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口頭弁論(釈明権)

釈明の内容が別個の請求原因にわたる場合と裁判所の釈明権能 最一小判昭和45年6月11日

概要
請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成とがそれ自体正当ではあるが、証拠資料により認定される事実関係との間に食い違いがあってその申立てを認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過や訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば原告の申立てを認容することができ、当事者間における紛争の根本的解決が期待できるにかかわらず、原告においてその主張をせず、かつ、主張しないことが明らかに原告の誤解または不注意に基づくものと認められるようなときは、事実審裁判所は、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明し、場合によっては発問の形式によって具体的な法律構成を示唆して真意を確かめることも許される。
判例
事案:請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成とがそれ自体正当ではあるが、証拠資料により認定される事実関係との間に食い違いがあってその申立てを認容することができない事案において、その内容が別個の請求原因にわたるような釈明をすることも裁判所の釈明権能に含まれるかが問題となった。

判旨:「釈明の制度は、弁論主義の形式的な適用による不合理を修正し、訴訟関係を明らかにし、できるだけ事案の真相をきわめることによって、当事者間における紛争の真の解決をはかることを目的として設けられたものであるから、原告の申立に対応する請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成が、それ自体正当ではあるが、証拠資料によって認定される事実関係との間に喰い違いがあって、その請求を認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過やすでに明らかになった訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば、原告の請求を認容することができ、当事者間における紛争の根本的な解決が期待できるにかかわらず、原告においてそのような主張をせず、かつ、そのような主張をしないことが明らかに原告の誤解または不注意と認められるようなときは、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、事実審裁判所としては、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明することが許されるものと解すべきであり、場合によっては、発問の形式によって具体的な法律構成を示唆してその真意を確めることが適当である場合も存するのである。」
過去問・解説
(H28 予備 第39問 2)
具体的な法律構成を示唆して訴えの変更を促す釈明権の行使は、許されない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.6.11)は、「原告の申立に対応する請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成が、それ自体正当ではあるが、証拠資料によって認定される事実関係との間に喰い違いがあって、その請求を認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過やすでに明らかになった訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば、原告の請求を認容することができ、当事者間における紛争の根本的な解決が期待できるにかかわらず、原告においてそのような主張をせず、かつ、そのような主張をしないことが明らかに原告の誤解または不注意と認められるようなときは、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、事実審裁判所としては、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明することが許されるものと解すべきであり、場合によっては、発問の形式によって具体的な法律構成を示唆してその真意を確めることが適当である場合も存するのである。」として、具体的な法律構成を示唆する形での釈明権の行使を認めている。
総合メモ

債権者代位訴訟の原告である債権者が被告である第三債務者の提出した抗弁に対し自己独自の事情に基づく再抗弁を提出することの可否 最二小判昭和54年3月16日

概要
債権者が債権者代位権に基づきその債務者に属する債権を行使する訴訟において、被告である第三債務者が提出した抗弁に対し、原告の提出することのできる再抗弁事由は債務者自身が主張することのできるものに限られ、原告独自の事情に基づく再抗弁を提出することはできない。
判例
事案:債権者代位訴訟の原告である債権者が被告である第三債務者の提出した抗弁に対し自己独自の事情に基づく再抗弁を提出した事案において、債権者代位訴訟で原告が主張できる再抗弁事由が、債務者自身が主張することのできるものに限られないかが問題となった。

判旨:「債権者代位訴訟における原告は、その債務者に対する自己の債権を保全するため債務者の第三債務者に対する権利について管理権を取得し、その管理権の行使として債務者に代り自己の名において債務者に属する権利を行使するものであるから、その地位はあたかも債務者になり代るものであって、債務者自身が原告になった場合と同様の地位を有するに至るものというべく、したがって、被告となった第三債務者は、債務者がみずから原告になった場合に比べて、より不利益な地位に立たされることがないとともに、原告となった債権者もまた、その債務者が現に有する法律上の地位に比べて、より有利な地位を享受しうるものではないといわなければならない。そうであるとするならば、第三債務者である被告の提出した債務者に対する債権を自働債権とする相殺の抗弁に対し、代位債権者たる原告の提出することのできる再抗弁は、債務者自身が主張することのできる再抗弁事由に限定されるべきであって、債務者と関係のない、原告の独自の事情に基づく抗弁を提出することはできないものと解さざるをえない。」
過去問・解説
(H19 司法 第61問 1)
YはAに建物新築工事を注文した。Aはこれを請け負い、同建物の左官工事についてはXがAから下請けした。建物は完成してYに引き渡されたものの、AのYに対する請負代金債権(以下「甲債権」という。)についても、XのAに対する下請工事代金債権(以下「乙債権」という。)についても弁済がなされないまま、Aが経営に行き詰まり、無資力となった。そこで、Xは、Aから乙債権について弁済を受けられないとして、債権者代位権に基づき、Yを被告として甲債権について支払を求める訴えを提起した。Yは、YがXに対して有する債権をもって甲債権と相殺すると主張し、そのことをXの請求に対する抗弁とすることはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭54.3.16)は、「債権者代位訴訟における原告は、…債務者自身が原告になった場合と同様の地位を有するに至るものというべく…原告の提出することのできる再抗弁は、債務者自身が主張することのできる再抗弁事由に限定されるべきであって、債務者と関係のない、原告の独自の事情に基づく抗弁を提出することはできない…。」としている。
そうすると、被告が提出できる抗弁も、債務者に対して主張できるものでなくてはならず、債務者と関係のない、債権者と第三債務者間の事情に基づく抗弁は提出できない。
本肢の事案において、Yの、YがXに対して有する債権をもって甲債権と相殺するとの主張は、債務者Aに対して主張できないものであり、債務者と関係のない、債権者と第三債務者間の事情に基づく抗弁である。
したがって、Yの上記主張は、Xの請求に対する抗弁とすることができない。
総合メモ