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上訴(控訴・上告・抗告)

免訴判決に対する上訴の可否 最大判昭和23年5月26日

概要
①公訴係属中の事件について大赦があったときは、裁判所は、単に免訴の判決をすべく、公訴事実の存否又はその犯罪の成否などについて実体上の審判を行うことはできない。
②大赦を理由とする免訴の判決に対しては、当事者は、公訴事実が存在せず、又は罪とならざることを主張して上訴することはできない。
判例
事案:公訴係属中に大赦がなされたことから裁判所が免訴判決をしたところ、被告人が、公訴事実の存否又はその犯罪の成否などについて実体上の審判を求めて上訴した事案において、①公訴係属中の事件につき大赦がなされた場合の裁判、及び、②免訴判決に対して無罪判決を求めて上訴することの可否が問題となった。

判旨:①「大赦の効力に関しては、前示恩赦令は、大赦は、大赦ありたる罪につき、未だ刑の言渡を受けないものについては、公訴権は消滅する旨(恩赦令第3条)を定めている。即ち、本件のごとく公訴繋属中の事件に対しては、大赦令施行の時以後、公訴権消滅の効果を生ずるのである。
 しかして、裁判所が公訴につき、実体的審理をして、刑罰権の存否及び範囲を確定する権能をもつのは、検事の当該事件に対する具体的公訴権が発生し、かつ、存続することを要件とするのであって、公訴権が消滅した場合、裁判所は、その事件につき、実体上の審理をすすめ、検事の公訴にかゝる事実が果して真実に行われたかどうか、真実に行われたとして、その事実は犯罪を構成するかどうか、犯罪を構成するとせばいかなる刑罰を科すべきやを確定することはできなくなる。これは、不告不理の原則を採るわが刑事訴訟法の当然の帰結である。本件においても、既に大赦によって公訴権が消滅した以上、裁判所は前に述べたように、実体上の審理をすることはできなくなり、たゞ刑事訴訟法第363条に従って、被告人に対し、免訴の判決をするのみである。」
 ②「従って、この場合、被告人の側においてもまた、訴訟の実体に関する理由を主張して、無罪の判決を求めることは許されないのである。若し、訴訟の実体に関する問題をいうならば、被告人側にいろいろの主張はあるであらう。公訴にかゝる事実の存在を争ふこともその一であり、その事実の法律上罪とならぬことを主張するのもその一であり、その他、各種の免責事由の主張等いろいろあるであらうけれど、既に公訴の基礎をなす公訴権が消滅する以上、これらは一切裁判所が取上げることができないと同様、被告人も、また、これを主張して無罪の判決を求めることはできないのである。本件において、被告人および弁護人が特に強調するところの、刑法不敬罪の規定は昭和21年5月19日、即ち本件被告人の行為のなされた当時には既に失効していたという主張に関しても、畢竟これは被告人の本件所為が罪となるか、ならぬかの争点に関するものであって、大赦によって本件公訴権は消滅し、実体上の審理が許されないことは前説明のとおりであるから、被告人等も、また、かかる理由に基いて、無罪を主張することは許されないのである。
 しかるに、原審は控訴審として本件を審理するにあたり、大赦令の施行にもかかわらず、依然本件公訴につき実体上の審理をつづけ、その結果、被告人の本件所為は刑法第74条第1項に該当するものと判定し、その上で前記大赦令を適用して、その主文において被告人を免訴する旨の判決をしたのである。右の如く原審が大赦令の施行にもかかわらず実体上の審理をなし、その判決理由において被告人に対し有罪の判定を下したことは、前段説明したような大赦の趣旨を誤解したものであって、違法たるを免れず、その違法はまさに本判決をもって、これを払拭するところであるが、原判決がその主文において、被告人に対して、免訴の判決を言渡したのは結局において正しいといわなければならぬ。
 しかして大赦の場合には、裁判所としては免訴の判決をする一途であり、被告人の側でも、無罪を主張して、実体の審理を要求することはできないのであるから、原審がした免訴の判決に対して無罪を主張して上訴することもまた違法であるといわなければならない。」
過去問・解説
(H19 司法 第38問 ア)
判例に照らせば、被告人は、免訴を言い渡した原判決に対し無罪を求めて控訴することができる。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭23.5.26)は、「原審がした免訴の判決に対して無罪を主張して上訴することもまた違法である...。」としている。
したがって、被告人は、免訴を言い渡した原判決に対し無罪を求めて控訴することはできない。
総合メモ

第1審無罪の場合の控訴審での勾留の可否 最一小決平成12年6月27日

概要
第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても、控訴審裁判所は、記録等の調査により、右無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があると認めるときは、勾留の理由があり、かつ、控訴審における適正、迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り、その審理の段階を問わず、被告人を勾留することができる。
判例
事案:第1審で無罪判決がなされた被告人について、控訴審裁判所は、勾留することを決定したところ、かかる場合の勾留の可否が問題となった。

判旨:「裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合であって、刑訴法60条1項各号に定める事由(以下『勾留の理由』という。)があり、かつ、その必要性があるときは、同条により、職権で被告人を勾留することができ、その時期には特段の制約がない。したがって、第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても、控訴審裁判所は、記録等の調査により、右無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、勾留の理由があり、かつ、控訴審における適正、迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り、その審理の段階を問わず、被告人を勾留することができ、...新たな証拠の取調べを待たなければならないものではない。」
過去問・解説
(H19 司法 第22問 4)
第一審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても、控訴裁判所は、記録等の調査により、前記無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、勾留の理由があり、かつ、控訴審における適正、迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り、その審理の段階を問わず、被告人を勾留することができる。

(正答)

(解説)
判例(最決平12.6.27)は、「裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合であって、刑訴法60条1項各号に定める事由(以下『勾留の理由』という。)があり、かつ、その必要性があるときは、同条により、職権で被告人を勾留することができ、その時期には特段の制約がない。したがって、第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても、控訴審裁判所は、記録等の調査により、右無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、勾留の理由があり、かつ、控訴審における適正、迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り、その審理の段階を問わず、被告人を勾留することができ、...新たな証拠の取調べを待たなければならないものではない。」としている。
総合メモ

不利益変更禁止原則と事実認定 最一小判昭和23年11月18日

概要
第1審において単純賭博の事実を認定した事件につき、控訴審が常習賭博の事実を認定しても、判決主文において被告人に不利益な結果を生ずべき刑の言渡をしない限り、403条に違反しない。
判例
事案:第1審で単純賭博との認定がなされたのに対し、被告人のみが控訴した。控訴審において、主文の変更はなかったものの、単純賭博ではなく常習賭博との認定がなされた。本件では、かかる認定が403条に反しないかが問題となった。

判旨:「刑訴第403条に『原判決の刑より重き刑を言渡すことを得ず』と規定した趣旨は、判決主文の刑すなわち判決の結果を原判決の結果に比し被告人の不利益に変更することを禁ずるにある。それ故、判決主文において全体として被告人に不利益な結果を生ずべき言渡をしない限り、単に原判決と異り被告人の不利益となるべき犯罪事実の認定をしても同条に違反するということはできない。」
過去問・解説
(H25 共通 第39問 ウ)
控訴裁判所は、被告人のみが控訴をした事件について、原判決の認定した事実に誤認があると認める場合には、それより被告人に不利益な事実を認定することができる場合もある。

(正答)

(解説)
判例(最判昭23.11.18)は、「刑訴第403条に『原判決の刑より重き刑を言渡すことを得ず』と規定した趣旨は、判決主文の刑すなわち判決の結果を原判決の結果に比し被告人の不利益に変更することを禁ずるにある。それ故、判決主文において全体として被告人に不利益な結果を生ずべき言渡をしない限り、単に原判決と異り被告人の不利益となるべき犯罪事実の認定をしても同条に違反するということはできない。」としている。
総合メモ

写真撮影に対する準抗告の可否 最二小決平成2年6月27日

概要
司法警察員が申立人方居室内で捜索差押をするに際し捜索差押許可状記載の「差し押えるべき物」に該当しない印鑑、ポケット・ティッシュペーパー等について写真を撮影した場合において、右の写真撮影は、「押収に関する処分」には当たらず、その撮影によって得られたネガ及び写真の廃棄又は申立人への引渡を求める準抗告は、不適法である。
判例
事案:捜索差押許可状の執行に際し、許可状記載の「差し押えるべき物」に該当しない物品の写真を撮影したことから、これを不服として、準抗告が申し立てられた事案において、かかる準抗告の適法性が問題となった。

判旨:「原決定の認定によれば、本件においては、裁判官の発付した捜索差押許可状に基づき、司法警察員が申立人方居室において捜索差押をするに際して、右許可状記載の『差し押えるべき物』に該当しない印鑑、ポケット・ティッシュペーパー、電動ひげそり機、洋服ダンス内の背広について写真を撮影したというのであるが、右の写真撮影は、それ自体としては検証としての性質を有すると解されるから、刑訴法430条2項の準抗告の対象となる『押収に関する処分』には当たらないというべきである。したがって、撮影によって得られたネガ及び写真の廃棄又は申立人への引渡を求める準抗告を申し立てることは不適法であると解するのが相当である…。」
過去問・解説
(H24 共通 第38問 4)
被疑者又は弁護人は、捜査機関が、捜索差押許可状に記載された「差し押さえるべき物」に該当しない印鑑を写真撮影した場合、これにより得られたネガ及び写真の廃棄又は引渡しを求める準抗告をすることができない。

(正答)

(解説)
判例(最決平2.6.27)は、「写真撮影は、それ自体としては検証としての性質を有すると解されるから、刑訴法430条2項の準抗告の対象となる『押収に関する処分』には当たらないというべきである。」としている。
総合メモ

逮捕の準抗告による救済の可否 最一小決昭和57年8月27日

概要
逮捕に関する裁判は、429条1項各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれない。
判例
事案:被疑者に対する威力業務妨害秘技事件等について逮捕状が発布され、その逮捕状に基づいて被疑者が逮捕されたことから、被疑者は、この逮捕に関する裁判及び逮捕の処分に対して準抗告を申し立てた事案において、かかる準抗告の適法性が問題となった。

判旨:「逮捕に関する裁判及びこれに基づく処分は、刑訴法429条1項各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれないと解するのが相当であるから、本件準抗告棄却決定に対する特別抗告は、不適法である。」
過去問・解説
(H18 司法 第39問 ア)
被疑者甲は、任意同行後の取調べで犯行を自白して緊急逮捕され、逮捕状が発付されたが、緊急逮捕に先行する任意同行の過程に違法があったことを理由に、準抗告により、逮捕状発付の取消しを求めることができる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭57.8.27)は、「逮捕に関する裁判及びこれに基づく処分は、刑訴法429条1項各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれないと解するのが相当であるから、本件準抗告棄却決定に対する特別抗告は、不適法である。」としている。
したがって、緊急逮捕に先行する任意同行の過程に違法があったことを理由に、準抗告により、逮捕状発付の取消しを求めることはできない。

(H22 司法 第25問 ア)
【事例】
 甲は、殺人被疑事件の被疑者として、H地方裁判所の裁判官が発付した逮捕状に基づき、G警察署司法警察員に逮捕され、G警察署の留置施設に留置された。甲は、乙を弁護人に選任した。その後、甲は、引き続き、H地方裁判所の裁判官が発付した勾留状に基づきG警察署の留置施設に勾留された。また、その際、甲は、同じ裁判官により、刑事訴訟法第81条に基づいて、公訴が提起されるまでの間、接見等を禁じられた。乙は、甲と接見しようとしたところ、検察官により、捜査のため必要があるとして、接見の日時、場所及び時間を指定された。さらに甲は、同じ裁判官により、10日間の勾留期間の延長がされた後、殺人被疑事件につき、H地方裁判所に起訴され、J刑事施設に移されて引き続き勾留された。

乙による、逮捕状発付の裁判に対する準抗告には、法令上の根拠がない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭57.8.27)は、「逮捕に関する裁判及びこれに基づく処分は、刑訴法429条1項各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれないと解するのが相当であるから、本件準抗告棄却決定に対する特別抗告は、不適法である。」としている。
したがって、乙による、逮捕状発付の裁判に対する準抗告には、法令上の根拠がない。

(H24 共通 第38問 1)
被疑者又は弁護人は、逮捕状を発付した裁判に対して準抗告をすることができる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭57.8.27)は、「逮捕に関する裁判及びこれに基づく処分は、刑訴法429条1項各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれないと解するのが相当であるから、本件準抗告棄却決定に対する特別抗告は、不適法である。」としている。
したがって、被疑者又は弁護人は、逮捕状を発付した裁判に対して準抗告をすることができない。

(H26 共通 第24問 イ)
逮捕状による逮捕と起訴前の勾留に関しては、どちらも、刑事訴訟法上、不服申立ての手段がない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭57.8.27)は、「逮捕に関する裁判及びこれに基づく処分は、刑訴法429条1項各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれないと解するのが相当であるから、本件準抗告棄却決定に対する特別抗告は、不適法である。」としている。
これに対し、429条1項2号は、準抗告の対象事項の1つとして、「勾留...に関する裁判」を掲げている。
したがって、逮捕状による逮捕には不服申立ての手段がないものの、起訴前の勾留に関しては、不服申立ての手段がある。
総合メモ