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短答判例
相手方の援用しない自己に不利益な事実の陳述(主張共通の原則) 最一小判平成9年7月17日
概要
主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができる(主張共通の原則)。
判例
事案:請求の一部についての予備的請求原因となるべき事実を被告が主張し、原告がこれを自己の利益に援用しなかった事案において、裁判所はこの事実をしんしゃくすべきであるかが問題となった。
判旨:「原審の確定したところによれば、定次は昭和29年4月5日に死亡し、定次には妻田辺正美及び上告人を含む6人の子があったというのである。したがって、原審の認定するとおり、本件土地を賃借し、本件建物を建築したのが定次であるとすれば、本件土地の賃借権及び本件建物の所有権は定次の遺産であり、これを右7人が相続したことになる。そして、上告人の法定相続分は9分の1であるから、これと異なる遺産分割がされたなどの事実がない限り、上告人は、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことが明らかである。
上告人が、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことを前提として、予備的に右持分の確認等を請求するのであれば、定次が本件土地を賃借し、本件建物を建築したとの事実がその請求原因の一部となり、この事実については上告人が主張立証責任を負担する。本件においては、上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和38年(オ)第1227号同41年9月8日第一小法廷判決・民集20巻7号1314頁参照)。」
判旨:「原審の確定したところによれば、定次は昭和29年4月5日に死亡し、定次には妻田辺正美及び上告人を含む6人の子があったというのである。したがって、原審の認定するとおり、本件土地を賃借し、本件建物を建築したのが定次であるとすれば、本件土地の賃借権及び本件建物の所有権は定次の遺産であり、これを右7人が相続したことになる。そして、上告人の法定相続分は9分の1であるから、これと異なる遺産分割がされたなどの事実がない限り、上告人は、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことが明らかである。
上告人が、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことを前提として、予備的に右持分の確認等を請求するのであれば、定次が本件土地を賃借し、本件建物を建築したとの事実がその請求原因の一部となり、この事実については上告人が主張立証責任を負担する。本件においては、上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和38年(オ)第1227号同41年9月8日第一小法廷判決・民集20巻7号1314頁参照)。」
過去問・解説
(R5 予備 第39問 3)
Xは、Yに対し、300万円を貸し付けたと主張して、消費貸借契約に基づく貸金返還請求として300万円の支払を求める訴えを甲裁判所に提起した(以下、この消費貸借契約を「本件消費貸借契約」といい、この訴えを「本件訴え」という。)。
Xは、Yが貸付けの事実を認めた上で、消滅時効の抗弁を主張したため、時効の更新の再抗弁として、Yから300万円のうち100万円の弁済を受けた事実を主張したところ、Yはこの弁済の事実を否認した。Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。
Xは、Yに対し、300万円を貸し付けたと主張して、消費貸借契約に基づく貸金返還請求として300万円の支払を求める訴えを甲裁判所に提起した(以下、この消費貸借契約を「本件消費貸借契約」といい、この訴えを「本件訴え」という。)。
Xは、Yが貸付けの事実を認めた上で、消滅時効の抗弁を主張したため、時効の更新の再抗弁として、Yから300万円のうち100万円の弁済を受けた事実を主張したところ、Yはこの弁済の事実を否認した。Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平9.7.17)は、「上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべき…である。」として、主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができるという考えを採用している(これを「主張共通の原則」という。)
本肢において、Yが弁済したという事実は、消滅時効の抗弁が認められなかった場合に、一部弁済の抗弁となり、予備的な主張となる。かかる予備的主張をする場合、一部弁済の事実はYが主張立証責任を負う。
したがって、原告Xが弁済の事実を主張し、被告Yがこれを否認したとしても、弁済の抗弁を認定することができるから、Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。
判例(最判平9.7.17)は、「上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべき…である。」として、主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができるという考えを採用している(これを「主張共通の原則」という。)
本肢において、Yが弁済したという事実は、消滅時効の抗弁が認められなかった場合に、一部弁済の抗弁となり、予備的な主張となる。かかる予備的主張をする場合、一部弁済の事実はYが主張立証責任を負う。
したがって、原告Xが弁済の事実を主張し、被告Yがこれを否認したとしても、弁済の抗弁を認定することができるから、Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。
(R8 予備 第36問 エ)
Xは、甲建物につき、Xが甲建物を建築してその所有権を取得したと主張して、Yに対し、その所有権の確認を求める訴えを提起し、Yは、Xによる甲建物の所有権取得の事実を否認し、その理由として、甲建物を建築してその所有権を取得したのはAであると主張し、また、Aが死亡し、Aの子であるX及びYがAを相続したことも主張していた。この場合において、Xが、Aが甲建物の所有権を取得したとの事実を自己の利益に援用していなかったときに、裁判所が、Aが甲建物を建築してその所有権を取得したことを認定した上で、X及びYが相続により甲建物の共有持分権をそれぞれ取得したと判断して、当該共有持分権の確認を求める限度でXの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平9.7.17)は、「上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべき…である。」として、主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができるという考えを採用している(これを「主張共通の原則」という。)。
本肢において、Aが甲建物を建築してその所有権を取得した事実及びAの死亡によりX及びYがAを相続した事実は、Yが主張している。したがって、Xが、Aが甲建物の所有権を取得したとの事実を自己の利益に援用していなかったとしても、裁判所は、これらの事実を判決の基礎とすることができる。
よって、裁判所が、Aが甲建物を建築してその所有権を取得したことを認定した上で、X及びYが相続により甲建物の共有持分権をそれぞれ取得したと判断して、当該共有持分権の確認を求める限度でXの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反しない。
判例(最判平9.7.17)は、「上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべき…である。」として、主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができるという考えを採用している(これを「主張共通の原則」という。)。
本肢において、Aが甲建物を建築してその所有権を取得した事実及びAの死亡によりX及びYがAを相続した事実は、Yが主張している。したがって、Xが、Aが甲建物の所有権を取得したとの事実を自己の利益に援用していなかったとしても、裁判所は、これらの事実を判決の基礎とすることができる。
よって、裁判所が、Aが甲建物を建築してその所有権を取得したことを認定した上で、X及びYが相続により甲建物の共有持分権をそれぞれ取得したと判断して、当該共有持分権の確認を求める限度でXの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反しない。