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裏書
第11条
条文
第11条(法律上当然の指図証券性)
① 為替手形ハ指図式ニテ振出サザルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得
② 振出人ガ為替手形ニ「指図禁止」ノ文字又ハ之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ヲ記載シタルトキハ其ノ証券ハ民法(明治29年法律第89号)第三編第一章第四節ノ規定ニ依ル債権ノ譲渡ニ関スル方式ニ従ヒ且其ノ効力ヲ以テノミ之ヲ譲渡スコトヲ得
③ 裏書ハ引受ヲ為シタル又ハ為サザル支払人、振出人其ノ他ノ債務者ニ対シテモ之ヲ為スコトヲ得此等ノ者ハ更ニ手形ヲ裏書スルコトヲ得
① 為替手形ハ指図式ニテ振出サザルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得
② 振出人ガ為替手形ニ「指図禁止」ノ文字又ハ之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ヲ記載シタルトキハ其ノ証券ハ民法(明治29年法律第89号)第三編第一章第四節ノ規定ニ依ル債権ノ譲渡ニ関スル方式ニ従ヒ且其ノ効力ヲ以テノミ之ヲ譲渡スコトヲ得
③ 裏書ハ引受ヲ為シタル又ハ為サザル支払人、振出人其ノ他ノ債務者ニ対シテモ之ヲ為スコトヲ得此等ノ者ハ更ニ手形ヲ裏書スルコトヲ得
総合メモ
第12条
条文
第12条(裏書の要件)
① 裏書ハ単純ナルコトヲ要ス裏書ニ附シタル条件ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス
② 一部ノ裏書ハ之ヲ無効トス
③ 持参人払ノ裏書ハ白地式裏書ト同一ノ効力ヲ有ス
① 裏書ハ単純ナルコトヲ要ス裏書ニ附シタル条件ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス
② 一部ノ裏書ハ之ヲ無効トス
③ 持参人払ノ裏書ハ白地式裏書ト同一ノ効力ヲ有ス
過去問・解説
(H29 予備 第29問 1)
AがBに対し振り出した約束手形に関して、Bは、手形金額の一部のみであっても裏書により譲渡することができる。なお、支払拒絶証書の作成は、免除されているものとする。
AがBに対し振り出した約束手形に関して、Bは、手形金額の一部のみであっても裏書により譲渡することができる。なお、支払拒絶証書の作成は、免除されているものとする。
(正答) ✕
(解説)
手形法12条2項は、「一部ノ裏書ハ之ヲ無効トス」と規定しており、同条1項は約束手形にも準用される(同法77条1項1号)。
したがって、手形金額の一部のみであっても裏書により譲渡することはできない。
手形法12条2項は、「一部ノ裏書ハ之ヲ無効トス」と規定しており、同条1項は約束手形にも準用される(同法77条1項1号)。
したがって、手形金額の一部のみであっても裏書により譲渡することはできない。
(R1 予備 第29問 1)
商品の引渡しを条件とするなど、一定の条件を付した裏書は、手形上の権利を移転する効力を有しない。
商品の引渡しを条件とするなど、一定の条件を付した裏書は、手形上の権利を移転する効力を有しない。
(正答) ✕
(解説)
手形法12条1項は、「裏書ハ単純ナルコトヲ要ス裏書ニ附シタル条件ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス」と規定しているから、一定の条件を付した裏書は、それ自体が無効になるのではなく、その条件が無効になるにとどまる(なお、同条1項は約束手形にも準用される(77条1項1号)。)。したがって、一定の条件を付した裏書は、手形上の権利を移転する効力(手形法14条1項)を有する。
手形法12条1項は、「裏書ハ単純ナルコトヲ要ス裏書ニ附シタル条件ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス」と規定しているから、一定の条件を付した裏書は、それ自体が無効になるのではなく、その条件が無効になるにとどまる(なお、同条1項は約束手形にも準用される(77条1項1号)。)。したがって、一定の条件を付した裏書は、手形上の権利を移転する効力(手形法14条1項)を有する。
総合メモ
第13条
条文
第13条(裏書の方式)
① 裏書ハ為替手形又ハ之ト結合シタル紙片(補箋)ニ之ヲ記載シ裏書人署名スルコトヲ要ス
② 裏書ハ被裏書人ヲ指定セズシテ之ヲ為シ又ハ単ニ裏書人ノ署名ノミヲ以テ之ヲ為スコトヲ得(白地式裏書)此ノ後ノ場合ニ於テハ裏書ハ為替手形ノ裏面又ハ補箋ニ之ヲ為スニ非ザレバ其ノ効力ヲ有セズ
① 裏書ハ為替手形又ハ之ト結合シタル紙片(補箋)ニ之ヲ記載シ裏書人署名スルコトヲ要ス
② 裏書ハ被裏書人ヲ指定セズシテ之ヲ為シ又ハ単ニ裏書人ノ署名ノミヲ以テ之ヲ為スコトヲ得(白地式裏書)此ノ後ノ場合ニ於テハ裏書ハ為替手形ノ裏面又ハ補箋ニ之ヲ為スニ非ザレバ其ノ効力ヲ有セズ
総合メモ
第15条
条文
第15条(裏書の担保的効力)
① 裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ引受及支払ヲ担保ス
② 裏書人ハ新ナル裏書ヲ禁ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ裏書人ハ手形ノ爾後ノ被裏書人ニ対シ担保ノ責ヲ負フコトナシ
① 裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ引受及支払ヲ担保ス
② 裏書人ハ新ナル裏書ヲ禁ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ裏書人ハ手形ノ爾後ノ被裏書人ニ対シ担保ノ責ヲ負フコトナシ
過去問・解説
(H18 司法 第53問 5)
裏書人として署名して手形を譲渡する者は、適法な手形所持人に対する裏書人としての担保責任を負わない旨の裏書をすることができる。
裏書人として署名して手形を譲渡する者は、適法な手形所持人に対する裏書人としての担保責任を負わない旨の裏書をすることができる。
(正答) 〇
(解説)
裏書人は、原則として、裏書により、被裏書人及びその後の譲受人に対し、支払いを担保する義務(償還義務、遡求義務)を負う(手形法15条1項)。これを、裏書の担保的効力という。
もっとも、手形法15条1項は、「裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ」と規定しているため、裏書人として署名して手形を譲渡する者は、適法な手形所持人に対する裏書人としての担保責任を負わない旨の裏書をすることができる。これを、無担保裏書という(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版118頁)。
裏書人は、原則として、裏書により、被裏書人及びその後の譲受人に対し、支払いを担保する義務(償還義務、遡求義務)を負う(手形法15条1項)。これを、裏書の担保的効力という。
もっとも、手形法15条1項は、「裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ」と規定しているため、裏書人として署名して手形を譲渡する者は、適法な手形所持人に対する裏書人としての担保責任を負わない旨の裏書をすることができる。これを、無担保裏書という(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版118頁)。
(H29 予備 第29問 5)
AがBに対し振り出した約束手形に関して、Bが、Cに対し、裏書をするにあたり、被裏書人名を記入しないで白地のまま交付し、さらに、CがDに対し裏書をしないで単なる交付により譲渡した場合には、Cは、手形所持人に対し、担保責任を負わない。
AがBに対し振り出した約束手形に関して、Bが、Cに対し、裏書をするにあたり、被裏書人名を記入しないで白地のまま交付し、さらに、CがDに対し裏書をしないで単なる交付により譲渡した場合には、Cは、手形所持人に対し、担保責任を負わない。
(正答) 〇
(解説)
手形法15条1項は、「裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ引受及支払ヲ担保ス」と規定しており、これを裏書の担保的効力という。
もっとも、CがDに対し裏書をしないで単なる交付により譲渡した場合には、Cは、「裏書人」に当たらないから、手形所持人に対し、担保責任を負わない。
手形法15条1項は、「裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ引受及支払ヲ担保ス」と規定しており、これを裏書の担保的効力という。
もっとも、CがDに対し裏書をしないで単なる交付により譲渡した場合には、Cは、「裏書人」に当たらないから、手形所持人に対し、担保責任を負わない。
(H28 予備 第30問 ア)
裏書人は、遡求義務者にならない場合がある。
裏書人は、遡求義務者にならない場合がある。
(正答) 〇
(解説)
手形法15条1項は、「裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ引受及支払ヲ担保ス」と規定しており、「反対ノ文言」のある無担保裏書の場合は、その裏書人は担保責任(遡求義務)を負わない。
手形法15条1項は、「裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ引受及支払ヲ担保ス」と規定しており、「反対ノ文言」のある無担保裏書の場合は、その裏書人は担保責任(遡求義務)を負わない。
(H26 司法 第56問 1)
振出人は、手形に「指図禁止」の文字を記載することができるが、裏書人は、新たな裏書を禁止することはできない。
振出人は、手形に「指図禁止」の文字を記載することができるが、裏書人は、新たな裏書を禁止することはできない。
(正答) ✕
(解説)
手形法77条1項1号が準用する同法15条2項は、「裏書人ハ新ナル裏書ヲ禁ズルコトヲ得」と定めている。
手形法77条1項1号が準用する同法15条2項は、「裏書人ハ新ナル裏書ヲ禁ズルコトヲ得」と定めている。
総合メモ
第16条
条文
第16条(裏書の資格授与的効力)
① 為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ抹消シタル裏書ハ此ノ関係ニ於テハ之ヲ記載セザルモノト看做ス白地式裏書ニ次デ他ノ裏書アルトキハ其ノ裏書ヲ為シタル者ハ白地式裏書ニ因リテ手形ヲ取得シタルモノト看做ス
② 事由ノ何タルヲ問ハズ為替手形ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合ニ於テ所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ手形ヲ返還スル義務ヲ負フコトナシ但シ所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
① 為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ抹消シタル裏書ハ此ノ関係ニ於テハ之ヲ記載セザルモノト看做ス白地式裏書ニ次デ他ノ裏書アルトキハ其ノ裏書ヲ為シタル者ハ白地式裏書ニ因リテ手形ヲ取得シタルモノト看做ス
② 事由ノ何タルヲ問ハズ為替手形ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合ニ於テ所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ手形ヲ返還スル義務ヲ負フコトナシ但シ所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
過去問・解説
(H18 司法 第53問 2)
裏書の連続がある場合には、最終の所持人は手形の適法な所持人と推定される。
裏書の連続がある場合には、最終の所持人は手形の適法な所持人と推定される。
(正答) 〇
(解説)
裏書の連続がある場合には、最終の所持人は手形の適法な所持人と推定される(手形法16条1項、同法77条1項1号・16条1項)。裏書の連続した手形の所持人が権利者として推定されるのは、個々の裏書の有する資格授与的効力の集積の結果である。
裏書の連続がある場合には、最終の所持人は手形の適法な所持人と推定される(手形法16条1項、同法77条1項1号・16条1項)。裏書の連続した手形の所持人が権利者として推定されるのは、個々の裏書の有する資格授与的効力の集積の結果である。
(H24 司法 第55問 ア)
AがBを受取人として振り出した約束手形を、Bは、白地式裏書によってCに譲渡し、Cは、この手形をそのままの状態で金庫で保管していた。Cの金庫からこの手形を盗み出したDは、記名式裏書によってこれをEに譲渡した。Eは、この手形を取得する際、Dが権利者であると重過失なく信じていた。Eは、この手形を記名式裏書によってFに譲渡した。現在の所持人は、Fである。この手形には、裏書の連続が認められる。
AがBを受取人として振り出した約束手形を、Bは、白地式裏書によってCに譲渡し、Cは、この手形をそのままの状態で金庫で保管していた。Cの金庫からこの手形を盗み出したDは、記名式裏書によってこれをEに譲渡した。Eは、この手形を取得する際、Dが権利者であると重過失なく信じていた。Eは、この手形を記名式裏書によってFに譲渡した。現在の所持人は、Fである。この手形には、裏書の連続が認められる。
(正答) 〇
(解説)
手形法16条1項は、「為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス」と規定した上で、「最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ」と規定している。そして、同条は約束手形にも準用される(同法77条1項1号)。
したがって、本肢の事例においても、Fが所持する約束手形には、裏書の連続が認められる。
手形法16条1項は、「為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス」と規定した上で、「最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ」と規定している。そして、同条は約束手形にも準用される(同法77条1項1号)。
したがって、本肢の事例においても、Fが所持する約束手形には、裏書の連続が認められる。
(H24 司法 第55問 イ)
AがBを受取人として振り出した約束手形を、Bは、白地式裏書によってCに譲渡し、Cは、この手形をそのままの状態で金庫で保管していた。Cの金庫からこの手形を盗み出したDは、記名式裏書によってこれをEに譲渡した。Eは、この手形を取得する際、Dが権利者であると重過失なく信じていた。Eは、この手形を記名式裏書によってFに譲渡した。現在の所持人は、Fである。
Fが、この手形をEから取得した際、DがCから盗取したものであることを知っていた場合、Aは、Dによる盗取の事実とFの悪意を証明することにより、Fに対する手形金の支払を拒むことができる。
AがBを受取人として振り出した約束手形を、Bは、白地式裏書によってCに譲渡し、Cは、この手形をそのままの状態で金庫で保管していた。Cの金庫からこの手形を盗み出したDは、記名式裏書によってこれをEに譲渡した。Eは、この手形を取得する際、Dが権利者であると重過失なく信じていた。Eは、この手形を記名式裏書によってFに譲渡した。現在の所持人は、Fである。
Fが、この手形をEから取得した際、DがCから盗取したものであることを知っていた場合、Aは、Dによる盗取の事実とFの悪意を証明することにより、Fに対する手形金の支払を拒むことができる。
(正答) ✕
(解説)
手形法16条2項は、善意取得の要件として、「所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキ」と規定しているところ、同法16条1項は、「為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス」と規定した上で、「最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ」と規定している。したがって、白地式裏書の場合であっても、「所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキ」を満たすから、善意取得が可能である。なお、これらの規定は、約束手形にも準用される(同法77条1項1号)。
そうすると、本肢の事例においても、「所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキ」(これは、裏書の連続している手形の所持人からの取得であることを意味する。)に当たる。また、Eは、この手形を取得する際、Dが権利者であると重過失なく信じていたのだから、「所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキ」に当たらない。したがって、Eは手形を善意取得する。
そして、Fは、悪意・重過失の有無にかかわらず、Eが善意取得した権利を承継取得するから、Fが、この手形をEから取得した際、DがCから盗取したものであることを知っていた場合であっても、Aは、Dによる盗取の事実とFの悪意を証明することにより、Fに対する手形金の支払を拒むことができない。
手形法16条2項は、善意取得の要件として、「所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキ」と規定しているところ、同法16条1項は、「為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス」と規定した上で、「最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ」と規定している。したがって、白地式裏書の場合であっても、「所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキ」を満たすから、善意取得が可能である。なお、これらの規定は、約束手形にも準用される(同法77条1項1号)。
そうすると、本肢の事例においても、「所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキ」(これは、裏書の連続している手形の所持人からの取得であることを意味する。)に当たる。また、Eは、この手形を取得する際、Dが権利者であると重過失なく信じていたのだから、「所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキ」に当たらない。したがって、Eは手形を善意取得する。
そして、Fは、悪意・重過失の有無にかかわらず、Eが善意取得した権利を承継取得するから、Fが、この手形をEから取得した際、DがCから盗取したものであることを知っていた場合であっても、Aは、Dによる盗取の事実とFの悪意を証明することにより、Fに対する手形金の支払を拒むことができない。
(H24 司法 第55問 ウ)
AがBを受取人として振り出した約束手形を、Bは、白地式裏書によってCに譲渡し、Cは、この手形をそのままの状態で金庫で保管していた。Cの金庫からこの手形を盗み出したDは、記名式裏書によってこれをEに譲渡した。Eは、この手形を取得する際、Dが権利者であると重過失なく信じていた。Eは、この手形を記名式裏書によってFに譲渡した。現在の所持人は、Fである。
Cは、盗難の時から2年間、この手形がCから盗まれたことを証明することにより、Fに対し、この手形の返還を請求することができる。
AがBを受取人として振り出した約束手形を、Bは、白地式裏書によってCに譲渡し、Cは、この手形をそのままの状態で金庫で保管していた。Cの金庫からこの手形を盗み出したDは、記名式裏書によってこれをEに譲渡した。Eは、この手形を取得する際、Dが権利者であると重過失なく信じていた。Eは、この手形を記名式裏書によってFに譲渡した。現在の所持人は、Fである。
Cは、盗難の時から2年間、この手形がCから盗まれたことを証明することにより、Fに対し、この手形の返還を請求することができる。
(正答) ✕
(解説)
本肢の事例において、Fは、「所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキ」(これは、裏書の連続している手形の所持人からの取得であることを意味する。)に当たり、かつ、この手形を取得する際、Dが権利者であると重過失なく信じていたのだから、「所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキ」に当たらない。したがって、Fは、この手形を善意取得(手形法16条2項)する。
民法193条は、即時取得の客体が「盗品又は遺失物」である場合について、「前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。」と規定している。しかし、手形法は、善意取得された手形が「盗品又は遺失物」である場合における回復請求権について定めていない。
したがって、Cは、盗難の時から2年間、この手形がCから盗まれたことを証明することにより、Fに対し、この手形の返還を請求することができない。
本肢の事例において、Fは、「所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキ」(これは、裏書の連続している手形の所持人からの取得であることを意味する。)に当たり、かつ、この手形を取得する際、Dが権利者であると重過失なく信じていたのだから、「所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキ」に当たらない。したがって、Fは、この手形を善意取得(手形法16条2項)する。
民法193条は、即時取得の客体が「盗品又は遺失物」である場合について、「前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。」と規定している。しかし、手形法は、善意取得された手形が「盗品又は遺失物」である場合における回復請求権について定めていない。
したがって、Cは、盗難の時から2年間、この手形がCから盗まれたことを証明することにより、Fに対し、この手形の返還を請求することができない。
(H26 司法 第55問 エ)
約束手形の取得者には手形法所定の要件の下で善意取得が認められるという規律は、約束手形の流通性を高める趣旨によるものである。
約束手形の取得者には手形法所定の要件の下で善意取得が認められるという規律は、約束手形の流通性を高める趣旨によるものである。
(正答) 〇
(解説)
約束手形の善意取得(手形法77条1項1号・16条2項)の趣旨は、約束手形取引の安全を確保することで約束手形の流通性を高めることにある。
約束手形の善意取得(手形法77条1項1号・16条2項)の趣旨は、約束手形取引の安全を確保することで約束手形の流通性を高めることにある。
(H28 予備 第29問 イ)
善意取得は、手形の承継取得の一例である。
善意取得は、手形の承継取得の一例である。
(正答) ✕
(解説)
善意取得(手形法16条1項)は、手形の原始取得である。
善意取得(手形法16条1項)は、手形の原始取得である。
(H28 予備 第29問 エ)
無権利者から裏書の連続した手形を取得した者がその取得時に相手方の無権利につき善意でかつ重大な過失がない場合には、その後に事情を知ったときであっても、当該手形を善意取得することができる。
無権利者から裏書の連続した手形を取得した者がその取得時に相手方の無権利につき善意でかつ重大な過失がない場合には、その後に事情を知ったときであっても、当該手形を善意取得することができる。
(正答) 〇
(解説)
善意取得(手形法16条1項)の要件である手形取得者の善意・無重過失は、手形取得時を基準として判断されるから、善意・無重過失で手形を取得したものが、その後に悪意に転じたときであっても、善意取得は妨げられない(大判昭2.4.2)。
善意取得(手形法16条1項)の要件である手形取得者の善意・無重過失は、手形取得時を基準として判断されるから、善意・無重過失で手形を取得したものが、その後に悪意に転じたときであっても、善意取得は妨げられない(大判昭2.4.2)。
(H28 予備 第29問 オ)
相続による手形の取得にも、善意取得の適用がある。
相続による手形の取得にも、善意取得の適用がある。
(正答) ✕
(解説)
手形法16条1項は、裏書の連続する手形の所持人は手形上の権利者と推定される旨を定めており、同条2項本文は、手形の善意取得の要件について、「所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ」と定めている。したがって、善意取得のためには、原則として、裏書の連続している手形の所持人からの取得であることを要する。
よって、相続による手形の取得には、善意取得の適用がない。
手形法16条1項は、裏書の連続する手形の所持人は手形上の権利者と推定される旨を定めており、同条2項本文は、手形の善意取得の要件について、「所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ」と定めている。したがって、善意取得のためには、原則として、裏書の連続している手形の所持人からの取得であることを要する。
よって、相続による手形の取得には、善意取得の適用がない。
(R4 予備 第30問 ウ)
約束手形の最後の裏書が白地式裏書であり、それより前の裏書が連続している場合には、当該約束手形の所持人は権利者と推定される。
約束手形の最後の裏書が白地式裏書であり、それより前の裏書が連続している場合には、当該約束手形の所持人は権利者と推定される。
(正答) 〇
(解説)
手形法16条1項は、「為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス」と規定した上で、「最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ」と規定している。そして、同条は約束手形にも準用される(同法77条1項1号)。
約束手形の最後の裏書が白地式裏書であり、それより前の裏書が連続している場合にも、当該約束手形の所持人は権利者と推定される。
手形法16条1項は、「為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス」と規定した上で、「最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ」と規定している。そして、同条は約束手形にも準用される(同法77条1項1号)。
約束手形の最後の裏書が白地式裏書であり、それより前の裏書が連続している場合にも、当該約束手形の所持人は権利者と推定される。
総合メモ
第18条
条文
第18条(取立委任裏書)
① 裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得但シ所持人ハ代理ノ為ノ裏書ノミヲ為スコトヲ得
② 前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル
③ 代理ノ為ノ裏書ニ依ル委任ハ委任者ノ死亡又ハ其ノ者ガ行為能力ノ制限ヲ受ケタルコトニ因リ終了セズ
① 裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得但シ所持人ハ代理ノ為ノ裏書ノミヲ為スコトヲ得
② 前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル
③ 代理ノ為ノ裏書ニ依ル委任ハ委任者ノ死亡又ハ其ノ者ガ行為能力ノ制限ヲ受ケタルコトニ因リ終了セズ
過去問・解説
(H29 予備 第29問 3)
AがBに対し振り出した約束手形に関して、Bから裏書を受けたCがDに対し「取立てのため」との文言を付して裏書をし、Dが、Aに対し、支払のため手形を呈示したが、支払がなかったため、手形をCに返還した場合には、Dに対する被裏書人欄の記載を抹消しないときであっても、裏書の連続が認められる。
AがBに対し振り出した約束手形に関して、Bから裏書を受けたCがDに対し「取立てのため」との文言を付して裏書をし、Dが、Aに対し、支払のため手形を呈示したが、支払がなかったため、手形をCに返還した場合には、Dに対する被裏書人欄の記載を抹消しないときであっても、裏書の連続が認められる。
(正答) 〇
(解説)
取立委任裏書とは、「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」など、取立委任であることを示す文言を付記した裏書をいう。手形法18条1項本文は、取立委任裏書について、「裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得」と規定している。取立委任裏書は、権利移転的効力(同法14条1項)、これを前提とする担保的効力(同法15条1項)を有せず、代理権授与的効力を有するにとどまるから、裏書人は手形権利者のままであり、被裏書人は権利者である裏書人の代理人として手形上の権利を行使できるにすぎない(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版154頁)。
権利者としての資格に関しては、取立委任裏書は記載がないのと同じ扱いになる。本肢の事例では、A→B(振出)、B→C(裏書)、C→D(取立委任裏書)となっており、DにはCの代理人としての資格が認められるが、「裏書ノ連続」(同法16条1項)によって権利者と推定されるのは裏書人Cである(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版156頁)。
取立委任裏書とは、「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」など、取立委任であることを示す文言を付記した裏書をいう。手形法18条1項本文は、取立委任裏書について、「裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ為替手形ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得」と規定している。取立委任裏書は、権利移転的効力(同法14条1項)、これを前提とする担保的効力(同法15条1項)を有せず、代理権授与的効力を有するにとどまるから、裏書人は手形権利者のままであり、被裏書人は権利者である裏書人の代理人として手形上の権利を行使できるにすぎない(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版154頁)。
権利者としての資格に関しては、取立委任裏書は記載がないのと同じ扱いになる。本肢の事例では、A→B(振出)、B→C(裏書)、C→D(取立委任裏書)となっており、DにはCの代理人としての資格が認められるが、「裏書ノ連続」(同法16条1項)によって権利者と推定されるのは裏書人Cである(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版156頁)。
(H29 予備 第30問 5)
AがBに対し振り出した約束手形につき、AB間の手形振出しの原因関係が消滅した場合において、BがCに対し「取立てのため」との文言を付して裏書をしたときは、Aは、Cが債務者を害することを知って手形を取得した場合でなければ、当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができない。
AがBに対し振り出した約束手形につき、AB間の手形振出しの原因関係が消滅した場合において、BがCに対し「取立てのため」との文言を付して裏書をしたときは、Aは、Cが債務者を害することを知って手形を取得した場合でなければ、当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができない。
(正答) ✕
(解説)
手形法18条2項は、取立委任裏書がある場合について、「前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル」と規定している。取立委任裏書の被裏書人は、裏書人の権利を代理行使するにすぎず、独自の経済的利益を有しないから、債務者は裏書人に対して主張できる一切の人的抗弁をもって被裏書人に対抗することができる(手形法17条による人的抗弁の主張制限がない。)が、その一方で、被裏書人に対して有する抗弁をもって対抗することはできない(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版155頁)。
したがって、振出人Aは、取立委任裏書の被裏書人Cが債務者Bを害することを知って手形を取得した場合(手形法17条参照)でなくても、AB間の手形振出しの当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができる。
手形法18条2項は、取立委任裏書がある場合について、「前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル」と規定している。取立委任裏書の被裏書人は、裏書人の権利を代理行使するにすぎず、独自の経済的利益を有しないから、債務者は裏書人に対して主張できる一切の人的抗弁をもって被裏書人に対抗することができる(手形法17条による人的抗弁の主張制限がない。)が、その一方で、被裏書人に対して有する抗弁をもって対抗することはできない(早川徹「基本講義 手形・小切手法」第2版155頁)。
したがって、振出人Aは、取立委任裏書の被裏書人Cが債務者Bを害することを知って手形を取得した場合(手形法17条参照)でなくても、AB間の手形振出しの当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができる。
総合メモ
第20条
条文
第20条(期限後裏書)
① 満期後ノ裏書ハ満期前ノ裏書ト同一ノ効力ヲ有ス但シ支払拒絶証書作成後ノ裏書又ハ支払拒絶証書作成期間経過後ノ裏書ハ民法第三編第一章第四節ノ規定ニ依ル債権ノ譲渡ノ効力ノミヲ有ス
② 日附ノ記載ナキ裏書ハ支払拒絶証書作成期間経過前ニ之ヲ為シタルモノト推定ス
① 満期後ノ裏書ハ満期前ノ裏書ト同一ノ効力ヲ有ス但シ支払拒絶証書作成後ノ裏書又ハ支払拒絶証書作成期間経過後ノ裏書ハ民法第三編第一章第四節ノ規定ニ依ル債権ノ譲渡ノ効力ノミヲ有ス
② 日附ノ記載ナキ裏書ハ支払拒絶証書作成期間経過前ニ之ヲ為シタルモノト推定ス
過去問・解説
(H29 予備 第30問 4)
AがBに対し振り出した約束手形につき、AB間の手形振出しの原因関係が消滅した場合に おいて、Bが、支払のための呈示をすることなく、Cに対し満期日の翌日に裏書をしたときは、Cが当該原因関係の消滅の事実について善意であったとしても、Aは、当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができる。
AがBに対し振り出した約束手形につき、AB間の手形振出しの原因関係が消滅した場合に おいて、Bが、支払のための呈示をすることなく、Cに対し満期日の翌日に裏書をしたときは、Cが当該原因関係の消滅の事実について善意であったとしても、Aは、当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができる。
(正答) ✕
(解説)
手形法20条1項は、満期後の裏書は満期前の裏書と同一の効力を有すると規定する一方で、支払拒絶証書作成期間経過後の裏書は債権譲渡の効力のみを有すると規定している。後者の場合、裏書の効力は認められないから、裏書譲渡を前提とする手形法17条は適用されない。
本肢の事例では、Bが、支払のための呈示をすることなく、Cに対し満期日の翌日に裏書をしているため、その裏書は「支払拒絶証書作成期間経過後ノ裏書」ではなく、「満期後ノ裏書」に当たる。したがって、Bの裏書は「満期前ノ裏書ト同一ノ効力」を有するから、手形法17条が適用される。よって、C当該原因関係の消滅の事実について善意であったときは、Aは、当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができない。
手形法20条1項は、満期後の裏書は満期前の裏書と同一の効力を有すると規定する一方で、支払拒絶証書作成期間経過後の裏書は債権譲渡の効力のみを有すると規定している。後者の場合、裏書の効力は認められないから、裏書譲渡を前提とする手形法17条は適用されない。
本肢の事例では、Bが、支払のための呈示をすることなく、Cに対し満期日の翌日に裏書をしているため、その裏書は「支払拒絶証書作成期間経過後ノ裏書」ではなく、「満期後ノ裏書」に当たる。したがって、Bの裏書は「満期前ノ裏書ト同一ノ効力」を有するから、手形法17条が適用される。よって、C当該原因関係の消滅の事実について善意であったときは、Aは、当該原因関係が消滅したことを主張して、Cからの手形金請求を拒むことができない。