(H18 司法 第7問 B)
次の文章は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性判断基準に関するものである。空欄に、後記1-6までの中から適切なものを補充して、文章を完成させなさい。
最高裁判所は、[空欄]の判決において、職業の許可制について合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、それが自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては、その目的を十分に達成することができないと認められることを要する旨判示した。
1. 薬局設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による開設不許可事由とした薬事法の規定の合憲性が争われた事案
2. たばこ事業法、同法施行規則及びこれを受けた大蔵大臣依命通達による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制の合憲性が争われた事案
3. 公衆浴場設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による経営不許可事由とした公衆浴場法の規定の合憲性が争われた事案
4. 酒類の販売業を税務署長の免許制とし、その要件を定めている酒税法の規定の合憲性が争われた事案
5. 都道府県知事の許可なく小売市場を開設することを禁じた小売商業調整特別措置法の規定の合憲性が争われた事案
6. 司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続の代理業務等を行うことを禁じた司法書士法の規定の合憲性が争われた事案
(正答)1
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、薬局設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による開設不許可事由とした薬事法の規定の合憲性が争われた事案において、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する…。」としている。
(H24 共通 第5問 イ)
憲法22条1項が「公共の福祉に反しない限り」という留保を伴っているのは、職業活動は社会的相互関連性が大きく、精神的自由と比較して公権力による規制の要請が強いことを強調するためである。
(正答)〇
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「職業は、…本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であつて、その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるから、職業の自由は、それ以外の憲法の保障する自由、殊にいわゆる精神的自由に比較して、公権力による規制の要請がつよく、憲法22条1項が『公共の福祉に反しない限り』という留保のもとに職業選択の自由を認めたのも、特にこの点を強調する趣旨に出たものと考えられる。」としている。
(H24 共通 第5問 ウ)
職業の許可制は自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する。ただし、この要請は、個々の許可条件の合憲性判断においてまで求められるものではない。
(正答)✕
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。」とした上で、「この要件は、許可制そのものについてのみならず、その内容についても要求されるのであつて、許可制の採用自体が是認される場合であつても、個々の許可条件については、更に個別的に右の要件に照らしてその適否を判断しなければならないのである。」としている。
(H25 司法 第19問 ウ)
裁判所は、合憲性審査に当たり人権制約立法の根拠となる立法事実の存否を審査する必要があるが、その際立法事実についての立法者の判断をどの程度尊重すべきかという問題は、いかなる基準で合憲性を判断するかの問題とは無関係である。
(正答)✕
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「これらの規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによつて制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない。この場合、右のような検討と考量をするのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまるかぎり、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものである。」とした上で、「しかし、右の合理的裁量の範囲については、事の性質上おのずから広狭がありうるのであつて、裁判所は、具体的な規制の目的、対象、方法等の性質と内容に照らして、これを決すべきものといわなければならない。」としている。
これは、職業規制ごとに立法府の判断をどの程度尊重するべきかが異なり得るため、それと逆の相関の関係に立つ裁判所による違憲審査の厳格度も変わり得ることを意味している。
(H29 共通 第8問 ウ)
職業の許可制は、狭義の職業の選択の自由そのものに制約を課す強力な制限であるため、社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置であっても、より緩やかな規制によってはその目的を十分に達することができない場合でなければ、合憲性を肯定し得ない。
(正答)✕
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要…する」とした上で、「また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。」としている。
後者の判示では、「社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置」と「自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置」とが区別されており、「消極的、警察的措置」であることを理由に、「許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する」という厳格な合理性の基準が採用されている。
したがって、社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置である場合、緩やかな基準が採用されるため、「より緩やかな規制によってはその目的を十分に達することができない場合でなければ、合憲性を肯定し得ない。」とする点において、本肢は誤っている。
(R1 司法 第7問 ア)
薬局の開設につき、これを許可制とすることの目的が、国民の生命及び健康に対する危険の防止にある場合、当該規制の合憲性を肯定するためには、それが重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることに加え、より緩やかな規制によってはその目的を十分に達成することができないと認められることも要する。
(正答) 〇
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。」としている。
(R4 共通 第1問 イ)
職業選択の自由は、社会生活における安全の保障及び秩序の維持等の消極的な目的や、国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的な目的のほか、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のために制約され得る。
(正答) 〇
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、職業規制の目的として、㋐「国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的なもの」、㋑「社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なもの」を挙げており、酒類販売免許制事件判決(最判平4.12.15)は、㋒「租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的」という第三の目的の存在を承認している。
(R5 予備 第4問 ア)
職業の自由に対する規制措置が憲法上是認されるかどうかは、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならず、それは、第一次的には立法府の権限と責務であるから、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまる限り、その判断を尊重すべきである。
(正答) 〇
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「これらの規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによつて制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない。この場合、右のような検討と考量をするのは、第1次的には立法府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまるかぎり、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものである。」としている。
(R5 予備 第4問 イ)
職業の許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、規制目的が重要な公共の利益のために必要不可欠であり、許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては立法目的を十分に達成し得ないことを要する。
(正答)✕
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要…する」としている。
したがって、規制目的が重要な公共の利益のために「必要不可欠」であることまでは要求されない。