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判決(申立拘束原則)
数量的一部請求における訴訟物 最三小判昭和42年7月18日
概要
不法行為によって受傷した被害者が、その受傷について、相当期間経過後に、受傷当時には医学的に通常予想しえなかった治療が必要となり、その治療のため費用を支出することを余儀なくされるに至った場合には、かかる費用の損害賠償請求権について前訴の既判力は及ばない。
判例
事案:不法行為によって受傷した被害者が、相当期間経過後に、受傷当時に予想しえなかった治療が必要となったため、治療費用にかかる損害賠償を求めて訴えを提起した事案において、前訴の既判力が及ぶかが問題となった。
判旨:「1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合には、訴訟物は、右債権の一部の存否のみであって全部の存否ではなく、従って、右一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないと解するのが相当である(当裁判所昭和35年(オ)第359号、同37年8月10日言渡第二小法廷判決、民集16巻8号1720頁参照)。ところで、記録によれば、所論の前訴…における被上告人の請求は、被上告人主張の本件不法行為により惹起された損害のうち、右前訴の最終口頭弁論期日たる同35年5月25日までに支出された治療費を損害として主張しその賠償を求めるものであるところ、本件訴訟における被上告人の請求は、前記の口頭弁論期日後にその主張のような経緯で再手術を受けることを余儀なくされるにいたったと主張し、右治療に要した費用を損害としてその賠償を請求するものであることが明らかである。右の事実によれば、所論の前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべきであり、原判決に所論の違法は存しない。」
判旨:「1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合には、訴訟物は、右債権の一部の存否のみであって全部の存否ではなく、従って、右一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないと解するのが相当である(当裁判所昭和35年(オ)第359号、同37年8月10日言渡第二小法廷判決、民集16巻8号1720頁参照)。ところで、記録によれば、所論の前訴…における被上告人の請求は、被上告人主張の本件不法行為により惹起された損害のうち、右前訴の最終口頭弁論期日たる同35年5月25日までに支出された治療費を損害として主張しその賠償を求めるものであるところ、本件訴訟における被上告人の請求は、前記の口頭弁論期日後にその主張のような経緯で再手術を受けることを余儀なくされるにいたったと主張し、右治療に要した費用を損害としてその賠償を請求するものであることが明らかである。右の事実によれば、所論の前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべきであり、原判決に所論の違法は存しない。」
過去問・解説
(H21 司法 第69問 5)
交通事故による受傷に関して口頭弁論終結時までに支出した治療費につき損害賠償を命じる前訴判決が確定した後、前訴の原告が、前訴の口頭弁論終結時には医学的に予想できなかった後遺症が現れ、手術を余儀なくされたとして、当該手術による治療費についての損害賠償を求めて提起した後訴について、前訴確定判決の既判力は後訴の請求に関する判断に作用しない。
交通事故による受傷に関して口頭弁論終結時までに支出した治療費につき損害賠償を命じる前訴判決が確定した後、前訴の原告が、前訴の口頭弁論終結時には医学的に予想できなかった後遺症が現れ、手術を余儀なくされたとして、当該手術による治療費についての損害賠償を求めて提起した後訴について、前訴確定判決の既判力は後訴の請求に関する判断に作用しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.7.18)は、本肢と同種の事案において、「前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべき…。」としている。
したがって、口頭弁論終結時までに支出した治療費につき損害賠償を命じる前訴確定判決の既判力は、後遺症の請求に関する後訴の判断に作用しない。
判例(最判昭42.7.18)は、本肢と同種の事案において、「前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべき…。」としている。
したがって、口頭弁論終結時までに支出した治療費につき損害賠償を命じる前訴確定判決の既判力は、後遺症の請求に関する後訴の判断に作用しない。
(H30 予備 第41問 3)
XがYに対して交通事故による損害賠償として1000万円の支払を求める訴訟において、400万円の限度で請求を認容する判決が確定した場合に、XがYに対してその後に同一の交通事故による損害賠償を求めて提起した訴えにおいて、前訴の事実審の口頭弁論終結時までに予見することができなかった後遺障害がその後に発生したと主張することは、前訴の確定判決の既判力に抵触し、許されない。
XがYに対して交通事故による損害賠償として1000万円の支払を求める訴訟において、400万円の限度で請求を認容する判決が確定した場合に、XがYに対してその後に同一の交通事故による損害賠償を求めて提起した訴えにおいて、前訴の事実審の口頭弁論終結時までに予見することができなかった後遺障害がその後に発生したと主張することは、前訴の確定判決の既判力に抵触し、許されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭42.7.18)は、本肢と同種の事案において、「前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべき…。」としている。
したがって、前訴の既判力は後訴に及ばないため、Xが後遺障害の事実を主張することも許される。
判例(最判昭42.7.18)は、本肢と同種の事案において、「前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべき…。」としている。
したがって、前訴の既判力は後訴に及ばないため、Xが後遺障害の事実を主張することも許される。
総合メモ
数量的一部請求と相殺の抗弁 最三小判平成6年11月22日
概要
①特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において、相殺の抗弁に理由がある場合には、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、請求額が残存額の範囲内であるときは請求の全額を、残存額を超えるときは残存額の限度で認容すべきである。
②特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において、相殺のため主張された自働債権の存否の判断は、金銭債権の総額から一部請求の額を控除した残額部分に対応する範囲については既判力を生じない。
②特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において、相殺のため主張された自働債権の存否の判断は、金銭債権の総額から一部請求の額を控除した残額部分に対応する範囲については既判力を生じない。
判例
事案:金銭債権の一部を請求する訴訟の中で、相殺が主張された事案において、①いかなる額から控除すべきか及びいかなる範囲で請求を認容すべきか、②金銭債権の一部を請求する訴訟の中で、相殺のため主張された自働債権の存否の判断にいかなる範囲で既判力が生じるかなどが問題となった。
判旨:①「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。けだし、一部請求は、特定の金銭債権について、その数量的な一部を少なくともその範囲においては請求権が現存するとして請求するものであるので、右債権の総額が何らかの理由で減少している場合に、債権の総額からではなく、一部請求の額から減少額の全額又は債権総額に対する一部請求の額の割合で案分した額を控除して認容額を決することは、一部請求を認める趣旨に反するからである。」
②「一部請求において、確定判決の既判力は、当該債権の訴訟上請求されなかった残部の存否には及ばないとすること判例であり(最高裁昭和35年(オ)第359号同37年8月10日第二小法廷判決・民集16巻8号1720頁)、相殺の抗弁により自働債権の存否について既判力が生ずるのは、請求の範囲に対して『 相殺ヲ以テ対抗シタル額』に限られるから、当該債権の総額から自働債権の額を控除した結果残存額が一部請求の額を超えるときは、一部請求の額を超える範囲の自働債権の存否については既判力を生じない。したがって、一部請求を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁が理由がある場合に、控訴審において、まず当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第一審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却しても、不利益変更禁止の原則に反するものではない。」
判旨:①「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。けだし、一部請求は、特定の金銭債権について、その数量的な一部を少なくともその範囲においては請求権が現存するとして請求するものであるので、右債権の総額が何らかの理由で減少している場合に、債権の総額からではなく、一部請求の額から減少額の全額又は債権総額に対する一部請求の額の割合で案分した額を控除して認容額を決することは、一部請求を認める趣旨に反するからである。」
②「一部請求において、確定判決の既判力は、当該債権の訴訟上請求されなかった残部の存否には及ばないとすること判例であり(最高裁昭和35年(オ)第359号同37年8月10日第二小法廷判決・民集16巻8号1720頁)、相殺の抗弁により自働債権の存否について既判力が生ずるのは、請求の範囲に対して『 相殺ヲ以テ対抗シタル額』に限られるから、当該債権の総額から自働債権の額を控除した結果残存額が一部請求の額を超えるときは、一部請求の額を超える範囲の自働債権の存否については既判力を生じない。したがって、一部請求を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁が理由がある場合に、控訴審において、まず当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第一審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却しても、不利益変更禁止の原則に反するものではない。」
過去問・解説
(H18 司法 第62問 3)
明示的一部請求訴訟において、被告が相殺の抗弁を提出した場合は、一部請求額から反対債権の全額を控除し、控除後の残額があるときはその残額を算定して請求認容額を決めるべきである。
明示的一部請求訴訟において、被告が相殺の抗弁を提出した場合は、一部請求額から反対債権の全額を控除し、控除後の残額があるときはその残額を算定して請求認容額を決めるべきである。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
(H26 共通 第71問 イ)
XはYと締結した自らを注文主とする建物建築請負契約をYの債務不履行を理由に工事完成前に解除し、Yを被告として、総額1000万円の損害賠償債権のうちの一部であることを明示して400万円の支払を求める訴えを提起した。
裁判所は、Yの債務不履行に基づくXの1000万円の損害賠償債権は認められるが、Yから提出されたXに対する売買代金債権400万円を自働債権とする相殺の抗弁に理由があるとの心証を得たときは、Xの請求を棄却すべきである。
XはYと締結した自らを注文主とする建物建築請負契約をYの債務不履行を理由に工事完成前に解除し、Yを被告として、総額1000万円の損害賠償債権のうちの一部であることを明示して400万円の支払を求める訴えを提起した。
裁判所は、Yの債務不履行に基づくXの1000万円の損害賠償債権は認められるが、Yから提出されたXに対する売買代金債権400万円を自働債権とする相殺の抗弁に理由があるとの心証を得たときは、Xの請求を棄却すべきである。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
本肢において、総額の1000万円から自働債権の400万円を控除した残存額は600万円であり、請求額である400万円はこの範囲内である。
したがって、Xの請求を棄却すべきではなく、そのまま認容すべきである。
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
本肢において、総額の1000万円から自働債権の400万円を控除した残存額は600万円であり、請求額である400万円はこの範囲内である。
したがって、Xの請求を棄却すべきではなく、そのまま認容すべきである。
(H29 予備 第41問 オ)
裁判所は、特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において、相殺の抗弁に理由があると認めるときは、請求額から自働債権の額を控除した残存額の限度で請求を認容する判決をしなければならない。
裁判所は、特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において、相殺の抗弁に理由があると認めるときは、請求額から自働債権の額を控除した残存額の限度で請求を認容する判決をしなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
(R6 予備 第44問 イ)
明示的一部請求を認容した第1審判決に対して被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁に理由がある場合に、控訴裁判所が、債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第1審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却することは、不利益変更禁止の原則に反して許されない。
明示的一部請求を認容した第1審判決に対して被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁に理由がある場合に、控訴裁判所が、債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第1審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却することは、不利益変更禁止の原則に反して許されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.11.22)は、「一部請求を認容した第1審判決に対し、被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁が理由がある場合に、控訴審において、まず当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第1審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却しても、不利益変更禁止の原則に反するものではない。」としている。
判例(最判平6.11.22)は、「一部請求を認容した第1審判決に対し、被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁が理由がある場合に、控訴審において、まず当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第1審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却しても、不利益変更禁止の原則に反するものではない。」としている。
総合メモ
一定金額を超える債務の不存在確認請求の訴訟物 最二小判昭和40年9月17日
概要
一定金額を超える債務が存在しない旨の確認請求は、当該債権額から一定金額を控除した残債務額についての不存在の確認を求めるものである。
判例
事案:一定金額を超える債務の不存在確認請求の訴えが提起された事案において、その訴訟物が問題となった。
判旨:「本件請求の趣旨および請求の原因ならびに本件一件記録によると、上告人らが本件訴訟において本件貸金債務について不存在の確認を求めている申立の範囲(訴訟)は、上告人Aについては、その元金として残存することを自認する金14万6465円を本件貸代金債権金110万から控除した残額95万3535円の債務額の不存在の確認であり、その余の上告人らにおいては、右残額金95万3535円の債務額について相続分に応じて分割されたそれぞれの債務額の不存在の確認であることが認められる。したがって、原審としては、右の各請求の当否をきめるためには、…弁済の各主張事実について審理をして本件申立の範囲(訴訟)である前記貸金残額の存否ないしその限度を明確に判断しなければならない。」
判旨:「本件請求の趣旨および請求の原因ならびに本件一件記録によると、上告人らが本件訴訟において本件貸金債務について不存在の確認を求めている申立の範囲(訴訟)は、上告人Aについては、その元金として残存することを自認する金14万6465円を本件貸代金債権金110万から控除した残額95万3535円の債務額の不存在の確認であり、その余の上告人らにおいては、右残額金95万3535円の債務額について相続分に応じて分割されたそれぞれの債務額の不存在の確認であることが認められる。したがって、原審としては、右の各請求の当否をきめるためには、…弁済の各主張事実について審理をして本件申立の範囲(訴訟)である前記貸金残額の存否ないしその限度を明確に判断しなければならない。」
過去問・解説
(H21 司法 第61問 エ)
50万円を超えて貸金債務が存在しないことの確認を求める訴えについて、裁判所は、50万円を超えて債務が存在すると認めた場合には、貸金残額の存否ないしその限度を明確に判断することなく、直ちに請求を棄却する判決をすることができる。
50万円を超えて貸金債務が存在しないことの確認を求める訴えについて、裁判所は、50万円を超えて債務が存在すると認めた場合には、貸金残額の存否ないしその限度を明確に判断することなく、直ちに請求を棄却する判決をすることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭40.9.17)は、「各請求の当否をきめるためには、…弁済の各主張事実について審理をして本件申立の範囲(訴訟)である前記貸金残額の存否ないしその限度を明確に判断しなければならない。」としている。
したがって、50万円を超えて貸金債務が存在しないことの確認を求める訴えについて、裁判所は、50万円を超えて債務が存在すると認めた場合には、請求棄却判決をするのではなく、貸金残額の存否ないしその限度を明確にした上で、一部認容判決をしなければならない。
判例(最判昭40.9.17)は、「各請求の当否をきめるためには、…弁済の各主張事実について審理をして本件申立の範囲(訴訟)である前記貸金残額の存否ないしその限度を明確に判断しなければならない。」としている。
したがって、50万円を超えて貸金債務が存在しないことの確認を求める訴えについて、裁判所は、50万円を超えて債務が存在すると認めた場合には、請求棄却判決をするのではなく、貸金残額の存否ないしその限度を明確にした上で、一部認容判決をしなければならない。
(H25 共通 第69問 エ)
債務の全額である100万円についての不存在確認を求める訴訟において、裁判所は、当該債務の一部である10万円の債務が存在すると認めるときは、100万円のうち10万円を超える債務の不存在を確認し、その余の請求を棄却する。
債務の全額である100万円についての不存在確認を求める訴訟において、裁判所は、当該債務の一部である10万円の債務が存在すると認めるときは、100万円のうち10万円を超える債務の不存在を確認し、その余の請求を棄却する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭40.9.17)は、債務の一部不存在確認訴訟が提起された事案において、「本件請求の趣旨および請求の原因ならびに本件一件記録によると、上告人らが本件訴訟において本件貸金債務について不存在の確認を求めている申立の範囲(訴訟物)は、上告人…については、その元金として残存することを自認する金14万6465円を本件貸金債権金110万円から控除した残額金95万3535円の債務額の不存在の確認であり、その余の上告人らにおいては、右残額金95万3535円の債務額について相続分に応じて分割されたそれぞれの債務額の不存在の確認であることが認められる。」として、不存在確認訴訟の訴訟物は、不存在であることの確認を求める部分であることを示している。
本肢においては、訴訟物は債務の全額である100万円であるところ、そのうち90万円部分の不存在を認定することは、訴訟物の範囲内での認定であるため、許される。
判例(最判昭40.9.17)は、債務の一部不存在確認訴訟が提起された事案において、「本件請求の趣旨および請求の原因ならびに本件一件記録によると、上告人らが本件訴訟において本件貸金債務について不存在の確認を求めている申立の範囲(訴訟物)は、上告人…については、その元金として残存することを自認する金14万6465円を本件貸金債権金110万円から控除した残額金95万3535円の債務額の不存在の確認であり、その余の上告人らにおいては、右残額金95万3535円の債務額について相続分に応じて分割されたそれぞれの債務額の不存在の確認であることが認められる。」として、不存在確認訴訟の訴訟物は、不存在であることの確認を求める部分であることを示している。
本肢においては、訴訟物は債務の全額である100万円であるところ、そのうち90万円部分の不存在を認定することは、訴訟物の範囲内での認定であるため、許される。
(H29 予備 第41問 ア)
裁判所は、原告が500万円の債務のうち200万円の存在は認めるもののそれを超える債務の不存在の確認を求める訴訟において、300万円の債務が存在すると認めるときは、500万円の債務のうち300万円を超える債務の不存在を確認し、その余の部分につき請求を棄却する判決をしなければならない。
裁判所は、原告が500万円の債務のうち200万円の存在は認めるもののそれを超える債務の不存在の確認を求める訴訟において、300万円の債務が存在すると認めるときは、500万円の債務のうち300万円を超える債務の不存在を確認し、その余の部分につき請求を棄却する判決をしなければならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭40.9.17)は、「各請求の当否をきめるためには、…弁済の各主張事実について審理をして本件申立の範囲(訴訟)である前記貸金残額の存否ないしその限度を明確に判断しなければならない。」としている。
したがって、原告が500万円の債務のうち200万円の存在は認めるもののそれを超える債務の不存在の確認を求める訴訟において、300万円の債務が存在すると認めるときは、請求棄却判決をするのではなく、500万円の債務のうち300万円を超えて債務は存在しない旨の一部認容判決をしなければならない。
判例(最判昭40.9.17)は、「各請求の当否をきめるためには、…弁済の各主張事実について審理をして本件申立の範囲(訴訟)である前記貸金残額の存否ないしその限度を明確に判断しなければならない。」としている。
したがって、原告が500万円の債務のうち200万円の存在は認めるもののそれを超える債務の不存在の確認を求める訴訟において、300万円の債務が存在すると認めるときは、請求棄却判決をするのではなく、500万円の債務のうち300万円を超えて債務は存在しない旨の一部認容判決をしなければならない。
(R6 予備 第34問 4)
裁判所は、100万円の債務のうち50万円を超える部分の不存在の確認を求める訴訟において、債務の額が20万円であると認めたときは、100万円の債務のうち20万円を超える部分が不存在であることを確認する判決をすることができる。
裁判所は、100万円の債務のうち50万円を超える部分の不存在の確認を求める訴訟において、債務の額が20万円であると認めたときは、100万円の債務のうち20万円を超える部分が不存在であることを確認する判決をすることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭40.9.17)は、本肢と同種の事案において、「本件請求の趣旨および請求の原因ならびに本件一件記録によると、上告人らが本件訴訟において本件貸金債務について不存在の確認を求めている申立の範囲(訴訟物)は、上告人…については、その元金として残存することを自認する金14万6465円を本件貸金債権金110万円から控除した残額金95万3535円の債務額の不存在の確認であり、その余の上告人らにおいては、右残額金95万3535円の債務額について相続分に応じて分割されたそれぞれの債務額の不存在の確認であることが認められる。」として、不存在確認訴訟の訴訟物は、不存在であることの確認を求める部分であることを示している。
本肢においては、訴訟物は100万円の債務のうち50万円を超える部分、すなわち50万円の部分であるところ、100万円の債務のうち20万円を超える部分が不存在を認定してしまうと、80万円部分の不存在を認定することになり、訴訟物の範囲を超えて認定することになる。
したがって、かかる判決は処分権主義(246条)に反し、許されない。
判例(最判昭40.9.17)は、本肢と同種の事案において、「本件請求の趣旨および請求の原因ならびに本件一件記録によると、上告人らが本件訴訟において本件貸金債務について不存在の確認を求めている申立の範囲(訴訟物)は、上告人…については、その元金として残存することを自認する金14万6465円を本件貸金債権金110万円から控除した残額金95万3535円の債務額の不存在の確認であり、その余の上告人らにおいては、右残額金95万3535円の債務額について相続分に応じて分割されたそれぞれの債務額の不存在の確認であることが認められる。」として、不存在確認訴訟の訴訟物は、不存在であることの確認を求める部分であることを示している。
本肢においては、訴訟物は100万円の債務のうち50万円を超える部分、すなわち50万円の部分であるところ、100万円の債務のうち20万円を超える部分が不存在を認定してしまうと、80万円部分の不存在を認定することになり、訴訟物の範囲を超えて認定することになる。
したがって、かかる判決は処分権主義(246条)に反し、許されない。
総合メモ
身体傷害による財産上及び精神上の損害の賠償請求における請求権及び訴訟物の個数 最一小判昭和48年4月5日
概要
①同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物は、1個である。
②不法行為に基づく1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができるものと解する。
②不法行為に基づく1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができるものと解する。
判例
事案:原告は、不法行為に基づく損害賠償請求として、療養費、逸失利益、慰謝料の各損害の発生を主張し、療養費、慰謝料の全額と逸失利益のうち150万円の支払いを請求した。原判決は、第1審判決が認定した財産上の損害(療養費、逸失利益)につき同一の割合で過失相殺をしたところ、過失相殺をしたとしても、原告の請求金額のうち財産上の損害として示されていた金額を超えていたという事案において、①同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物の個数や、②過失相殺の基準となる金額が、損害の全額か、原告の請求金額かなどが問題となった。
判旨:①「本件のような同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個であると解すべきである。したがって、第1審判決は、被上告人の1個の請求のうちでその求める全額を認容したものであって、同被上告人の申し立てない事項について判決をしたものではなく、また、原判決も、右請求のうち、第1審判決の審判および上告人の控訴の対象となった範囲内において、その一部を認容したものというべきである。」
②「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができるものと解すべきである。このように解することが一部請求をする当事者の通常の意思にもそうものというべきであって、所論のように、請求額を基礎とし、これから過失割合による減額をした残額のみを認容すべきものと解するのは、相当でない。したがって、右と同趣旨において前示のような過失相殺をし、被上告人の第1審における請求の範囲内において前示金額の請求を認容した原審の判断は、正当として是認することができる。」
判旨:①「本件のような同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個であると解すべきである。したがって、第1審判決は、被上告人の1個の請求のうちでその求める全額を認容したものであって、同被上告人の申し立てない事項について判決をしたものではなく、また、原判決も、右請求のうち、第1審判決の審判および上告人の控訴の対象となった範囲内において、その一部を認容したものというべきである。」
②「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができるものと解すべきである。このように解することが一部請求をする当事者の通常の意思にもそうものというべきであって、所論のように、請求額を基礎とし、これから過失割合による減額をした残額のみを認容すべきものと解するのは、相当でない。したがって、右と同趣旨において前示のような過失相殺をし、被上告人の第1審における請求の範囲内において前示金額の請求を認容した原審の判断は、正当として是認することができる。」
過去問・解説
(H18 司法 第62問 4)
明示的一部請求訴訟において過失相殺がされるべき場合、債権の全額を認定した上で、その全額から過失割合による減額をし、減額後の残額が請求額を超えなければこの残額を認容し、その残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容する判決をするべきである。
明示的一部請求訴訟において過失相殺がされるべき場合、債権の全額を認定した上で、その全額から過失割合による減額をし、減額後の残額が請求額を超えなければこの残額を認容し、その残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容する判決をするべきである。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができる…。」としている。
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができる…。」としている。
(H20 司法 第55問 1)
Xが、Yの1個の不法行為によりXの身体に傷害を負ったとして、それによって生じた損害の賠償を1つの訴えによって求めた場合に、Xが損害項目として治療費、逸失利益及び慰謝料を主張しているときは、損害項目ごとに訴訟物を異にする。
Xが、Yの1個の不法行為によりXの身体に傷害を負ったとして、それによって生じた損害の賠償を1つの訴えによって求めた場合に、Xが損害項目として治療費、逸失利益及び慰謝料を主張しているときは、損害項目ごとに訴訟物を異にする。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.4.5)は、本肢と同種の事案において、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である。」としている。
本肢において、治療費、遺失利益及び慰謝料は全て同一の事故により生じた同一の損害である。
したがって、損害項目ごとに訴訟物を異にするのではなく、訴訟物は1個である。
判例(最判昭48.4.5)は、本肢と同種の事案において、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である。」としている。
本肢において、治療費、遺失利益及び慰謝料は全て同一の事故により生じた同一の損害である。
したがって、損害項目ごとに訴訟物を異にするのではなく、訴訟物は1個である。
(H22 共通 第68問 3)
東京都目黒区に住所を有するXは、自ら自動車を運転して横浜市内の交差点に差し掛かったところ、静岡市に住所を有するYの運転する自動車と衝突する交通事故に遭った。そこで、Xは、Yを被告として、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。
Xが、50万円の治療費及び200万円の精神的損害が発生したとして、250万円の損害賠償求めた場合において、証拠調べの結果、60万円の治療費、100万円の精神的損害が発生したと認定したときは、裁判所は、Yに150万円の支払を命じるにとどめなければならない。
東京都目黒区に住所を有するXは、自ら自動車を運転して横浜市内の交差点に差し掛かったところ、静岡市に住所を有するYの運転する自動車と衝突する交通事故に遭った。そこで、Xは、Yを被告として、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。
Xが、50万円の治療費及び200万円の精神的損害が発生したとして、250万円の損害賠償求めた場合において、証拠調べの結果、60万円の治療費、100万円の精神的損害が発生したと認定したときは、裁判所は、Yに150万円の支払を命じるにとどめなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.4.5)は、本肢と同種の事案において、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。とした上で、「1個の請求のうちでその求める全額を認容したものであって、同被上告人の申し立てない事項について判決をしたものではなく、また、原判決も、右請求のうち、第1審判決の審判および上告人の控訴の対象となった範囲内において、その一部を認容したものというべきである。」としている。
本肢において、50万円の治療費及び200万円の精神的損害を合計した250万円全体が1個の訴訟物であるため、250万円を超えて判決しなければよく、60万円の治療費と100万円の精神的損害を合計しても250万円は超えない。
したがって、150万円の支払いを命じるにとどめる必要はなく、160万円の支払いを命じることができる。
判例(最判昭48.4.5)は、本肢と同種の事案において、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。とした上で、「1個の請求のうちでその求める全額を認容したものであって、同被上告人の申し立てない事項について判決をしたものではなく、また、原判決も、右請求のうち、第1審判決の審判および上告人の控訴の対象となった範囲内において、その一部を認容したものというべきである。」としている。
本肢において、50万円の治療費及び200万円の精神的損害を合計した250万円全体が1個の訴訟物であるため、250万円を超えて判決しなければよく、60万円の治療費と100万円の精神的損害を合計しても250万円は超えない。
したがって、150万円の支払いを命じるにとどめる必要はなく、160万円の支払いを命じることができる。
(H22 共通 第68問 4)
東京都目黒区に住所を有するXは、自ら自動車を運転して横浜市内の交差点に差し掛かったところ、静岡市に住所を有するYの運転する自動車と衝突する交通事故に遭った。そこで、Xは、Yを被告として、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。
事故の発生について自己に2割の過失があったと考えたXが、300万円の損害の一部請求である旨を明示して240万円の損害賠償を求めた場合において、裁判所が、Xには300万円の損害が発生していること及びXに5割の過失があることを認定するときは、裁判所は、Yに150万円の支払を命じなければならない。
東京都目黒区に住所を有するXは、自ら自動車を運転して横浜市内の交差点に差し掛かったところ、静岡市に住所を有するYの運転する自動車と衝突する交通事故に遭った。そこで、Xは、Yを被告として、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。
事故の発生について自己に2割の過失があったと考えたXが、300万円の損害の一部請求である旨を明示して240万円の損害賠償を求めた場合において、裁判所が、Xには300万円の損害が発生していること及びXに5割の過失があることを認定するときは、裁判所は、Yに150万円の支払を命じなければならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは右残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができる。」としている。
したがって、裁判所は、損害全額の300万円から過失割合5割の150万円を減額して、残額が請求額240万円を超えないため、その残額である150万円について、Yに支払を命じなければならない。
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは右残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができる。」としている。
したがって、裁判所は、損害全額の300万円から過失割合5割の150万円を減額して、残額が請求額240万円を超えないため、その残額である150万円について、Yに支払を命じなければならない。
(R1 予備 第42問 1)
不法行為による人身に係る損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及び休業損害300万円の支払を求める請求に対し、裁判所は、慰謝料150万円及び休業損害200万円の支払を命ずる判決をすることができる。
不法行為による人身に係る損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及び休業損害300万円の支払を求める請求に対し、裁判所は、慰謝料150万円及び休業損害200万円の支払を命ずる判決をすることができる。
(正答)〇
(解説)
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」として、処分権主義について規定している。
これについて、判例(最判昭48.4.5)は、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。」としている。
本肢においては、400万円の請求額に対して350万円の支払を命じるに過ぎず、判決の総額が請求額を超えていない。
したがって、慰謝料150万円及び休業損害200万円の支払を命ずる判決は「当事者が申し立てていない事項について」判決をしたことにならず、処分権主義に反しないため、かかる判決をすることができる。
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」として、処分権主義について規定している。
これについて、判例(最判昭48.4.5)は、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。」としている。
本肢においては、400万円の請求額に対して350万円の支払を命じるに過ぎず、判決の総額が請求額を超えていない。
したがって、慰謝料150万円及び休業損害200万円の支払を命ずる判決は「当事者が申し立てていない事項について」判決をしたことにならず、処分権主義に反しないため、かかる判決をすることができる。
(R4 予備 第42問 5)
同一事故により生じた不法行為による損害賠償請求権に基づき、治療費200万円、逸失利益500万円、慰謝料300万円の合計1000万円の支払を求める訴訟において、裁判所は、治療費を150万円、逸失利益を400万円、慰謝料を400万円とそれぞれ認定して合計950万円の支払を命ずる判決をすることはできない。
同一事故により生じた不法行為による損害賠償請求権に基づき、治療費200万円、逸失利益500万円、慰謝料300万円の合計1000万円の支払を求める訴訟において、裁判所は、治療費を150万円、逸失利益を400万円、慰謝料を400万円とそれぞれ認定して合計950万円の支払を命ずる判決をすることはできない。
(正答)✕
(解説)
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」として、処分権主義について規定している。
これについて判例(最判昭48.4.5)は、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は一個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。」としている。
本肢は、1000万円の請求額に、950万円の支払を命じるに過ぎず、判決の総額が請求額を超えていない。
したがって、合計950万円の支払を命ずる判決は、「当事者が申し立てていない事項について」判決をしたことにならず、許される。
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」として、処分権主義について規定している。
これについて判例(最判昭48.4.5)は、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は一個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。」としている。
本肢は、1000万円の請求額に、950万円の支払を命じるに過ぎず、判決の総額が請求額を超えていない。
したがって、合計950万円の支払を命ずる判決は、「当事者が申し立てていない事項について」判決をしたことにならず、許される。
(R6 予備 第34問 2)
不法行為による損害賠償請求権に基づいて損害の総額1000万円から2割の過失相殺をした800万円の支払を求めることが明示された訴訟において、裁判所は、総額1000万円の損害が認められ、5割の過失相殺をすべきときは、請求額800万円から5割の過失相殺をした400万円の支払を命ずる判決をしなければならない。
不法行為による損害賠償請求権に基づいて損害の総額1000万円から2割の過失相殺をした800万円の支払を求めることが明示された訴訟において、裁判所は、総額1000万円の損害が認められ、5割の過失相殺をすべきときは、請求額800万円から5割の過失相殺をした400万円の支払を命ずる判決をしなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは右残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができる。」としている。
本肢の場合、総額から過失相殺の額である500万円を減額した残額は500万円である。
したがって、一部請求の額800万円が残額の500万円を超えるから、裁判所は、残額500万円の限度で請求を認容すべきである。
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは右残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができる。」としている。
本肢の場合、総額から過失相殺の額である500万円を減額した残額は500万円である。
したがって、一部請求の額800万円が残額の500万円を超えるから、裁判所は、残額500万円の限度で請求を認容すべきである。
総合メモ
賃借人のある建物について買取請求権が行使された場合における建物収去土地明渡しを求める相手方の請求 最三小判昭和36年2月28日
概要
土地賃貸人からの建物収去土地明渡の請求において、建物所有者が借地法第10条(現:借地借家法13条1項)により買取請求権を行使した場合に、その建物に賃借人があるときは、右収去明渡の請求には、建物の指図による占有移転を求める趣旨を包合するものと解すべきである。
判例
事案: 賃借人のある建物について買取請求権が行使された事案において、建物収去土地明渡を求める相手方の請求が問題となった。
判旨:「土地所有者からの建物収去土地明渡の請求において、建物所有者が借地法10条(現:借地借家法13条1項)により建物の買取請求権を行使した場合、右明渡請求には建物の引渡を求める申立をも包含する趣旨と解すべきであることは所論のとおりである。
されば本件建物の買取請求により右建物の所有権が上告人に移転したものであること原判決の確定したところであるから、右日時以後において上告人は被上告人…に対して本件建物の引渡を求めているものというべきであり、ここにいう引渡は、本件の如く建物の占有者が賃借人…であるため、買取前の所有者たる被上告人…が、買取後の所有者たる上告人に対し現実の引渡をなし得ない場合においては、指図による占有移転を求める趣旨と解するのが相当である。」
判旨:「土地所有者からの建物収去土地明渡の請求において、建物所有者が借地法10条(現:借地借家法13条1項)により建物の買取請求権を行使した場合、右明渡請求には建物の引渡を求める申立をも包含する趣旨と解すべきであることは所論のとおりである。
されば本件建物の買取請求により右建物の所有権が上告人に移転したものであること原判決の確定したところであるから、右日時以後において上告人は被上告人…に対して本件建物の引渡を求めているものというべきであり、ここにいう引渡は、本件の如く建物の占有者が賃借人…であるため、買取前の所有者たる被上告人…が、買取後の所有者たる上告人に対し現実の引渡をなし得ない場合においては、指図による占有移転を求める趣旨と解するのが相当である。」
過去問・解説
(R1 予備 第42問 4)
建物所有目的の土地賃貸借契約の終了に基づき、建物収去土地明渡しを求める請求に対し、被告が建物買取請求権を行使した場合には、裁判所は、建物を引き渡して土地を明け渡すことを命ずる判決をすることができる。
建物所有目的の土地賃貸借契約の終了に基づき、建物収去土地明渡しを求める請求に対し、被告が建物買取請求権を行使した場合には、裁判所は、建物を引き渡して土地を明け渡すことを命ずる判決をすることができる。
(正答)〇
(解説)
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」として、処分権主義について規定している。
これについて、判例(最判昭36.2.28)は、「土地所有者からの建物収去土地明渡の請求において、建物所有者が借地法10条(現:借地借家法13条1項)により建物の買取請求権を行使した場合、右明渡請求には建物の引渡を求める申立をも包含する趣旨と解すべきである。」としている。
したがって、建物所有目的の土地賃貸借契約の終了に基づき、建物収去土地明渡しを求める請求に対し、被告が建物買取請求権を行使した場合において、裁判所が、建物を引き渡して土地を明け渡すことを命ずる判決をしても、「当事者が申し立てていない事項について」判決をしたことにならない。
よって、当該判決は246条に反せず、裁判所は、建物を引き渡して土地を明け渡すことを命ずる判決をすることができる。
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」として、処分権主義について規定している。
これについて、判例(最判昭36.2.28)は、「土地所有者からの建物収去土地明渡の請求において、建物所有者が借地法10条(現:借地借家法13条1項)により建物の買取請求権を行使した場合、右明渡請求には建物の引渡を求める申立をも包含する趣旨と解すべきである。」としている。
したがって、建物所有目的の土地賃貸借契約の終了に基づき、建物収去土地明渡しを求める請求に対し、被告が建物買取請求権を行使した場合において、裁判所が、建物を引き渡して土地を明け渡すことを命ずる判決をしても、「当事者が申し立てていない事項について」判決をしたことにならない。
よって、当該判決は246条に反せず、裁判所は、建物を引き渡して土地を明け渡すことを命ずる判決をすることができる。
総合メモ
弁済期未到来の債権について給付判決がされない場合、債権が存在する旨の確認判決をすることの可否 大判大正8年2月6日
概要
弁済期未到来の債権について、給付判決の代わりに債権が存在する旨の確認判決をすることはできない。
判例
事案:弁済期未到来の債権について旧訴訟が提起された事案において、給付判決がされない場合、債権が存在する旨の確認判決をすることができるかが問題となった。
判旨:「給付ノ訴ハ原告ノ被告ニ対スル現ニ行使スルコトヲ得ヘキ請求権ノ存在ヲ確定シ被告ニ対シテ其義務ノ履行ヲ命スル判決ヲ求ムル訴ニシテ確認ノ訴ハ法律関係又ハ請求ノ成立又ハ不成立ヲ確定スル判決ヲ求ムル訴ナレハ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ニ付テハ確認ノ訴ヲ起スコトヲ得ヘキモ給付ノ訴ヲ起スコトヲ得サルノミナラス両者其訴ノ種類ヲ異ニスルヲ以テ給付ノ訴ヲ為シタル原告ノ申立ニハ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ノ確認判決ヲ求ムルノ申立ヲ包含セサルモノトス従テ原告カ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ヲ確定スルノ判決ヲ得ント欲セハ別ニ確認ノ訴ヲ提起セサルヘカラス故ニ原告ノ請求権カ弁済期未到来等ノ為メ現ニ之ヲ行使スルコトヲ得サルノ故ヲ以テ被告ニ対シ給付ノ判決ヲ為スコトヲ得サル場合ニ於テハ裁判所ハ進ンテ其請求権ニ付キ原告ノ為メ確認判決ヲ為スニ由ナキモノトス」
判旨:「給付ノ訴ハ原告ノ被告ニ対スル現ニ行使スルコトヲ得ヘキ請求権ノ存在ヲ確定シ被告ニ対シテ其義務ノ履行ヲ命スル判決ヲ求ムル訴ニシテ確認ノ訴ハ法律関係又ハ請求ノ成立又ハ不成立ヲ確定スル判決ヲ求ムル訴ナレハ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ニ付テハ確認ノ訴ヲ起スコトヲ得ヘキモ給付ノ訴ヲ起スコトヲ得サルノミナラス両者其訴ノ種類ヲ異ニスルヲ以テ給付ノ訴ヲ為シタル原告ノ申立ニハ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ノ確認判決ヲ求ムルノ申立ヲ包含セサルモノトス従テ原告カ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ヲ確定スルノ判決ヲ得ント欲セハ別ニ確認ノ訴ヲ提起セサルヘカラス故ニ原告ノ請求権カ弁済期未到来等ノ為メ現ニ之ヲ行使スルコトヲ得サルノ故ヲ以テ被告ニ対シ給付ノ判決ヲ為スコトヲ得サル場合ニ於テハ裁判所ハ進ンテ其請求権ニ付キ原告ノ為メ確認判決ヲ為スニ由ナキモノトス」
過去問・解説
(H21 司法 第61問 ア)
原告が提起した貸金1000万円の返還を求める訴えについて、弁済期の未到来のため給付判決をすることができない場合には、原告が訴えを変更しないときであっても、裁判所は、これに代えて1000万円の貸金債権の存在を確認する判決をすることができる。
原告が提起した貸金1000万円の返還を求める訴えについて、弁済期の未到来のため給付判決をすることができない場合には、原告が訴えを変更しないときであっても、裁判所は、これに代えて1000万円の貸金債権の存在を確認する判決をすることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大8.2.6)は、「給付ノ訴ヲ為シタル原告ノ申立ニハ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ノ確認判決ヲ求ムルノ申立ヲ包含セサルモノトス従テ原告カ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ヲ確定スルノ判決ヲ得ント欲セハ別ニ確認ノ訴ヲ提起セサルヘカラス故ニ原告ノ請求権カ弁済期未到来等ノ為メ現ニ之ヲ行使スルコトヲ得サルノ故ヲ以テ被告ニ対シ給付ノ判決ヲ為スコトヲ得サル場合ニ於テハ裁判所ハ進ンテ其請求権ニ付キ原告ノ為メ確認判決ヲ為スニ由ナキモノトス」として、給付訴訟の訴訟物たる債権が、弁済期未到来のため給付判決をできない場合、別訴で確認の訴えを提起しなければ確認判決をすることはできないことを示している。
したがって、原告が提起した貸金1000万円の返還を求める訴えについて、弁済期の未到来のため給付判決をすることができない場合には、別訴提起または訴えの変更がなければ、給付判決に代えて1000万円の貸金債権の存在を確認する判決をすることはできない。
判例(大判大8.2.6)は、「給付ノ訴ヲ為シタル原告ノ申立ニハ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ノ確認判決ヲ求ムルノ申立ヲ包含セサルモノトス従テ原告カ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ヲ確定スルノ判決ヲ得ント欲セハ別ニ確認ノ訴ヲ提起セサルヘカラス故ニ原告ノ請求権カ弁済期未到来等ノ為メ現ニ之ヲ行使スルコトヲ得サルノ故ヲ以テ被告ニ対シ給付ノ判決ヲ為スコトヲ得サル場合ニ於テハ裁判所ハ進ンテ其請求権ニ付キ原告ノ為メ確認判決ヲ為スニ由ナキモノトス」として、給付訴訟の訴訟物たる債権が、弁済期未到来のため給付判決をできない場合、別訴で確認の訴えを提起しなければ確認判決をすることはできないことを示している。
したがって、原告が提起した貸金1000万円の返還を求める訴えについて、弁済期の未到来のため給付判決をすることができない場合には、別訴提起または訴えの変更がなければ、給付判決に代えて1000万円の貸金債権の存在を確認する判決をすることはできない。
(H25 共通 第69問 イ)
原告が給付判決を求めている場合において、訴訟物とされている請求権の履行期が到来していないことが明らかになったときは、裁判所は、当該請求権の存在を確認する判決をすることができる。
原告が給付判決を求めている場合において、訴訟物とされている請求権の履行期が到来していないことが明らかになったときは、裁判所は、当該請求権の存在を確認する判決をすることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大8.2.6)は、「給付ノ訴ヲ為シタル原告ノ申立ニハ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ノ確認判決ヲ求ムルノ申立ヲ包含セサルモノトス従テ原告カ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ヲ確定スルノ判決ヲ得ント欲セハ別ニ確認ノ訴ヲ提起セサルヘカラス故ニ原告ノ請求権カ弁済期未到来等ノ為メ現ニ之ヲ行使スルコトヲ得サルノ故ヲ以テ被告ニ対シ給付ノ判決ヲ為スコトヲ得サル場合ニ於テハ裁判所ハ進ンテ其請求権ニ付キ原告ノ為メ確認判決ヲ為スニ由ナキモノトス」として、給付訴訟の訴訟物たる債権が、履行期未到来のため給付判決をできない場合、別訴で確認の訴えを提起しなければ確認判決をすることはできないことを示している。
判例(大判大8.2.6)は、「給付ノ訴ヲ為シタル原告ノ申立ニハ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ノ確認判決ヲ求ムルノ申立ヲ包含セサルモノトス従テ原告カ現ニ行使スルコトヲ得サル請求権ヲ確定スルノ判決ヲ得ント欲セハ別ニ確認ノ訴ヲ提起セサルヘカラス故ニ原告ノ請求権カ弁済期未到来等ノ為メ現ニ之ヲ行使スルコトヲ得サルノ故ヲ以テ被告ニ対シ給付ノ判決ヲ為スコトヲ得サル場合ニ於テハ裁判所ハ進ンテ其請求権ニ付キ原告ノ為メ確認判決ヲ為スニ由ナキモノトス」として、給付訴訟の訴訟物たる債権が、履行期未到来のため給付判決をできない場合、別訴で確認の訴えを提起しなければ確認判決をすることはできないことを示している。
総合メモ
借家法1条の2に基づく解約を理由とする家屋の明渡訴訟において当事者の明示の申立額を超える立退料の支払と引換えに明渡請求を認容することの可否 最一小判昭和46年11月25日
概要
借家法1条の2(現:借地借家法27条1項)に基づく解約を理由として家屋の明渡を求める訴訟において、その正当事由として、右家屋が京都市屈指の繁華街にある店舗でありながら老朽化して建替えを要する等原審認定のような諸事情(原判決理由参照)があるほか、家主がその補強条件として300万円もしくはこれと格段の相違のない範囲内で裁判所の決定する額の立退料を支払う旨の意思を表明し、これと引換えに家屋の明渡を求めている場合には、500万円の立退料の支払と引換えに右明渡請求を認容することは相当である。
判例
事案:借家法1条の2に基づく解約を理由とする家屋の明渡訴訟が提起された事案において、当事者の明示の申立額をこえる立退料の支払と引換えに明渡請求を認容することができるか否か問題となった。
判旨:「原審の確定した諸般の事情のもとにおいては、被上告人が上告人に対して立退料として300万円もしくはこれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し、かつその支払と引き換えに本件係争店舗の明渡を求めていることをもって、被上告人の右解約申入につき正当事由を具備したとする原審の判断は相当である。所論は右金額が過少であるというが、右金員の提供は、それのみで正当事由の根拠となるものではなく、他の諸般の事情と綜合考慮され、相互に補充しあって正当事由の判断の基礎となるものであるから、解約の申入が金員の提供を伴うことによりはじめて正当事由を有することになるものと判断される場合であっても、右金員が、明渡によって借家人の被るべき損失のすべてを補償するに足りるものでなければならない理由はないし、また、それがいかにして損失を補償しうるかを具体的に説示しなければならないものでもない。原審が、右の趣旨において500万円と引き換えに本件店舗の明渡請求を認容していることは、原判示に照らして明らかであるから、この点に関する原審の判断は相当であって、原判決に所論の違法は存しない。」
判旨:「原審の確定した諸般の事情のもとにおいては、被上告人が上告人に対して立退料として300万円もしくはこれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し、かつその支払と引き換えに本件係争店舗の明渡を求めていることをもって、被上告人の右解約申入につき正当事由を具備したとする原審の判断は相当である。所論は右金額が過少であるというが、右金員の提供は、それのみで正当事由の根拠となるものではなく、他の諸般の事情と綜合考慮され、相互に補充しあって正当事由の判断の基礎となるものであるから、解約の申入が金員の提供を伴うことによりはじめて正当事由を有することになるものと判断される場合であっても、右金員が、明渡によって借家人の被るべき損失のすべてを補償するに足りるものでなければならない理由はないし、また、それがいかにして損失を補償しうるかを具体的に説示しなければならないものでもない。原審が、右の趣旨において500万円と引き換えに本件店舗の明渡請求を認容していることは、原判示に照らして明らかであるから、この点に関する原審の判断は相当であって、原判決に所論の違法は存しない。」
過去問・解説
(R4 予備 第42問 4)
原告が売買を原因として残代金500万円を支払うのと引換えに土地の所有権移転登記手続を求める訴訟において、残代金額が700万円であることが明らかになった場合には、裁判所は、被告に対し、原告から700万円の支払を受けるのと引換えに、原告への所有権移転登記手続を命ずる判決をすることができる。
原告が売買を原因として残代金500万円を支払うのと引換えに土地の所有権移転登記手続を求める訴訟において、残代金額が700万円であることが明らかになった場合には、裁判所は、被告に対し、原告から700万円の支払を受けるのと引換えに、原告への所有権移転登記手続を命ずる判決をすることができる。
(正答)〇
(解説)
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」と規定している。
これについて、判例(最判昭46.11.25)は、立退料として300万円もしくはこれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し、かつその支払と引き換えに本件係争店舗の明渡を求めている事案において、「原審が…500万円と引き換えに本件店舗の明渡請求を認容していることは、原判示に照らして明らかであるから、この点に関する原審の判断は相当であって、原判決に…違法は存しない。」としている。
したがって、原告が売買を原因として残代金500万円を支払うのと引換えに土地の所有権移転登記手続を求める訴訟も、原告から700万円の支払を受けるのと引換えに、原告への所有権移転登記手続を命ずる判決は、原告の主張と格段の相違のない範囲といえるから、246条に違反せず、そのような判決をすることも可能である。
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」と規定している。
これについて、判例(最判昭46.11.25)は、立退料として300万円もしくはこれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し、かつその支払と引き換えに本件係争店舗の明渡を求めている事案において、「原審が…500万円と引き換えに本件店舗の明渡請求を認容していることは、原判示に照らして明らかであるから、この点に関する原審の判断は相当であって、原判決に…違法は存しない。」としている。
したがって、原告が売買を原因として残代金500万円を支払うのと引換えに土地の所有権移転登記手続を求める訴訟も、原告から700万円の支払を受けるのと引換えに、原告への所有権移転登記手続を命ずる判決は、原告の主張と格段の相違のない範囲といえるから、246条に違反せず、そのような判決をすることも可能である。
総合メモ
当事者が所有権取得登記の全部抹消を求めている場合に更正登記を命ずる判決をすることの可否 最二小判昭和38年2月22日
概要
原告が被告に対し登記の全部抹消登記手続を求めたのに対し、裁判所が被告に対し前記一部抹消(更正)登記手続を命ずる判決をしても、246条に反しない。
判例
事案:当事者が所有権取得登記の全部抹消を求めている事案において、一部抹消(更正)登記を命ずる判決をすることが246条に反しないかが問題となった。
判旨:「相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり、登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである(大正8年11月3日大審院判決、民録25輯1944頁参照)。そして、この場合に甲がその共有権に対する妨害排除として登記を実体的権利に合致させるため乙、丙に対し請求できるのは、各所有権取得登記の全部抹消登記手続ではなくして、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続でなければならない(大正10年10月27日大審院判決、民録27輯2040頁、昭和37年5月24日最高裁判所第一小法廷判決、裁判集60巻767頁参照)。けだし右各移転登記は乙の持分に関する限り実体関係に符合しており、また甲は自己の持分についてのみ妨害排除の請求権を有するに過ぎないからである。…また前示のとおりこの場合更正登記は実質において一部抹部抹消登記であるから、原判決は上告人らの申立の範囲内でその分量的な一部を認容したものに外ならないというべく、従って当事者の申立てない事項について判決をした違法はない。」
判旨:「相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり、登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである(大正8年11月3日大審院判決、民録25輯1944頁参照)。そして、この場合に甲がその共有権に対する妨害排除として登記を実体的権利に合致させるため乙、丙に対し請求できるのは、各所有権取得登記の全部抹消登記手続ではなくして、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続でなければならない(大正10年10月27日大審院判決、民録27輯2040頁、昭和37年5月24日最高裁判所第一小法廷判決、裁判集60巻767頁参照)。けだし右各移転登記は乙の持分に関する限り実体関係に符合しており、また甲は自己の持分についてのみ妨害排除の請求権を有するに過ぎないからである。…また前示のとおりこの場合更正登記は実質において一部抹部抹消登記であるから、原判決は上告人らの申立の範囲内でその分量的な一部を認容したものに外ならないというべく、従って当事者の申立てない事項について判決をした違法はない。」
過去問・解説
(H21 司法 第61問 ウ)
原告が提起した不動産の所有権に基づく所有権移転登記の全部抹消登記手続を求める訴えについて、裁判所は、その不動産が原告及び被告の共有関係にあると認めたときは、実質的な一部抹消登記手続として、原告の共有持分に応じた更正登記手続を命じる判決をすることができる。
原告が提起した不動産の所有権に基づく所有権移転登記の全部抹消登記手続を求める訴えについて、裁判所は、その不動産が原告及び被告の共有関係にあると認めたときは、実質的な一部抹消登記手続として、原告の共有持分に応じた更正登記手続を命じる判決をすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭38.2.22)は、本肢と同種の事案において、「更正登記は実質において一部抹部抹消登記であるから、原判決は上告人らの申立の範囲内でその分量的な一部を認容したものに外ならないというべく、従って当事者の申立てない事項について判決をした違法はない。」として、不動産の所有権に基づく所有権移転登記の全部抹消登記手続を求める訴えについて、裁判所は、その不動産が原告及び被告の共有関係にあると認めたときは、実質的な一部抹消登記手続として、原告の共有持分に応じた更正登記手続を命じる判決をすることができることを示している。
判例(最判昭38.2.22)は、本肢と同種の事案において、「更正登記は実質において一部抹部抹消登記であるから、原判決は上告人らの申立の範囲内でその分量的な一部を認容したものに外ならないというべく、従って当事者の申立てない事項について判決をした違法はない。」として、不動産の所有権に基づく所有権移転登記の全部抹消登記手続を求める訴えについて、裁判所は、その不動産が原告及び被告の共有関係にあると認めたときは、実質的な一部抹消登記手続として、原告の共有持分に応じた更正登記手続を命じる判決をすることができることを示している。
総合メモ
留置権の抗弁を認容する場合の判決主文 最一小判昭和33年3月13日
概要
物の引渡を求める訴訟において、被告の留置権の抗弁を認容する場合には、原告の請求を全面的に棄却することなく、その物に関して生じた債権の弁済と引換に物の引渡を命ずべきものと解するを相当とする。
判例
事案:物の引渡を求める訴訟において留置権の抗弁が認められる事案において、いかなる判決をすべきかが問題となった。
判旨:「留置権は、物の占有者がその物に関して生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置することを得るに過ぎないものであって、物に関して生じた債権を他の債権に優先して弁済を受けしめることを趣旨とするものではない。従って、裁判所は、物の引渡請求に対する留置権の抗弁を理由ありと認めるときは、その引渡請求を棄却することなく、その物に関して生じた債権の弁済と引換に物の引渡を命ずべきものと解するを相当とする。」
判旨:「留置権は、物の占有者がその物に関して生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置することを得るに過ぎないものであって、物に関して生じた債権を他の債権に優先して弁済を受けしめることを趣旨とするものではない。従って、裁判所は、物の引渡請求に対する留置権の抗弁を理由ありと認めるときは、その引渡請求を棄却することなく、その物に関して生じた債権の弁済と引換に物の引渡を命ずべきものと解するを相当とする。」