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短答判例

1個の債権の数量的な一部請求についての判決の既判力の客観的範囲 最二小判昭和37年8月10日

概要
1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合に、右一部請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばない。
判例
事案:1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された事案において、その判決の既判力の客観的範囲が問題となった。

判旨:「1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合は、訴訟物となるのは右債権の一部の存否のみであって、全部の存否ではなく、従って右一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第62問 1)
明示的一部請求訴訟においては債権全部についての審判が必要とされるので、一部請求部分が棄却された場合には、残額請求は既判力に反し許されない。

(正答)✕

(解説)
判例(最判昭37.8.10)は、「1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合は、訴訟物となるのは右債権の一部の存否のみであって…一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばない…。」としている。
したがって、明示的一部請求訴訟においては、残部請求に既判力が及ばないから、残額請求は既判力に反せず適法である。

(H26 共通 第71問 ア)
XはYと締結した自らを注文主とする建物建築請負契約をYの債務不履行を理由に工事完成前に解除し、Yを被告として、総額1000万円の損害賠償債権のうちの一部であることを明示して400万円の支払を求める訴えを提起した。
Yから何らの抗弁が提出されることなくXの請求を全部認容する判決が確定したときは、この確定判決の既判力は、残部の請求に及ばない。

(正答)〇

(解説)
判例(最判昭37.8.10)は、本肢と同種の事案において、「1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合は…一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばない…。」としている。
したがって、Xが得た確定判決の既判力は、残部の請求に及ばない。

(R4 予備 第33問 ウ)
XがYに対して総額1000万円のうち200万円の支払を求めることを明示した上で提起した貸金の返還を求める訴え(前訴)について弁済を理由として請求を棄却する判決が確定した後、XがYに対して前記貸金の残額800万円の支払を求める訴え(後訴)を提起した場合に、後訴裁判所が、Xの請求を認容することは、前訴の確定判決の既判力に抵触しない。

(正答)〇

(解説)
判例(最判昭37.8.10)は、「1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合は、訴訟物となるのは右債権の一部の存否のみであって…一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばない…。」としている。
したがって、既判力が生じるのは、XのYに対する貸金1000万円のうちの200万円の部分であるから、XがYに対して前記貸金の残額800万円の支払を求める訴え(後訴)を提起し、後訴裁判所が、Xの請求を認容したとしても、前訴の確定判決の既判力には抵触しない。

(R8 予備 第34問 ア 改題)
Xは、Yに対し、1000万円を貸し付けたと主張し(以下、X主張の貸付けに係る貸金返還請求権を「甲債権」という。)、一部請求であることを明示して、消費貸借契約に基づく貸金返還請求として700万円の支払を求める訴えを提起した。これに対し、Yは、請求棄却の判決を求め、当該貸付けの事実を否認するとともに、Xに対して700万円の不当利得返還請求権を有しているとして(以下、Y主張の不当利得返還請求権を「乙債権」という。)、これを自働債権とする相殺の抗弁を主張した。
裁判所は、甲債権の額が1000万円であり、乙債権の額が700万円であると認定した上で、甲債権及び乙債権が相殺により対当額で消滅し、乙債権は消滅し、甲債権の残存額が300万円であるとして、Xの請求について、300万円の支払を求める限度で認容し、その余の請求を棄却する判決をし、同判決は、確定した。この場合において、甲債権に関しては、300万円の存在及び700万円の不存在について既判力が生ずる。

(正答)✕

(解説)
判例(最判昭37.8.10)は、「1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合は、訴訟物となるのは右債権の一部の存否のみであって…一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばない…。」としている。
本肢において、甲債権1000万円のうち700万円のみが訴訟物となり、そのうち300万円について請求が認容され、400万円について請求が棄却されている。
したがって、甲債権に関しては、300万円の存在及び400万円の不存在について既判力が生ずるのであって、700万円の不存在について既判力が生ずるものではない。

(R8 予備 第34問 ウ 改題)
Xは、Yに対し、1000万円を貸し付けたと主張し(以下、X主張の貸付けに係る貸金返還請求権を「甲債権」という。)、一部請求であることを明示して、消費貸借契約に基づく貸金返還請求として700万円の支払を求める訴えを提起した。これに対し、Yは、請求棄却の判決を求め、当該貸付けの事実を否認するとともに、Xに対して700万円の不当利得返還請求権を有しているとして(以下、Y主張の不当利得返還請求権を「乙債権」という。)、これを自働債権とする相殺の抗弁を主張した。
裁判所は、甲債権の額が1000万円であり、乙債権の額が300万円であると認定した上で、甲債権及び乙債権が相殺により対当額で消滅し、乙債権は消滅し、甲債権の残存額が700万円であるとして、Xの請求を全部認容する判決をし、同判決は、確定した。この場合において、甲債権に関しては、700万円の存在について既判力が生ずる。

(正答)〇

(解説)
判例(最判昭37.8.10)は、「1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合は、訴訟物となるのは右債権の一部の存否のみであって、…一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばない…。」としている。
本肢において、甲債権1000万円のうち700万円のみが訴訟物となり、その全部を認容する判決が確定している。
したがって、甲債権に関しては、700万円の存在について既判力が生ずる。
総合メモ