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憲法 堀越事件 最二小判平成24年12月7日 - 解答モード
概要
②被告人の行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。したがって、被告人の行為は本件罰則規定の構成要件に該当しない。
判例
そして、上記のような規制の目的やその対象となる政治的行為の内容等に鑑みると、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかどうかは、当該公務員の地位、その職務の内容や権限等、当該公務員がした行為の性質、態様、目的、内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である。具体的には、当該公務員につき、指揮命令や指導監督等を通じて他の職員の職務の遂行に一定の影響を及ぼし得る地位(管理職的地位)の有無、職務の内容や権限における裁量の有無、当該行為につき、勤務時間の内外、国ないし職場の施設の利用の有無、公務員の地位の利用の有無、公務員により組織される団体の活動としての性格の有無、公務員による行為と直接認識され得る態様の有無、行政の中立的運営と直接相反する目的や内容の有無等が考慮の対象となるものと解される。
以上の諸点に鑑みれば、本件罰則規定は憲法21条1項、15条、19条、31条、41条、73条6号に違反するものではないというべきであ…る。」
②「本件配布行為が本件罰則規定の構成要件に該当するかを検討するに、本件配布行為が本規則6項7号、13号(5項3号)が定める行為類型に文言上該当する行為であることは明らかであるが、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものかどうかについて、前記諸般の事情を総合して判断する。前記のとおり、被告人は、社会保険事務所に年金審査官として勤務する事務官であり、管理職的地位にはなく、その職務の内容や権限も、来庁した利用者からの年金の受給の可否や年金の請求、年金の見込額等に関する相談を受け、これに対し、コンピューターに保管されている当該利用者の年金に関する記録を調査した上、その情報に基づいて回答し、必要な手続をとるよう促すという、裁量の余地のないものであった。そして、本件配布行為は、勤務時間外である休日に、国ないし職場の施設を利用せずに、公務員としての地位を利用することなく行われたものである上、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく、公務員であることを明らかにすることなく、無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって、公務員による行為と認識し得る態様でもなかったものである。これらの事情によれば、本件配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。そうすると、本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。以上のとおりであり、被告人を無罪とした原判決は結論において相当である。」
過去問・解説
(H27 共通 第1問 ア)
「政治的行為」とは、公務員の政治的な行為一般ではなく、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指す。
(H30 共通 第1問 ウ改題)
堀越事件(最判平成24年12月7日)は、国家公務員法102条1項にいう「政治的行為」に該当するか否かの判断について、同項にいう「政治的行為」の意義を、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものと解した上、その判断においては、当該公務員の地位、その職務の内容や権限等、当該公務員がした行為の性質、態様、目的、内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当であると判示している。
(R2 共通 第16問 ア)
最高裁判所は、公務員による政党機関誌の配布が国家公務員法違反に問われた堀越事件(最判平成24年12月7日)において、被告人の配布行為には公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められず、当該配布行為に罰則規定が適用される限りにおいて憲法21条1項及び31条に違反すると判示した。
(正答) ✕
(解説)
堀越事件判決(最判平24.12.7)は、「本件配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。そうすると、本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。以上のとおりであり、被告人を無罪とした原判決は結論において相当である。」としている。その上で、「原判決は、本件罰則規定を被告人に適用することが憲法21条1項、31条に違反するとしているが、そもそも本件配布行為は本件罰則規定の解釈上その構成要件に該当しないためその適用がないと解すべきであって、上記憲法の各規定によってその適用が制限されるものではないと解されるから、原判決中その旨を説示する部分は相当ではないが、それが判決に影響を及ぼすものでないことは明らかである。論旨は採用することができない。」としている。