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国会
地方議会の議員の発言に対する免責特権 最大判昭和42年5月24日
概要
地方議会についても、国会と同様の議会自治・議会自律の原則を認め、さらに、地方議会議員の発言についても、いわゆる免責特権を憲法上保障しているものと解すべき根拠はない。
判例
事案:地方議会議員の発言についても、憲法上の免責特権が保障されるかが問題となった。
判旨:「憲法上、国権の最高機関たる国会について、広範な議院自律権を認め、ことに、議員の発言について、憲法51条に、いわゆる免責特権を与えているからといつて、その理をそのまま直ちに地方議会にあてはめ、地方議会についても、国会と同様の議会自治・議会自律の原則を認め、さらに、地方議会議員の発言についても、いわゆる免責特権を憲法上保障しているものと解すべき根拠はない。もつとも、地方議会についても、法律の定めるところにより、その機能を適切に果たさせるため、ある程度に自治・自律の権能が認められてはいるが、その自治・自律の権能が認められている範囲内の行為についても、原則的に、裁判所の司法審査権の介入が許されるべきことは、当裁判所の判例(昭和30年(オ)第430号同35年3月9日大法廷判決、民集14巻3号355頁参照)の示すとおりである。そして、原判決の指摘するような言論の域を超えた実力の行使については、所論のような議員の免責特権その他特別の取扱いを認めるべき合理的な理由は見出しがたいといわなければならない。
また、現行法上、告訴告発を訴訟条件とする場合には、法律にその根拠のあることが必要であつて、その根拠に基づくことなく、地方議会の議事進行に関連して議員が犯した刑事犯罪について、単に地方議会の自治・自律の原則を根拠として、議会又は議長の告訴告発を訴訟条件と解すべきであるとか、司法権の介入を許さないという主張は、肯認することができない。」
判旨:「憲法上、国権の最高機関たる国会について、広範な議院自律権を認め、ことに、議員の発言について、憲法51条に、いわゆる免責特権を与えているからといつて、その理をそのまま直ちに地方議会にあてはめ、地方議会についても、国会と同様の議会自治・議会自律の原則を認め、さらに、地方議会議員の発言についても、いわゆる免責特権を憲法上保障しているものと解すべき根拠はない。もつとも、地方議会についても、法律の定めるところにより、その機能を適切に果たさせるため、ある程度に自治・自律の権能が認められてはいるが、その自治・自律の権能が認められている範囲内の行為についても、原則的に、裁判所の司法審査権の介入が許されるべきことは、当裁判所の判例(昭和30年(オ)第430号同35年3月9日大法廷判決、民集14巻3号355頁参照)の示すとおりである。そして、原判決の指摘するような言論の域を超えた実力の行使については、所論のような議員の免責特権その他特別の取扱いを認めるべき合理的な理由は見出しがたいといわなければならない。
また、現行法上、告訴告発を訴訟条件とする場合には、法律にその根拠のあることが必要であつて、その根拠に基づくことなく、地方議会の議事進行に関連して議員が犯した刑事犯罪について、単に地方議会の自治・自律の原則を根拠として、議会又は議長の告訴告発を訴訟条件と解すべきであるとか、司法権の介入を許さないという主張は、肯認することができない。」
過去問・解説
(R5 司法 第19問 ア)
憲法上、国会に広範な議院自律権が認められ、国会議員の発言について免責特権が保障されているが、地方議会についても、その機能を適切に果たさせるために、国会と同様の議会自治・議会自律の権能が認められることから、地方議会の議員の発言についても、免責特権が認められる。
憲法上、国会に広範な議院自律権が認められ、国会議員の発言について免責特権が保障されているが、地方議会についても、その機能を適切に果たさせるために、国会と同様の議会自治・議会自律の権能が認められることから、地方議会の議員の発言についても、免責特権が認められる。
(正答) ✕
(解説)
判例(最大判昭42.5.24)は、「憲法上、国権の最高機関たる国会について、広範な議院自律権を認め、ことに、議員の発言について、憲法51条に、いわゆる免責特権を与えているからといつて、その理をそのまま直ちに地方議会にあてはめ、地方議会についても、国会と同様の議会自治・議会自律の原則を認め、さらに、地方議会議員の発言についても、いわゆる免責特権を憲法上保障しているものと解すべき根拠はない。」としている。
総合メモ
監獄法施行規則と法の委任の範囲 最三小判平成3年7月9日
概要
旧監獄法施行規則120条及び124条は、未決勾留により拘禁された者と14歳未満の者との接見を許さないとする限度において、旧監獄法50条の委任の範囲を超え、無効である。
判例
事案:旧監獄法45条1項は、「在監者ニ接見センコトヲ請フ者アルトキハ之ヲ許ス」とし、同法50条は、「接見ノ立会…其他接見…ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」と定めていた。これを受けて旧監獄法施行規則120条は、「十四歳未満ノ者ニハ在監者ト接見ヲ為スコトヲ許サス」とし、124条は、「所長ニ於テ処遇上其他必要アリト認ムルトキハ前四条ノ制限ニ依ラサルコトヲ得」と規定していた。これらの委任命令について、委任の限界が問題となった。
判旨:「被勾留者には一般市民としての自由が保障されるので、法45条は、被勾留者と外部の者との接見は原則としてこれを許すものとし、例外的に、これを許すと支障を来す場合があることを考慮して、(ア)逃亡又は罪証隠滅のおそれが生ずる場合にはこれを防止するために必要かつ合理的な範囲において右の接見に制限を加えることができ、また、(イ)これを許すと監獄内の規律又は秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が認められる場合には、右の障害発生の防止のために必要な限度で右の接見に合理的な制限を加えることができる、としているにすぎないと解される。この理は、被勾留者との接見を求める者が幼年者であっても異なるところはない。
これを受けて、法50条は、「接見ノ立会…其他接見…ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」と規定し、命令(法務省令)をもって、面会の立会、場所、時間、回数等、面会の態様についてのみ必要な制限をすることができる旨を定めているが、もとより命令によって右の許可基準そのものを変更することは許されないのである。
ところが、規則120条は、規則121条ないし128条の接見の態様に関する規定と異なり、「十四歳未満ノ者ニハ在監者ト接見ヲ為スコトヲ許サス」と規定し、規則124条は「所長ニ於テ処遇上其他必要アリト認ムルトキハ前四条ノ制限ニ依ラサルコトヲ得」と規定している。右によれば、規則120条が原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないこととする一方で、規則124条がその例外として限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すこととしていることが明らかである。しかし、これらの規定は、たとえ事物を弁別する能力の未発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、それ自体、法律によらないで、被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法50条の委任の範囲を超えるものといわなければならない。
…そうだとすれば、規則120条(及び124条)は、結局、被勾留者と幼年者との接見を許さないとする限度において、法50条の委任の範囲を超えた無効のものと断ぜざるを得ない。」
…そうだとすれば、規則120条(及び124条)は、結局、被勾留者と幼年者との接見を許さないとする限度において、法50条の委任の範囲を超えた無効のものと断ぜざるを得ない。」
総合メモ
医療品のネット販売規制と法の委任の範囲 最二小判平成25年1月11日
概要
新薬事法施行規則の各規定は、一般用医薬品のうち第一類医薬品及び第二類医薬品につき、店舗販売業者による店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法による販売又は授与を一律に禁止することとなる限度において、新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である。
判例
事案:新薬事法は、一般用医薬品を健康被害のリスクに応じて第1類医薬品・第2類医薬品・第3類医薬品に分けた上で、これらの販売・授与の方法等について規定するとともに、販売・授与の方法の具体的態様について厚生労働省令に委任していた。この委任を受けて、新薬事法施行規則は、第1類医薬品・第2類医薬品について、郵便等販売を一律に禁止するとともに、店舗における販売・授与・情報提供を対面によることを義務付けた。これにより、インターネット等での販売が可能な一般用医薬品は、第3類医薬品のみとなった。
本事件では、新薬事法施行規則は郵便等販売を広範に禁止するものであり、新薬事法の委任の範囲外の規制を定める違法なものではないかという点が問題となった。
判旨:「新薬事法成立の前後を通じてインターネットを通じた郵便等販売に対する需要は現実に相当程度存在していた上、郵便等販売を広範に制限することに反対する意見は一般の消費者のみならず専門家・有識者等の間にも少なからず見られ、また、政府部内においてすら、一般用医薬品の販売又は授与の方法として安全面で郵便等販売が対面販売より劣るとの知見は確立されておらず、薬剤師が配置されていない事実に直接起因する一般用医薬品の副作用等による事故も報告されていないとの認識を前提に、消費者の利便性の見地からも、一般用医薬品の販売又は授与の方法を店舗における対面によるものに限定すべき理由には乏しいとの趣旨の見解が根強く存在していたものといえる。しかも、憲法22条1項による保障は、狭義における職業選択の自由のみならず職業活動の自由の保障をも包含しているものと解されるところ(最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照)、旧薬事法の下では違法とされていなかった郵便等販売に対する新たな規制は、郵便等販売をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度制約するものであることが明らかである。これらの事情の下で、厚生労働大臣が制定した郵便等販売を規制する新施行規則の規定が、これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するもの(行政手続法38条1項)であり、その委任の範囲を逸脱したものではないというためには、立法過程における議論をもしんしゃくした上で、新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定を見て、そこから、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が、上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである。
しかるところ、新施行規則による規制は、…一般用医薬品の過半を占める第1類医薬品及び第2類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止する内容のものである。これに対し、新薬事法36条の5及び36条の6は、いずれもその文理上は郵便等販売の規制並びに店舗における販売、授与及び情報提供を対面で行うことを義務付けていないことはもとより、その必要性等について明示的に触れているわけでもなく、医薬品に係る販売又は授与の方法等の制限について定める新薬事法37条1項も、郵便等販売が違法とされていなかったことの明らかな旧薬事法当時から実質的に改正されていない。また、新薬事法の他の規定中にも、店舗販売業者による一般用医薬品の販売又は授与やその際の情報提供の方法を原則として店舗における対面によるものに限るべきであるとか、郵便等販売を規制すべきであるとの趣旨を明確に示すものは存在しない。なお、検討部会における議論及びその成果である検討部会報告書並びにこれらを踏まえた新薬事法に係る法案の国会審議等において、郵便等販売の安全性に懐疑的な意見が多く出されたのは上記事実関係等のとおりであるが、それにもかかわらず郵便等販売に対する新薬事法の立場は上記のように不分明であり、その理由が立法過程での議論を含む上記事実関係等からも全くうかがわれないことからすれば、そもそも国会が新薬事法を可決するに際して第1類医薬品及び第2類医薬品に係る郵便等販売を禁止すべきであるとの意思を有していたとはいい難い。そうすると、新薬事法の授権の趣旨が、第1類医薬品及び第2類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止する旨の省令の制定までをも委任するものとして、上記規制の範囲や程度等に応じて明確であると解するのは困難であるというべきである。
したがって、新施行規則のうち、店舗販売業者に対し、一般用医薬品のうち第1類医薬品及び第2類医薬品について、〔1〕当該店舗において対面で販売させ又は授与させなければならない(159条の14第1項、2項本文)ものとし、〔2〕当該店舗内の情報提供を行う場所において情報の提供を対面により行わせなければならない(159条の15第1項1号、159条の17第1号、2号)ものとし、〔3〕郵便等販売をしてはならない(142条、15条の4第1項1号)ものとした各規定は、いずれも上記各医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において、新薬事法の趣旨に適合するものではなく、新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。」
過去問・解説
(H27 司法 第14問 エ)
判例は、インターネット販売が認められる医薬品を一定の医薬品に限定した薬事法施行規則について、法律の委任の範囲を逸脱した違法なものであるとした。
判例は、インターネット販売が認められる医薬品を一定の医薬品に限定した薬事法施行規則について、法律の委任の範囲を逸脱した違法なものであるとした。
(正答) 〇
(解説)
判例(最判平25.1.11)は「新施行規則のうち、店舗販売業者に対し、一般用医薬品のうち第1類医薬品及び第2類医薬品について、〔1〕当該店舗において対面で販売させ又は授与させなければならない(159条の14第1項、2項本文)ものとし、〔2〕当該店舗内の情報提供を行う場所において情報の提供を対面により行わせなければならない(159条の15第1項1号、159条の17第1号、2号)ものとし、〔3〕郵便等販売をしてはならない(142条、15条の4第1項1号)ものとした各規定は、いずれも上記各医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において、新薬事法の趣旨に適合するものではなく、新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。」としている。