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憲法 葛飾政党ビラ配布事件 最二小判平成21年11月30日 - 解答モード

概要
分譲マンションの各住戸のドアポストに政党の活動報告等を記載したビラ等を投かんする目的で、同マンションの玄関ホールの奥にあるドアを開けるなどして7階から3階までの廊下等の共用部分に、同マンションの管理組合の意思に反して立ち入った行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反しない。
判例
事案:被告人は、某日午後2時20分ころ、日本共産党葛飾区議団だより、日本共産党都議会報告、日本共産党葛飾区議団作成の区民アンケート及び同アンケートの返信用封筒の4種(以下「本件ビラ」という。)を本件マンションの各住戸に配布するために、本件マンションの玄関出入口を開けて玄関ホールに入り、更に玄関内東側ドアを開け、1階廊下を経て、エレベーターを使って7階から3階までの本件マンションの廊下等に立ち入ったことについて、建造物侵入罪(刑法130条前段)で起訴された。 
 
判旨:「確かに、表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならず、本件ビラのような政党の政治的意見等を記載したビラの配布は、表現の自由の行使ということができる。しかしながら、憲法21条11も、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきである(最高裁昭和59年(あ)第206号同年12月18日第三小法廷判決・刑集38巻12号3206頁参照)。
 本件では、表現そのものを処罰することの憲法適合性が問われているのではなく、表現の手段すなわちビラの配布のために本件管理組合の承諾なく本件マンション内に立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われているところ、本件で被告人が立ち入った場所は、本件マンションの住人らが私的生活を営む場所である住宅の共用部分であり、その所有者によって構成される本件管理組合がそのような場所として管理していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、そこに本件管理組合の意思に反して立ち入ることは、本件管理組合の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。したがって、本件立入り行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない。このように解することができることは、当裁判所の判例…の趣旨に徴して明らかである(最高裁平成17年(あ)第2652号同20年4月11日第二小法廷判決・刑集62巻5号1217頁参照)。」
過去問・解説

(H29 共通 第6問 エ)
自衛隊官舎ビラ配布事件(最判平成20年4月11日)の後の判例(最判平成21年11月30日)では、政党のビラを配布するために民間の分譲マンションの各住戸の廊下等共用部分に立ち入った行為につき、表現の自由の重要性に鑑み、当該マンションの管理者が商業的な宣伝・広告のビラのみならず政党のビラを配布することまで禁止するのは合理性を欠くとして、かかる行為を刑法130条の罪に問うことは憲法21条1項に反する旨判示された。

(正答)  

(解説)
葛飾政党ビラ配布事件判決(最判平21.11.30)は、「本件で被告人が立ち入った場所は、本件マンションの住人らが私的生活を営む場所である住宅の共用部分であり、その所有者によって構成される本件管理組合がそのような場所として管理していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、そこに本件管理組合の意思に反して立ち入ることは、本件管理組合の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。したがって、本件立入り行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない。」としている。

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