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地方自治

大阪市売春取締条例事件 最大判昭和37年5月30日

概要
①条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。そうしてみれば、地方自治法2条3項7号及び1号のように相当に具体的な内容の事項につき、同法14条5項のように限定された刑罰の範囲内において、条例をもって罰則を定めた場合、当該条例における罰則規定は、憲法31条に違反するものではない。
②地方自治法第14条第5項に基づく昭和25年大阪市条例第68号「街路等における売春勧誘行為等の取締条例」における罰則規定は、憲法31条に違反するものではない。
判例
事案:条例による罰則の設定について、罪刑法定主義を定める憲法31条及び命令への罰則の一般的委任を禁止する憲法73条6号但書に違反するかが問題となった。

判旨:「わが憲法の下における社会生活の法的規律は、通常、基本的なそして全国にわたり劃一的効力を持つ法律によつてなされるが、中には各地方の自然的ないし社会的状態に応じその地方の住民自身の理想に従つた規律をさせるためこれを各地方公共団体の自治に委ねる方が一層民主主義的かつ合目的的なものもあり、また、ときには、いずれの方法によつて規律しても差支えないものもあるので、憲法は、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定めるべく(憲法92条)、これに議会を設置し、その議員、地方公共団体の長等は、その住民が直接これを選挙すべきもの(同93条)と定めた上、地方公共団体は、その事務を処理し行政を執行する等の権能を有するほか、法律の範囲内で条例を制定することができる旨を定めたのである(同94条)…。すなわち、地方公共団体の制定する条例は、憲法が特に民主主義政治組織の欠くべからざる構成として保障する地方自治の本旨に基づき(同92条)、直接憲法94条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法に外ならない。従つて条例を制定する権能もその効力も法律の認める範囲を越えることはできないけれども、法律の範囲内にあるかぎり、条例はその効力を有するものといわなければならない…。
 憲法31条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の授権によつてそれ以下の法令によつて定めることもできると解すべきで、このことは憲法73条6号但書によつても明らかである。ただ、法律の授権が不特定な一般的の白紙委任的なものであつてはならないことは、いうまでもない。ところで、地方自治法2条に規定された事項のうちで、本件に関係のあるのは3項7号及び1号に挙げられた事項であるが、これらの事項は相当に具体的な内容のものであるし、同法14条5項による罰則の範囲も限定されている。しかも、条例は、法律以下の法令といつても、上述のように、公選の議員をもつて組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であつて、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもつて組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。そうしてみれば、地方自治法2条3項7号及び1号のように相当に具体的な内容の事項につき、同法14条5項のように限定された刑罰の範囲内において、条例をもつて罰則を定めることがてきるとしたのは、憲法31条の意味において法律の定める手続によつて刑罰を科するものということができるのであつて、所論のように同条に違反するとはいえない。従つて地方自治法14条5項に基づく本件条例の右条項も憲法同条に違反するものということができない。
 第一審判決認定事実に適用され原審が合憲合法とした条例は、昭和25年12月1日公布施行にかかる大阪市条例第68号街路等における売春勧誘行為等の取締条例(以下本件条例という)2条1項であつて、右条項は、売春の目的で街路その他公の場所において他人の身辺につきまとい又は誘う行為に対し5000円以下の罰金又は拘留に処すべき旨を規定するのであるところ、地方自治法2条2項、3項は風俗又は清潔を汚す行為の制限その他の保健衛生、風俗のじゆん化に関する事項を処理すること(同3項7号)ならびに、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること(同項1号)が普通地方公共団体(以下地方公共団体という)の処理する行政事務に属する旨を明定するとともに、同法14条1項、五項は、地方公共団体は法令に特別の定があるものを除く外、その条例中に、条例違反者に対し2年以下の懲役若しくは禁錮、10万円以下の罰金、拘留、科料又は没収の刑を科する旨の規定を設けることができると定めており、被告人の本件行為当時本件条例2条1項所定の事項に関し法令に特別の定がなかつたことは明らかである。
 論旨は、右地方自治法14条1項、5項が法令に特別の定があるものを除く外、その条例中に条例違反者に対し前示の如き刑を科する旨の規定を設けることができるとしたのは、その授権の範囲が不特定かつ抽象的で具体的に特定されていない結果一般に条例でいかなる事項についても罰則を付することが可能となり罪刑法定主義を定めた憲法31条に違反する、と主張する。
 しかし、憲法31条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の授権によつてそれ以下の法令によつて定めることもできると解すべきで、このことは憲法73条6号但書によつても明らかである。ただ、法律の授権が不特定な一般的の白紙委任的なものであつてはならないことは、いうまでもない。ところで、地方自治法2条に規定された事項のうちで、本件に関係のあるのは3項7号及び1号に挙げられた事項であるが、これらの事項は相当に具体的な内容のものであるし、同法14条5項による罰則の範囲も限定されている。しかも、条例は、法律以下の法令といつても、上述のように、公選の議員をもつて組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であつて、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもつて組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。そうしてみれば、地方自治法2条3項7号及び1号のように相当に具体的な内容の事項につき、同法14条5項のように限定された刑罰の範囲内において、条例をもつて罰則を定めることができるとしたのは、憲法31条の意味において法律の定める手続によつて刑罰を科するものということができるのであつて、所論のように同条に違反するとはいえない。従つて地方自治法14条5項に基づく本件条例の右条項も憲法同条に違反するものということができない。」
過去問・解説
(H21 司法 第18問 イ)
憲法第94条により、地方公共団体が条例を制定するには法律の根拠を必要とする。条例制定権の一般的な根拠を提供するのが「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる」と規定する地方自治法第14条第1項の規定である。

(正答)  

(解説)
大阪市売春取締条例事件判決(最大判昭37.5.30)は、「条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。」と述べ、条例によって刑罰を定める場合には法律の根拠が必要であるとしている。しかし、「地方公共団体の制定する条例は、憲法が特に民主主義政治組織の欠くべからざる構成として保障する地方自治の本旨に基づき(同92条)、直接憲法94条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法に外ならない。」と述べており、これは、地方公共団体の条例制定権は憲法94条を直接の根拠とするものであることを意味している。

(H21 司法 第18問 ウ)
憲法第31条により刑罰及びこれを科す手続は「法律」で定める必要があるが、この「法律」には、法律に限らず、その授権を受けた下位法令も含まれる。そして、条例は住民の代表である議会が制定する自主立法として法律に類するから、法律が相当程度具体的に限定して授権している場合には、条例により刑罰及びこれを科す手続を定めることができる。

(正答)  

(解説)
大阪市売春取締条例事件判決(最大判昭37.5.30)は、「条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。」としており、「条例により刑罰…を科す手続を定めることができる」(本肢)とまでは述べていない。

(H27 司法 第20問 イ)
憲法上の条例制定権は当然には罰則制定権を含まず、刑罰権設定は本来国家事務であり、条例中に罰則を設けるには法律の授権が必要であるが、条例は、行政府の命令と異なり、民主的立法であり実質的に法律に準ずるもので、条例への罰則の委任は一般的・包括的委任で足りる。

(正答)  

(解説)
大阪市売春取締条例事件判決(最大判昭37.5.30)は、「法律の授権が不特定な一般的の白紙委任的なものであつてはならないことは、いうまでもない。」とした上で、「条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。」としているから、条例への罰則の委任は一般的・包括的委任では足りない。

(R4 司法 第19問 イ)
条例は、公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって、国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によって刑罰を定める場合、法律による条例への委任は、一般的・包括的委任で足りる。

(正答)  

(解説)
大阪市売春取締条例事件判決(最大判昭37.5.30)は、「法律の授権が不特定な一般的の白紙委任的なものであつてはならないことは、いうまでもない。」とした上で、「条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。」としているから、条例への罰則の委任は一般的・包括的委任では足りない。

(R6 司法 第18問 イ)
次の対話は、地方自治に関する教授と学生の対話である。教授の質問に対する学生の回答は正しいか。

教授.条例によって罰則を設けることは、罪刑法定主義との関係で問題はないでしょうか。また、 条例によって罰則を設けることができるとした場合、その罰則には、法律上、何らかの制限は課されているでしょうか。
学生.条例は、住民の代表機関である地方公共団体の議会の議決によって成立する民主的な立法であり、実質的には法律に準ずるものといえますから、条例によって罰則を設けることはできますし、その罰則には、法律上、特段の制限は課されていません。

(正答)  

(解説)
大阪市売春取締条例事件判決(最大判昭37.5.30)は、「条例は、法律以下の法令といっても、…公選の議員をもつて組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であつて、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもつて組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものである」との理由から、「条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。」としている。しかし他方で、「条例を制定する権能もその効力も法律の認める範囲を越えることはできないけれども、法律の範囲内にあるかぎり、条例はその効力を有するものといわなければならない…。」としているから、条例によって罰則を定める場合には勿論、「法律の範囲内」(憲法94条)という制限が課される。
総合メモ

特別区区長公選廃止事件 最大判昭和38年3月27日

概要
東京都の特別区の長の公選制を廃止した地方自治法281条の2第1項は、憲法93条2項に違反するものではない。
判例
事案:東京都の特別区の長の公選制を廃止した地方自治法281条の2第1項が憲法93条2項に違反するかが争われ、これに関連して、東京都の特別区が憲法93条2項にいう「地方公共団体」に含まれるかが問題となった。

判旨:「憲法は、93条2項において「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙する。」と規定している。何がここにいう地方公共団体であるかについては、何ら明示するところはないが、憲法が特に一章を設けて地方自治を保障するにいたつた所以のものは、新憲法の基調とする政治民主化の一環として、住民の日常生活に密接な関連をもつ公共的事務は、その地方の住民の手でその住民の団体が主体となつて処理する政治形態を保障せんとする趣旨に出たものである。この趣旨に徴するときは、右の地方公共団体といい得るためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもつているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とするものというべきである。そして、かかる実体を備えた団体である以上、その実体を無視して、憲法で保障した地方自治の権能を法律を以て奪うことは、許されないものと解するを相当とする。
 ひるがえつて、東京都の特別区についてこれをみるに、区は、明治11年郡区町村編制法施行以来地方団体としての長い歴史と伝統を有するものではあるが、未だ市町村のごとき完全な自治体としての地位を有していたことはなく、そうした機能を果たしたこともなかつた。かつて地方自治制度確立に伴ない、区の法人格も認められたのであるが、依然として、区長は市長の任命にかかる市の有給吏員とされ、区は課税権、起債権、自治立法権を認められず、単にその財産および営造物に関する事務その他法令により区に属する事務を処理し得るにとどまり、殊に、日華事変以後区の自治権は次第に圧縮され、昭和18年7月施行の東京都制の下においては、全く都の下部機構たるに過ぎなかつたのである。
 ところが、戦後昭和21年9月東京都制の一部改正により区は、従前の事務のほか法令の定めるところに従い区に属する事務を処理し(140条)、区条例、区規則の制定権、区税および分担金の賦課徴収権が認められ(143条、157条の3ないし5)、「区ニ区長ヲ置」き「区長ハ其ノ被選挙権アル者ニ就キ選挙人ヲシテ選挙セシメ其ノ者ニ就キ之ヲ任ズ」(151条の2)とのいわゆる区長公選制を採用することとなり、翌22年4月制定された地方自治法においても、特別区は「特別地方公共団体」とし、原則として市に関する規定が適用されることとなつた(283条、附則17条)。しかし、これら法律の建前が特別区の事務、事業の上にそのまま実現されたわけでなく、政治の実際面においては、区長の公選が実施された程度で、その他は都制下におけるとさしたる変化はなく、特別区は区域内の住民に対して直接行政を執行するとはいえ、その範囲および権限において、市の場合とは著しく趣きを異にするところが少なくなかつた。このことは次に掲げる諸法律の規定に照らして、これを推認し得るに十分である。すなわち、地方自治法においても、都は条例で特別区について必要な規定を設けることができ(282条)、都知事は特別区に都吏員を配置することができることとした(同法施行令210条)ほか、同法附則2条により現に効力を有する東京都制191条の規定に基づき、都制時代に都が処理していた事務の多くのものが依然として都に留保されていた。また特別法の規定においても、法律上市に属する事務とされていながら、東京都にあつては、重要な公共事務が特別区の権限からはずされ或いは特別区全体を一つの対象として取扱い、都に市の性格と府県の性格とを併有せしめるものが、数多く認められる。その例として、警察法(昭和22年法律196号)51条、消防組織法(昭和22年法律26号)16条、地方自治施行令附則四条により適用を全面的に排除されている道路法(大正8年法律58号)および水道条例(明治23年法律9号)、児童福祉法(昭和22年法律164号)71条、教育委員会法(昭和23年法律170号)52条、地方自治法施行令(昭和22年政令16号)209条、地方財政平衡交付金法(昭和25年法律211号)21条1項等を挙げることができる。特に特別区の財政上の権能については、区は、前叙のごとく、昭和21年東京都制の一部改正により自主財政権が与えられ、独立して区税を賦課徴収し得ることとなつたにもかかわらず、同年の改正にかかる地方税法(昭和21年法律16号)においては、東京都の区は、ただ都の条例の定めるところにより都の課することできる税の全部または一部を区税として課することが認められているに過ぎず、さらに税目を起こして独立税を課する場合においても、都の同意を必要とする(85条の11、同条の12)と規定し、区を独立の課税権を有する地方団体としては取り扱わず、昭和25年の改正地方税法(同年法律226号)によつてもこの建前は変更されることなく(1条、734条ないし736条参照)、現在に及んでいる。かように、特別区は昭和21年9月都制の一部改正によつて自治権の拡充強化が図られたが、翌22年4月制定の地方自治法をはじめその他の法律によつてその自治権に重大な制約が加えられているのは、東京都の戦後における急速な経済の発展、文化の興隆と、住民の日常生活が、特別区の範囲を超えて他の地域に及ぶもの多く、都心と郊外の昼夜の人口差は次第に甚だしく、区の財源の偏在化も益々著しくなり、23区の存する地域全体にわたり統一と均衡と計画性のある大都市行政を実現せんとする要請に基づくものであつて、所詮、特別区が、東京都という市の性格をも併有した独立地方公共団体の一部を形成していることに基因するものというべきである。
 しかして、特別区の実体が右のごときものである以上、特別区は、その長の公選制が法律によつて認められていたとはいえ、憲法制定当時においてもまた昭和27年8月地方自治法改正当時においても、憲法93条2項の地方公共団体と認めることはできない。従つて、改正地方自治法が右公選制を廃止し、これに代えて、区長は特別区の議会の議員の選挙権を有する者で年齢25年以上のものの中から特別区の議会が都知事の同意を得て選任するという方法を採用したからといつて、それは立法政策の問題にほかならず、憲法93条2項に違反するものということはできない。 
 されば、原判決が特別区の長の公選制を廃止した地方自治法281条の2第1項は憲法93条2項に違反して無効であると判示したのは、憲法の右条項の解釈を誤つた違法があり、論旨は理由あるに帰し、原判決は到底破棄を免かれない。」
過去問・解説
(H27 司法 第20問 ア)
憲法上の「地方公共団体」とは、沿革的に見ても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等、地方自治の基本的権能を付与された地域団体であれば足り、共同体意識を持っているという社会的基盤が存在する必要はない。

(正答)  

(解説)
特別区区長公選廃止事件判決(最大判昭38.3.27)は、「憲法…93条2項…の地方公共団体といい得るためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもつているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とするものというべきである。」としており、「共同体意識をもつているという社会的基盤が存在」することも必要としている。

(H30 司法 第19問 ア)
「憲法が特に1章を設けて地方自治を保障するにいたったのは、新憲法の基調とする政治民主化の一環として、住民の日常生活に密接な関連をもつ公共的事務は、その地方の住民の手でその住民の団体が主体となって処理する政治形態を保障しようとする趣旨からである。この趣旨に徴するときは、憲法第93条第2項にいう地方公共団体といい得るためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもっているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とするものというべきである。」
 この判決は、憲法によって保障された地方自治がどのような性質を有するかという問題について、個人が国家に対して固有かつ不可侵の権利を持つのと同様に、地方公共団体もまた固有の前国家的な基本権を有するという立場に立つものである。

(正答)  

(解説)
特別区区長公選廃止事件判決(最大判昭38.3.27)は、「憲法…93条2項…の地方公共団体といい得るためには、…現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とするものというべきである。」としている。ここでは、地

(R6 司法 第18問 ウ)
次の対話は、地方自治に関する教授と学生の対話である。教授の質問に対する学生の回答は正しいか。

教授.最高裁判所の判例の趣旨に照らすと、ある地域団体が憲法第93条第2項の「地方公共団体」に該当するには、法律で地方公共団体として取り扱われていれば足りるでしょうか。また、もしそれでは足りないとすれば、他にどのような要件を満たす必要があるでしょうか。
学生.その地域団体が法律で地方公共団体として取り扱われていることに加え、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識を持っているという社会的基盤が存在するとの要件を満たせば、「地方公共団体」に該当し、その他の要件までは必要ありません。

(正答)  

(解説)
特別区区長公選廃止事件判決(最大判昭38.3.27)は、「憲法…93条2項…の地方公共団体といい得るためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもつているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とするものというべきである。」としている。
総合メモ

徳島市公安条例事件 最大判昭和50年9月10日

概要
条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。
判例
事案:道路交通法77条1項4号の委任に基づき、徳島県公安委員会は「集団行進」を管轄警察署長の許可の対象として指定しており、同条3項は、警察署長が許可に条件を付すことを認めており、条件違反に対する罰則として3月以下の懲役又は3万円以下の罰金が定められている(119条1項13号)。徳島市公安条例では、集団示威行進等について市公安委員会への届出制を定め、「公共の安寧を保持するため」集団示威行進を行う者が遵守すべき事項として「交通秩序を維持すること」を掲げ(3条3号)、それを遵守しない集団示威行進の「主催者、指導者又は扇動者」に対する罰則として「1年以下の懲役若しくは禁錮又は5万円以下の罰金」を定めていた。
  本事件では、①徳島市公安条例が道路交通法に抵触するものとして憲法94条に違反するか、②同条例が集団示威運動を行う者の遵守事項として定めている「交通秩序を維持すること」という文言の不明確性(憲法31条違反)が問題となった。②については、表現の自由のカテゴリに属する徳島市公安条例事件の判旨として取り上げている(https://law-lib.jp/subjects/1/precedents/106)。

判旨:「地方自治法14条1項は、普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて同法2条2項の事務に関し条例を制定することができる、と規定しているから、普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。
 これを道路交通法77条及びこれに基づく徳島県道路交通施行細則と本条例についてみると、徳島市内の道路における集団行進等について、道路交通秩序維持のための行為規制を施している部分に関する限りは、両者の規律が併存競合していることは、これを否定することができない。しかしながら、道路交通法77条1項4号は、同号に定める通行の形態又は方法による道路の特別使用行為等を警察署長の許可によつて個別的に解除されるべき一般的禁止事項とするかどうかにつき、各公安委員会が当該普通地方公共団体における道路又は交通の状況に応じてその裁量により決定するところにゆだね、これを全国的に一律に定めることを避けているのであつて、このような態度から推すときは、右規定は、その対象となる道路の特別使用行為等につき、各普通地方公共団体が、条例により地方公共の安寧と秩序の維持のための規制を施すにあたり、その一環として、これらの行為に対し、道路交通法による規制とは別個に、交通秩序の維持の見地から一定の規制を施すこと自体を排斥する趣旨まで含むものとは考えられず、各公安委員会は、このような規制を施した条例が存在する場合には、これを勘案して、右の行為に対し道路交通法の前記規定に基づく規制を施すかどうか、また、いかなる内容の規制を施すかを決定することができるものと解するのが、相当である。そうすると、道路における集団行進等に対する道路交通秩序維持のための具体的規制が、道路交通法77条及びこれに基づく公安委員会規則と条例の双方において重複して施されている場合においても、両者の内容に矛盾牴触するところがなく、条例における重複規制がそれ自体としての特別の意義と効果を有し、かつ、その合理性が肯定される場合には、道路交通法による規制は、このような条例による規制を否定、排除する趣旨ではなく、条例の規制の及ばない範囲においてのみ適用される趣旨のものと解するのが相当であり、したがつて、右条例をもつて道路交通法に違反するものとすることはできない。
  道路交通法の右罰則は、同法77条所定の規制の実効性を担保するために、一般的に同条の定める道路の特別使用行為等についてどの程度に違反が生ずる可能性があるか、また、その違反が道路交通の安全をどの程度に侵害する危険があるか等を考慮して定められたものであるのに対し、本条例の右罰則は、集団行進等という特殊な性格の行動が帯有するさまざまな地方公共の安寧と秩序の侵害の可能性及び予想される侵害の性質、程度等を総体的に考慮し、殊に道路における交通の安全との関係では、集団行進等が、単に交通の安全を侵害するばかりでなく、場合によつては、地域の平穏を乱すおそれすらあることをも考慮して、その内容を定めたものと考えられる。そうすると、右罰則が法定刑として道路交通法には定めのない禁錮刑をも規定し、また懲役や罰金の刑の上限を同法より重く定めていても、それ自体としては合理性を有するものということができるのである。そして、前述のとおり条例によつて集団行進等について別個の規制を行うことを容認しているものと解される道路交通法が、右条例においてその規制を実効あらしめるための合理的な特別の罰則を定めることを否定する趣旨を含んでいるとは考えられないところであるから、本条例5条の規定が法定刑の点で同法に違反して無効であるとすることはできない。」
過去問・解説
(R2 司法 第17問 ウ)
判例は、ある事項について国の法令中に明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、規定の欠如が当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、当該事項について条例で規律することが法令違反になり得るとしている。

(正答)  

(解説)
徳島市公安条例事件判決(最大判昭50.9.10)は、「条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。」とした上で、その例として、「例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、 当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうる」としている。」としている。

(R4 司法 第19問 ア)
憲法第94条は、法律の範囲内で条例制定権を認めているが、ある事項について国の法令中にこれを規制する明文の規定がない場合であれば、当該事項について規制を設ける条例の規定は、国の法令に違反しない。

(正答)  

(解説)
徳島市公安条例事件判決(最大判昭50.9.10)は、「条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。」とした上で、その例として、「例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、 当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうる」としている。」としている。
総合メモ

神奈川県臨時特例企業税事件 最大判平成25年3月21日

概要
①普通地方公共団体は、地方自治の不可欠の要素として、国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されている(憲法92条、94条参照)。
②普通地方公共団体が課することができる租税の税目・課税客体・課税標準・税率その他の事項については、憲法上、租税法律主義(憲法84条)の原則の下で、法律において地方自治の本旨を踏まえてその準則を定めることが予定されている。そのため、これらの事項について法律により準則が定められている場合には、普通地方公共団体の課税権は、これに従ってその範囲内で行使されなければならない。
③特例企業税を定める本件条例の規定は、地方税法の定める欠損金の繰越控除の適用を一部遮断することをその趣旨、目的とするもので、特例企業税の課税によって各事業年度の所得の金額の計算につき欠損金の繰越控除を実質的に一部排除する効果を生ずる内容のものであり、各事業年度間の所得の金額と欠損金額の平準化を図り法人の税負担をできるだけ均等化して公平な課税を行うという趣旨、目的から欠損金の繰越控除の必要的な適用を定める同法の規定との関係において、その趣旨、目的に反し、その効果を阻害する内容のものであって、法人事業税に関する同法の強行規定と矛盾抵触するものとしてこれに違反し、違法、無効である。
判例
事案:地方税たる法人事業税の課税については前年度以前の欠損金額が繰越控除されるため、単年度黒字の法人であっても、神奈川県の行政サービスを享受しているにもかかわらず税負担を免れるものが出てきたため、神奈川県は、「外形標準課税が導入されるまでの間の臨時特例措置として、県の行政サービスを享受し、かつ当該事業年度において利益が発生していながら、欠損金の繰越控除により相応の税負担をしていない法人に対し、担税力に見合う一定の税負担を求める」趣旨で、条例により、地方税法4条3項に基づく法定外普通税として、一定の法人の事業活動に対し、法人事業税において繰越控除される欠損金額に相当する所得の金額を課税標準として、税率を2~3%とする臨時特例企業税を創設した。

判旨:「地方自治法14条1項は、普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて同法1条1項の事務に関し条例を制定することができると規定しているから、普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない(最高裁昭和48年(あ)第910号同50年9月10日大法廷判決・刑集19巻8号489頁)。
 普通地方公共団体は、地方自治の本旨に従い、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有するものであり(憲法91条、94条)、その本旨に従ってこれらを行うためにはその財源を自ら調達する権能を有することが必要であることからすると、普通地方公共団体は、地方自治の不可欠の要素として、その区域内における当該普通地方公共団体の役務の提供等を受ける個人又は法人に対して国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されているものと解される。しかるところ、憲法は、普通地方公共団体の課税権の具体的内容について規定しておらず、普通地方公共団体の組織及び運営に関する事項は法律でこれを定めるものとし(91条)、普通地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定することができるものとしていること(94条)、さらに、租税の賦課については国民の税負担全体の程度や国と地方の間ないし普通地方公共団体相互間の財源の配分等の観点からの調整が必要であることに照らせば、普通地方公共団体が課することができる租税の税目、課税客体、課税標準、税率その他の事項については、憲法上、租税法律主義(84条)の原則の下で、法律において地方自治の本旨を踏まえてその準則を定めることが予定されており、これらの事項について法律において準則が定められた場合には、普通地方公共団体の課税権は、これに従ってその範囲内で行使されなければならない。
 法人税法の規定する欠損金の繰越控除は、所得の金額の計算が人為的に設けられた期間である事業年度を区切りとして行われるため、複数の事業年度の通算では同額の所得の金額が発生している法人の間であっても、ある事業年度には所得の金額が発生し別の事業年度には欠損金額が発生した法人は、各事業年度に平均的に所得の金額が発生した法人よりも税負担が過重となる場合が生ずることから、各事業年度間の所得の金額と欠損金額を平準化することによってその緩和を図り、事業年度ごとの所得の金額の変動の大小にかかわらず法人の税負担をできるだけ均等化して公平な課税を行うという趣旨、目的から設けられた制度であると解される(最高裁昭和39年(行ツ)第31号同43年5月1日第一小法廷判決・民集11巻5号1067頁参照)。
  …平成15年法改正前においては、法人事業税の課税標準は原則として各事業年度の所得によるものとされ(改正前地方税法71条の11)、その所得の計算につき、同法又はこれに基づく政令で特別の定めをする場合を除くほか、当該各事業年度の法人税の課税標準である所得の計算の例によって算定するものとされており(同法71条の14第1項本文)、平成15年法改正後においては、法人事業税の所得割の課税標準は各事業年度の所得によるものとされ(地方税法71条の1第1項1号イ、71条の11第1号ハ)、その所得の計算につき、上記と同様の例によって算定するものとされている(同法71条の13第1項本文)。また、平成15年法改正の前後を通じて、上記特別の定めとして条例等により欠損金の繰越控除の特例を設けることを許容するものと解される規定は存在しない。これらの点からすれば、法人税法の規定する欠損金の繰越控除は、平成15年法改正前においては法人事業税の課税標準である各事業年度の所得の金額の計算について、平成15年法改正後においては法人事業税の所得割の課税標準である各事業年度の所得の金額の計算について、いずれも必要的に適用すべきものとされていると解され、法人税法の規定の例により欠損金の繰越控除を定める地方税法の規定は、法人事業税に関する同法の強行規定であるというべきである。
 このように、法人事業税の所得割の課税標準(平成15年法改正前は法人事業税の課税標準。以下同じ。)である各事業年度の所得の金額の計算においても、上記…と同様に、各事業年度間の所得の金額と欠損金額の平準化を図り、事業年度ごとの所得の金額の変動の大小にかかわらず法人の税負担をできるだけ均等化して公平な課税を行うという趣旨、目的から、地方税法の規定によって欠損金の繰越控除の必要的な適用が定められているものといえるのであり、このことからすれば、たとえ欠損金額の一部についてであるとしても、条例において同法の定める欠損金の繰越控除を排除することは許されず、仮に条例にこれを排除する内容の規定が設けられたとすれば、当該条例の規定は、同法の強行規定と矛盾抵触するものとしてこれに違反し、違法、無効であるというべきである。」
過去問・解説
(H26 司法 第18問 ア)
租税の賦課は法律又は法律の定める条件によらなければならないが、条例は公選の議員で組織する議会の議決を経て制定される自治立法であるから、一定の範囲内で条例による租税の賦課徴収ができる。

(正答)  

(解説)
神奈川県臨時特例企業税事件判決(最大判平25.3.21)は、「普通地方公共団体は、地方自治の不可欠の要素として、その区域内における当該普通地方公共団体の役務の提供等を受ける個人又は法人に対して国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されているものと解される。」とした上で、「普通地方公共団体が課することができる租税の税目、課税客体、課税標準、税率その他の事項については、憲法上、租税法律主義(84条)の原則の下で、法律において地方自治の本旨を踏まえてその準則を定めることが予定されており、これらの事項について法律において準則が定められた場合には、普通地方公共団体の課税権は、これに従ってその範囲内で行使されなければならない。」としている。ここでは、地方公共団体がその課税権(及び条例制定権(憲法94条))に基づいて、一定の範囲内で条例による租税の賦課徴収ができると解されている。

(H27 司法 第20問 ウ)
地方公共団体は、地方自治の本旨に従い、その財産を管理し事務を処理し及び行政を執行する権能を有し、その遂行のためには、その財源を自ら調達する権能を有することが必要であるから、地方自治の不可欠の要素として、課税権の主体となることが憲法上予定されている。

(正答)  

(解説)
神奈川県臨時特例企業税事件判決(最大判平25.3.21)は、「普通地方公共団体は、地方自治の本旨に従い、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有するものであり(憲法91条、94条)、その本旨に従ってこれらを行うためにはその財源を自ら調達する権能を有することが必要であることからすると、普通地方公共団体は、地方自治の不可欠の要素として、その区域内における当該普通地方公共団体の役務の提供等を受ける個人又は法人に対して国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されているものと解される。」としている。

(R2 司法 第17問 イ)
判例によれば、憲法第84条に規定する租税法律主義の下では、地方公共団体が国とは別途に課税権の主体となることは憲法上予定されておらず、地方公共団体が条例により租税を賦課する場合には、租税の税目、課税客体、課税標準、税率等の事項について、法律で定められた具体的な準則に基づかなければならない。

(正答)  

(解説)
神奈川県臨時特例企業税事件判決(最大判平25.3.21)は、「普通地方公共団体は、地方自治の不可欠の要素として、その区域内における当該普通地方公共団体の役務の提供等を受ける個人又は法人に対して国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されているものと解される。」としている。

(R5 司法 第19問 ウ)
地方公共団体が、地方自治の本旨に従って、財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行するためには、その財源を自ら調達する権能が必要であるから、地方自治の不可欠の要素として、国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されており、租税の税目、課税客体、課税標準、税率等の事項について、法律で定められた具体的な準則に従う必要はない。

(正答)  

(解説)
神奈川県臨時特例企業税事件判決(最大判平25.3.21)は、「普通地方公共団体は、地方自治の本旨に従い、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有するものであり(憲法91条、94条)、その本旨に従ってこれらを行うためにはその財源を自ら調達する権能を有することが必要であることからすると、普通地方公共団体は、地方自治の不可欠の要素として、…国とは別途に課税権の主体となることが憲法上予定されているものと解される。」とする一方で、「普通地方公共団体が課することができる租税の税目、課税客体、課税標準、税率その他の事項については、憲法上、租税法律主義(84条)の原則の下で、法律において地方自治の本旨を踏まえてその準則を定めることが予定されており、これらの事項について法律において準則が定められた場合には、普通地方公共団体の課税権は、これに従ってその範囲内で行使されなければならない。」としている。
総合メモ