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捜査(捜索・差押え)

錯乱状態にあった被告人に対して行われた強制採尿の適法性(R6) 最二小決平成3年7月16日

概要
錯乱状態に陥り任意の尿の提出が期待できない状況において実施された強制採尿手続に違法はない。
判例
事案:錯乱状態に陥り任意の尿の提出が期待できない状況において実施された強制採尿手続が違法であるかが問題となった。

判旨:「被告人は、錯乱状態に陥っていて任意の尿の提出が期待できない状況にあったものと認められるのであって、本件被疑事実の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らせば、本件強制採尿は、犯罪の捜査上真にやむを得ない場合に実施されたものということができるから、右手続に違法はないとした原判断は正当である(最高裁昭和54年(あ)第429号同55年10月23日第一小法廷決定・刑集34巻5号300頁参照)。」
過去問・解説
(R6 予備 第26問 エ)
被疑者から尿を採取するに当たり、被疑者が錯乱状態に陥っていて任意の尿の提出が期待できない状況にあるときは、任意提出の機会を提供せずに、令状によって強制採尿を行うことができる。

(正答)

(解説)
判例(最決平3.7.16)は、本肢と同種の事案において、 「被告人は、錯乱状態に陥っていて任意の尿の提出が期待できない状況にあったものと認められるのであって、本件被疑事実の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らせば、本件強制採尿は、犯罪の捜査上真にやむを得ない場合に実施されたものということができるから、右手続に違法はないとした原判断は正当である…。」としている。
総合メモ

強制採尿令状により採尿場所まで強制連行することの可否 最三小決平成6年9月16日

概要
身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、いわゆる強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができる。
判例
事案:覚せい剤使用の嫌疑がある被疑者に対して強制採尿令状が発付後、現場において、被疑者の両腕をつかみ被疑者を警察車両に乗車させた上、強制採尿令状を呈示して執行しようとしたところ、被疑者が興奮して同巡査部長に頭を打ち付けるなど激しく抵抗したため、警察官が、被疑者の両腕を制圧して被疑者を警察車両に乗車させたまま、現場を出発し、病院に到着したという事案において、かかる連行行為の適法性が問題となった。

判旨:「身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力を行使することができるものと解するのが相当である。けだし、そのように解しないと、強制採尿令状の目的を達することができないだけでなく、このような場合に右令状を発付する裁判官は、連行の当否を含めて審査し、右令状を発付したものとみられるからである。その場合、右令状に、被疑者を採尿に適する最寄りの場所まで連行することを許可する旨を記載することができることはもとより、被疑者の所在場所が特定しているため、そこから最も近い特定の採尿場所を指定して、そこまで連行することを許可する旨を記載することができることも,明らかである。
 本件において、被告人を任意に採尿に適する場所まで同行することが事実上不可能であったことは、前記のとおりであり、連行のために必要限度を超えて被疑者を拘束したり有形力を加えたものとはみられない。また、前記病院における強制採尿手続にも、違法と目すべき点は見当たらない。したがって、本件強制採尿手続自体に違法はないというべきである。」
過去問・解説
(H20 司法 第27問 オ)
身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、強制採尿のための捜索差押令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができる。

(正答)

(解説)
判例(最決平6.9.16)は、「身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力を行使することができる…。」としている。

(H25 司法 第25問 イ)
捜査機関は、身体を拘束されていない被疑者を採尿場所に任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合、採尿することを許可する捜索差押令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(最決平6.9.16)は、「身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力を行使することができる…。」としている。

(H25 予備 第17問 エ)
路上で騒いでいる男がいるとの通報を受けた司法警察員Xらが、パトカーで現場に駆けつけたところ、甲が上半身裸で大声を出していた。Xらは、甲の言語や態度から、覚せい剤の使用を疑い、職務質問をすべく、パトカーから降りて甲に近づいた。甲は、Xらに気付くと、その場からち去ろうとしたため、Xは、甲を追い掛け、「待ちなさい。」などと声を掛けながら、甲の肩に右手を掛けて引き留めた。甲は、ふて腐れた様子で文句を言ったが、それ以上、その場から離れようとはしなかったため、Xは甲の肩から手を離した。Xは、多くの野次馬が集まってきたため、甲に対し、最寄りのH警察署への同行を求めた。甲は、当初、これを拒否していたが、最終的には渋々パトカーに乗車し、XらとともにH警察署に赴いた。同署に到着後、Xは、甲の左腕に注射痕らしきものがあるのを認め、甲に対し、覚せい剤使用の事実について尋ねたが、甲はこれを否定した。Xは、甲に対し、尿の提出を再三にわたって求めたが、甲はこれを拒絶し続けた。そこでXは、強制採尿もやむなしと考え、裁判官より強制採尿令状の発付を受けた。Xは、甲に対し、同令状を示して再度尿の任意提出を求めたが、甲は、なおもこれを拒むとともに、最寄りのJ病院へ赴くことをも拒んだ。そこで④Xは、数名がかりで甲をJ病院まで連行した。

④については、甲を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合であっても、有形力を行使することは許されない。

(正答)

(解説)
判例(最決平6.9.16)は、「身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力を行使することができる…。」としている。
したがって、甲を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、最小限度の有形力を行使することができる。
総合メモ

強制採尿の可否 最一小決昭和55年10月23日

概要
①被疑者の体内から導尿管(カテーテル)を用いて強制的に尿を採取することは、捜査手続上の強制処分として絶対に許されないものではなく、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経たうえ、被疑者の身体の安全と人格の保護のための十分な配慮のもとに行うことが許される。
②捜査機関が強制採尿をするには捜索差押令状によるべきであり、右令状には、医師をして医学的に相当と認められる方法で行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である。
判例
事案:覚醒剤自己使用の疑いのある被疑者に対し、カテーテルを用いた強制採尿が行われたところ、①強制採尿の適法性、及び、②強制採尿に際して発付すべき令状の種類が問題となった。

判旨:①「尿を任意に提出しない被疑者に対し、強制力を用いてその身体から尿を採取することは、身体に対する侵入行為であるとともに屈辱感等の精神的打撃を与える行為であるが、右採尿につき通常用いられるカテーテルを尿道に挿入して尿を採取する方法は、被採取者に対しある程度の肉体的不快感ないし抵抗感を与えるとはいえ、医師等これに習熟した技能者によって適切に行われる限り、身体上ないし健康上格別の障害をもたらす危険性は比較的乏しく、仮に障害を起こすことがあっても軽微なものにすぎないと考えられるし、また、右強制採尿が被疑者に与える屈辱感等の精神的打撃は、検証の方法としての身体検査においても同程度の場合がありうるのであるから、被疑者に対する右のような方法による強制採尿が捜査手続上の強制処分として絶対に許されないとすべき理由はなく、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきものと解するのが相当である。
 これを本件についてみるのに、覚せい剤取締法41条の2第1項3号(現:41条の3第1項3号)、19条に該当する覚せい剤自己使用の罪は10年以下の懲役刑に処せられる相当重大な犯罪であること、被告人には覚せい剤の自己使用の嫌疑が認められたこと、被告人は犯行を徹底的に否認していたため証拠として被告人の尿を取得する必要性があったこと、被告人は逮捕後尿の任意提出を頑強に拒み続けていたこと、捜査機関は、従来の捜査実務の例に従い、強制採尿のため、裁判官から身体検査令状及び鑑定処分許可状の発付を受けたこと、被告人は逮捕後33時間経過してもなお尿の任意提出を拒み、他に強制採尿に代わる適当な手段は存在しなかったこと、捜査機関はやむなく右身体検査令状及び鑑定処分許可状に基づき、医師に採尿を嘱託し、同医師により適切な医学上の配慮の下に合理的かつ安全な方法によって採尿が実施されたこと、右医師による採尿に対し被告人が激しく抵抗したので数人の警察官が被告人の身体を押えつけたが、右有形力の行使は採尿を安全に実施するにつき必要最小限度のものであったことが認められ、本件強制採尿の過程は、令状の種類及び形式の点については問題があるけれども、それ以外の点では、法の要求する前記の要件をすべて充足していることが明らかである。」
 ②「そこで、右の適切な法律上の手続について考えるのに、体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項(現:同条6項)が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解さなければならない。」
過去問・解説
(H20 司法 第27問 エ)
強制採尿のための捜索差押令状には、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.10.23)は、強制採尿令状について、「体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項(現:同条6項)が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である…。」としている。

(H21 司法 第26問 エ)
被疑者甲が覚せい剤を所持した事件で甲方を捜索したところ、立会人である甲の支離滅裂な言動から甲に覚せい剤使用の疑いが生じたので、司法警察員が、甲から尿を採取するため、身柄を拘束されていない甲を甲方から採尿に適する最寄りの病院まで連れて行くことは、差し押さえるべき物を覚せい剤とする甲方に対する捜索差押許可状で行い得る。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.10.23)は、強制採尿令状について、「体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項(現:同条6項)が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である…。」としている。
本肢では、単に差し押さえるべき物を覚せい剤とする甲方に対する捜索差押許可状が発付されているに過ぎず、そもそも強制採尿を行うことができないから、甲を採尿に適する最寄りの病院まで連れて行くこともできない。

(H22 司法 第23問 オ)
【事例】
 司法警察員Xは、被疑者甲に係る大麻取締法違反(大麻所持)被疑事件に関し、被疑者甲が一人で居住するアパートの居室を捜索すべき場所とし、大麻及び大麻吸引具を差し押さえるべき物とする捜索差押許可状に基づき、その居室を捜索した。その際、被疑者甲は、その居室にいた。司法警察員Xは、その捜索において、大麻及び大麻吸引具を発見することができなかったが、ポーチに入った覚せい剤様の白色結晶や、血液の混じったような液体が入った注射器を発見した。そのため、司法警察員Xは、前記白色結晶につき、覚せい剤の予試験を実施したところ、覚せい剤であるとの試験結果が得られた。そこで、司法警察員Xは、被疑者甲を覚せい剤取締法違反の被疑事実で逮捕し、前記白色結晶を押収するとともに、前記ポーチ及び前記注射器を押収した。また、司法警察員Xは、⑤被疑者甲が任意に尿を提出したので、これを押収した。

⑤について、被疑者甲が任意に尿を提出しなかった場合でも、司法警察員Xは、捜索差押許可状の発付を受けて、医師をして被疑者甲から強制的に採尿をさせることができる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.10.23)は、強制採尿について、「体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項(現:同条6項)が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である…。」としている。
したがって、条件の記載が必須となるものの、被疑者甲が任意に尿を提出しなかった場合に発付すべき令状の種類は捜索差押許可状である。

(H25 司法 第25問 ア)
捜査機関が、犯罪の証拠物として被疑者の体内に存在する尿を強制的に採取するには、捜索差押令状を必要とするが、人権の侵害にわたるおそれがある点では、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、「裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる」旨の規定が前記捜索差押令状に準用される。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.10.23)は、強制採尿について、「体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項(現:同条6項)が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である…。」としている。

(H25 予備 第17問 ウ)
路上で騒いでいる男がいるとの通報を受けた司法警察員Xらが、パトカーで現場に駆けつけたところ、甲が上半身裸で大声を出していた。Xらは、甲の言語や態度から、覚せい剤の使用を疑い、職務質問をすべく、パトカーから降りて甲に近づいた。甲は、Xらに気付くと、その場からち去ろうとしたため、Xは、甲を追い掛け、「待ちなさい。」などと声を掛けながら、甲の肩に右手を掛けて引き留めた。甲は、ふて腐れた様子で文句を言ったが、それ以上、その場から離れようとはしなかったため、Xは甲の肩から手を離した。Xは、多くの野次馬が集まってきたため、甲に対し、最寄りのH警察署への同行を求めた。甲は、当初、これを拒否していたが、最終的には渋々パトカーに乗車し、XらとともにH警察署に赴いた。同署に到着後、Xは、甲の左腕に注射痕らしきものがあるのを認め、甲に対し、覚せい剤使用の事実について尋ねたが、甲はこれを否定した。Xは、甲に対し、尿の提出を再三にわたって求めたが、甲はこれを拒絶し続けた。そこでXは、強制採尿もやむなしと考え、③裁判官より強制採尿令状の発付を受けた。

③の令状については、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.10.23)は、強制採尿令状について、「体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項(現:同条6項)が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である…。」としている。

(H25 予備 第17問 オ)
路上で騒いでいる男がいるとの通報を受けた司法警察員Xらが、パトカーで現場に駆けつけたところ、甲が上半身裸で大声を出していた。Xらは、甲の言語や態度から、覚せい剤の使用を疑い、職務質問をすべく、パトカーから降りて甲に近づいた。甲は、Xらに気付くと、その場からち去ろうとしたため、Xは、甲を追い掛け、「待ちなさい。」などと声を掛けながら、甲の肩に右手を掛けて引き留めた。甲は、ふて腐れた様子で文句を言ったが、それ以上、その場から離れようとはしなかったため、Xは甲の肩から手を離した。Xは、多くの野次馬が集まってきたため、甲に対し、最寄りのH警察署への同行を求めた。甲は、当初、これを拒否していたが、最終的には渋々パトカーに乗車し、XらとともにH警察署に赴いた。同署に到着後、Xは、甲の左腕に注射痕らしきものがあるのを認め、甲に対し、覚せい剤使用の事実について尋ねたが、甲はこれを否定した。Xは、甲に対し、尿の提出を再三にわたって求めたが、甲はこれを拒絶し続けた。そこでXは、強制採尿もやむなしと考え、裁判官より強制採尿令状の発付を受けた。Xは、甲に対し、同令状を示して再度尿の任意提出を求めたが、甲は、なおもこれを拒むとともに、最寄りのJ病院へ赴くことをも拒んだ。そこでXは、数名がかりで甲をJ病院まで連行した。甲は、同病院の病室に連行された後も、身体を動かして激しく抵抗し、説得にも応じなかったため、⑤Xら数名が甲の身体を同病室のベッド上に押さえ付けた上で、医師において、カテーテルを甲の尿道に挿入して尿を採取した。同尿を鑑定したところ、覚せい剤の成分の含有が認められたことから、甲は、覚せい剤取締法違反(自己使用)の疑いで緊急逮捕された。

⑤については、採尿を安全に実施するにつき必要最小限度にとどまるものと認められる有形力の行使は許される。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.10.23)は、本肢と同種の事案において、「強制採尿...の実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきものと解するのが相当である。...(中略)...これを本件についてみるのに、...医師による採尿に対し被告人が激しく抵抗したので数人の警察官が被告人の身体を押えつけたが、右有形力の行使は採尿を安全に実施するにつき必要最小限度のものであったことが認められ...る。」として、強制採尿の適法性を肯定している。

(R6 予備 第26問 ア)
膀胱にたまっている尿は物ではなく身体の一部であるから、捜索差押許可状によって、強制採尿を行うことはできない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.10.23)は、「体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とする…。」としている。
したがって、膀胱にたまっている尿は物としての性質を有しており、捜索差押許可状によって、強制採尿を行うことができる。

(R6 予備 第26問 イ)
強制採尿は、尿道にカテーテルを挿入するという身体への侵襲を伴うから、鑑定処分許可状が必要である。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.10.23)は、「体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とする…。」としている。
したがって、強制採尿は、尿道にカテーテルを挿入するという身体への侵襲を伴うものの、鑑定処分許可状ではなく、捜索差押許可状が必要である。

(R6 予備 第26問 ウ)
強制採尿が現行法上の強制処分として認められる以上、それが尿を獲得するための最終的手段でなくとも、裁判官はそのための令状を発付することができる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.10.23)は、「被疑者に対する右のような方法による強制採尿が捜査手続上の強制処分として絶対に許されないとすべき理由はなく、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきもの…。」としている。
したがって、強制採尿は、それが尿を獲得するための最終的手段でなければ、裁判官はそのための令状を発付することができない。

(R6 予備 第26問 オ)
裁判官は、強制採尿のための令状を発付するに当たり、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件を付さなければならない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.10.23)は、「体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項(現:同条6項)が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解さなければならない。」としている。
総合メモ

フロッピーディスク等の内容を確認しないまま差し押さえることの可否 最二小決平成10年5月1日

概要
フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかを捜索差押えの現場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるなどの事情の下では、内容を確認せずに右フロッピーディスク等を差し押さえることが許される。
判例
事案:司法警察職員が、捜索差押許可状に基づき、申立人からパソコン1台、フロッピーディスク合計108枚等について捜索差押えの現場で内容を確認せずに差し押さえた事案において、電磁的記録媒体の中身を確認せずに包括的に差し押さえることの適法性が問題となった。

判旨:「原決定の認定及び記録によれば、右許可状には、差し押さえるべき物を『組織的犯行であることを明らかにするための磁気記録テープ、光磁気ディスク、フロッピーディスク、パソコン一式』等とする旨の記載があるところ、差し押さえられたパソコン、フロッピーディスク等は、本件の組織的背景及び組織的関与を裏付ける情報が記録されている蓋然性が高いと認められた上、申立人らが記録された情報を瞬時に消去するコンピュータソフトを開発しているとの情報もあったことから、捜索差押えの現場で内容を確認することなく差し押さえられたものである。
 令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなしに右パソコン、フロッピーディスク等を差し押さえることが許されるものと解される。」
過去問・解説
(H23 司法 第24問 オ)
捜索差押許可状で差し押さえようとしているパソコンの中に、被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなしにパソコン自体を差し押さえることができる。

(正答)

(解説)
判例(最決平10.5.1)は、「令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなしに右パソコン、フロッピーディスク等を差し押さえることが許される…。」としている。

(R6 予備 第22問 ウ)
【事例】
司法警察員Xは、甲が自宅において覚醒剤を密売しているとの被疑事実により、捜索すべき場所を甲宅、差し押さえるべき物を覚醒剤、パソコン等とする捜索差押許可状(以下「本件許可状」という。)の発付を受けて、甲宅に赴いた。甲宅には、甲のみが在宅していたところ、Xは、甲に本件許可状を呈示した上で、甲宅に立ち入り、日没前から甲を立会人として捜索を開始した。甲宅の捜索を実施中、甲と同居する母親Aが帰宅したため、Xは、Aが許可なく甲宅へ立ち入ることを禁止した。Xは、甲が覚醒剤密売の顧客リストをパソコンに保存しているとの情報を基に捜索を進めていたところ、甲宅リビングルームのテーブルの上にパソコン1台を発見したことから、③同パソコンを差し押さえた。その後もXは、捜索の必要があると判断し、本件許可状に「夜間でも執行することができる」旨の記載がなかったものの、日没後も捜索を継続した。その後、宅配便の配達員によって甲宛の小包が配達されたことから、甲は、甲宅内でこれを受領した。Xは、甲に対して開封を求めたが、甲がこれを拒否したため、Xにおいて同小包を開封したところ、覚醒剤が発見されたことから、これを差し押さえた。
【記述】
③につき、当該パソコンに覚醒剤密売の顧客リストが記録されている蓋然性があり、 その場で確認していたのではその情報を損壊される危険があると認められる場合は、内容を確認することなく当該パソコンを差し押さえることも許される。

(正答)

(解説)
判例(最決平10.5.1)は、「令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなしに右パソコン、フロッピーディスク等を差し押さえることが許される…。」としている。
したがって、【事例】における当該パソコンに覚醒剤密売の顧客リストが記録されている蓋然性があり、 その場で確認していたのではその情報を損壊される危険があると認められる場合は、内容を確認することなく当該パソコンを差し押さえることも許される。
総合メモ

捜索差押実施中に捜索場所に宅配された荷物の捜索 最一小決平成19年2月8日

概要
被疑者方居室に対する捜索差押許可状により同居室を捜索中に被疑者あてに配達され同人が受領した荷物についても、同許可状に基づき捜索することができる。
判例
事案:被疑者宅に対する捜索差押許許可状に基づく捜索差押を実施していたところ、被疑者宛に荷物が届いたため、当該荷物に対しても捜索差押を実施した事案において、令状呈示後に搬入された物を捜索することができるかが問題となった。

判旨:「警察官が、被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき、捜索場所を被告人方居室等、差し押さえるべき物を覚せい剤等とする捜索差押許可状に基づき、被告人立会いの下に上記居室を捜索中、宅配便の配達員によって被告人あてに配達され、被告人が受領した荷物について、警察官において、これを開封したところ、中から覚せい剤が発見されたため、被告人を覚せい剤所持罪で現行犯逮捕し、逮捕の現場で上記覚せい剤を差し押さえたというのである。所論は、上記許可状の効力は令状呈示後に搬入された物品には及ばない旨主張するが、警察官は、このような荷物についても上記許可状に基づき捜索できるものと解するのが相当である...。」
過去問・解説
(H21 司法 第26問 ウ)
被疑者甲が覚せい剤を譲り受けた事件で甲方を捜索中、司法警察員が、宅配便の配達員によって甲あてに配達され、立会人である甲が受領した荷物について捜索することは、差し押さえるべき物を覚せい剤とする甲方に対する捜索差押許可状で行い得る。

(正答)

(解説)
判例(最決平19.2.8)は、本肢と同種の事案において、「令状呈示後に搬入された物品...についても上記許可状に基づき捜索できる...。」としている。
したがって、立会人である甲が受領した荷物について捜索することは、差し押さえるべき物を覚せい剤とする甲方に対する捜索差押許可状で行い得る。

(H23 司法 第24問 ア)
人の住居に対する捜索差押許可状の効力は、令状呈示後に同住居に搬入された物品には及ばないから、甲に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき、捜索場所を甲方居室、差し押さえるべき物を覚せい剤等とする捜索差押許可状に基づき、警察官が甲立会いの下に同人方居室を捜索中、甲宛てに届き、甲が受領した宅配便の荷物について、警察官は、甲の承諾を得ることなくこれを開封して中身を確認することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最決平19.2.8)は、本肢と同種の事案において、「令状呈示後に搬入された物品...についても上記許可状に基づき捜索できる...。」としている。
したがって、警察官が甲立会いの下に同人方居室を捜索中、甲宛てに届き、甲が受領した宅配便の荷物についても、警察官は、甲の承諾を得ることなくこれを開封して中身を確認することができる。

(R6 予備 第22問 オ)
【事例】
司法警察員Xは、甲が自宅において覚醒剤を密売しているとの被疑事実により、捜索すべき場所を甲宅、差し押さえるべき物を覚醒剤、パソコン等とする捜索差押許可状(以下「本件許可状」という。)の発付を受けて、甲宅に赴いた。甲宅には、甲のみが在宅していたところ、Xは、甲に本件許可状を呈示した上で、甲宅に立ち入り、日没前から甲を立会人として捜索を開始した。甲宅の捜索を実施中、甲と同居する母親Aが帰宅したため、Xは、Aが許可なく甲宅へ立ち入ることを禁止した。Xは、甲が覚醒剤密売の顧客リストをパソコンに保存しているとの情報を基に捜索を進めていたところ、甲宅リビングルームのテーブルの上にパソコン1台を発見したことから、同パソコンを差し押さえた。その後もXは、捜索の必要があると判断し、本件許可状に「夜間でも執行することができる」旨の記載がなかったものの、日没後も捜索を継続した。その後、宅配便の配達員によって甲宛の小包が配達されたことから、甲は、甲宅内でこれを受領した。Xは、甲に対して開封を求めたが、甲がこれを拒否したため、⑤Xにおいて同小包を開封したところ、覚醒剤が発見されたことから、これを差し押さえた。
【記述】
⑤につき、本件許可状の効力はその呈示後に甲宅に搬入された物品には及ばないため、 当該小包を開封したことは違法である。

(正答)

(解説)
判例(最決平19.2.8)は、本肢と同種の事案において、 「令状呈示後に搬入された物品...についても上記許可状に基づき捜索できる...。」としている。
したがって、本件許可状の効力はその呈示後に甲宅に搬入された物品に及ぶため、 当該小包を開封したことは適法である。
総合メモ