許されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭45.6.11)は、「原告の申立に対応する請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成が、それ自体正当ではあるが、証拠資料によって認定される事実関係との間に喰い違いがあって、その請求を認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過やすでに明らかになった訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば、原告の請求を認容することができ、当事者間における紛争の根本的な解決が期待できるにかかわらず、原告においてそのような主張をせず、かつ、そのような主張をしないことが明らかに原告の誤解または不注意と認められるようなときは、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、事実審裁判所としては、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明することが許されるものと解すべきであり、場合によっては、発問の形式によって具体的な法律構成を示唆してその真意を確めることが適当である場合も存するのである。」として、具体的な法律構成を示唆する形での釈明権の行使を認めている。
判例(最判昭45.6.11)は、「原告の申立に対応する請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成が、それ自体正当ではあるが、証拠資料によって認定される事実関係との間に喰い違いがあって、その請求を認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過やすでに明らかになった訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば、原告の請求を認容することができ、当事者間における紛争の根本的な解決が期待できるにかかわらず、原告においてそのような主張をせず、かつ、そのような主張をしないことが明らかに原告の誤解または不注意と認められるようなときは、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、事実審裁判所としては、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明することが許されるものと解すべきであり、場合によっては、発問の形式によって具体的な法律構成を示唆してその真意を確めることが適当である場合も存するのである。」として、具体的な法律構成を示唆する形での釈明権の行使を認めている。
総合メモ
債権者代位訴訟の原告である債権者が被告である第三債務者の提出した抗弁に対し自己独自の事情に基づく再抗弁を提出することの可否 最二小判昭和54年3月16日
概要
債権者が債権者代位権に基づきその債務者に属する債権を行使する訴訟において、被告である第三債務者が提出した抗弁に対し、原告の提出することのできる再抗弁事由は債務者自身が主張することのできるものに限られ、原告独自の事情に基づく再抗弁を提出することはできない。
判例
事案:債権者代位訴訟の原告である債権者が被告である第三債務者の提出した抗弁に対し自己独自の事情に基づく再抗弁を提出した事案において、債権者代位訴訟で原告が主張できる再抗弁事由が、債務者自身が主張することのできるものに限られないかが問題となった。
判旨:「債権者代位訴訟における原告は、その債務者に対する自己の債権を保全するため債務者の第三債務者に対する権利について管理権を取得し、その管理権の行使として債務者に代り自己の名において債務者に属する権利を行使するものであるから、その地位はあたかも債務者になり代るものであって、債務者自身が原告になった場合と同様の地位を有するに至るものというべく、したがって、被告となった第三債務者は、債務者がみずから原告になった場合に比べて、より不利益な地位に立たされることがないとともに、原告となった債権者もまた、その債務者が現に有する法律上の地位に比べて、より有利な地位を享受しうるものではないといわなければならない。そうであるとするならば、第三債務者である被告の提出した債務者に対する債権を自働債権とする相殺の抗弁に対し、代位債権者たる原告の提出することのできる再抗弁は、債務者自身が主張することのできる再抗弁事由に限定されるべきであって、債務者と関係のない、原告の独自の事情に基づく抗弁を提出することはできないものと解さざるをえない。」
判旨:「債権者代位訴訟における原告は、その債務者に対する自己の債権を保全するため債務者の第三債務者に対する権利について管理権を取得し、その管理権の行使として債務者に代り自己の名において債務者に属する権利を行使するものであるから、その地位はあたかも債務者になり代るものであって、債務者自身が原告になった場合と同様の地位を有するに至るものというべく、したがって、被告となった第三債務者は、債務者がみずから原告になった場合に比べて、より不利益な地位に立たされることがないとともに、原告となった債権者もまた、その債務者が現に有する法律上の地位に比べて、より有利な地位を享受しうるものではないといわなければならない。そうであるとするならば、第三債務者である被告の提出した債務者に対する債権を自働債権とする相殺の抗弁に対し、代位債権者たる原告の提出することのできる再抗弁は、債務者自身が主張することのできる再抗弁事由に限定されるべきであって、債務者と関係のない、原告の独自の事情に基づく抗弁を提出することはできないものと解さざるをえない。」
過去問・解説
(H19 司法 第61問 1)
YはAに建物新築工事を注文した。Aはこれを請け負い、同建物の左官工事についてはXがAから下請けした。建物は完成してYに引き渡されたものの、AのYに対する請負代金債権(以下「甲債権」という。)についても、XのAに対する下請工事代金債権(以下「乙債権」という。)についても弁済がなされないまま、Aが経営に行き詰まり、無資力となった。そこで、Xは、Aから乙債権について弁済を受けられないとして、債権者代位権に基づき、Yを被告として甲債権について支払を求める訴えを提起した。Yは、YがXに対して有する債権をもって甲債権と相殺すると主張し、そのことをXの請求に対する抗弁とすることはできない。
YはAに建物新築工事を注文した。Aはこれを請け負い、同建物の左官工事についてはXがAから下請けした。建物は完成してYに引き渡されたものの、AのYに対する請負代金債権(以下「甲債権」という。)についても、XのAに対する下請工事代金債権(以下「乙債権」という。)についても弁済がなされないまま、Aが経営に行き詰まり、無資力となった。そこで、Xは、Aから乙債権について弁済を受けられないとして、債権者代位権に基づき、Yを被告として甲債権について支払を求める訴えを提起した。Yは、YがXに対して有する債権をもって甲債権と相殺すると主張し、そのことをXの請求に対する抗弁とすることはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭54.3.16)は、「債権者代位訴訟における原告は、…債務者自身が原告になった場合と同様の地位を有するに至るものというべく…原告の提出することのできる再抗弁は、債務者自身が主張することのできる再抗弁事由に限定されるべきであって、債務者と関係のない、原告の独自の事情に基づく抗弁を提出することはできない…。」としている。
そうすると、被告が提出できる抗弁も、債務者に対して主張できるものでなくてはならず、債務者と関係のない、債権者と第三債務者間の事情に基づく抗弁は提出できない。
本肢の事案において、Yの、YがXに対して有する債権をもって甲債権と相殺するとの主張は、債務者Aに対して主張できないものであり、債務者と関係のない、債権者と第三債務者間の事情に基づく抗弁である。
したがって、Yの上記主張は、Xの請求に対する抗弁とすることができない。
判例(最判昭54.3.16)は、「債権者代位訴訟における原告は、…債務者自身が原告になった場合と同様の地位を有するに至るものというべく…原告の提出することのできる再抗弁は、債務者自身が主張することのできる再抗弁事由に限定されるべきであって、債務者と関係のない、原告の独自の事情に基づく抗弁を提出することはできない…。」としている。
そうすると、被告が提出できる抗弁も、債務者に対して主張できるものでなくてはならず、債務者と関係のない、債権者と第三債務者間の事情に基づく抗弁は提出できない。
本肢の事案において、Yの、YがXに対して有する債権をもって甲債権と相殺するとの主張は、債務者Aに対して主張できないものであり、債務者と関係のない、債権者と第三債務者間の事情に基づく抗弁である。
したがって、Yの上記主張は、Xの請求に対する抗弁とすることができない。