現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

憲法 余罪を量刑の資料として考慮することの可否 最大判昭和41年7月13日

概要
起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮することは許されないが、単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料としてこれを考慮することは必ずしも禁じられるものではない。
判例
事案:起訴されていない犯罪事実を量刑資料として考慮することは憲法31条及び憲法39条に違反するかが問題となった。

判旨:「刑事裁判において、起訴された犯罪事実のほかに、起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮し、これがため被告人を重く処罰することは許されないものと解すべきである。けだし、右のいわゆる余罪は、公訴事実として起訴されていない犯罪事実であるにかかわらず、右の趣旨でこれを認定考慮することは、刑事訴訟法の基本原理である不告不理の原則に反し、憲法31条にいう、法律に定める手続によらずして刑罰を科することになるのみならず、刑訴法317条に定める証拠裁判主義に反し、かつ、自白と補強証拠に関する憲法38条3項、刑訴法319条2項、3項の制約を免かれることとなるおそれがあり、さらにその余罪が後日起訴されないという保障は法律上ないのであるから、若しその余罪について起訴され有罪の判決を受けた場合は、既に量刑上責任を問われた事実について再び刑事上の責任を問われることになり、憲法39条にも反することになるからである。
 しかし、他面刑事裁判における量刑は、被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等すべての事情を考慮して、裁判所が法定刑の範囲内において、適当に決定すべきものであるから、その量刑のための一情状として、いわゆる余罪をも考慮することは、必ずしも禁ぜられるところではない(もとより、これを考慮する程度は、個々の事案ごとに合理的に検討して必要な限度にとどめるべきであり、従つてその点の証拠調にあたつても、みだりに必要な限度を越えることのないよう注意しなければならない。)。このように量刑の一情状として余罪を考慮するのは、犯罪事実として余罪を認定して、これを処罰しようとするものではないから、これについて公訴の提起を必要とするものではない。余罪を単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料として考慮することは、犯罪事実として認定し、これを処罰する趣旨で刑を重くするのとは異なるから、事実審裁判所としては、両者を混淆することのないよう慎重に留意すべきは当然である。
 本件についてこれを見るに、原判決に「被告人が本件以前にも約6か月間多数回にわたり同様な犯行をかさね、それによつて得た金員を飲酒、小使銭、生活費等に使用したことを考慮すれば、云々」と判示していることは、所論のとおりである。しかし、右判示は、余罪である窃盗の回数およびその窃取した金額を具体的に判示していないのみならず、犯罪の成立自体に関係のない窃取金員の使途について比較的詳細に判示しているなど、その他前後の判文とも併せ熟読するときは、右は本件起訴にかかる窃盗の動機、目的および被告人の性格等を推知する一情状として考慮したものであつて、余罪を犯罪事実として認定し、これを処罰する趣旨で重く量刑したものではないと解するのが相当である。従つて、所論違憲の主張は前提を欠き採るを得ない。」
過去問・解説
(H18 司法 第1問 ア)
刑事裁判において、起訴された犯罪事実のほかに、起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮し、これに基づいて被告人を重く処罰することは、不告不理の原則に反し、憲法第31条に違反する

(正答)  

(解説)
判例(最大判昭41.7.13)は、「「刑事裁判において、起訴された犯罪事実のほかに、起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮し、これがため被告人を重く処罰することは…、刑事訴訟法の基本原理である不告不理の原則に反し、憲法31条にいう、法律に定める手続によらずして刑罰を科することになる…。としている。

(R1 司法 第8問 ア)
起訴されていない余罪を被告人が自認している場合に余罪を実質上処罰する趣旨で被告人を重く処罰することは、憲法第31条に由来する不告不理の原則に反するが、憲法第38条第3項の規定する補強法則との関係では問題は生じない。

(正答)  

(解説)
判例(最大判昭41.7.13)は、「刑事裁判において、起訴された犯罪事実のほかに、起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮し、これがため被告人を重く処罰することは…、刑事訴訟法の基本原理である不告不理の原則に反し、憲法31条にいう、法律に定める手続によらずして刑罰を科することになるのみならず、刑訴法317条に定める証拠裁判主義に反し、かつ、自白と補強証拠に関する憲法38条3項、刑訴法319条2項、3項の制約を免かれることとなるおそれがあ…る。」としている。
本肢は、「憲法第38条第3項の規定する補強法則との関係では問題は生じない。」としている点において、誤っている。
総合メモ
前の判例 次の判例