現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください
特別支配株主の株式等売渡請求
第179条
条文
第179条(株式等売渡請求)
① 株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の10分の9(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第1項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者をいう。以下同じ。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
② 特別支配株主は、前項の規定による請求(以下この章及び第846条の2第2項第1号において「株式売渡請求」という。)をするときは、併せて、その株式売渡請求に係る株式を発行している株式会社(以下「対象会社」という。)の新株予約権の新株予約権者(対象会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する対象会社の新株予約権の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
③ 特別支配株主は、新株予約権付社債に付された新株予約権について前項の規定による請求(以下「新株予約権売渡請求」という。)をするときは、併せて、新株予約権付社債についての社債の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求しなければならない。ただし、当該新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがある場合は、この限りでない。
① 株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の10分の9(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第1項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者をいう。以下同じ。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
② 特別支配株主は、前項の規定による請求(以下この章及び第846条の2第2項第1号において「株式売渡請求」という。)をするときは、併せて、その株式売渡請求に係る株式を発行している株式会社(以下「対象会社」という。)の新株予約権の新株予約権者(対象会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する対象会社の新株予約権の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
③ 特別支配株主は、新株予約権付社債に付された新株予約権について前項の規定による請求(以下「新株予約権売渡請求」という。)をするときは、併せて、新株予約権付社債についての社債の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求しなければならない。ただし、当該新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがある場合は、この限りでない。
過去問・解説
(R4 予備 第17問 ウ)
特別支配株主の株式等売渡請求の手法を用いる場合には、A社の新株予約権についても売り渡すことを請求することができるが、株式の併合又は全部取得条項付種類株式の取得の手法を用いる場合には、A社の新株予約権に取得条項が定められていない限り、その新株予約権を当然には取得することができない。
特別支配株主の株式等売渡請求の手法を用いる場合には、A社の新株予約権についても売り渡すことを請求することができるが、株式の併合又は全部取得条項付種類株式の取得の手法を用いる場合には、A社の新株予約権に取得条項が定められていない限り、その新株予約権を当然には取得することができない。
(正答)〇
(解説)
179条2項は、「特別支配株主は、…株式売渡請求…をするときは、併せて、…対象会社…の新株予約権の新株予約権者…の全員に対し、その有する対象会社の新株予約権の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。」とし、特別支配株主の株式等売渡請求の際の新株予約権の売渡請求について規定している。これに対し、株式の併合(180条以下)及び全部取得条項付種類株式(171条以下)については、同様の規定は存在しない。したがって、特別支配株主の株式等売渡請求の手法を用いる場合には、A社の新株予約権についても売り渡すことを請求することができるが、株式の併合又は全部取得条項付種類株式の取得の手法を用いる場合には、A社の新株予約権に取得条項が定められていない限り、その新株予約権を当然には取得することができない。
179条2項は、「特別支配株主は、…株式売渡請求…をするときは、併せて、…対象会社…の新株予約権の新株予約権者…の全員に対し、その有する対象会社の新株予約権の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。」とし、特別支配株主の株式等売渡請求の際の新株予約権の売渡請求について規定している。これに対し、株式の併合(180条以下)及び全部取得条項付種類株式(171条以下)については、同様の規定は存在しない。したがって、特別支配株主の株式等売渡請求の手法を用いる場合には、A社の新株予約権についても売り渡すことを請求することができるが、株式の併合又は全部取得条項付種類株式の取得の手法を用いる場合には、A社の新株予約権に取得条項が定められていない限り、その新株予約権を当然には取得することができない。
(R4 予備 第17問 エ)
B社がA社の総株主の議決権の10分の7を有し、D株式会社(B社がその総株主の議決権の3分の2を有している。)がA社の総株主の議決権の10分の2を有しているときは、B社は、特別支配株主の株式等売渡請求の手法を用いることができる。
B社がA社の総株主の議決権の10分の7を有し、D株式会社(B社がその総株主の議決権の3分の2を有している。)がA社の総株主の議決権の10分の2を有しているときは、B社は、特別支配株主の株式等売渡請求の手法を用いることができる。
(正答)✕
(解説)
179条1項は、株式会社の特別支配株主について、「株式会社の総株主の議決権の10分の9…以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第1項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者」と規定している。
本肢の事例では、「当該株式会社以外の者」であるB社は、A社の総株主の議決権の10分の7を有しており、D株式会社は、A社の総株主の議決権の10分の2を有しており、両者の保有する議決権を合算すると「株式会社の総株主の議決権の10分の9…以上」に達する。しかし、D株式会社は、B社がその総株主の議決権の3分の2を有するにとどまるから、「当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人」として「特別支配株主完全子法人」に当たるものではない。したがって、B社は、A社の特別支配株主に当たらない。
179条1項は、株式会社の特別支配株主について、「株式会社の総株主の議決権の10分の9…以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第1項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者」と規定している。
本肢の事例では、「当該株式会社以外の者」であるB社は、A社の総株主の議決権の10分の7を有しており、D株式会社は、A社の総株主の議決権の10分の2を有しており、両者の保有する議決権を合算すると「株式会社の総株主の議決権の10分の9…以上」に達する。しかし、D株式会社は、B社がその総株主の議決権の3分の2を有するにとどまるから、「当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人」として「特別支配株主完全子法人」に当たるものではない。したがって、B社は、A社の特別支配株主に当たらない。
総合メモ
第179条の3
条文
第179条の3(対象会社の承認)
① 特別支配株主は、株式売渡請求(株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、株式売渡請求及び新株予約権売渡請求。以下「株式等売渡請求」という。)をしようとするときは、対象会社に対し、その旨及び前条第1項各号に掲げる事項を通知し、その承認を受けなければならない。
② 対象会社は、特別支配株主が株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をしようとするときは、新株予約権売渡請求のみを承認することはできない。
③ 取締役会設置会社が第1項の承認をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。
④ 対象会社は、第1項の承認をするか否かの決定をしたときは、特別支配株主に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。
① 特別支配株主は、株式売渡請求(株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、株式売渡請求及び新株予約権売渡請求。以下「株式等売渡請求」という。)をしようとするときは、対象会社に対し、その旨及び前条第1項各号に掲げる事項を通知し、その承認を受けなければならない。
② 対象会社は、特別支配株主が株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をしようとするときは、新株予約権売渡請求のみを承認することはできない。
③ 取締役会設置会社が第1項の承認をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。
④ 対象会社は、第1項の承認をするか否かの決定をしたときは、特別支配株主に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。
過去問・解説
(R4 予備 第17問 ア)
株式の併合、全部取得条項付種類株式の取得及び特別支配株主の株式等売渡請求のいずれの手法を用いる場合も、A社において株主総会の特別決議が必要である。
株式の併合、全部取得条項付種類株式の取得及び特別支配株主の株式等売渡請求のいずれの手法を用いる場合も、A社において株主総会の特別決議が必要である。
(正答)✕
(解説)
株式の併合及び全部取得条項付種類株式を用いる場合は、A社において株主総会の特別決議が必要である(180条2項・309条2項4号、171条1項・309条2項3号)。これに対し、179条の3第3項は、取締役会設置会社が特別支配株主の株式売渡請求の承認をするか否かの決定をするには、「取締役会の決議」によらなければならないと規定している。したがって、特別支配株主の株式等売渡請求の場合は、A社において、株主総会の特別決議ではなく、取締役会の決議が必要である。
株式の併合及び全部取得条項付種類株式を用いる場合は、A社において株主総会の特別決議が必要である(180条2項・309条2項4号、171条1項・309条2項3号)。これに対し、179条の3第3項は、取締役会設置会社が特別支配株主の株式売渡請求の承認をするか否かの決定をするには、「取締役会の決議」によらなければならないと規定している。したがって、特別支配株主の株式等売渡請求の場合は、A社において、株主総会の特別決議ではなく、取締役会の決議が必要である。