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民事訴訟法 手形金債務不存在確認請求の訴えの係属中に同一の手形金請求の訴えが手形訴訟で提起された場合 大阪高判昭和62年7月16日
概要
手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に手形訴訟を提起することは、民訴法231条(現:142条)の重複起訴の禁止に抵触しないと解するのが相当である。
判例
事案:手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に手形訴訟が提起された事案において、かかる訴えの提起が民訴法231条(現:142条)の重複起訴の禁止に抵触するかが問題となった。
判旨:「別件の訴のうち手形金債務不存在確認を求める請求に関する部分と本件の訴は、いずれも同一当事者間において、本件手形金債権につき、前者が消極的にその不存在の確認を求め、後者が積極的にその存在を前提として手形金及び利息の支払を求めるものであって、両請求に係る判決の既判力の範囲は同一であるから、同一の事件に当たるといわなければならず、したがって控訴人が右支払を求める請求を別件の訴に対する反訴の形式をもってすることなく、独立の訴の提起によってすれば、民訴法231条(現:142条)の規定が防止しようとしている審理判断の重複による不経済、既判力抵触の可能性及び被告の応訴の煩という弊害が生じることがあるのは避けがたいところである…手形訴訟は厳格な証拠制限が存する点において通常訴訟と異なる訴訟手続であると解されるから、手形金債務不存在確認請求訴訟において手形金支払請求の反訴を提起するには、手形訴訟によることは許されず、通常訴訟の方式によらざるを得ない。そうすると…手形金債務不存在確認請求訴訟が先に裁判所に係属した場合にはもはや手形債権者は、手形訴訟を提起することができないことになる。しかし、かかる場合に手形訴訟手続利用の途を閉ざすことは、手形訴訟が手形債権者に対して通常訴訟によるより格段に簡易迅速に債務名義を取得させ、かつ、強制執行による満足を得せしめるとともに、これにより手形の経済的効用を維持するのに資することを目的とする制度であることを考えると、手形債権者に著しい不利益を与えるばかりでなく、手形債務者において先制的に手形金債務不存在確認の訴を提起して手形債権者からの手形訴訟の提起を封殺することを可能にし、不当に手形金支払の引き延ばしを図ることにより、手形訴訟制度を設けた趣旨を損なうおそれもある。このような事態に至るのは避けるべきであり、手形債権者が通常訴訟とは手続を異にする手形訴訟を選び、簡易迅速な審判を求めるならば、その手続の利用によって受ける利益を保護する必要があるから、手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に手形訴訟を提起することは、民訴法231条(現:142条)の重複起訴の禁止に抵触しないと解するのが相当である。これによって生じる前記のような弊害は、訴訟の運用によって防止するほかはない。」
判旨:「別件の訴のうち手形金債務不存在確認を求める請求に関する部分と本件の訴は、いずれも同一当事者間において、本件手形金債権につき、前者が消極的にその不存在の確認を求め、後者が積極的にその存在を前提として手形金及び利息の支払を求めるものであって、両請求に係る判決の既判力の範囲は同一であるから、同一の事件に当たるといわなければならず、したがって控訴人が右支払を求める請求を別件の訴に対する反訴の形式をもってすることなく、独立の訴の提起によってすれば、民訴法231条(現:142条)の規定が防止しようとしている審理判断の重複による不経済、既判力抵触の可能性及び被告の応訴の煩という弊害が生じることがあるのは避けがたいところである…手形訴訟は厳格な証拠制限が存する点において通常訴訟と異なる訴訟手続であると解されるから、手形金債務不存在確認請求訴訟において手形金支払請求の反訴を提起するには、手形訴訟によることは許されず、通常訴訟の方式によらざるを得ない。そうすると…手形金債務不存在確認請求訴訟が先に裁判所に係属した場合にはもはや手形債権者は、手形訴訟を提起することができないことになる。しかし、かかる場合に手形訴訟手続利用の途を閉ざすことは、手形訴訟が手形債権者に対して通常訴訟によるより格段に簡易迅速に債務名義を取得させ、かつ、強制執行による満足を得せしめるとともに、これにより手形の経済的効用を維持するのに資することを目的とする制度であることを考えると、手形債権者に著しい不利益を与えるばかりでなく、手形債務者において先制的に手形金債務不存在確認の訴を提起して手形債権者からの手形訴訟の提起を封殺することを可能にし、不当に手形金支払の引き延ばしを図ることにより、手形訴訟制度を設けた趣旨を損なうおそれもある。このような事態に至るのは避けるべきであり、手形債権者が通常訴訟とは手続を異にする手形訴訟を選び、簡易迅速な審判を求めるならば、その手続の利用によって受ける利益を保護する必要があるから、手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に手形訴訟を提起することは、民訴法231条(現:142条)の重複起訴の禁止に抵触しないと解するのが相当である。これによって生じる前記のような弊害は、訴訟の運用によって防止するほかはない。」
過去問・解説
(H28 予備 第37問 オ)
XのYに対する手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に、YがXに対し当該手形金の支払を求める別訴を手形訴訟により提起することは、許されない。
XのYに対する手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に、YがXに対し当該手形金の支払を求める別訴を手形訴訟により提起することは、許されない。
(正答)✕
(解説)
142条は、「裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。」と規定している。
裁判例(大阪高判昭62.7.16)は、「手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に手形訴訟を提起することは、…重複起訴の禁止に抵触しない…。」としている。
したがって、XのYに対する手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に、YがXに対し当該手形金の支払を求める別訴を手形訴訟により提起することも、許される。
142条は、「裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。」と規定している。
裁判例(大阪高判昭62.7.16)は、「手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に手形訴訟を提起することは、…重複起訴の禁止に抵触しない…。」としている。
したがって、XのYに対する手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に、YがXに対し当該手形金の支払を求める別訴を手形訴訟により提起することも、許される。