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弁護及び補佐(接見交通権)

設備不備を理由とする接見拒否 最三小判平成17年4月19日

概要
①弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官は、同庁舎内に、その本来の用途、設備内容等からみて、検察官が、その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することができ、また、その部屋等を接見のために用いても、被疑者の逃亡、罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの問題が生じないことを容易に判断し得るような部屋等が存しない場合には、接見の申出を拒否することができる。
②検察官が検察庁の庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否したにもかかわらず、弁護人がなお同庁舎内における即時の接見を求め、即時に接見をする必要性が認められる場合には、検察官には、捜査に顕著な支障が生ずる場合でない限り、秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の「接見」(面会接見)であってもよいかどうかという点につき、弁護人の意向を確かめ、弁護人がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは、面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある。
判例
事案:弁護人が、検察庁の庁舎内にて取り調べ中の被疑者について接見を申し出たところ、捜査への支障等は生じないものの、接見を行い得る設備がないことを理由に接見の申し出が拒否されたため、弁護人である弁護士が国家賠償請求訴訟を提起した事案において、①接見を行い得る設備がない場合に接見申出を拒否することができるか、及び、②接見を行い得る設備がない場合に捜査機関のとるべき措置の内容が問題となった。

判旨:①「被疑者と弁護人等との接見には、被疑者の逃亡、罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの制約があるから、検察庁の庁舎内において、弁護人等と被疑者との立会人なしの接見を認めても、被疑者の逃亡や罪証の隠滅を防止することができ、戒護上の支障が生じないような設備のある部屋等が存在しない場合には、上記の申出を拒否したとしても、これを違法ということはできない。そして、上記の設備のある部屋等とは、接見室等の接見のための専用の設備がある部屋に限られるものではないが、その本来の用途、設備内容等からみて、接見の申出を受けた検察官が、その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することができ、また、その部屋等を接見のために用いても、被疑者の逃亡、罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの問題が生じないことを容易に判断し得るような部屋等でなければならないものというべきである。」
 ②「刑訴法39条所定の接見を認める余地がなく、その拒否が違法でないとしても、同条の趣旨が、接見交通権の行使と被疑者の取調べ等の捜査の必要との合理的な調整を図ろうとするものであること(前記大法廷判決(注:最判平11.3.24)参照)にかんがみると、検察官が上記の設備のある部屋等が存在しないことを理由として接見の申出を拒否したにもかかわらず、弁護人等がなお検察庁の庁舎内における即時の接見を求め、即時に接見をする必要性が認められる場合には、検察官は、例えば立会人の居る部屋での短時間の『接見』などのように、いわゆる秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の『接見』(以下、便宜『面会接見』という。)であってもよいかどうかという点につき、弁護人等の意向を確かめ、弁護人等がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは、面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務があると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第26問 エ)
検察官が庁舎内に接見設備のある部屋等が存在しないことを理由として接見の申出を拒否したにもかかわらず、弁護人がなお検察庁の庁舎内における即時の接見を求め、即時に接見する必要性が認められる場合には、検察官は、いわゆる秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の面会接見であってもよいかどうかという点につき、弁護人の意向を確かめ、弁護人がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは、面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.4.19)は、「被疑者と弁護人等との接見には、被疑者の逃亡、罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの制約があるから、検察庁の庁舎内において、弁護人等と被疑者との立会人なしの接見を認めても、被疑者の逃亡や罪証の隠滅を防止することができ、戒護上の支障が生じないような設備のある部屋等が存在しない場合には、上記の申出を拒否したとしても、これを違法ということはできない。」としつつも、「検察官が上記の設備のある部屋等が存在しないことを理由として接見の申出を拒否したにもかかわらず、弁護人等がなお検察庁の庁舎内における即時の接見を求め、即時に接見をする必要性が認められる場合には、検察官は、例えば立会人の居る部屋での短時間の『接見』などのように、いわゆる秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の『接見』(以下、便宜『面会接見』という。)であってもよいかどうかという点につき、弁護人等の意向を確かめ、弁護人等がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは、面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある…。」としている。

(R6 予備 第18問 オ)
検察官が検察庁の庁舎内に接見設備のある部屋等が存在しないことを理由として接見の申出を拒否したにもかかわらず、弁護人がなお同庁舎内における即時の接見を求め、即時に接見する必要性が認められる場合には、検察官は、例えば立会人のいる部屋での短時間の接見などのように、いわゆる秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の接見であってもよいかどうかという点につき、弁護人の意向を確かめ、弁護人がそのような接見であっても差し支えないとの意向を示したときは、それができるように特別の配慮をすべき義務がある。

(正答)

(解説)
判例(最決平17.4.19)は、「検察官が上記の設備のある部屋等が存在しないことを理由として接見の申出を拒否したにもかかわらず、弁護人等がなお検察庁の庁舎内における即時の接見を求め、即時に接見をする必要性が認められる場合には、検察官は、例えば立会人の居る部屋での短時間の『接見』などのように、いわゆる秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の『接見』(以下、便宜『面会接見』という。)であってもよいかどうかという点につき、弁護人等の意向を確かめ、弁護人等がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは、面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある…。」としている。
総合メモ

接見指定の適法性 最一小判昭和53年7月10日

概要
捜査機関は、弁護人から被疑者との接見の申出があったときは、原則として何時でも接見の機会を与えるべきであり、捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人と協議してできる限り速やかな接見のための日時を指定し、被疑者が防禦のため弁護人と打ち合わせることのできるような措置をとるべきである。
判例
事案:弁護人が被疑者との接見を申し出たのに対し、捜査官が、接見指定書がなければ接見を許可しないとしたため、弁護人である弁護士が国家賠償請求訴訟を提起した事案において、弁護人から被疑者との接見の申出があった場合に捜査機関のとるべき措置の内容が問題となった。

判旨:「憲法34条前段は、何人も直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留・拘禁されることがないことを規定し、刑訴法39条1項は、この趣旨にのっとり、身体の拘束を受けている被疑者・被告人は、弁護人又は弁護人となろうとする者(以下『弁護人等』という。)と立会人なしに接見し、書類や物の授受をすることができると規定する。この弁護人等との接見交通権は、身体を拘束された被疑者が弁護人の援助を受けることができるための刑事手続上最も重要な基本的権利に属するものであるとともに、弁護人からいえばその固有権の最も重要なものの1つであることはいうまでもない。身体を拘束された被疑者の取調べについては時間的制約があることからして、弁護人等と被疑者との接見交通権と捜査の必要との調整を図るため、刑訴法39条3項は、捜査のため必要があるときは、右の接見等に関してその日時・場所・時間を指定することができると規定するが、弁護人等の接見交通権が前記のように憲法の保障に由来するものであることにかんがみれば、捜査機関のする右の接見等の日時等の指定は、あくまで必要やむをえない例外的措置であって、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限することは許されるべきではない。(同項但書)。捜査機関は、弁護人等から被疑者との接見の申出があったときは、原則として何時でも接見の機会を与えなければならないのであり、現に被疑者を取調中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせる必要がある等捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定し、被疑者が防禦のため弁護人等と打ち合せることのできるような措置をとるべきである。」
過去問・解説
(H22 司法 第26問 ア)
接見交通権は、身体の拘束を受けている被疑者が弁護人と相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を確保する目的で設けられたものであり、憲法の保障に由来するものであって、弁護人の重要な固有権である。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.10)は、「弁護人等との接見交通権は、身体を拘束された被疑者が弁護人の援助を受けることができるための刑事手続上最も重要な基本的権利に属するものであるとともに、弁護人からいえばその固有権の最も重要なものの1つであることはいうまでもない。」としている。
総合メモ

公訴提起後の余罪捜査の必要性を理由とした接見指定 最三小決昭和41年7月26日

概要
公訴の提起後は、余罪について捜査の必要がある場合であっても、検察官、検察事務官または司法警察職員は、被告事件の弁護人または弁護人となろうとする者に対し、39条第3項の指定権を行使することができない。
判例
事案:弁護人が被告人との接見を申し出たのに対し、捜査官が、被告事件の余罪捜査の必要性を理由として接見を拒否したという事案において、かかる措置が許されるかが問題となった。

判旨:「本件検察官および司法警察員は、被告人の弁護人(弁護人となろうとする者についても同じ。)であっても、余罪の関係では被疑者の弁護人であり、したがって、刑訴法39条1項の接見については、なお同条3項の指定権に基づく制約をなしうるものとの解釈のもとに、本件4名の接見を拒否した疑いが濃厚であり、これに反する原決定の判断は、重大な事実誤認の疑いがあるといわなければならない。
 およそ、公訴の提起後は、余罪について捜査の必要がある場合であっても、検察官等は、被告事件の弁護人または弁護人となろうとする者に対し、同39条3項の指定権を行使しえないものと解すべきであり、検察官等がそのような権限があるものと誤解して、同条1項の接見等を拒否した場合、その処分に不服がある者は、同430条により準抗告を申し立てうるものと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H21 司法 第27問 イ)
【事例】
 甲は、平成〇年4月10日、X市で発生した窃盗事件(①事件)で逮捕され、4月13日に勾留された後、5月2日、窃盗罪で起訴された。①事件の捜査中、甲にY市で発生した殺人事件(②事件)の被疑者である嫌疑が生じたため、起訴後に勾留されていた甲は、5月3日以降、②事件について任意で取り調べられた。その後、甲は、5月10日、②事件で逮捕され、5月13日に勾留された後、6月1日、殺人罪で起訴された。
 他方、甲の妻は、4月10日、弁護士Aを①事件の弁護人として選任し、5月4日、弁護士Bを②事件の弁護人として選任した。

5月5日の弁護人Aによる接見について、指定権を行使することができる場合がある。

(正答)

(解説)
まず、①事件はすでに公訴提起されているところ、39条3項本文は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り...接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。」と規定している。
したがって、①事件を理由に接見指定することはできない。
また、判例(最決昭41.7.26)は、「公訴の提起後は、余罪について捜査の必要がある場合であっても、検察官等は、被告事件の弁護人または弁護人となろうとする者に対し、同39条3項の指定権を行使しえない…。」としており、身体拘束のない余罪捜査の必要性を理由とした接見指定も認めていない。
したがって、②事件に基づく接見指定も行い得ない。
よって、5月5日の弁護人Aによる接見について、指定権を行使することはできない。
総合メモ

同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕・勾留とが競合している場合の接見指定 最一小決昭和55年4月28日

概要
同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留とが競合している場合において、検察官等は、被告事件について防禦権の不当な制限にわたらない限り、39条3項の接見等の指定権を行使することができる。
判例
事案:公訴を提起された被告人について、別件の被疑事件に基づいて逮捕され、この被疑事件に基づいて接見指定がなされたという事案において、かかる接見指定の可否が問題となった。

判旨:「同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留とが競合している場合、検察官等は、被告事件について防禦権の不当な制限にわたらない限り、刑訴法39条3項の接見等の指定権を行使することができるものと解すべきであって、これと同旨の原判断は相当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第25問 ウ)
起訴後勾留中の被告人が、同時に余罪の被疑者として逮捕又は勾留中であり、その余罪について、同条第3項にいう「捜査のため必要があるとき」に当たる場合は、被告事件について防御権の不当な制限にわたらない限り、捜査機関は、被告人と被告事件の弁護人との接見に関し、その日時等を指定することが許される。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.4.28)は、「同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留とが競合している場合、検察官等は、被告事件について防禦権の不当な制限にわたらない限り、刑訴法39条3項の接見等の指定権を行使することができる…。」としている。
したがって、余罪について接見指定の必要がある場合には、被告事件について防御権の不当な制限にわたらない限り、接見指定をなしうる。

(H21 司法 第27問 エ)
【事例】
 甲は、平成〇年4月10日、X市で発生した窃盗事件(①事件)で逮捕され、4月13日に勾留された後、5月2日、窃盗罪で起訴された。①事件の捜査中、甲にY市で発生した殺人事件(②事件)の被疑者である嫌疑が生じたため、起訴後に勾留されていた甲は、5月3日以降、②事件について任意で取り調べられた。その後、甲は、5月10日、②事件で逮捕され、5月13日に勾留された後、6月1日、殺人罪で起訴された。
 他方、甲の妻は、4月10日、弁護士Aを①事件の弁護人として選任し、5月4日、弁護士Bを②事件の弁護人として選任した。

5月14日の弁護人Aによる接見について、指定権を行使することはできない。

(正答)

(解説)
5月14日の時点で、甲は、①事件で起訴され、②事件で逮捕・勾留されている。
このように、被疑事件と被告事件が競合している際に、被疑事件を理由に接見指定を行い得るかという点について、判例(最決昭55.4.28)は、「同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留とが競合している場合、検察官等は、被告事件について防禦権の不当な制限にわたらない限り、刑訴法39条3項の接見等の指定権を行使することができる…。」としている。
したがって、5月14日の弁護人Aによる接見について、指定権を行使することができる。

(H21 司法 第27問 オ)
【事例】
 甲は、平成〇年4月10日、X市で発生した窃盗事件(①事件)で逮捕され、4月13日に勾留された後、5月2日、窃盗罪で起訴された。①事件の捜査中、甲にY市で発生した殺人事件(②事件)の被疑者である嫌疑が生じたため、起訴後に勾留されていた甲は、5月3日以降、②事件について任意で取り調べられた。その後、甲は、5月10日、②事件で逮捕され、5月13日に勾留された後、6月1日、殺人罪で起訴された。
 他方、甲の妻は、4月10日、弁護士Aを①事件の弁護人として選任し、5月4日、弁護士Bを②事件の弁護人として選任した。

5月20日の弁護人Bによる接見について、指定権を行使することができる場合がある。

(正答)

(解説)
5月20日の時点で、甲は、①事件で起訴され、②事件で逮捕・勾留されている。
このように、被疑事件と被告事件が競合している際に、被疑事件を理由に接見指定を行い得るかについて、判例(最決昭55.4.28)は、「同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留とが競合している場合、検察官等は、被告事件について防禦権の不当な制限にわたらない限り、刑訴法39条3項の接見等の指定権を行使することができる…。」としている。
したがって、5月20日の弁護人Bによる接見について、指定権を行使することができる場合がある。

(R6 予備 第18問 エ)
勾留されている被告人が同時に余罪の被疑者として勾留されている場合、検察官は、その余罪である被疑事件の捜査のため必要があるときは、被告事件についての防御権の不当な制限にわたらない限り、被告事件の弁護人と被告人との接見に関し、その日時等を指定することができる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.4.28)は、「同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留とが競合している場合、検察官等は、被告事件について防禦権の不当な制限にわたらない限り、刑訴法39条3項の接見等の指定権を行使することができる…。」としている。
総合メモ

接見指定の方法 最三小判平成3年5月10日

概要
①39条3項の規定にいう「捜査のため必要があるとき」には、捜査機関が弁護人から被疑者との接見の申出を受けた時に、間近い時に被疑者を取り調べたり、実況見分、検証等に立ち会わせたりするなどの確実な予定があって、弁護人の必要とする接見を認めたのでは右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合が含まれる。
②捜査機関が弁護人と被疑者との接見の日時等を指定する方法は、その合理的裁量にゆだねられているが、それが著しく合理性を欠き、弁護人と被疑者との迅速かつ円滑な接見交通が害される結果になるようなときは、違法なものとして許されない。
判例
事案:弁護人が被疑者との接見を申し出た際、検察官が弁護人と協議する姿勢を示すことなく、一方的に往復約2時間を要するほど離れている勤務庁に接見指定書を取りに来させてほしい旨を伝言したのみで接見の日時等を指定しようとせず、弁護人は接見を断念したことについて、接見交通権を侵害されたとして国家賠償請求訴訟を提起した事案において、①39条3項の「捜査のため必要があるとき」の意義、②接見指定の方法と裁量の範囲が問題となった。

判旨:①「弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(以下『弁護人等』という。)と被疑者との接見交通権が憲法上の保障に由来するものであることにかんがみれば、刑訴法39条3項の規定による捜査機関のする接見又は書類若しくは物の授受の日時、場所及び時間の指定は、あくまで必要やむを得ない例外的措置であって、これにより被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限することが許されないことはいうまでもない。したがって、捜査機関は、弁護人等から被疑者との接見等の申出があったときは、原則としていつでも接見等の機会を与えなければならないのであり、これを認めると捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採るべきである(最高裁昭和49年(オ)第1088号同53年7月10日第一小法廷判決・民集32巻5号820頁)。
 そして、右にいう捜査の中断による支障が顕著な場合には、捜査機関が、弁護人等の接見等の申出を受けた時に、現に被疑者を取調べ中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせているというような場合だけでなく、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の必要とする接見等を認めたのでは、右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合も含むものと解すべきである。」
 ②「右のように、弁護人等の必要とする接見等を認めたのでは捜査機関の現在の取調べ等の進行に支障が生じたり又は間近い時に確実に予定している取調べ等の開始が妨げられるおそれがあることが判明した場合には、捜査機関は、直ちに接見等を認めることなく、弁護人等と協議の上、右取調べ等の終了予定後における接見等の日時等を指定することができるのであるが、その場合でも、弁護人等ができるだけ速やかに接見等を開始することができ、かつ、その目的に応じた合理的な範囲内の時間を確保することができるように配慮すべきである。そのため、弁護人等から接見等の申出を受けた捜査機関は、直ちに、当該被疑者について申出時において現に実施している取調べ等の状況又はそれに間近い時における取調べ等の予定の有無を確認して具体的指定要件の存否を判断し、右合理的な接見等の時間との関連で、弁護人等の申出の日時等を認めることができないときは、改めて接見等の日時等を指定してこれを弁護人等に告知する義務があるというべきである。そして、捜査機関が右日時等を指定する際いかなる方法を採るかは、その合理的裁量にゆだねられているものと解すべきであるから、電話などの口頭による指定をすることはもちろん、弁護人等に対する書面(いわゆる接見指定書)の交付による方法も許されるものというべきであるが、その方法が著しく合理性を欠き、弁護人等と被疑者との迅速かつ円滑な接見交通が害される結果になるようなときには、それは違法なものとして許されないことはいうまでもない。」
過去問・解説
(H19 司法 第25問 エ)
捜査機関が被疑者と弁護人との接見の日時等を指定する場合、その方法は、捜査機関の合理的裁量にゆだねられるが、弁護人に対する書面の交付による方法は許されない。

(正答)

(解説)
判例(最判平3.5.10)は、「捜査機関が右日時等を指定する際いかなる方法を採るかは、その合理的裁量にゆだねられているものと解すべきであるから、電話などの口頭による指定をすることはもちろん、弁護人等に対する書面(いわゆる接見指定書)の交付による方法も許されるものというべきである...。」としている。
したがって、書面の交付による方法も許される。
総合メモ

弁護人と被疑者との接見交通に関する一般的指定 最二小判平成3年5月31日

概要
①39条3項の規定にいう「捜査のため必要のあるとき」には、捜査機関が、弁護人から被疑者との接見等の申出を受けた時に、現に被疑者を取調べ中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせているような場合だけでなく、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人の必要とする接見を認めたのでは、右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合が含まれる。
②弁護人等からの被疑者との接見の申出が接見の日時等の指定権限のない者に対してされた場合、右の者は、指定権限のある捜査官に対して申出のあったことを連絡し、具体的指示を受ける等の手続を採る必要があり、こうした手続を要することによって弁護人等が待機することになり、又はそれだけ接見が遅れることがあったとしても、それが合理的な範囲内にとどまる限り違法とはいえない。
判例
事例:弁護人が被疑者との接見を申し出た際に、接見指定の判断を仰ぐために弁護人を一定時間待機させた。弁護人がかかる措置により接見交通権が妨害されたとして国家賠償請求訴訟を提起した事案において、①39条3項の「捜査のため必要があるとき」の意義、②弁護人からの被疑者との接見の申出が接見の日時等の指定権限のない捜査官に対してされた場合に捜査官のとるべき措置の内容が問題となった。

判旨:①「弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(以下『弁護人等』という。)と被疑者との接見交通権が憲法上の保障に由来するものであることにかんがみれば、刑訴法39条3項の規定による捜査機関のする接見又は書類若しくは物の授受の日時、場所及び時間の指定は、あくまで必要やむを得ない例外的措置であって、右指定に当たっては、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限されることがないように配慮することは当然である。したがって、捜査機関は、弁護人等から被疑者との接見等の申出があったときは、原則としていつでも接見等の機会を与えなければならないのであり、これを認めると捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採るべきである(最高裁昭和49年(オ)第1088号昭和53年7月10日第一小法廷判決・民集32巻5号820頁)。そして、右にいう捜査の中断による支障が顕著な場合には、捜査機関が、弁護人等の接見等の申出を受けた時に、現に被疑者を取調べ中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせているというような場合だけでなく、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の必要とする接見等を認めたのでは、右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合も含むものと解すべきである。」
 ②「捜査機関は、弁護人等から被疑者との接見等の申出を受けたときは、速やかに当該被疑者についての取調状況等を調査して、右のような接見等の日時等を指定する要件が存在するか否かを判断し、適切な措置を採るべきであるが、弁護人等から接見等の申出を受けた者が接見等の日時等の指定につき権限のある捜査官(以下『権限のある捜査官』という。)でないため右の判断ができないときは、権限のある捜査官に対し右の申出のあったことを連絡し、その具体的措置について指示を受ける等の手続を採る必要があり、こうした手続を要することにより弁護人等が待機することになり又はそれだけ接見が遅れることがあったとしても、それが合理的な範囲内にとどまる限り、許容されているものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第25問 ア)
勾留中の被疑者の弁護人から接見の申出を受けた司法警察職員が、接見のための日時等の指定につき権限のある捜査機関である検察官に連絡し、それに対する具体的措置について指示を受ける等の手続を採る間、弁護人を待機させることは、合理的な範囲内にとどまる限り許される。

(正答)

(解説)
判例(最判平3.5.31)は、捜査官による接見指定の判断について、「弁護人等から接見等の申出を受けた者が接見等の日時等の指定につき権限のある捜査官…でないでないため右の判断ができないときは、権限のある捜査官に対し右の申出のあったことを連絡し、その具体的措置について指示を受ける等の手続を採る必要があり、こうした手続を要することにより弁護人等が待機することになり又はそれだけ接見が遅れることがあったとしても、それが合理的な範囲内にとどまる限り、許容されている…。」としている。
総合メモ

接見交通権と弁護人依頼権の関係 最大判平成11年3月24日

概要
接見指定を規定する39条3項本文は、憲法34条前段の弁護人依頼権の保障の趣旨を実質的に損なうものではない。
判例
事案:弁護人が被疑者と接見をするに際し、接見指定がなされたことから接見交通権を侵害されたとして国家賠償請求訴訟を提起した事案において、刑事訴訟法39条3項の規定と憲法34条前段の弁護人依頼権の保障の趣旨の関係が問題となった。

判旨:「憲法34条前段は、『何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。』と定める。この弁護人に依頼する権利は、身体の拘束を受けている被疑者が、拘束の原因となっている嫌疑を晴らしたり、人身の自由を回復するための手段を講じたりするなど自己の自由と権利を守るため弁護人から援助を受けられるようにすることを目的とするものである。したがって、右規定は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障しているものと解すべきである。
 刑訴法39条1項が、『身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあっては、第31条第2項の許可があった後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。』として、被疑者と弁護人等との接見交通権を規定しているのは、憲法34条の右の趣旨にのっとり、身体の拘束を受けている被疑者が弁護人等と相談し、その助言を受けるなど弁護人等から援助を受ける機会を確保する目的で設けられたものであり、その意味で、刑訴法の右規定は、憲法の保障に由来するものであるということができる(最高裁昭和49年(オ)第1088号同53年7月10日第一小法廷判決・民集32巻5号820頁、最高裁昭和58年(オ)第379号、第381号平成3年5月10日第三小法廷判決・民集45巻5号919頁、最高裁昭和61年(オ)第851号平成3年5月31日第二小法廷判決・裁判集民事163号47頁参照)。
 ...もっとも、憲法は、刑罰権の発動ないし刑罰権発動のための捜査権の行使が国家の権能であることを当然の前提とするものであるから、被疑者と弁護人等との接見交通権が憲法の保障に由来するからといって、これが刑罰権ないし捜査権に絶対的に優先するような性質のものということはできない。そして、捜査権を行使するためには、身体を拘束して被疑者を取り調べる必要が生ずることもあるが、憲法はこのような取調べを否定するものではないから、接見交通権の行使と捜査権の行使との間に合理的な調整を図らなければならない。憲法34条は、身体の拘束を受けている被疑者に対して弁護人から援助を受ける機会を持つことを保障するという趣旨が実質的に損なわれない限りにおいて、法律に右の調整の規定を設けることを否定するものではないというべきである。
 ...ところで、刑訴法39条は、前記のように1項において接見交通権を規定する一方、3項本文において、『検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第1項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。』と規定し、接見交通権の行使につき捜査機関が制限を加えることを認めている。この規定は、刑訴法において身体の拘束を受けている被疑者を取り調べることが認められていること(198条1項)、被疑者の身体の拘束については刑訴法上最大でも23日間(内乱罪等に当たる事件については28日間)という厳格な時間的制約があること(203条から205条まで、208条、208条の2参照)などにかんがみ、被疑者の取調べ等の捜査の必要と接見交通権の行使との調整を図る趣旨で置かれたものである。そして、刑訴法39条3項ただし書は、『但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。』と規定し、捜査機関のする右の接見等の日時等の指定は飽くまで必要やむを得ない例外的措置であって、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限することは許されない旨を明らかにしている。
 このような刑訴法39条の立法趣旨、内容に照らすと、捜査機関は、弁護人等から被疑者との接見等の申出があったときは、原則としていつでも接見等の機会を与えなければならないのであり、同条3項本文にいう『捜査のため必要があるとき』とは、右接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られ、右要件が具備され、接見等の日時等の指定をする場合には、捜査機関は、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならないものと解すべきである。そして、弁護人等から接見等の申出を受けた時に、捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは、右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として右にいう取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に当たると解すべきである(前掲昭和53年7月10日第一小法廷判決、前掲平成3年5月10日第三小法廷判決、前掲平成3年5月31日第二小法廷判決参照)。
 ...以上のとおり、刑訴法は、身体の拘束を受けている被疑者を取り調べることを認めているが、被疑者の身体の拘束を最大でも23日間(又は28日間)に制限しているのであり、被疑者の取調べ等の捜査の必要と接見交通権の行使との調整を図る必要があるところ、(1)刑訴法39条3項本文の予定している接見等の制限は、弁護人等からされた接見等の申出を全面的に拒むことを許すものではなく、単に接見等の日時を弁護人等の申出とは別の日時とするか、接見等の時間を申出より短縮させることができるものにすぎず、同項が接見交通権を制約する程度は低いというべきである。また、前記のとおり、(2)捜査機関において接見等の指定ができるのは、弁護人等から接見等の申出を受けた時に現に捜査機関において被疑者を取調べ中である場合などのように、接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られ、しかも、(3)右要件を具備する場合には、捜査機関は、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならないのである。このような点からみれば、刑訴法39条3項本文の規定は、憲法34条前段の弁護人依頼権の保障の趣旨を実質的に損なうものではないというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第25問 イ)
捜査機関が弁護人から接見の申出を受けた時点において、現に被疑者の身柄を用いていない場合は、間近い時に被疑者を立ち会わせて実況見分を行う確実な予定があり、弁護人の申出に沿った接見を認めたのでは実況見分を予定どおりに開始できなくなるおそれがあっても、同条第3項にいう「捜査のため必要があるとき」に当たることはない。

(正答)

(解説)
判例(最大判平11.3.24)は、「39条...3項本文にいう『捜査のため必要があるとき』とは、右接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られ...る。」としている。その上で、「弁護人等から接見等の申出を受けた時に、捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは、右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として右にいう取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に当たる...。」としている。

(R6 予備 第18問 ア)
接見交通権は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者が弁護人と相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を確保する目的で設けられたものであり、憲法の保障に由来するものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平11.3.24)は、「刑訴法39条1項が、『身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあっては、第31条第2項の許可があった後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。』として、被疑者と弁護人等との接見交通権を規定しているのは、憲法34条の右の趣旨にのっとり、身体の拘束を受けている被疑者が弁護人等と相談し、その助言を受けるなど弁護人等から援助を受ける機会を確保する目的で設けられたものであり、その意味で、刑訴法の右規定は、憲法の保障に由来するものである…。」としている。

(R6 予備 第18問 イ)
刑事訴訟法第39条第3項の「捜査のため必要があるとき」とは、接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られるところ、捜査機関が弁護人から身体の拘束を受けている被疑者との接見の申出を受けた時に、現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に取調べ等をする確実な予定があって、弁護人の申出に沿った接見を認めたのでは、取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に当たる。

(正答)

(解説)
判例(最判平11.3.24)は、「3項本文にいう『捜査のため必要があるとき』とは、右接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られ、…弁護人等から接見等の申出を受けた時に、捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは、右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として右にいう取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に当たる…。」としている。
総合メモ

逮捕直後の初回接見における接見指定 最三小判平成12年6月13日

概要
弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認める措置を採るべきである。
判例
事案:弁護人が被疑者との初回接見に臨んだところ、現に被疑者を取調べ中であり、被疑者の夕食後においても取調べを継続する予定があるとして接見指定を受けたため、弁護人である弁護士は、国家賠償請求訴訟を提起した。本件では、かかる場合に捜査機関がとるべき措置の内容が問題となった。

判旨:「検察官、検察事務官又は司法警察職員(以下『捜査機関』という。)は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(以下『弁護人等』という。)から被疑者との接見又は書類若しくは物の授受(以下『接見等』という。)の申出があったときは、原則としていつでも接見等の機会を与えなければならないのであり、刑訴法39条3項本文にいう「捜査のため必要があるとき」とは、右接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られる。そして、弁護人等から接見等の申出を受けた時に、捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは、右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として右にいう取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に当たると解すべきである(前掲平成11年3月24日大法廷判決参照)。
 右のように、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは捜査に顕著な支障が生じるときは、捜査機関は、弁護人等と協議の上、接見指定をすることができるのであるが、その場合でも、その指定は、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならないのであって(刑訴法39条3項ただし書)、捜査機関は、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならないものと解すべきである。
 とりわけ、弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、身体を拘束された被疑者にとっては、弁護人の選任を目的とし、かつ、今後捜査機関の取調べを受けるに当たっての助言を得るための最初の機会であって、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留又は拘禁されないとする憲法上の保障の出発点を成すものであるから、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である。したがって、右のような接見の申出を受けた捜査機関としては、前記の接見指定の要件が具備された場合でも、その指定に当たっては、弁護人となろうとする者と協議して、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し、これが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、犯罪事実の要旨の告知等被疑者の引致後直ちに行うべきものとされている手続及びそれに引き続く指紋採取、写真撮影等所要の手続を終えた後において、たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべきであり、このような場合に、被疑者の取調べを理由として右時点での接見を拒否するような指定をし、被疑者と弁護人となろうとする者との初回の接見の機会を遅らせることは、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するものといわなければならない。」
過去問・解説
(H19 司法 第25問 オ)
弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要であるから、捜査機関は、39条第3項にいう「捜査のため必要があるとき」に当たる場合であっても、接見の日時等を指定することが許されることはない。

(正答)

(解説)
39条3項は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第1項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。」と規定している。
これについて、判例(最判平12.6.13)は、「弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、身体を拘束された被疑者にとっては、弁護人の選任を目的とし、かつ、今後捜査機関の取調べを受けるに当たっての助言を得るための最初の機会であって、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留又は拘禁されないとする憲法上の保障の出発点を成すものであるから、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である。」としている。
しかし、それゆえに接見指定が許されないとは述べておらず、「弁護人となろうとする者と協議して、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し、これが可能なときは、...たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべきであ...る。」としており、初回接見であったとしても、接見指定ができることを前提としている。

(H21 司法 第27問 ア)
【事例】
 甲は、平成〇年4月10日、X市で発生した窃盗事件(①事件)で逮捕され、4月13日に勾留された後、5月2日、窃盗罪で起訴された。①事件の捜査中、甲にY市で発生した殺人事件(②事件)の被疑者である嫌疑が生じたため、起訴後に勾留されていた甲は、5月3日以降、②事件について任意で取り調べられた。その後、甲は、5月10日、②事件で逮捕され、5月13日に勾留された後、6月1日、殺人罪で起訴された。
 他方、甲の妻は、4月10日、弁護士Aを①事件の弁護人として選任し、5月4日、弁護士Bを②事件の弁護人として選任した。

4月10日の弁護人Aによる初回の接見について、指定権を行使することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平12.6.13)は、「弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、身体を拘束された被疑者にとっては、弁護人の選任を目的とし、かつ、今後捜査機関の取調べを受けるに当たっての助言を得るための最初の機会であって、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留又は拘禁されないとする憲法上の保障の出発点を成すものであるから、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である。」としている。
しかし、それゆえに接見指定が許されないとは述べておらず、「弁護人となろうとする者と協議して、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し、これが可能なときは、...たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべきであ...る。」としており、初回接見であったとしても、接見指定ができることを前提としている。
したがって、4月10日の弁護人Aによる初回の接見について、指定権を行使することができる。

(H22 司法 第26問 イ)
弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要であるので、被疑者が取調べ中であっても、即座に取調べを中断して、接見させなければならない。

(正答)

(解説)
判例(最判平12.6.13)は、「弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、…これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である。」としている。
もっとも、その上で、「弁護人となろうとする者と協議して、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し、これが可能なときは、...たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべきであ...る。」としており、被疑者が取調べ中であっても、即座に取調べを中断して、接見させなければならないとはしていない。

(R6 予備 第18問 ウ)
弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要であるので、捜査機関は、現に被疑者を取調べ中であって、弁護人の申出に沿った即時の接見を認めると捜査に顕著な支障が生じる場合であっても、直ちに取調べを中断して、接見させなければならない。

(正答)

(解説)
判例(最判平12.6.13)は、「弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、身体を拘束された被疑者にとっては、弁護人の選任を目的とし、かつ、今後捜査機関の取調べを受けるに当たっての助言を得るための最初の機会であって、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留又は拘禁されないとする憲法上の保障の出発点を成すものであるから、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である。」とした上で、「接見の申出を受けた捜査機関としては、前記の接見指定の要件が具備された場合でも、その指定に当たっては、弁護人となろうとする者と協議して、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し、これが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、犯罪事実の要旨の告知等被疑者の引致後直ちに行うべきものとされている手続及びそれに引き続く指紋採取、写真撮影等所要の手続を終えた後において、たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべきであり、このような場合に、被疑者の取調べを理由として右時点での接見を拒否するような指定をし、被疑者と弁護人となろうとする者との初回の接見の機会を遅らせることは、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するものといわなければならない。」としている。
総合メモ