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憲法 皇居前広場事件 最大判昭和28年12月23日 - 解答モード

概要
①昭和27年5月1日のメーデーのための皇居外苑使用不許可処分の取消を求める訴は、その期日の経過により判決を求める法律上の利益を喪失する。
②中央メーデーのための皇居外苑の使用を不許可とすることは、「集会の自由」を定めた憲法21条に違反しない。
判例
事案:日本労働組合総評議会は1951年5月3日に数百人規模のデモを行い、数十人が検挙された。同年11月に、同会はメーデーのための皇居外苑使用許可申請をしたものの不許可処分となり、不許可処分を定めた公園管理規則が憲法21条の集会の自由に照らして判断されるべきとして出訴した。

判旨:①「狭義の形成訴訟の場合においても、形成権発生後の事情の変動により具体的に保護の利益なきに至ることあるべきは多言を要しないところである。…また、被上告人は同年5月1日における皇居外苑の使用を許可しなかつただけで、上告人に対して将来に亘り使用を禁じたものでないことも明白である。されば、…同日の経過により判決を求める法律上の利益を喪失したものといわなければならない。」
 ②「なお、念のため、本件不許可処分の適否に関する当裁判所の意見を附加する。
 本件皇居外苑は国有財産法3条2項2号にいう公共福祉用財産に該当するものであること、被上告人厚生大臣は同法5条及び厚生省設置法8条17号によりこれが管理を担当するものであること、本件不許可処分が厚生大臣において右管理のため制定した厚生省令国民公園管理規則4条に基きなされたものであることは、いずれも明らかである。そして、国有財産法によれば、公共福祉用財産は、国が直接公共の用に供した財産であつて、国民は、その供用された目的に従つて均しくこれを利用しうるものであり、この点において、公共福祉用財産は、普通財産と異ることは勿論他の行政財産ともその性質を異にするものである。しかし、公共福祉用財産には多くの種類があり、それが公共の用に供せられる目的は財産の種類によつて異なり、また、それが公共の用に供せられる態様及び程度も財産の規模、施設のいかんによつて異なるもののあることは当然である。従つて、上述のごとく公共福祉用財産は、国民が均しくこれを利用しうるものである点に特色があるけれども、国民がこれを利用しうるのは、当該公共福祉用財産が公共の用に供せられる目的に副い、且つ公共の用に供せられる態様、程度に応じ、その範囲内においてなしうるのであつて、これは、皇居外苑の利用についても同様である。また国有財産の管理権は、国有財産法5条により、各省各庁の長に属せしめられており、公共福祉用財産をいかなる態様及び程度において国民に利用せしめるかは右管理権の内容であるが、勿論その利用の許否は、その利用が公共福祉用財産の、公共の用に供せられる目的に副うものである限り、管理権者の単なる自由裁量に属するものではなく、管理権者は、当該公共福祉用財産の種類に応じ、また、その規模、施設を勘案し、その公共福祉用財産としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであり、若しその行使を誤り、国民の利用を妨げるにおいては、違法たるを免れないと解さなければならない。これは、皇居外苑の管理についても同様であつて、その管理権の根拠規定たる国有財産法5条、厚生省設置法8条17号及び厚生大臣がその管理権に基いて定めた国民公園管理規則には、皇居外苑を使用せしめることの許否につき具体的方針は特に定められていないけれども、国民公園を本来の目的に副うて使用するのでなく利用する同規則3条のような場合は別として、国民が同公園に集合しその広場を利用することは、一応同公園が公共の用に供せられている目的に副う使用の範囲内のことであり、唯本件のようにそれが集会又は示威行進のためにするものである場合に、同公園の管理上の必要から、これを厚生大臣の認可にかからしめたものであるから、その許否は管理権者の単なる自由裁量に委ねられた趣旨と解すべきでなく、管理権者たる厚生大臣は、皇居外苑の公共福祉用財産たる性質に鑑み、また、皇居外苑の規模と施設とを勘案し、その公園としての使命を十分達成せしめるよう考慮を払つた上、その許否を決しなければならないのである。いま、本件厚生大臣の不許可処分についてみるに、弁論の全趣旨によれば、被上告人厚生大臣は、皇居外苑を旧皇室苑地という由緒を持つ外、現在もなお皇居の前庭であるという特殊性を持つた公園であるとし、この皇居外苑の特性と公園本来の趣旨に照らしてこれが管理については、速に原状回復をはかり、常に美観を保持し、静穏を保持し、国民一般の散策、休息、観賞及び観光に供し、その休養慰楽、厚生に資し、もつてできるだけ広く国民の福祉に寄与することを基本方針としていることが認められ、また、本件不許可処分は、許可申請の趣旨がその申請書によれば昭和27年5月1日メーデーのために、参加人員約50万人の予定で午前九時から午後5時まで二重橋皇居外苑の全域を使用することの許可を求めるというにあつて、二重橋前の外苑全域の面積の中国民一般の立入を禁止している緑地を除いた残部の人員収容能力は右参加予定員数の約半数に止まるから、若し本件申請を許可すれば、立入禁止区域をも含めた外苑全域に約50万人が長時間充満することとなり、尨大な人数、長い使用時間からいつて、当然公園自体が著しい損壊を受けることを予想せねばならず、かくて公園の管理保存に著しい支障を蒙るのみならず、長時間に亘り一般国民の公園としての本来の利用が全く阻害されることになる等を理由としてなされたことが認められる。これらを勘案すると本件不許可処分は、それが管理権を逸脱した不法のものであると認むべき事情のあらわれていない本件においては、厚生大臣は国民公園管理規則4条の適用につき勘案すべき諸点を十分考慮の上、その公園としての使命を達成せしめようとする立場に立つて、不許可処分をしたものであつて、決して単なる自由裁量によつたものでなく管理権の適正な運用を誤つたものとは認められない。次に、国民公園管理規則1条には、「皇居外苑…の利用に関してはこの規則の定めるところによる。」とあるから、同規則4条による許可又は不許可は、国民公園の利用に関する許可又は不許可であり、厚生大臣の有する国民公園の管理権の範囲内のことであつて、元来厚生大臣の権限とされていない集会を催し又は示威運動を行うことの許可又は不許可でないことは明白である。されば同条に基いた本件不許可処分は、厚生大臣がその管理権の範囲内に属する国民公園の管理上の必要から、本件メーデーのための集会及び示威行進に皇居外苑を使用することを許可しなかつたのであつて、何ら表現の自由又は団体行動権自体を制限することを目的としたものでないことは明らかである。ただ、厚生大臣が管理権の行使として本件不許可処分をした場合でも、管理権に名を藉り、実質上表現の自由又は団体行動権を制限するの目的に出でた場合は勿論、管理権の適正な行使を誤り、ために実質上これらの基本的人権を侵害したと認められうるに至つた場合には、違憲の問題が生じうるけれども、本件不許可処分は、既に述べたとおり、管理権の適正な運用を誤つたものとは認められないし、また、管理権に名を藉りて実質上表現の自由又は団体行動権を制限することを目的としたものとも認められないのであつて、そうである限り、これによつて、たとえ皇居前広場が本件集会及び示威行進に使用することができなくなつたとしても、本件不許可処分が憲法21条及び28条違反であるということはできない。以上述べたところにより、本件不許可処分には所論のような違法は認められない。」
過去問・解説

(H30 共通 第6問 ウ)
市の管理する公園について、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合でないのに、その使用を規制するのは、集会の自由を不当に制限することになる

(正答)  

(解説)
皇居前広場事件判決(最大判昭28.12.23)は、「公共福祉用財産には多くの種類があり、それが公共の用に供せられる目的は財産の種類によつて異なり、また、それが公共の用に供せられる態様及び程度も財産の規模、施設のいかんによつて異なるもののあることは当然である。」とした上で、「皇居外苑の利用…の許否は、その利用が公共福祉用財産の、公共の用に供せられる目的に副うものである限り、管理権者の単なる自由裁量に属するものではなく、管理権者は、当該公共福祉用財産の種類に応じ、また、その規模、施設を勘案し、その公共福祉用財産としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであり、若しその行使を誤り、国民の利用を妨げるにおいては、違法たるを免れないと解さなければならない。」としており、人の生命、身体又は財産に対する明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることを要求していない。
こうした危険を要求したのは、市民会館の使用不許可処分に関する泉佐野市民会館事件判決(最判平7.3.7)である。


(R5 共通 第4問 ウ)
皇居外苑などの国民公園は、国が直接公共の用に供した財産であるとしても、集会のために設置されたものではないため、公園を集会に使用するための許可の申請について、公園の管理権者はその許否を自由に決することができ、不許可処分を行っても憲法第21条に反しない。

(正答)  

(解説)
皇居前広場事件判決(最判昭28.12.23)は、「皇居外苑の利用…の許否は、その利用が公共福祉用財産の、公共の用に供せられる目的に副うものである限り、管理権者の単なる自由裁量に属するものではなく、管理権者は、当該公共福祉用財産の種類に応じ、また、その規模、施設を勘案し、その公共福祉用財産としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであり、若しその行使を誤り、国民の利用を妨げるにおいては、違法たるを免れないと解さなければならない。」としている。

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