(H22 司法 第9問 ウ)
森林共有林事件判決(最大判昭62.4.22)及び証券取引法事件判決(最大判平14.2.13)は、いずれも、財産権に規制を加える立法について規制目的の正当性は認めている。その上で、規制手段の必要性及び合理性に関して、森林共有林事件判決はこれが認められないと判断したのに対し、証券取引法164条1項の合憲性について判断した判決はこれが認められると判断したものである。
(正答)〇
(解説)
森林法事件判決(最大判昭62.4.22)は、規制目的について、「森林法186条…の立法目的は、…森林の細分化を防止することによつて森林経営の安定を図り、ひいては森林の保続培養と森林の生産力の増進を図り、もつて国民経済の発展に資することにあると解すべきである。同法186条の立法目的は、以上のように解される限り、公共の福祉に合致しないことが明らかであるとはいえない。」として、正当性を認めている。また、証券取引法事件判決(最大判平14.2.13)も、規制目的について、「証券取引法…164条1項…は、上場会社等の役員又は主要株主がその職務又は地位により取得した秘密を不当に利用することを防止することによって、一般投資家が不利益を受けることのないようにし、国民経済上重要な役割を果たしている証券取引市場の公平性、公正性を維持するとともに、これに対する一般投資家の信頼を確保するという経済政策に基づく目的を達成するためのものと解することができるところ、このような目的が正当性を有し、公共の福祉に適合するものであることは明らかである。」として、正当性を認めている。したがって、本肢前段は正しい。
森林法事件判決(最大判昭62.4.22)は、規制手段の必要性及び合理性について、「森林法186条が共有森林につき持分価額2分の1以下の共有者に民法256条1項所定の分割請求権を否定しているのは、森林法186条の立法目的との関係において、合理性と必要性のいずれをも肯定することのできないことが明らかであつて、この点に関する立法府の判断は、その合理的裁量の範囲を超えるものであるといわなければならない。」として、否定している。これに対し、証券取引法事件判決(最大判平14.2.13)は、「そのような規制手段を採ることは、前記のような立法目的達成のための手段として必要性又は合理性に欠けるものであるとはいえない。」として、肯定している。したがって、本肢後段も正しい。
(H24 司法 第7問 ア)
憲法第29条は、私有財産制度を保障しているのみでなく、国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障しているが、それ自体に内在する制約があるほか、社会全体の利益を図るための規制により制約を受ける。
(正答)〇
(解説)
森林法事件判決(最大判昭62.4.22)は、「憲法29条は、…私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障する」とする一方で、「社会全体の利益を考慮して財産権に対し制約を加える必要性が増大するに至つたため、立法府は公共の福祉に適合する限り財産権について規制を加えることができる」としている。
(H24 司法 第7問 イ)
財産権規制の目的には、社会政策及び経済政策上の積極的なものから、安全の保障や秩序の維持等の消極的なものまで種々様々なものがあり得るが、森林法の共有林分割請求権を制限する規定は積極目的による規制である。
(正答)✕
(解説)
森林法事件判決(最大判昭62.4.22)は、「財産権は、それ自体に内在する制約があるほか、右のとおり立法府が社会全体の利益を図るために加える規制により制約を受けるものであるが、この規制は、財産権の種類、性質等が多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。」としている。したがって、本肢前段は正しい。
しかし、本判決は、森林法の共有林分割請求権を制限する規定の目的について、「森林法186条…の立法目的は、…森林の細分化を防止することによつて森林経営の安定を図り、ひいては森林の保続培養と森林の生産力の増進を図り、もつて国民経済の発展に資することにあると解すべきである。」とするにとどまり、それが積極目的であるとまでは述べていない。したがって、本肢後段は誤っている。
(H24 司法 第7問 ウ)
財産権規制の目的が公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、規制手段が規制目的を達成する手段として必要性や合理性に欠けていることが明らかであって、立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法は違憲となる。
(正答)〇
(解説)
森林法事件判決(最大判昭62.4.22)は、「立法の規制目的が…社会的理由ないし目的に出たとはいえないものとして公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、又は規制目的が公共の福祉に合致するものであつても規制手段が右目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであって、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法が憲法29条2項に違背するものとして、その効力を否定することができる」としている。
(H27 共通 第9問 ア)
憲法第29条第1項は財産権の不可侵性を規定しているが、同項が保障するのは、私有財産制ではなく、個人が現に有する財産を侵害されないということである。
(正答)✕
(解説)
森林法事件判決(最大判昭62.4.22)は、「憲法29条は、1項において『財産権は、これを侵してはならない。』と規定し、2項において『財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。』と規定し、私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障する…、としているのである。」と述べており、憲法29条によって私有財産制と国民の個々の財産権の双方が保障されるとしている。
(R2 司法 第8問 ア)
憲法第29条は、私有財産制度を制度として保障するものであり、国民の個々の財産権につき基本的人権として保障するものではない。
(正答)✕
(解説)
森林法事件判決(最大判昭62.4.22)は、「憲法29条は、1項において『財産権は、これを侵してはならない。』と規定し、2項において『財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。』と規定し、私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障する…、としているのである。」としている。
したがって、憲法第29条は、私有財産制度を制度として保障するものであることに加え、国民の個々の財産権につき基本的人権として保障するものである。
(R7 司法 第8問 ア)
憲法第29条は私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障するところ、社会全体の利益を考慮して財産権に対し制約を加える必要性が増大するに至ったため、立法府は、公共の福祉に適合する限り財産権について規制を加えることができる。
(正答)〇
(解説)
森林法事件判決(最大判昭62.4.22)は、「憲法29条は、1項において『財産権は、これを侵してはならない。』と規定し、2項において『財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。』と規定し、私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障するとともに、社会全体の利益を考慮して財産権に対し制約を加える必要性が増大するに至ったため、立法府は公共の福祉に適合する限り財産権について規制を加えることができる、としているのである。」としている。
(R7 司法 第8問 イ)
森林法事件判決(最高裁判所昭和62年4月22日大法廷判決、民集41巻3号408頁)は、共有森林の分割請求権を制限する森林法の規定は、森林の細分化を防止し、森林経営の安定、森林の保続培養と生産力の増進を図り、もって社会生活における安全の保障や秩序の維持等に資するという消極的目的のための制限であるとした上で、当該規定について、この目的のために必要性と合理性を肯定するには足らないから違憲であると判断した。
(正答)✕
(解説)
森林法事件判決(最大判昭62.4.22)は、「森林法186条…の立法目的は、…森林の細分化を防止することによって森林経営の安定を図り、ひいては森林の保続培養と森林の生産力の増進を図り、もって国民経済の発展に資することにあると解すべきである。」としている。
もっとも、同判決は、共有森林の分割請求権を制限する森林法の規定の目的について、「消極的目的」と明言はしていない。