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憲法の保障 - 解答モード
警察予備隊違憲訴訟 最大判昭和27年10月8日
概要
判例
判旨:「原告は、最高裁判所が一方司法裁判所の性格を有するとともに、他方具体的な争訟事件に関する判断を離れて抽象的に又一審にして終審として法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するや否やを判断する権限を有する点において、司法権、以外のそして立法権及び行政権のいずれの範疇にも属しない特殊の権限を行う性格を兼有するものと主張する。
過去問・解説
(H23 司法 第18問 ア)
憲法第81条は、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する争訟事件を解決するのに必要な限度で、裁判所に違憲審査権を付与した規定である。したがって、裁判所にはいわゆる客観訴訟において違憲審査を行う権限はない。
(正答) ✕
(解説)
警察予備隊違憲訴訟判決(最大判昭27.10.8)は、「わが現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない」としており、「法令上の…根拠」が存在する場合には裁判所が具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を持つことを許容する趣旨を含んでいる。
そして、議員定数不均衡訴訟判決(最大判昭51.4.14)は、「現行法上選挙を将来に向かつて形成的に無効とする訴訟として認められている公選法204条の選挙の効力に関する訴訟…は、現行法上選挙人が選挙の適否を争うことのできる唯一の訴訟であり、これを措いては他に訴訟上公選法の違憲を主張してその是正を求める機会はないのである。およそ国民の基本的権利を侵害する国権行為に対しては、できるだけその是正、救済の途が開かれるべきであるという憲法上の要請に照らして考えるときは、前記公選法の規定が、その定める訴訟において、同法の議員定数配分規定が選挙権の平等に違反することを選挙無効の原因として主張することを殊更に排除する趣旨であるとすることは、決して当を得た解釈ということはできない。」として、客観訴訟における違憲審査を認めている。
(R5 司法 第17問 ア)
警察予備隊違憲訴訟判決(最大判昭和27年10月8日)は、出訴等に関する手続を法律で定めれば、最高裁判所には法令等の合憲性を抽象的・一般的に審査・決定する権限を付与することもできるという考え方を否定するものではないと見る余地もある。
違憲審査の対象 最大判昭和23年7月8日
概要
判例
判旨:「憲法第81条の規定は、第98条第1項に「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」とある規定と密接な表裏の関係が存することも明白である。さらに、第76条第3項においては、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と規定し、又第99条においては、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と規定し、裁判官の憲法遵守義務を明かに定めているのである。現今通常一般には、最高裁判所の違憲審査権は、憲法第81条によつて定められていると説かれるが、一層根本的な考方からすれば、よしやかかる規定がなくとも、第98条の最高法規の規定又は第76条若しくは第99条の裁判官の憲法遵守義務の規定から、違憲審査権は十分に抽出され得るのである。米国憲法においては、前記第81条に該当すべき規定は全然存在しないのであるが、最高法規の規定と裁判官の憲法遵守義務から、1803年のマーベリー対マデイソン事件の判決以来幾多の判例をもつて違憲審査権は解釈上確立された。日本国憲法第81条は、米国憲法の解釈として樹立せられた違憲審査権を、明文をもつて規定したという点において特徴を有するのである。そしてこの違憲審査権は、近代政治科学における最も特筆大書すべき生産物であると称されているものであつて、この制度の内包する歴史的意義と世紀の使命はまことに深遠であると言わなければならない。憲法第81条によれば、最高裁判所は、一切の法律、一切の命令、一切の規則又は一切の処分について違憲審査権を有する。裁判は一般的抽象的規範を制定するものではなく、個々の事件について具体的処置をつけるものであるから、その本質は一種の処分であることは言うをまたぬところである。法律、命令、規則又は行政処分の憲法適否性が裁判の過程において終審として最高裁判所において審判されるにかかわらず、裁判の憲法適否性が裁判の過程において終審として最高裁判所において審判されない筈はない。否、一切の抽象的規範は、法律たると命令たると規則たるとを問わず、終審として最高裁判所の違憲審査権に服すると共に、一切の処分は、行政処分たると裁判たるとを問はず、終審として最高裁判所の違憲審査権に服する。すなわち、立法行為も行政行為も司法行為(裁判)も、皆共に裁判の過程においてはピラミツド型において終審として最高裁判所の違憲審査権に服するのである。かく解してこそ、最高裁判所は、初めて憲法裁判所としての性格を完全に発揮することができる。」
過去問・解説
(H23 司法 第18問 ウ)
憲法第81条が「一切の法律、命令、規則又は処分」という場合の「処分」とは、統治機関の行為の意味である。したがって、これには行政機関の行政処分のみならず、裁判所の判決も含まれる。
下級裁判所の違憲審査権 最大判昭和25年2月1日
概要
判例
判旨:「憲法は国の最高法規であつてその条規に反する法律命令等はその効力を有せず、裁判官は憲法及び法律に拘束せられ、また憲法を尊重し擁護する義務を負うことは憲法の明定するところである。従つて、裁判官が、具体的訴訟事件に法令を適用して裁判するに当り、その法令が憲法に適合するか否かを判断することは、憲法によつて裁判官に課せられた職務と職権であつて、このことは最高裁判所の裁判官であると下級裁判所の裁判官であることを問わない。憲法81条は、最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であつて、下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨をもつているものではない。それ故、原審が所論の憲法適否の判断をしたことはもとより適法であるのみでなく、原審は憲法適否の判断を受くるために最高裁判所に移送すべきであるとの所論は、全く独断と言うの外はない。論旨は、理由なきものである。」
過去問・解説
(H23 司法 第18問 イ)
憲法は国の最高法規であってこれに反する法律命令等はその効力を有さず、裁判官は憲法及び法律に拘束され、憲法を尊重擁護する義務を負う。したがって,最高裁判所に限らず下級裁判所の裁判官も違憲審査の権限を有する。
第三者所有物没収事件 最大判昭和37年11月28日
概要
②かかる没収の言渡しを受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、これを違憲として上告することができる。
判例
しかし、第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。けだし、憲法29条1項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また同31条は、何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと規定しているが、前記第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であつて、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならないからである。そして、このことは、右第三者に、事後においていかなる権利救済の方法が認められるかということとは、別個の問題である。然るに、旧関税法83条1項は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等が被告人以外の第三者の所有に属する場合においてもこれを没収する旨規定しながら、その所有者たる第三者に対し、告知、弁解、防禦の機会を与えるべきことを定めておらず、また刑訴法その他の法令においても、何らかかる手続に関する規定を設けていないのである。従つて、…旧関税法83条1項によつて第三者の所有物を没収することは、憲法31条、29条に違反するものと断ぜざるをえない。
そして、かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである。これと矛盾する昭和28年(あ)第3026号、同29年(あ)第3655号、各同35年10月19日当裁判所大法廷言渡の判例は、これを変更するを相当と認める。」
過去問・解説
(H22 司法 第11問 ウ)
第三者所有物没収事件(最判大昭和37年11月28日)は、第三者の所有にかかる物件につき没収の言渡しがあったからといって、被告人においてこれを違憲無効であると主張することは許されないとして、被告人の上告を棄却した。
(H28 司法 第17問 ア)
第三者の所有物を没収する言渡しを受けた被告人は、当該第三者の権利を援用して、所有者に対し何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなくその所有権を奪うことは憲法に違反する旨主張することはできない。
(H29 司法 第9問 ウ)
前記判決では、第三者所有物について没収の言渡を受けた被告人は、その没収の裁判の違憲を理由として上告することができるとされた。
違憲の争点を提起し得る当事者適格 最二小判平成26年7月9日
概要
判例
判旨:「本件訴訟は、選挙人が民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)である公職選挙法204条の選挙無効訴訟として選挙人たる資格で提起したものであるところ、民衆訴訟は、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」ではなく同項の「その他法律において特に定める権限」に含まれるものとして、「法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる」ものとされている(行政事件訴訟法42条)。そして、公職選挙法204条の選挙無効訴訟について、同条は選挙人又は公職の候補者のみがこれを提起し得るものと定め、同法205条1項は上記訴訟において主張し得る選挙無効の原因を「選挙の規定に違反することがあるとき」と定めており、これは、主として選挙管理の任にある機関が選挙の管理執行の手続に関する明文の規定に違反することがあるとき又は直接そのような明文の規定は存在しないが選挙の基本理念である選挙の自由公正の原則が著しく阻害されるときを指すものと解される…。
このように、公職選挙法204条の選挙無効訴訟は、同法において選挙権を有するものとされている選挙人らによる候補者に対する投票の結果としての選挙の効力を選挙人又は候補者が上記のような無効原因の存在を主張して争う争訟方法であり、同法の規定において一定の者につき選挙権を制限していることの憲法適合性については、当該者が自己の選挙権の侵害を理由にその救済を求めて提起する訴訟においてこれを争うことの可否はおくとしても、同条の選挙無効訴訟において選挙人らが他者の選挙権の制限に係る当該規定の違憲を主張してこれを争うことは法律上予定されていない。そうすると、選挙人が同条の選挙無効訴訟において同法205条1項所定の選挙無効の原因として本件各規定の違憲を主張し得るものとはいえないから、この点に関する論旨は採用することができず、所論はその前提を欠くものといわざるを得ない。」
過去問・解説
(R5 司法 第17問 ウ)
判例によれば、公職選挙法の規定において、一定の者につき選挙権を制限していることの憲法適合性については、当該者が自己の選挙権の侵害を理由にその救済を求めて提起する訴訟においてこれを争うことの可否はおくとしても、同法第204条の選挙無効訴訟において選挙人らが他者の選挙権の制限に係る当該規定の違憲を主張してこれを争うことは法律上予定されていない。