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憲法 第三者所有物没収事件 最大判昭和37年11月28日
概要
①関税法第118条1項(旧関税法第83条1項)の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法31条、29条に違反する。
②かかる没収の言渡しを受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、これを違憲として上告することができる。
②かかる没収の言渡しを受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、これを違憲として上告することができる。
判例
事案:被告人は、関税法111条2項違反の密輸出未遂で有罪判決を受け、附加刑として同法118条1項により第三者の所有にかかる船・積載貨物の没収を言い渡されたところ、告知・弁解・防御の機会を与えることなく船・積載貨物の没収を行うことは、憲法29条1項に違反すると主張した。
判旨:「旧関税法…83条1項の規定による没収は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等で犯人の所有または占有するものにつき、その所有権を剥奪して国庫に帰属せしめる処分であつて、被告人以外の第三者が所有者である場合においても、被告人に対する附加刑としての没収の言渡により、当該第三者の所有権剥奪の効果を生ずる趣旨であると解するのが相当である。
しかし、第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。けだし、憲法29条1項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また同31条は、何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと規定しているが、前記第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であつて、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならないからである。そして、このことは、右第三者に、事後においていかなる権利救済の方法が認められるかということとは、別個の問題である。然るに、旧関税法83条1項は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等が被告人以外の第三者の所有に属する場合においてもこれを没収する旨規定しながら、その所有者たる第三者に対し、告知、弁解、防禦の機会を与えるべきことを定めておらず、また刑訴法その他の法令においても、何らかかる手続に関する規定を設けていないのである。従つて、…旧関税法83条1項によつて第三者の所有物を没収することは、憲法31条、29条に違反するものと断ぜざるをえない。
そして、かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである。これと矛盾する昭和28年(あ)第3026号、同29年(あ)第3655号、各同35年10月19日当裁判所大法廷言渡の判例は、これを変更するを相当と認める。」
しかし、第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。けだし、憲法29条1項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また同31条は、何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと規定しているが、前記第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であつて、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならないからである。そして、このことは、右第三者に、事後においていかなる権利救済の方法が認められるかということとは、別個の問題である。然るに、旧関税法83条1項は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等が被告人以外の第三者の所有に属する場合においてもこれを没収する旨規定しながら、その所有者たる第三者に対し、告知、弁解、防禦の機会を与えるべきことを定めておらず、また刑訴法その他の法令においても、何らかかる手続に関する規定を設けていないのである。従つて、…旧関税法83条1項によつて第三者の所有物を没収することは、憲法31条、29条に違反するものと断ぜざるをえない。
そして、かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである。これと矛盾する昭和28年(あ)第3026号、同29年(あ)第3655号、各同35年10月19日当裁判所大法廷言渡の判例は、これを変更するを相当と認める。」
過去問・解説
(H22 司法 第11問 ウ)
第三者所有物没収事件(最判大昭和37年11月28日)は、第三者の所有にかかる物件につき没収の言渡しがあったからといって、被告人においてこれを違憲無効であると主張することは許されないとして、被告人の上告を棄却した。
第三者所有物没収事件(最判大昭和37年11月28日)は、第三者の所有にかかる物件につき没収の言渡しがあったからといって、被告人においてこれを違憲無効であると主張することは許されないとして、被告人の上告を棄却した。
(正答) ✕
(解説)
第三者所有物没収事件判決(最大判昭37.11.28)は、「かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である」としている。本肢は、「被告人においてこれを違憲無効であると主張することは許されない」としている点において、誤っている。
第三者所有物没収事件判決(最大判昭37.11.28)は、「かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である」としている。本肢は、「被告人においてこれを違憲無効であると主張することは許されない」としている点において、誤っている。
(H28 司法 第17問 ア)
第三者の所有物を没収する言渡しを受けた被告人は、当該第三者の権利を援用して、所有者に対し何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなくその所有権を奪うことは憲法に違反する旨主張することはできない。
第三者の所有物を没収する言渡しを受けた被告人は、当該第三者の権利を援用して、所有者に対し何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなくその所有権を奪うことは憲法に違反する旨主張することはできない。
(正答) ✕
(解説)
第三者所有物没収事件判決(最大判昭37.11.28)は、「没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。」としている。
(H29 司法 第9問 ウ)
前記判決では、第三者所有物について没収の言渡を受けた被告人は、その没収の裁判の違憲を理由として上告することができるとされた。
前記判決では、第三者所有物について没収の言渡を受けた被告人は、その没収の裁判の違憲を理由として上告することができるとされた。
(正答) 〇
(解説)
第三者所有物没収事件判決(最大判昭37.11.28)は、「没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。」としている。
(R5 司法 第17問 イ)
第三者の所有物を没収する言渡しを受けた被告人は、当該第三者の権利を援用して、所有者に対し何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなくその所有権を奪うことは憲法に違反する旨主張することはできない。
第三者の所有物を没収する言渡しを受けた被告人は、当該第三者の権利を援用して、所有者に対し何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなくその所有権を奪うことは憲法に違反する旨主張することはできない。
(正答) ✕
(解説)
第三者所有物没収事件判決(最大判昭37.11.28)は、「没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。」としている。