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捜査(行政警察活動)
職務質問と有形力の行使 最一小判昭和29年7月15日
概要
夜間道路上で、警羅中の警察官から職務質問を受け、巡査駐在所に任意同行され、所持品等につき質問中隙をみて逃げ出した被告人を、更に質問を続行すべく追跡して背後から腕に手をかけ停止させる行為は、正当な職務執行の範囲を超えるものではない。
判例
事案:駐在所内で所持品等について職務質問を受けていた被告人が、突然表通りに飛び出したため、巡査が職務質問を続けようとして追いかけて制止した事案において、かかる制止行為の適法性が問題となった。
判旨:「広瀬巡査が他の巡査の職務質問を続行し又自らの疑念のため職務質問を行うことは許されて然るべきであり、そのためには同執行法第2条第1項の法意に従い逃走する被告人を停止させてこれが質問をすることができるものと解すべきであると同時に又これをなすことが却てその忠実な職務の遂行であるとも謂い得るのである。尤も斯かる場合停止させる必要な手段方法は客観的に妥当であると判断される適切な手段方法を選ぶべく、決して暴行に亘るべき態度に出ずべきでないことは勿論のことであるが斯かる手段方法である限り多少の実力を加えることも正当性のある職務執行上の方法であると謂はなければならない、原判決は広瀬巡査が被告人を約130メートル追かけその身体に手をかけた行為を目して逮捕的行為であると認め適法な職務行為の範囲を逸脱していると判断しているけれども、その距離の如何に拘らず停止を求めるためにその跡を追かけることは事物自然の要求する通常の手段方法であって、客観的に妥当なものであると認むべくこれを目して強制又は強制的手段であるとは到底考へられないところであるし又同巡査が被告人の背後より『何うして逃げるのか』と言いながらその腕に手をかけたことも任意に停止をしない被告人を停止させるためにはこの程度の実力行為に出でることは真に止むを得ないことであって正当な職務執行の手段方法であると認むるを相当とする。固よりこの程度の実力行為は刑事訴訟に関する法律の規定によらない限りなし得ない逮捕行為に該当するものではないと解すべきであり原判決においても敢て逮捕行為と謂い『的』なる語を用いているのは恐らく逮捕自体ではないがこれに準ずべき行為であるという意味において理解したものであらうが逮捕と停止行為とは明らかにその観念を異にし、逮捕は被逮捕者の意思如何に拘らず或る程度の時間的拘束を含む観念であるに反し、停止行為は停止のための一時的行為であって、停止を求められた者が任意に停止することによって直ちに中止されねばならぬ性質のものであるから広瀬巡査の本件停止行為は毫も逮捕行為と目すべきものでなく又これに準ずべき性質のものであるとも謂い得ない。そのほか本件記録を精査するも広瀬巡査が被告人に対し何等強制又は強制的行為に出でたと認むべき形跡はないから広瀬巡査の被告人に対して採った如上の行為は正当な職務執行上の行為として総て適法であると謂はなければならない。」(名古屋高判昭28.12.7)とした「原判決の判示は正当であ...る。」
判旨:「広瀬巡査が他の巡査の職務質問を続行し又自らの疑念のため職務質問を行うことは許されて然るべきであり、そのためには同執行法第2条第1項の法意に従い逃走する被告人を停止させてこれが質問をすることができるものと解すべきであると同時に又これをなすことが却てその忠実な職務の遂行であるとも謂い得るのである。尤も斯かる場合停止させる必要な手段方法は客観的に妥当であると判断される適切な手段方法を選ぶべく、決して暴行に亘るべき態度に出ずべきでないことは勿論のことであるが斯かる手段方法である限り多少の実力を加えることも正当性のある職務執行上の方法であると謂はなければならない、原判決は広瀬巡査が被告人を約130メートル追かけその身体に手をかけた行為を目して逮捕的行為であると認め適法な職務行為の範囲を逸脱していると判断しているけれども、その距離の如何に拘らず停止を求めるためにその跡を追かけることは事物自然の要求する通常の手段方法であって、客観的に妥当なものであると認むべくこれを目して強制又は強制的手段であるとは到底考へられないところであるし又同巡査が被告人の背後より『何うして逃げるのか』と言いながらその腕に手をかけたことも任意に停止をしない被告人を停止させるためにはこの程度の実力行為に出でることは真に止むを得ないことであって正当な職務執行の手段方法であると認むるを相当とする。固よりこの程度の実力行為は刑事訴訟に関する法律の規定によらない限りなし得ない逮捕行為に該当するものではないと解すべきであり原判決においても敢て逮捕行為と謂い『的』なる語を用いているのは恐らく逮捕自体ではないがこれに準ずべき行為であるという意味において理解したものであらうが逮捕と停止行為とは明らかにその観念を異にし、逮捕は被逮捕者の意思如何に拘らず或る程度の時間的拘束を含む観念であるに反し、停止行為は停止のための一時的行為であって、停止を求められた者が任意に停止することによって直ちに中止されねばならぬ性質のものであるから広瀬巡査の本件停止行為は毫も逮捕行為と目すべきものでなく又これに準ずべき性質のものであるとも謂い得ない。そのほか本件記録を精査するも広瀬巡査が被告人に対し何等強制又は強制的行為に出でたと認むべき形跡はないから広瀬巡査の被告人に対して採った如上の行為は正当な職務執行上の行為として総て適法であると謂はなければならない。」(名古屋高判昭28.12.7)とした「原判決の判示は正当であ...る。」
過去問・解説
(H25 予備 第17問 ア)
路上で騒いでいる男がいるとの通報を受けた司法警察員Xらが、パトカーで現場に駆けつけたところ、甲が上半身裸で大声を出していた。Xらは、甲の言語や態度から、覚せい剤の使用を疑い、職務質問をすべく、パトカーから降りて甲に近づいた。甲は、Xらに気付くと、その場からち去ろうとしたため、①Xは、甲を追い掛け、「待ちなさい。」などと声を掛けながら、甲の肩に右手を掛けて引き留めた。
①については、職務質問において有形力の行使は一切許されないから違法となる。
路上で騒いでいる男がいるとの通報を受けた司法警察員Xらが、パトカーで現場に駆けつけたところ、甲が上半身裸で大声を出していた。Xらは、甲の言語や態度から、覚せい剤の使用を疑い、職務質問をすべく、パトカーから降りて甲に近づいた。甲は、Xらに気付くと、その場からち去ろうとしたため、①Xは、甲を追い掛け、「待ちなさい。」などと声を掛けながら、甲の肩に右手を掛けて引き留めた。
①については、職務質問において有形力の行使は一切許されないから違法となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭29.7.15)は、本肢と同種の事案において、「巡査が他の巡査の職務質問を続行し又自らの疑念のため職務質問を行うことは許されて然るべきであり、そのためには同執行法第2条第1項の法意に従い逃走する被告人を停止させてこれが質問をすることができるものと解すべきであると同時に又これをなすことが却てその忠実な職務の遂行であるとも謂い得るのである。尤も斯かる場合停止させる必要な手段方法は客観的に妥当であると判断される適切な手段方法を選ぶべく、決して暴行に亘るべき態度に出ずべきでないことは勿論のことであるが斯かる手段方法である限り多少の実力を加えることも正当性のある職務執行上の方法であると謂はなければならない...。巡査の被告人に対して採った如上の行為は正当な職務執行上の行為として総て適法である…。」とした原審(名古屋高判昭28.12.7)の判断を正当としており、職務質問において有形力を行使することが許される場合があることを認めている。
判例(最判昭29.7.15)は、本肢と同種の事案において、「巡査が他の巡査の職務質問を続行し又自らの疑念のため職務質問を行うことは許されて然るべきであり、そのためには同執行法第2条第1項の法意に従い逃走する被告人を停止させてこれが質問をすることができるものと解すべきであると同時に又これをなすことが却てその忠実な職務の遂行であるとも謂い得るのである。尤も斯かる場合停止させる必要な手段方法は客観的に妥当であると判断される適切な手段方法を選ぶべく、決して暴行に亘るべき態度に出ずべきでないことは勿論のことであるが斯かる手段方法である限り多少の実力を加えることも正当性のある職務執行上の方法であると謂はなければならない...。巡査の被告人に対して採った如上の行為は正当な職務執行上の行為として総て適法である…。」とした原審(名古屋高判昭28.12.7)の判断を正当としており、職務質問において有形力を行使することが許される場合があることを認めている。
総合メモ
所持品検査の適法性 最三小判昭和53年6月20日
概要
①職務質問に附随して行う所持品検査は、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急性、これによって侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される場合がある。
②警察官が、猟銃及び登山用ナイフを使用しての銀行強盗の容疑が濃厚な者を深夜に検問の現場から警察署に同行して職務質問中、その者が職務質問に対し黙秘し再三にわたる所持品の開披要求を拒否するなどの不審な挙動をとり続けたため、容疑を確かめる緊急の必要上、承諾がないままその者の所持品であるバッグの施錠されていないチャックを開披し内部を一べつしたにすぎない行為は、職務質問に附随して行う所持品検査において許容される限度内の行為である。
②警察官が、猟銃及び登山用ナイフを使用しての銀行強盗の容疑が濃厚な者を深夜に検問の現場から警察署に同行して職務質問中、その者が職務質問に対し黙秘し再三にわたる所持品の開披要求を拒否するなどの不審な挙動をとり続けたため、容疑を確かめる緊急の必要上、承諾がないままその者の所持品であるバッグの施錠されていないチャックを開披し内部を一べつしたにすぎない行為は、職務質問に附随して行う所持品検査において許容される限度内の行為である。
判例
事案:銀行強盗事件が発生したため緊急配備についていた警察官が、不審な挙動を取る被告人等のバッグを承諾なしに所持品検査した事案において、①所持品検査の適法性はどのように判断するか②職務質問に付随して所持品検査をすることができるかなどが問題となった。
判旨:①「警職法は、その2条1項において同項所定の者を停止させて質問することができると規定するのみで、所持品の検査については明文の規定を設けていないが、所持品の検査は、口頭による質問と密接に関連し、かつ、職務質問の効果をあげるうえで必要性、有効性の認められる行為であるから、同条項による職務質問に附随してこれを行うことができる場合があると解するのが、相当である。所持品検査は、任意手段である職務質問の附随行為として許容されるのであるから、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であることはいうまでもない。しかしながら、職務質問ないし所持品検査は、犯罪の予防、鎮圧等を目的とする行政警察上の作用であって、流動する各般の警察事象に対応して迅速適正にこれを処理すべき行政警察の責務にかんがみるときは、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査においても許容される場合があると解すべきである。もっとも、所持品検査には種々の態様のものがあるので、その許容限度を一般的に定めることは困難であるが、所持品について捜索及び押収を受けることのない権利は憲法35条の保障するところであり、捜索に至らない程度の行為であってもこれを受ける者の権利を害するものであるから、状況のいかんを問わず常にかかる行為が許容されるものと解すべきでないことはもちろんであって、かかる行為は、限定的な場合において、所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ、許容されるものと解すべきである。」
②「猟銃及び登山用ナイフを使用しての銀行強盗という重大な犯罪が発生し犯人の検挙が緊急の警察責務とされていた状況の下において、深夜に検問の現場を通りかかった近藤及び被告人の両名が、右犯人としての濃厚な容疑が存在し、かつ、兇器を所持している疑いもあったのに、警察官の職務質問に対し黙秘したうえ再三にわたる所持品の開披要求を拒否するなどの不審な挙動をとり続けたため、右両名の容疑を確める緊急の必要上されたものであって、所持品検査の緊急性、必要性が強かった反面、所持品検査の態様は携行中の所持品であるバツグの施錠されていないチヤツクを開披し内部を一べつしたにすぎないものであるから、これによる法益の侵害はさほど大きいものではなく、上述の経過に照らせば相当と認めうる行為であるから、これを警職法2条1項の職務質問に附随する行為として許容されるとした原判決の判断は正当である。」
判旨:①「警職法は、その2条1項において同項所定の者を停止させて質問することができると規定するのみで、所持品の検査については明文の規定を設けていないが、所持品の検査は、口頭による質問と密接に関連し、かつ、職務質問の効果をあげるうえで必要性、有効性の認められる行為であるから、同条項による職務質問に附随してこれを行うことができる場合があると解するのが、相当である。所持品検査は、任意手段である職務質問の附随行為として許容されるのであるから、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であることはいうまでもない。しかしながら、職務質問ないし所持品検査は、犯罪の予防、鎮圧等を目的とする行政警察上の作用であって、流動する各般の警察事象に対応して迅速適正にこれを処理すべき行政警察の責務にかんがみるときは、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査においても許容される場合があると解すべきである。もっとも、所持品検査には種々の態様のものがあるので、その許容限度を一般的に定めることは困難であるが、所持品について捜索及び押収を受けることのない権利は憲法35条の保障するところであり、捜索に至らない程度の行為であってもこれを受ける者の権利を害するものであるから、状況のいかんを問わず常にかかる行為が許容されるものと解すべきでないことはもちろんであって、かかる行為は、限定的な場合において、所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ、許容されるものと解すべきである。」
②「猟銃及び登山用ナイフを使用しての銀行強盗という重大な犯罪が発生し犯人の検挙が緊急の警察責務とされていた状況の下において、深夜に検問の現場を通りかかった近藤及び被告人の両名が、右犯人としての濃厚な容疑が存在し、かつ、兇器を所持している疑いもあったのに、警察官の職務質問に対し黙秘したうえ再三にわたる所持品の開披要求を拒否するなどの不審な挙動をとり続けたため、右両名の容疑を確める緊急の必要上されたものであって、所持品検査の緊急性、必要性が強かった反面、所持品検査の態様は携行中の所持品であるバツグの施錠されていないチヤツクを開披し内部を一べつしたにすぎないものであるから、これによる法益の侵害はさほど大きいものではなく、上述の経過に照らせば相当と認めうる行為であるから、これを警職法2条1項の職務質問に附随する行為として許容されるとした原判決の判断は正当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第21問 オ)
警察官が職務質問に付随して行う所持品検査は、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況の下で相当と認められる限度で許容される場合がある。
警察官が職務質問に付随して行う所持品検査は、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況の下で相当と認められる限度で許容される場合がある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭53.6.20)は、「所持品検査は、任意手段である職務質問の附随行為として許容されるのであるから、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であることはいうまでもない。しかしながら、...捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、...所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ、許容される…。」としている。
判例(最判昭53.6.20)は、「所持品検査は、任意手段である職務質問の附随行為として許容されるのであるから、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であることはいうまでもない。しかしながら、...捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、...所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ、許容される…。」としている。