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職業の自由 - 解答モード
小売市場事件 最大判昭和47年11月22日
概要
②憲法は、福祉国家的理想のもとに経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策としての積極的な社会経済政策の実施を予定しており、こうした社会経済政策としてなされる個人の経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量に委ねるほかないから、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って違憲となる。
③小売市場の許可規制は、国が社会経済の調和的発展を企図するという観点から中小企業保護政策の一方策としてとつた措置ということができ、その目的において、一応の合理性を認めることができないわけではなく、また、その規制の手段・態様においても、それが著しく不合理であることが明白であるとは認められないから、小売市場の許可規制が憲法22条1項に違反するものとすることができない。
判例
②「おもうに、右条項に基づく個人の経済活動に対する法的規制は、個人の自由な経済活動からもたらされる諸々の弊害が社会公共の安全と秩序の維持の見地から看過することができないような場合に、消極的に、かような弊害を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいて許されるべきことはいうまでもない。のみならず、憲法の他の条項をあわせ考察すると、憲法は、全体として、福祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており、その見地から、すべての国民にいわゆる生存権を保障し、その一環として、国民の勤労権を保障する等、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請していることは明らかである。このような点を総合的に考察すると、憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なつて、右社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと、憲法が予定し、かつ、許容するところと解するのが相当であり、国は、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もつて社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るために、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規制措置を講ずることも、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、許されるべきであつて、決して、憲法の禁ずるところではないと解すべきである。もつとも、個人の経済活動に対する法的規制は、決して無制限に許されるべきものではなく、その規制の対象、手段、態様等においても、自ら一定の限界が存するものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第7問 改題)
次の文章は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性判断基準に関するものである。空欄に、後記1から6までの中から適切なものを補充して、文章を完成させなさい。
最高裁判所は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性に関して、[空欄]の判決において、積極的な社会経済政策を実施するための法的規制措置については、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白な場合に限って、これを違憲として、その効力を否定することができる旨判示した。
1. 薬局設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による開設不許可事由とした薬事法の規定の合憲性が争われた事案
2. たばこ事業法、同法施行規則及びこれを受けた大蔵大臣依命通達による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制の合憲性が争われた事案
3. 公衆浴場設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による経営不許可事由とした公衆浴場法の規定の合憲性が争われた事案
4. 酒類の販売業を税務署長の免許制とし、その要件を定めている酒税法の規定の合憲性が争われた事案
5. 都道府県知事の許可なく小売市場を開設することを禁じた小売商業調整特別措置法の規定の合憲性が争われた事案
6. 司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続の代理業務等を行うことを禁じた司法書士法の規定の合憲性が争われた事案
(正答)5
(解説)
小売市場事件判決(最大判昭47.11.22)は、都道府県知事の許可なく小売市場を開設することを禁じた小売商業調整特別措置法の規定の合憲性が争われた事案において、「憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なつて、右社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと、憲法が予定し、かつ、許容するところと解するのが相当であ…る」とした上で、「右に述べたような個人の経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量に委ねるほかはなく、裁判所は、立法府の右裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限つて、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当である。」としている。
(H24 共通 第5問 ア)
職業活動の自由についても精神的自由についても、国の積極的な社会経済政策のために規制することが許されるのは同様であるが、前者の自由を規制する場合には立法府の裁量的判断が広く認められる点が異なる。
(正答) ✕
(解説)
小売市場事件判決(最大判昭47.11.22)は、「憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なつて、右社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと、憲法が予定し、かつ、許容するところと解するのが相当であり、国は、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もって社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るために、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規制措置を講ずることも、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、許されるべきであつて、決して、憲法の禁ずるところではないと解すべきである。」と述べており、ここでは「個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なって」とあり、職業活動の自由と精神的自由が区別されている。
(H29 共通 第8問 イ)
憲法22条1項は職業選択の自由を保障しているが、いわゆる営業の自由は、財産権の行使という側面を併せ有することから、同項及び29条1項の規定によって根拠付けられる。
(R1 共通 第7問 イ)
個人の経済活動の自由に対して、社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るという積極目的の規制を設けることが正当化される根拠として、国民の生存権やその一環としての勤労権が保障されているなど、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を行うことが憲法上の要請とされていることを挙げることができる。
(正答) 〇
(解説)
小売市場事件判決(最大判昭47.11.22)は、「憲法は、全体として、福祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており、その見地から、すべての国民にいわゆる生存権を保障し、その一環として、国民の勤労権を保障する等、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請していることは明らかである。このような点を総合的に考察すると、憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なつて、右社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと、憲法が予定し、かつ、許容するところと解するのが相当であり、国は、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もつて社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るために、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規制措置を講ずることも、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、許されるべきであつて、決して、憲法の禁ずるところではないと解すべきである。」としている。
(R4 司法 第1問 ア)
表現の自由などの精神的自由も、その行使の結果から本人を保護するために法律により制限を加えられることがあるが、こうした制限については、専門技術的な判断が伴うことから立法者に広い裁量が認められるので、目的との関連で著しく不合理であることが明らかである場合に限って、その効力を否定することができる。
(正答) ✕
(解説)
小売市場事件判決(最大判昭47.11.22)は、「憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なつて、右社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと、憲法が予定し、かつ、許容するところと解するのが相当であり、国は、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もって社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るために、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規制措置を講ずることも、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、許されるべきであつて、決して、憲法の禁ずるところではないと解すべきである。」と述べており、ここでは「個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なって」とあり、職業活動の自由と精神的自由が区別されている。
薬事法事件 最大判昭和50年4月30日
概要
②一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する。
これに対し、適正配置規制については、このような直接の関連性をもっていないところ、薬局等を自己の職業として選択し、これを開業するにあたつては、経営上の採算のほか、諸般の生活上の条件を考慮し、自己の希望する開業場所を選択するのが通常であり、特定場所における開業の不能は開業そのものの断念にもつながりうるものであるから、開業場所の地域的制限は、実質的には職業選択の自由に対する大きな制約的効果を有するものである。このような予防的措置として職業の自由に対する大きな制約である薬局の開設等の地域的制限が憲法上是認されるためには、単に右のような意味において国民の保健上の必要性がないとはいえないというだけでは足りず、このような制限を施さなければ右措置による職業の自由の制約と均衡を失しない程度において国民の保健に対する危険を生じさせるおそれのあることが、合理的に認められることを必要とするというべきである。そして、競争の激化ー経営の不安定ー法規違反という因果関係に立つ不良医薬品の供給の危険が、薬局等の段階において、相当程度の規模で発生する可能性があるとすることは、単なる観念上の想定にすぎず、確実な根拠に基づく合理的な判断とは認めがたいといわなければならないから、適正配置規制は、不良医薬品の供給の防止等の目的のために必要かつ合理的な規制を定めたものということができず、憲法22条1項に違反する。
判例
②「もつとも、職業は、前述のように、本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であつて、その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるから、職業の自由は、それ以外の憲法の保障する自由、殊にいわゆる精神的自由に比較して、公権力による規制の要請がつよく、憲法22条1項が「公共の福祉に反しない限り」という留保のもとに職業選択の自由を認めたのも、特にこの点を強調する趣旨に出たものと考えられる。このように、職業は、それ自身のうちになんらかの制約の必要性が内在する社会的活動であるが、その種類、性質、内容、社会的意義及び影響がきわめて多種多様であるため、その規制を要求する社会的理由ないし目的も、国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで千差万別で、その重要性も区々にわたるのである。そしてこれに対応して、現実に職業の自由に対して加えられる制限も、あるいは特定の職業につき私人による遂行を一切禁止してこれを国家又は公共団体の専業とし、あるいは一定の条件をみたした者にのみこれを認め、更に、場合によつては、進んでそれらの者に職業の継続、遂行の義務を課し、あるいは職業の開始、継続、廃止の自由を認めながらその遂行の方法又は態様について規制する等、それぞれの事情に応じて各種各様の形をとることとなるのである。それ故、これらの規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによつて制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない。この場合、右のような検討と考量をするのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまるかぎり、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものである。しかし、右の合理的裁量の範囲については、事の性質上おのずから広狭がありうるのであつて、裁判所は、具体的な規制の目的、対象、方法等の性質と内容に照らして、これを決すべきものといわなければならない。
職業の許可制は、法定の条件をみたし、許可を与えられた者のみにその職業の遂行を許し、それ以外の者に対してはこれを禁止するものであつて、右に述べたように職業の自由に対する公権力による制限の一態様である。…一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。そして、この要件は、許可制そのものについてのみならず、その内容についても要求されるのであつて、許可制の採用自体が是認される場合であつても、個々の許可条件については、更に個別的に右の要件に照らしてその適否を判断しなければならないのである。」
右の適正配置規制は、主として国民の生命及び健康に対する危険の防止という消極的、警察的目的のための規制措置であり、そこで考えられている薬局等の過当競争及びその経営の不安定化の防止も、それ自体が目的ではなく、あくまでも不良医薬品の供給の防止のための手段であるにすぎないものと認められる。すなわち、小企業の多い薬局等の経営の保護というような社会政策的ないしは経済政策的目的は右の適正配置規制の意図するところではなく…、また、一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公共性にかんがみ、その適正な提供の確保のために、法令によつて、提供すべき役務の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務づける等のつよい規制を施す反面、これとの均衡上、役務提供者に対してある種の独占的地位を与え、その経営の安定をはかる措置がとられる場合があるけれども、薬事法その他の関係法令は、医薬品の供給の適正化措置として右のような強力な規制を施してはおらず、したがつて、その反面において既存の薬局等にある程度の独占的地位を与える必要も理由もなく、本件適正配置規制にはこのような趣旨、目的はなんら含まれていないと考えられるのである。…薬局の開設等の許可条件として地域的な配置基準を定めた目的が前記…に述べたところにあるとすれば、それらの目的は、いずれも公共の福祉に合致するものであり、かつ、それ自体としては重要な公共の利益ということができるから、右の配置規制がこれらの目的のために必要かつ合理的であり、薬局等の業務執行に対する規制によるだけでは右の目的を達することができないとすれば、許可条件の一つとして地域的な適正配置基準を定めることは、憲法22条1項に違反するものとはいえない。
過去問・解説
(H18 司法 第7問 B)
次の文章は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性判断基準に関するものである。空欄に、1-6までの中から適切なものを補充して、文章を完成させなさい。後記1から6その後、[空欄]の判決では、職業の許可制について合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、それが自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては、その目的を十分に達成することができないと認められることを要する旨判示した。
1. 薬局設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による開設不許可事由とした薬事法の規定の合憲性が争われた事案
2. たばこ事業法、同法施行規則及びこれを受けた大蔵大臣依命通達による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制の合憲性が争われた事案
3. 公衆浴場設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による経営不許可事由とした公衆浴場法の規定の合憲性が争われた事案
4. 酒類の販売業を税務署長の免許制とし、その要件を定めている酒税法の規定の合憲性が争われた事案
5. 都道府県知事の許可なく小売市場を開設することを禁じた小売商業調整特別措置法の規定の合憲性が争われた事案
6. 司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続の代理業務等を行うことを禁じた司法書士法の規定の合憲性が争われた事案
(正答)1
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、薬局設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による開設不許可事由とした薬事法の規定の合憲性が争われた事案において、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する…。」としている。
(H24 共通 第5問 イ)
憲法22条1項が「公共の福祉に反しない限り」という留保を伴っているのは、職業活動は社会的相互関連性が大きく、精神的自由と比較して公権力による規制の要請が強いことを強調するためである。
(H24 共通 第5問 ウ)
職業の許可制は自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する。ただし、この要請は、個々の許可条件の合憲性判断においてまで求められるものではない。
(正答) ✕
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。」とした上で、この要件は、許可制そのものについてのみならず、その内容についても要求されるのであつて、許可制の採用自体が是認される場合であつても、個々の許可条件については、更に個別的に右の要件に照らしてその適否を判断しなければならないのである。」としている。
(H25 司法 第19問 ウ)
裁判所は、合憲性審査に当たり人権制約立法の根拠となる立法事実の存否を審査する必要があるが、その際立法事実についての立法者の判断をどの程度尊重すべきかという問題は、いかなる基準で合憲性を判断するかの問題とは無関係である。
(正答) ✕
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「これらの規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによつて制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない。この場合、右のような検討と考量をするのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまるかぎり、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものである。」とした上で、「しかし、右の合理的裁量の範囲については、事の性質上おのずから広狭がありうるのであつて、裁判所は、具体的な規制の目的、対象、方法等の性質と内容に照らして、これを決すべきものといわなければならない。」としている。これは、職業規制ごとに立法府の判断をどの程度尊重するべきかが異なり得るため、それと逆の相関の関係に立つ裁判所による違憲審査の厳格度も変わり得ることを意味している。
(H29 共通 第8問 ウ)
職業の許可制は、狭義の職業の選択の自由そのものに制約を課す強力な制限であるため、社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置であっても、より緩やかな規制によってはその目的を十分に達することができない場合でなければ、合憲性を肯定し得ない。
(正答) ✕
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要…する」とした上で、「また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。」としている。後者の判示では、「社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置」と「自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置」とが区別されており、「消極的、警察的措置」であることを理由に、「許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する」という厳格な合理性の基準が採用されているのだから、仮に「社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置」であれば、緩やかな基準が採用されることになる。
(R1 司法 第7問 ア)
薬局の開設につき、これを許可制とすることの目的が、国民の生命及び健康に対する危険の防止にある場合、当該規制の合憲性を肯定するためには、それが重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることに加え、より緩やかな規制によってはその目的を十分に達成することができないと認められることも要する。
(正答) 〇
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。」としている。
(R4 共通 第1問 イ)
職業選択の自由は、社会生活における安全の保障及び秩序の維持等の消極的な目的や、国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的な目的のほか、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のために制約され得る。
(R5 予備 第4問 ア)
職業の自由に対する規制措置が憲法上是認されるかどうかは、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならず、それは、第一次的には立法府の権限と責務であるから、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまる限り、その判断を尊重すべきである。
(正答) 〇
(解説)
薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「これらの規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによつて制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない。この場合、右のような検討と考量をするのは、第1次的には立法府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまるかぎり、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものである。」としている。
(R5 予備 第4問 イ)
職業の許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、規制目的が重要な公共の利益のために必要不可欠であり、許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては立法目的を十分に達成し得ないことを要する。
公衆浴場事件 最二小判平成元年1月20日
概要
判例
解説:昭和30年判決(最大判昭30.1.26)は、「公衆浴場は、多数の国民の日常生活に必要欠くべからざる、多分に公共性を伴う厚生施設である。そして、若しその設立を業者の自由に委せて、何等その偏在及び濫立を防止する等その配置の適正を保つために必要な措置が講ぜられないときは、その偏在により、多数の国民が日常容易に公衆浴場を利用しようとする場合に不便を来たすおそれなきを保し難く、また、その濫立により、浴場経営に無用の競争を生じその経営を経済的に不合理ならしめ、ひいて浴場の衛生設備の低下等好ましからざる影響を来たすおそれなきを保し難い。このようなことは、上記公衆浴場の性質に鑑み、国民保健及び環境衛生の上から、出来る限り防止することが望ましいことであ…る」として規制目的を消極目的と捉えた上で、許可制自体と適正配置規制の双方について憲法22条1項に違反しないと判示した。
過去問・解説
(H18 司法 第7問 C)
次の文章は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性判断基準に関するものである。空欄に、後記1から6までの中から適切なものを補充して、文章を完成させなさい。
これらを受けて、職業選択の自由を規制する法令の合憲性審査基準に関して、判例はいわゆる「目的二分論」に立っていると理解した上で、これを基本的に支持する見解がある一方で、規制目的と合憲性審査基準を対応させることについて批判的な見解もある。このような中、最高裁判所は、平成元年に、[空欄]において、ある小法廷が、小売市場事件の判決と同様の合憲性審査基準を述べた上で、当該規制は違憲とすべき場合に当たらない旨判示したのに対して、別の小法廷は、そのような審査基準を述べることなく当該規定の合憲性を肯定して、判断手法が分かれた。
1. 薬局設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による開設不許可事由とした薬事法の規定の合憲性が争われた事案
2. たばこ事業法、同法施行規則及びこれを受けた大蔵大臣依命通達による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制の合憲性が争われた事案
3. 公衆浴場設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による経営不許可事由とした公衆浴場法の規定の合憲性が争われた事案
4. 酒類の販売業を税務署長の免許制とし、その要件を定めている酒税法の規定の合憲性が争われた事案
5. 都道府県知事の許可なく小売市場を開設することを禁じた小売商業調整特別措置法の規定の合憲性が争われた事案
6. 司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続の代理業務等を行うことを禁じた司法書士法の規定の合憲性が争われた事案
(正答)3
(解説)
平成元年1月20日判決(最判平元.1.20)は、「公衆浴場が住民の日常生活において欠くことのできない公共的施設であり、これに依存している住民の需要に応えるため、その維持、確保を図る必要のあることは、立法当時も今日も変わりはない。むしろ、公衆浴場の経営が困難な状況にある今日においては、一層その重要性が増している。」として規制目的を積極目的として捉えた上で、「このような積極的、社会経済政策的な規制目的に出た立法については、立法府のとつた手段がその裁量権を逸脱し、著しく不合理であることの明白な場合に限り、これを違憲とすべきであるところ…、右の適正配置規制及び距離制限がその場合に当たらないことは、多言を要しない。」として、明白の原則を適用して結論として憲法22条1項違反を否定している。
これに対し、平成元年3月7日判決(最判平元.3.7)は、「公衆浴場法…2条2項による適正配置規制の目的は、国民保健及び環境衛生の確保にあるとともに、公衆浴場が自家風呂を持たない国民にとって日常生活上必要不可欠な厚生施設であり、入浴料金が物価統制令により低額に統制されていること、利用者の範囲が地域的に限定されているため企業としての弾力性に乏しいこと、自家風呂の普及に伴い公衆浴場業の経営が困難になっていることなどにかんがみ、既存公衆浴場業者の経営の安定を図ることにより、自家風呂を持たない国民にとって必要不可欠な厚生施設である公衆浴場自体を確保しようとすることも、その目的としているものと解されるのであり」として規制目的を消極目的と積極目的の双方と捉えた上で、「適正配置規制は右目的を達成するための必要かつ合理的な範囲内の手段と考えられる」として憲法22条1項違反を否定している。本判決については、合理性の基準を採用していると理解されている。
西陣ネクタイ事件 最三小判平成2年2月6日
概要
判例
そして、昭和51年法律第15号による改正後の繭糸価格安定法12条の13の2及び12条の13の3は、原則として、当分の間、当時の日本蚕糸事業団等でなければ生糸を輸入することができないとするいわゆる生糸の一元輸入措置の実施、及び所定の輸入生糸を同事業団が売り渡す際の売渡方法、売渡価格等の規制について規定しており、営業の自由に対し制限を加えるものではあるが、以上の判例の趣旨に照らしてみれば、右各法条の立法行為が国家賠償法1条1項の適用上例外的に違法の評価を受けるものではないとした原審の判断は、正当として是認することができる。所論は、違憲をも主張するが、その実質は原判決の右判断における法令違背の主張にすぎない。論旨は、採用することができない。」
過去問・解説
(H26 司法 第9問 イ)
特定産業における経営の安定を目的とする生糸の輸入制限は、零細な他の産業に犠牲を強いることになるので、その合憲性は慎重に審査されるが、著しく不合理とはいえない。
酒類販売免許制事件 最三小判平成4年12月15日
概要
②酒類販売業の免許制自体も、免許基準も、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという重要な公共の利益のために採られた合理的な措置であり、これを存置すべきものとした立法府の判断がその裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理であるとはいえないから、憲法22条1項に違反しない。
判例
また、憲法は、租税の納税義務者、課税標準、賦課徴収の方法等については、すべて法律又は法律の定める条件によることを必要とすることのみを定め、その具体的内容は、法律の定めるところにゆだねている(30条、84条)。租税は、今日では、国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え、所得の再分配、資源の適正配分、景気の調整等の諸機能をも有しており、国民の租税負担を定めるについて、財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく、課税要件等を定めるについて、極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかである。したがって、租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである…。以上のことからすると、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない。」
補足意見:「私は、財政目的による規制は、いわゆる警察的・消極的規制ともその性格を異にする面があり、また、いわゆる社会政策・経済政策的な積極的規制とも異なると考える。一般論として、経済的規制に対する司法審査の範囲は、規制の目的よりもそれぞれの規制を支える立法事実の確実な把握の可能性によって左右されることが多いと思っている。…そして、そのような酒税の重要性の判断及び合理的な規制の選択については、立法政策に関与する大蔵省及び立法府の良識ある専門技術的裁量が行使されるべきであると考える。」(園部逸夫裁判官の補足意見)
過去問・解説
(H18 司法 第7問 改題)
次の文章は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性判断基準に関するものである。酒類の販売業を税務署長の免許制とし、その要件を定めている酒税法の規定の合憲性が争われた事案は、AないしDのどのアルファベットに入るか。なお、いずれにも該当しない場合には×を選択すること。
最高裁判所は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性に関して、[A]の判決において、積極的な社会経済政策を実施するための法的規制措置については、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白な場合に限って、これを違憲として、その効力を否定することができる旨判示した。その後、[B]の判決では、職業の許可制について合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、それが自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては、その目的を十分に達成することができないと認められることを要する旨判示した。
これらを受けて、職業選択の自由を規制する法令の合憲性審査基準に関して、判例はいわゆる「目的二分論」に立っていると理解した上で、これを基本的に支持する見解がある一方で、規制目的と合憲性審査基準を対応させることについて批判的な見解もある。このような中、最高裁判所は、平成元年に、[C]において、ある小法廷が、[A]の判決と同様の合憲性審査基準を述べた上で、当該規制は違憲とすべき場合に当たらない旨判示したのに対して、別の小法廷は、そのような審査基準を述べることなく当該規定の合憲性を肯定して、判断手法が分かれた。しかし、平成5年の[D]についての判決では、その規制目的に言及した上で、[A]の判決を引用して、当該規制は、その目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまるものであって、これが著しく不合理であることが明白であるとは認め難く、憲法22条1項に違反するということはできない旨判示した。
(正答) ✕
(解説)
小売市場事件判決(最大判昭47.11.22)は、「積極的な社会経済政策…の一手段として…の…経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量に委ねるほかはなく、裁判所は、立法府の右裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限つて、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当である。」とした。[A]
その後、薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する…。」とした。[B]
このよう中で、平成元年1月20日判決(最判H元.1.20)は、「公衆浴場が住民の日常生活において欠くことのできない公共的施設であり、これに依存している住民の需要に応えるため、その維持、確保を図る必要のあることは、立法当時も今日も変わりはない。むしろ、公衆浴場の経営が困難な状況にある今日においては、一層その重要性が増している。」として規制目的を積極目的として捉えた上で、「このような積極的、社会経済政策的な規制目的に出た立法については、立法府のとつた手段がその裁量権を逸脱し、著しく不合理であることの明白な場合に限り、これを違憲とすべきである」としている。[C]
その後、酒類販売免許制事件(最判平4.12.15)は、「租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。…以上のことからすると、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家 の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない」としている。
その後、たばこ事業法事件判決(最判平5.6.25)は、「たばこ事業法22条は、たばこ事業法附則10条1項に基づき製造たばこの小売販売業を行うことの許可を受けた者とみなされる右小売人の保護を図るため、当分の間に限り、製造たばこの小売販売業について許可制を採用することとしたものであり、右許可制の採用は、公共の福祉に適合する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができる。そして、同法23条3号、同法施行規則20条2号及びこれを受けた大蔵大臣依命通達…による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制は、右目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまるものであって、これが著しく不合理であることが明白であるとは認め難い。したがって、製造たばこの小売販売業に対する右規制が、憲法22条1項に違反するということはできない。」として、たばこ事業法上の許可制について、積極目的規制に位置付けた上で、小売市場事件判決の明白の原則を採用している。[D]
以上より、酒類販売免許制事件判決(最大判平4.12.15)は、[A][B][C][D]のいずれにも入らない。
(H21 司法 第9問 ア)
この判決は、許可制の場合には重要な公共の利益のために必要かつ合理的措置であることを要するとする一方で、租税法の制定に当たっては立法府の政策的・技術的な裁量的判断が尊重されるべきであるとして、許可制の必要性と合理性についての立法府の判断が政策的・技術的裁量の範囲を逸脱した著しく不合理なものでない限り、合憲であるとした。
(正答) 〇
(解説)
酒類販売免許制事件判決(最大判平4.12.15)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する」とする一方で、「租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである…。以上のことからすると、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない。」としている。
(H21 司法 第9問 イ)
この判決は、酒類販売の免許制は、酒類が致酔性を有する嗜好品であることから、酒類の無秩序な販売による国民の健康安全に対する弊害を防止するために必要な規制であるとしつつ、消費者への酒税の円滑な転嫁のため、これを阻害するおそれのある酒類販売業者を酒類の流通過程から排除するための規制でもあるとして、規制の目的を複合的なものと判断した。
(H21 司法 第9問 ウ)
この判決は、酒類販売の免許制は、経済的弱者保護という意味での積極目的による規制とは異なるとした上で、免許の許否が実際に既存の酒類販売業者の権益を擁護するような運用になっているか否かに着目すべきであるが、そのような運用がなされていない限り酒税法の立法目的を明らかに逸脱するものであるとはいえず、合憲であるとした。
(正答) ✕
(解説)
酒類販売免許制事件判決(最判平4.12.15)における多数意見は、酒類販売の免許制の目的について、「酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的」にあると認定しており、園部逸夫裁判官の補足意見では、「私は、財政目的による規制は、いわゆる警察的・消極的規制ともその性格を異にする面があり、また、いわゆる社会政策・経済政策的な積極的規制とも異なると考える。」と述べられている。もっとも、多数意見は、「経済的弱者保護という意味での積極目的による規制とは異なる」と明示的に述べているわけではないから、本肢は、「この判決は、酒類販売の免許制は、経済的弱者保護という意味での積極目的による規制とは異なるとした上で」としている点において、飛躍している。
また、本判決は、「免許の許否が実際に既存の酒類販売業者の権益を擁護するような運用になっているか否かに着目すべきである」(本肢)とは述べておらず、本肢は、この点においても飛躍している。
(H26 司法 第9問 ア)
酒類販売の免許制に関する立法事実が変化しているので、当該免許制の合憲性は厳格度を高めた基準で審査されるが、酒税法が定める免許基準は依然として合理性を有する。
(正答) ✕
(解説)
酒類販売免許制事件判決(最大判平4.12.15)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する」とする一方で、「租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである…。以上のことからすると、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない。」としている。
(R1 共通 第7問 ウ)
酒類販売業について免許制とすることを定めた酒税法の規定は、酒類販売業者には経済的基盤の弱い中小事業者が多いことに照らし、酒類販売業者を相互間の過当競争による共倒れから保護するという積極目的の規制であり、当該規制の目的に合理性が認められ、その手段・態様も著しく不合理であることが明白であるとは認められないから、違憲ではない。
(正答) ✕
(解説)
小売市場事件判決(最大判昭47.11.22)は、積極目的規制について、「裁判所は、立法府の右裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限つて、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当である。」として、明白の原則を採用している。
これに対し、酒類販売免許制事件判決(最判平4.12.15)は、酒類販売の免許制について、その目的が「酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的」にあるとした上で、「その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない。」としている。本判決は、酒類販売の免許制について、「酒類販売業者を相互間の過当競争による共倒れから保護するという積極目的の規制」であるとは述べておらず、また、「当該規制…の手段・態様も著しく不合理であること」が「明白」であることまでは要求していない。これらの点において、本肢は誤っている。
(R5 予備 第4問 ウ)
酒類販売業免許制は、一部地域における販売店の乱立による過当競争のために経済的基盤の弱い小売商の経営が不安定となることを防止するとともに、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという目的で実施されたものであって、その必要性と合理性があり、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であるとまでは断定し難いから、憲法第22条1項に違反しない。
たばこ事業法事件 最二小判平成5年6月25日
概要
判例
判旨:「たばこ事業法22条は、たばこ専売法(昭和59年法律第68号により廃止)の下において指定を受けた製造たばこの小売人には零細経営者が多いことや身体障害者福祉法等の趣旨に従って身体障害者等についてはその指定に際して特別の配慮が加えられてきたことなどにかんがみ、たばこ専売制度の廃止に伴う激変を回避することによって、たばこ事業法附則10条1項に基づき製造たばこの小売販売業を行うことの許可を受けた者とみなされる右小売人の保護を図るため、当分の間に限り、製造たばこの小売販売業について許可制を採用することとしたものであり、右許可制の採用は、公共の福祉に適合する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができる。そして、同法23条3号、同法施行規則20条2号及びこれを受けた大蔵大臣依命通達(昭和60年3月28日付け蔵専第56号)による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制は、右目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまるものであって、これが著しく不合理であることが明白であるとは認め難い。したがって、製造たばこの小売販売業に対する右規制が、憲法22条1項に違反するということはできない。以上は、最高裁昭和45年(あ)第23号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号585頁の趣旨に徴して明らかである。」
過去問・解説
(H18 司法 第7問 D改題)
次の文章は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性判断基準に関するものである。空欄に、後記1から6までの中から適切なものを補充して、文章を完成させなさい。
しかし、平成5年の[空欄]についての判決では、その規制目的に言及した上で、小売市場事件判決を引用して、当該規制は、その目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまるものであって、これが著しく不合理であることが明白であるとは認め難く、憲法22条1項に違反するということはできない旨判示した。
1. 薬局設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による開設不許可事由とした薬事法の規定の合憲性が争われた事案
2. たばこ事業法、同法施行規則及びこれを受けた大蔵大臣依命通達による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制の合憲性が争われた事案
3. 公衆浴場設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による経営不許可事由とした公衆浴場法の規定の合憲性が争われた事案
4. 酒類の販売業を税務署長の免許制とし、その要件を定めている酒税法の規定の合憲性が争われた事案
5. 都道府県知事の許可なく小売市場を開設することを禁じた小売商業調整特別措置法の規定の合憲性が争われた事案
6. 司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続の代理業務等を行うことを禁じた司法書士法の規定の合憲性が争われた事案
司法書士法事件 最三小判平成12年2月8日
概要
判例
過去問・解説
(H18 司法 第7問 改題)
次の文章は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性判断基準に関するものである。司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続の代理業務等を行うことを禁じた司法書士法の規定の合憲性が争われた事案は、AないしDのどのアルファベットに入るか。なお、いずれにも該当しない場合には×を選択すること。
最高裁判所は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性に関して、[A]の判決において、積極的な社会経済政策を実施するための法的規制措置については、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白な場合に限って、これを違憲として、その効力を否定することができる旨判示した。その後、[B]の判決では、職業の許可制について合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、それが自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては、その目的を十分に達成することができないと認められることを要する旨判示した。
これらを受けて、職業選択の自由を規制する法令の合憲性審査基準に関して、判例はいわゆる「目的二分論」に立っていると理解した上で、これを基本的に支持する見解がある一方で、規制目的と合憲性審査基準を対応させることについて批判的な見解もある。このような中、最高裁判所は、平成元年に、[C]において、ある小法廷が、[A]の判決と同様の合憲性審査基準を述べた上で、当該規制は違憲とすべき場合に当たらない旨判示したのに対して、別の小法廷は、そのような審査基準を述べることなく当該規定の合憲性を肯定して、判断手法が分かれた。しかし、平成5年の[D]についての判決では、その規制目的に言及した上で、[A]の判決を引用して、当該規制は、その目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまるものであって、これが著しく不合理であることが明白であるとは認め難く、憲法22条1項に違反するということはできない旨判示した。
(正答) ✕
(解説)
小売市場事件判決(最大判昭47.11.22)は、「積極的な社会経済政策…の一手段として…の…経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量に委ねるほかはなく、裁判所は、立法府の右裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限つて、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当である。」とした。[A]
その後、薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する…。」とした。[B]
このよう中で、平成元年1月20日判決(最判H元.1.20)は、「公衆浴場が住民の日常生活において欠くことのできない公共的施設であり、これに依存している住民の需要に応えるため、その維持、確保を図る必要のあることは、立法当時も今日も変わりはない。むしろ、公衆浴場の経営が困難な状況にある今日においては、一層その重要性が増している。」として規制目的を積極目的として捉えた上で、「このような積極的、社会経済政策的な規制目的に出た立法については、立法府のとつた手段がその裁量権を逸脱し、著しく不合理であることの明白な場合に限り、これを違憲とすべきである」としている。[C]
その後、酒類販売免許制事件(最判平4.12.15)は、「租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。…以上のことからすると、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家 の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない」としている。
その後、たばこ事業法事件判決(最判平5.6.25)は、「たばこ事業法22条は、たばこ事業法附則10条1項に基づき製造たばこの小売販売業を行うことの許可を受けた者とみなされる右小売人の保護を図るため、当分の間に限り、製造たばこの小売販売業について許可制を採用することとしたものであり、右許可制の採用は、公共の福祉に適合する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができる。そして、同法23条3号、同法施行規則20条2号及びこれを受けた大蔵大臣依命通達…による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制は、右目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまるものであって、これが著しく不合理であることが明白であるとは認め難い。したがって、製造たばこの小売販売業に対する右規制が、憲法22条1項に違反するということはできない。」として、たばこ事業法上の許可制について、積極目的規制に位置付けた上で、小売市場事件判決の明白の原則を採用している。[D]
以上より、司法書士法事件判決(最判平12.2.8)は、[A][B][C][D]のいずれにも入らない。
(H26 司法 第9問 ウ)
登記制度が国民の権利義務等に重大な影響を及ぼすことなどから、原則として司法書士に登記業務の独占を認める職域規制は、公共の福祉に合致した合理的な規制である。
農業災害補償法事件 最三小判平成17年4月26日
概要
判例
判旨:「法が、水稲等の耕作の業務を営む者でその耕作面積が一定の規模以上のものは農業共済組合の組合員となり当該組合との間で農作物共済の共済関係が当然に成立するという仕組み(法15条1項、16条1項、19条、104条1項。以下「当然加入制」という。)を採用した趣旨は、国民の主食である米の生産を確保するとともに、水稲等の耕作をする自作農の経営を保護することを目的とし、この目的を実現するため、農家の相互扶助の精神を基礎として、災害による損失を相互に分担するという保険類似の手法を採用することとし、被災する可能性のある農家をなるべく多く加入させて危険の有効な分散を図るとともに、危険の高い者のみが加入するという事態を防止するため、原則として全国の米作農家を加入させたところにあると解される。法が制定された昭和22年当時、食糧事情が著しくひっ迫していた一方で、農地改革に伴い多数の自作農が創設され、農業経営の安定が要請されていたところ、当然加入制は、もとより職業の遂行それ自体を禁止するものではなく、職業活動に付随して、その規模等に応じて一定の負担を課するという態様の規制であること、組合員が支払うべき共済掛金については、国庫がその一部を負担し、災害が発生した場合に支払われる共済金との均衡を欠くことのないように設計されていること、甚大な災害が生じた場合でも政府による再保険等により共済金の支払が確保されていることに照らすと、主食である米の生産者についての当然加入制は、米の安定供給と米作農家の経営の保護という重要な公共の利益に資するものであって、その必要性と合理性を有していたということができる。
もっとも、その後、社会経済の状況の変化に伴い、米の供給が過剰となったことから生産調整が行われ、また、政府が米穀管理基本計画に基づいて生産者から米を買い上げることを定めていた食糧管理法は平成7年に廃止されるに至っている。しかしながら、上告人が本件差押えに係る共済掛金等の支払義務を負った当時においても、米は依然として我が国の主食としての役割を果たし、重要な農作物としての地位を占めており、その生産過程は自然条件に左右されやすく、時には冷害等により広範囲にわたって甚大な被害が生じ、国民への供給不足を来すことがあり得ることには変わりがないこと、また、食糧管理法に代わり制定された主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成15年法律第103号による改正前のもの)は、主要食糧の需給及び価格の安定を図ることを目的として、米穀の生産者から消費者までの計画的な流通を確保するための措置等を講ずることを定めており、災害補償につき個々の生産者の自助にゆだねるべき状態に至っていたということはできないことを勘案すれば、米の生産者についての当然加入制はその必要性と合理性を失うに至っていたとまではいえないと解すべきである。
このように、上記の当然加入制の採用は、公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができ、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白であるとは認め難い。したがって、上記の当然加入制を定める法の規定は、職業の自由を侵害するものとして憲法22条1項に違反するということはできない。」